結論を言わせてもらおう。
女子会は凄く楽しかった。
社交辞令とお世辞が必要ない人間関係は、人生を豊かにするとつくづく思った。
ドラちゃん(女王様の事だ。愛称で呼ぶ仲になった。ドラちゃん――凄く親しみを感じる愛称だ)とは、個人的な友情を育んだ。
ドラちゃんとの意見交換はとても有意義なものだった。
「いや、年増のグチ大会って、感じだったんだけど」
「クレマンティーヌ、年増は禁句です。現実を思い知らされたマスターは凄く暗くなり鬱陶し…いえ、お労しいので」
本当にぶっ飛ばすぞ。お前ら。
まあ、次はレイナースも入れて女子会をしようと決めた。
ドラちゃんは、何時でもウエルカムと言ってたから、週末は女子会の日に決めようかな?
こうして、あたしはウキウキ気分でビーストマン討伐へ向かった。
*
眼前に広がるのは、大地を埋めつくほどのビーストマン共の群れだった。
あたし達の背後には竜王国の小さな村がある。
あれほどの群れに襲われれば、小さな村は一瞬で食い尽くされるだろう。
生きたまま貪り食われる人間達。
そんな光景が間違いなく訪れる筈だった。
そう、あたし達が来なければだ。
陽光聖典達は、当然のように攻撃に移ろうとしたが、それをあたしは止めた。
「総員、全力精密射撃準備」
止められた陽光聖典達は、あたしが直々にビーストマン共を殲滅しようとしている事を察すると、黙って邪魔にならないように後ろに下がった。
「“物理攻撃力上昇”“貫通力上昇”“命中確率上昇”“射撃攻撃力上昇”“射程距離上昇”“攻撃速度上昇”“全属性付与”“属性突破力上昇”“物理攻撃軽減無効”“物理攻撃無効緩和”“竜の力”“野生の力”“精霊の祝福”“オーガプリンセスの加護”」
あたしは全オートマトンに補助魔法を使用する。
「イエス、マスター。総員、準備完了しました」
昨夜、ドラちゃんが悲痛な声で訴えた。
「私の民を救ってほしい」
一国の女王が頭を下げた。
「どうか、頼む」
あたしはその意味を分かっていなかった。
ドラちゃんに軽い気持ちで了承して、そんな堅苦しい真似は止めてよ。と笑いながら言ってしまった。
ドラちゃんの気持ちも知らないで。
あたしは眼前の光景から目を逸らせない。
こんな、こんな、
獅子狩りを楽しみ放題の戦場だったなんて!!
きっと、ドラちゃんは断腸の思いだったのだろう。
こんな楽しそうな戦場を譲らなければいけないなんて。
ドラちゃん自身は、女王職で戦闘力がないらしいから、兵士への指揮で獅子狩りを楽しみたかった事だろう。
でも、ドラちゃんは自身の楽しみよりも女王としての責務を選んだ。
一般人にとっては、ビーストマンは危険な害獣なのだから、速やかに駆除しなければならない。
ドラちゃんには、悠長に獅子狩りを楽しんでいる時間がなかったのだ。
だから、素早くビーストマン共を狩り尽くせるあたし達に譲る決心をした。
そして今、あたしの眼前には数え切れない程のビーストマン(獅子頭の種族とは知らなかった)の群れがいる。
あたしは、凶笑を浮かべる。
これほどの戦場は“ユグドラシル”以来、初めてだ。
そして、これほど困難な戦場は“ユグドラシル”でも無かっただろう。
なぜなら、
「命じる。ドラちゃんの民には一切の被害を与えるな」
どれほど、あたしのオートマトン部隊が優秀でも、これほどの群れを抑えきり背後の村を守りきるのは不可能に近いだろう。
「イエス、マスター。了解しました。この場を最終防衛線とし、一匹たりとも通しません」
流石はあたしが誇るオートマトン部隊。一瞬の躊躇もなく命令を受諾する。
あたしは深い満足を感じた。
「陽光聖典よ。お前らが信ずる我と、我が眷属の力をしかと見届けよ」
「「「「了解しました!!!!」」」」
一斉に応答する陽光聖典。
あたしは頷くと、続けてオートマトン部隊に命令を下す。
「我が娘達よ。撃て」
『イエス、マスター。撃つ』
無数の凶弾が一斉に放たれた。