異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第20話「王都」

ネム達との王都観光は楽しい時間だった。

 

前の世界では家族旅行をする余裕なんか無かったけど、きっと家族旅行とはこんな感じなのだろう。

 

頼りになるお母さん(オートマトン)、しっかり者の妹(エンリ)、賑やかな妹(ネム)、恥ずかしいお父さん(クレマンティーヌ)

 

うん、家族旅行は楽しいね。

 

「ちょっと待て、どうして私が父親役なのよ。しかも恥ずかしいってどういう意味よ?」

 

今日は市街地を適当に歩き回っていた。

 

「私の話を聞いてない!?」

 

おや、何だか怪しい路地に入り込んでしまったようだ。

 

もっとも、この面子で犯罪に巻き込まれる事を心配する必要なんかないけどね。

 

基本的に、あたしの側にいるオートマトンは一機だけだけど、周囲の見えない所で完全装備のオートマトン達59機が護衛してくれているのだ。

 

だから元気に走り回るネムを見失う心配もないから安心できた。

 

「ついでに風花聖典の奴らも護衛しているしねー」

 

うーん。いつの間にか風花聖典の人達も【プリンセス教の狂信者】になってたから余り側にいて欲しくないんだよね。

 

“ドサッ”

 

うん?

 

なんだろう?

 

近くの扉から大きな袋が投げ捨てられた。

 

何だか袋が動いている気がする。

 

あたしは近付くと袋を開けてみた。

 

ズタボロの女性が入っていた。

 

何だこれ? バッチイな。

 

ネムが興味津々で近付いてくる。

 

いかん!?

 

こんなバッチイのを見たら、ネムの情操教育に良くないぞ!!

 

あたしは慌てて、バッチイ女性にミドルポーションを振りかける。

 

瞬間的にバッチイ女性は、普通の裸の女性にバージョンアップした。

 

なに!?

 

裸の女性だとっ!!

 

クレマンティーヌを超える痴女だった!!

 

流石のクレマンティーヌでも外で裸にはならないぞ!!

 

あたしは慌てて袋を締めると、オートマトンに宿屋に運ぶように命じる。

 

ネムが中を見たがるが、オートマトンに服を着せるまで絶対に見せるなと耳打ちする。

 

そこで袋を投げ捨てた扉が再び開いた。

 

中から小汚い男が出てくる。

 

とりあえず、オートマトンに袋を担がせると、クレマンティーヌをネムとエンリの護衛につけて、宿屋に帰らせる事にした。

 

「イエス、マスター。私達は先に宿屋に戻ります」

 

「あまりやり過ぎないようにねー」

 

「お姉ちゃん、怪我しないでね!」

 

「無理はしないで下さいね」

 

あたしの天使(ネム)の情操教育に悪そうな小汚い男から早くネムを離さなくていけない。

 

「おい、何処に行きやがる!!」

 

小汚い男が何やら言っているが、あたしは構わずオートマトンにネム達を連れて行ってもらう。全く、子供の教育に悪い大人が多くて困ったものだ。

 

小汚い男はあたしに文句を言ってくる。袋を持ち去ったのが気にくわないらしい。

 

「この大女がっ、犯されたくなかったらあの袋を持って来させろっ!!」

 

「撃つ」

 

“パン”

 

隠れて護衛をしていたオートマトンが、小汚い男の眉間を撃ち抜く。

 

うん、流石はオートマトンの射撃は正確だな。

 

小汚い男も、あたしみたいな可憐な乙女に暴言を浴びせたのだから、寧ろ苦しまずに死ねて幸運だったろう。

 

「マスター、害虫共はまだいるようです」

 

ドタバタと扉の奥から複数の男共が現れる。

 

倒れている男を見ると、男共は口々に汚い言葉で脅してきた。

 

なんでもこいつらは、八本指とかいう犯罪組織の連中らしい。

 

トンデモない事を仕出かしたあたし達は勿論だが、家族と親族全てを地獄に送るだのと、のたまっている。

 

そして、下卑た笑いを浮かべながら、あたし達に手を伸ばしてくる。

 

「風花聖典よ。神を愚弄する、害虫共を叩き潰せ」

 

「御意!」

 

あたしが動く前に、さっきのオートマトンが風花聖典に命じる。

 

きっと、護衛のオートマトン達も小汚い男共には近付きたくなかったのだろう。

 

彼方此方から姿を現した風花聖典達は、瞬く間に小汚い男共を地獄に送っていく。室内にも突入していき、10分程で殲滅は終わったようだ。

 

風花聖典からの報告によると、ここは売春宿との事だった。

 

しかも非合法のものらしく、奥の女達は皆、酷い状況らしい。

 

うーん。これは完全にネムの情操教育の場所としては、王国は失格だろう。

 

合法による売春宿までなら仕方ないだろう。

 

そこで働く女性達にも色々と事情があるのだろうから、あたしがとやかく言う筋合いはない。

 

でも非合法の、女性達の人権どころか、命も無視したような商売は許してはいけない。

 

ネムがグレて、“よぉ、姉ちゃん。小遣いくれよぉ。金は持ってんだろ?”とか言い出したら、あたしは泣くぞ。

 

とりあえず被害者の女達は、生きる気力が残っている者達は助けて、心が完全に壊れてしまった人達は天国に送る事にした。

 

その辺りのことは風花聖典に丸投げだ。

 

女性達に使うポーションを渡すのは数が多くなりそうだから、一気に【エリアヒール】を使って癒したら風花聖典が“神の御業”だのと騒いでウザかった。

 

あたしはソロプレイヤーなんだから、回復系魔法を覚えているのは当然なんだよ?

 

自分で回復しなきゃ、誰も回復してくれないんだよ?

 

女性達を運び出した後は、建物ごと景気良く燃やしてやった。

 

まるで、キャンプファイヤーのようだった。した事はないけど。

 

 

袋に入っていた女性はツアレと名乗った。

 

身体は治したけど、心が病んでいるみたいだった。

 

面倒臭いから、ツアレを風花聖典に渡したいけど、エンリ達に説明が出来ない。

 

法国の問題が完全に終わるまで、法国の関係者に関わらせたくないからだ。

 

仕方ないからカルネ村で面倒見てもらう事にした。

 

ツアレの生活費代わりに、村で必要な物資を大量に買い込んで送る事にした。これで今年の冬は余裕で過ごせるだろう。

 

ネム達には、クレマンティーヌを護衛に付けてカルネ村に送り出した。影からは風花聖典にも護衛させている。

 

あたしの方は、王都に残ってゴミ掃除をする事にした。

 

八本指って、いらないよね?

 

「イエス、マスター。生ゴミは焼却処分が妥当です」

 

 

 

 

 

 

 

 


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