異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第24話「天罰」

敵の拠点は、およそ600箇所だ。

 

それに対して、あたし達は風花聖典を合わせても100人足らずだった。

 

どう考えても手が足らないよね。どうしようかな?

 

「あんた達が、竜王国で呼び出したオーガとゴーレムを使えばいいんじゃないのー?」

 

クレマンティーヌがそんな提案をする。

 

確かにレベルを30ぐらいに抑えれば、全部で30000体ぐらいは呼び出せるから何とかなるのかな?

 

「マスター。郊外にある麻薬製造工場などは、眷属達でも問題ありませんが、街中の施設の場合だと目立ちます」

 

なるほど、街中にオーガやゴーレムが現れたら、たとえ夜中でも騒がれそうだ。

 

でも、別に騒がれてもいいよね。

 

「イエス、マスター。衛兵共が騒ぎ立てても蹴散らせば済む話です。冒険者共が邪魔した場合でも、レベル30の眷属達ならば、たとえアダマンタイト級の冒険者といえど、物量で圧殺できます」

 

うむうむ、それなら問題ないな。

 

市民に対しては眷属に攻撃禁止を命じればいいし、建物への多少の損害は目をつぶろう。

 

王都の人達も、八本指という害虫が駆除されるならそのぐらいは我慢してくれるだろう。

 

そうだ。ラキュースには作戦日に外出しないように言っておいてあげよう。

 

巻き込まれたら可哀想だもんね。

 

「ちょっと待ってよ! あんたら堂々と真正面から王都の施設を襲う気なわけ!?」

 

クレマンティーヌが慌てたように騒ぎ出す。

 

大丈夫だよ。眷属には遠隔で指示を出せるから、あたし達の事が人間にばれて、お尋ね者にされるとかの心配はないからね。

 

「なーんだ、それなら安心だわ。じゃないわよっ!! 王都にオーガとゴーレムの軍が侵攻だなんて、戦争レベルの戦闘が起こるわよ!!」

 

おおっ!

 

それは楽しそ…いえ、何でもないです。だから本気で睨まないでね。可愛い顔が台無しだよ?

 

「隠密での潜入が難しくても、あんたは転移が出来るんだから、施設内に転移すればいいじゃない!」

 

えー!

 

王都内の施設って、500箇所以上もあるのに、そんなに転移するの大変だよー!

 

「転移するには、一度はその場所に行かなければなりません。マスターが全ての施設を回るのは現実的ではありませんよ」

 

おおっ!!

 

オートマトンが援護してくれているぞ。

 

いいぞ!

 

もっと言ってやれ!

 

「何言ってんのよ? こいつが持っている“精霊王の門”なら、行ったことのない場所でも転移可能だって言ってたじゃない」

 

しまった!

 

ワールドアイテムのこと忘れてた !

 

「なるほど、“精霊王の門”を使えば問題はありませんね」

 

オートマトンまで、そんな事を言わないで!

 

500箇所以上も転移して、眷属を呼び出してを繰り返すなんて面倒くさすぎる!

 

単純労働は辛いんだぞ!!

 

「ふふ、これなら余計な被害は抑えられるしねー」

 

クレマンティーヌが満足そうに笑う。

 

くそう、笑った顔はニャンコみたいで可愛いけど、働くのはあたしなんだぞ。

 

せっかく、あたしの夢が叶ったこの世界なのに。

 

え、あたしの夢?

 

もちろん、あたしの夢といえば、

 

 “遊んで暮らす!”

 

 

 

 

結論から言えば、あたしは働かなくてすんだ。

 

あの後、オートマトンがクレマンティーヌに話してくれた。

 

「それではクレマンティーヌ。頑張って下さい」

 

「私が何を頑張るのー?」

 

不思議そうな顔になるクレマンティーヌを無視してオートマトンが、あたしに向かって“精霊王の門”をクレマンティーヌに貸すように言ってきた。

 

「クレマンティーヌが各所を回って、そこにいる害虫共を“精霊王の門”に登録した後、全員を一度に呼び出せば、一夜で害虫共を殲滅出来ます」

 

オートマトンは天才かっ!!

 

やっぱり、オートマトンはあたしの味方だったのだ!!

 

「クレマンティーヌよ。我はお前を信頼している。その証として、神聖なるワールドアイテム“精霊王の門”の使用を許可する。風花聖典達は、クレマンティーヌを補助をせよ。我に逆らう八本指と、それに組する者共へ神罰を与えるのだ」

 

あたしの言葉に風花聖典達は、歓喜の表情を浮かべる。クレマンティーヌは凄く嫌そうな顔になった。

 

ククク、言い出しっぺは、クレマンティーヌなのだから頑張ってもらおう。

 

イヤイヤをするクレマンティーヌに“精霊王の門”を押し付けると、やる気満々の風花聖典の面々に引きずられながらお仕事に向かった。

 

行ってらっしゃい。お父さーん(クレマンティーヌ)!!

 

あたしとオートマトンは、仲良く手を振ってクレマンティーヌを見送った。

 

 

 

 

あたしとオートマトンは、お父さん(クレマンティーヌ)がお仕事をしている間にハイキングを兼ねながら、郊外にある麻薬製造工場を見て回ることにした。

 

工場は、大小合わせれば100箇所以上あるから大変だと思う。

 

でも、お父さん(クレマンティーヌ)も頑張って働いているのだから、あたしも頑張ろう。

 

移動中は乗馬の練習をしたり。オーガとゴーレムを呼び出して、その背に乗って、オートマトンと鬼ごっこをしたり。実は空を飛べるオートマトンにお姫様だっこしてもらいながら、空の旅を楽しんだり。通りすがりの竜をボコって配下に加えて、ドラゴンライダーごっこをしたり。竜王国に転移して女子会(クレマンティーヌ抜き)をしたり。色々と大変だった。

 

実に三ヶ月もの長い時間をかけて、100箇所を回り終わった頃、お父さん(クレマンティーヌ)達が帰ってきた。

 

風花聖典達は使命を果たし終わった清々しい顔だったけど、お父さん(クレマンティーヌ)は少し…だいぶ? やつれてた。

 

お父さん。お仕事、お疲れ様。

 

「うるさいっ、お父さん言うな!!」

 

クレマンティーヌに怒鳴られた。

 

疲れているんだね。ゆっくり休んでね。

 

あたしはお父さんにゆっくり休んでもらおうと思った。でも、お母さんは厳しかった。

 

「マスター。今夜にでも害虫退治を行いましょう」

 

「す、少しは休ませて…」

 

オートマトンの言葉にクレマンティーヌが泣きそうな顔になってた。

 

働くのって、大変だね。

 

 

草原が広がる場所でクレマンティーヌが“精霊王の門”を発動させる。

 

本来ならあたしが発動させるべきなのだろうけど、せっかくクレマンティーヌが頑張ってくれたのだから彼女に見せ場を作ってあげたのだ。

 

光り輝く彼女の姿に風化聖典の連中が、感涙に咽びながら崇めている。

 

誰かがクレマンティーヌの事を聖女だとか口にした。

 

それは瞬く間に広がり、聖女コールが巻き起こる。

 

その聖女コールを受けて、クレマンティーヌは嬉しそうに顔を綻ばせながらも見事に大役を務める。

 

「嬉しいわけないでしょうがっ!? 誰が聖女よ!! お前ら!! その気色悪い目を私に向けんじゃないわよ!!」

 

良かった。クレマンティーヌがキャアキャアと喜んでくれている。

 

やっぱり、クレマンティーヌには元気でいてもらいたいよね。

 

「イエス、マスター。マスターの心遣いに彼女も狂喜乱舞です」

 

「テメエらっ!! 勝手な事ぬかすなぁあああ!!」

 

うんうん、今日もクレマンティーヌは元気一杯だね!!

 

 

 

翌日、王都に行ってみると大騒ぎになっていた。

 

王都のあちこちで、人が行方不明になっているそうだ。

 

行方不明になったのは、貴族や役人に商人達、それ以外にも街に住む人達が大勢らしい。

 

まあ、大騒ぎにはなっていたけど、行方不明になったのは評判のすこぶる悪い人達が多かったから、一般の国民達はこれで治安が良くなると喜んでいた。

 

でも、暫くは混乱が続きそうだから、久しぶりに帝国に行こうかな?

 

今度こそ、闘技場にも行ってみたいしね。

 

あたし達は帝国に向かうことにした。

 

「じゃあ、私は法国に戻って、プリンセス教の布教を頑張るねー」

 

「クレマンティーヌを捕縛せよ」

 

「イヤーッ!! 私にも自由な時間を…モゴモゴ」

 

あたしの命令に従い風花聖典が、クレマンティーヌを簀巻きにしてくれた。

 

今夜は久しぶりにクレマンティーヌを抱き枕にして眠るんだから逃がさないよ。

 

ふぁあ、昨夜は徹夜だったから眠たい。

 

今日は王都の宿屋に泊まって、帝国には明日出発することにしよう。

 

モゴモゴと暴れるクレマンティーヌをオートマトンに担いでもらいながら、あたし達は宿屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 


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