異世界生活はオートマトンと共に(完結)   作:銀の鈴

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第16話「竜王国」

竜王国からスレイン法国に救援要請が届いた。

 

何でも定期的に竜王国は、ビーストマンと呼ばれる種族に襲われているそうだ。

 

ビーストマンは、人間を食料とする種族で、基本ステータスは人間の10倍もある恐ろしい種族らしい。

 

弱肉強食は自然の摂理ではあるけど、ビーストマンは生きたまま人間を喰らうことを好む、野蛮すぎる種族だそうだ。

 

ある程度の文化は築いているらしいけど、野蛮すぎてあたしとは気が合いそうにもない。

 

救援には陽光聖典が向かうことになった。

 

陽光聖典の隊員達は、全員があたしの信徒になっている。

 

彼、彼女達の口からあたしの存在が、法国の首脳部に漏れる事はないから一緒について行く事にした。

 

あたしの信者になるとステータスに【プリンセス教の信者】若しくは【プリンセス教の狂信者】の称号がつく。

 

称号の効果として、信仰対象への想いの強さに比例して、信仰対象のステータス値にボーナス値が付加される。つまり、あたしが強くなる。

 

おおっ、なんてお得な!!

 

つまりあたしは、信者が増えれば増えるほど、信仰心が強くなればなるほど、あたし自身が強くなるのだ。

 

神様は信仰で強くなる。

 

だけど、信者側には特にメリットがない。

 

ありゃりゃ、残念だね!

 

まあ、その代わり本物の神様が身近にいるから、直接守って貰えるという訳だ。

 

自分達が一生懸命に信仰すれば、自分達の守り神も強くなる。

 

それならこの危険に満ちた世界に生きる人達は、真剣に祈りを捧げてくれる。

 

そのお陰で、あたしはレベルカンストしているけど、日に日にステータス値はアップしている。

 

今のあたしなら上位ギルドでも単独で打倒出来そうだ。

 

そんなわけで、上がったステータスを試す意味も含めて、あたしは竜王国へと向かった。

 

もちろん、オートマトン達は全員を連れて行く。

 

クレマンティーヌも一緒だ。

 

ちなみに今の彼女は、プリンセス教のシスターという扱いだ。

 

シスターなのに格好は痴女のままだった。

 

彼女の“業”は、根深そうだ。

 

 

「よくぞ、来てくれた。長旅で疲れておろう、今宵はゆっくりと休まれよ」

 

竜王国の到着してみれば、この国の女王は随分と腰の低い人物だった。

 

見た目は幼女だが、竜の血が混じっているそうなので、年齢は相当上だろう。

 

向こうは一国の女王様。こちらはただの兵隊だというのに、同じテーブルで食事をして、一人一人に声を掛けていく。

 

特にあたしは、陽光聖典の隊長よりも上座に座っているせいか、女王様は随分と優しく接してくれた。

 

おっと、あたしは神様だから女王様より偉かったな。えっへんだ。

 

とにかく、初対面の人間が苦手なあたしでも話しやすい雰囲気の女王様だった。

 

うんうん、今までビーストマンに襲われ続けて大変だったろう。

 

このあたしが来たからにはもう大丈夫だぞ。

 

ビーストマン如き畜生は、根絶やしにしてやるぞ。

 

「あんたって、初対面で丁寧に扱われたら途端に寛容になるというか、優しくなるというか、単純だよねー。一体前はどんな扱いを受けていたのよ?」

 

「マスターの過去を詮索するのは厳禁です。昔を思い出して落ち込む姿が鬱陶し…お労しいので」

 

こいつら、いつかぶっ飛ばしてやる。

 

「ふふ、そなた達は仲が良いのじゃな。わたしには友達というものがいないから少し羨ましいのじゃ」

 

こいつらが友達?

 

オートマトンは、友達というよりお母さんだな。

 

お母さんのご飯はいつも美味しい。

 

「イエス、マスター。ご飯は、たんとお食べ」

 

「あんたらの関係が意味不明すぎるわ!?」

 

クレマンティーヌは……痴女?

 

「痴女ちゃうわ!? いい加減そのネタ止めてよね!」

 

それならその服装を止めればいいと思う。

 

「……まあ、我慢してあげるわよ」

 

どんだけ露出好きなのよ!?

 

「イエス、マスター。クレマンティーヌに肌を隠せというのは、マスターに飛び込み営業をしろ、というのと同義です」

 

「ごめんなさい。クレマンティーヌ、あなたの事を酷く傷つけてしまっていたのね。こんな私を許せないかもしれないけど、私はあなたの事を大切なお友達だと思っている事は忘れないでね」

 

「お前は誰だっ!?」

 

クレマンティーヌが叫ぶ。うるさいなあ。

 

「あははははっ、そなた達は、本当に面白いのじゃな。どうじゃろう、もし良かったらこの後、ワシの私室でお喋りをせぬか? 女王とかの立場は抜きで、そなた達と話してみたくなったのじゃ!」

 

おおっ!!

 

もしやこれが、都市伝説にある“女子会”のお誘いなのかっ!?

 

どうしようオートマトン!?

 

あたしの格好おかしくないかな!?

 

新しい洋服を下ろした方がいいかな!?

 

差し入れとかも準備した方がいいよね!!

 

そうだっ!! いいこと思い付いた!!

 

今日を祝日にしよう!!

 

スレイン法国で“友情の日”として制定しよう!!

 

「あのさ、真面目な顔でそんな事言わないで欲しいんだけど。何だか涙が出てきそうだよ。お喋りぐらい、私で良ければいつでも付き合うからさ」

 

「イエス、マスター。あまり興奮されては鼻血がでますよ」

 

うっさいわ!!

 

でも、クレマンティーヌはありがとね。

「皆の者、しかと見よ。我らが神があのように楽しそうにされておられる。竜王国の女王の歓待は素晴らしすぎる。我らの前では、神は神としてのみ在らせられる。そこに在るのは我らへのご慈悲だ。我らはそれに甘んじててよいのか? 断じて否だ! 我らは神の慈悲に縋るものだが、神に依存するものではない!! ならば我らの理想とすべき、我らの在り方とはなんだ? 私はずっと考えていたが、この矮小な身では答えは出なかった。だがっ、それを今、竜王国の女王は示されて下さったのだ!! 我らは、我らの神が笑顔でお過ごされる事が可能なご環境をお作り致すのだ!! それこそが我らに課せられた天命と知れっ!!!!」

 

「「「うぉおおおおおおおおっ!!!!天命受け賜わりましたぁあああああああ!!!!」」」

 

突然、凄まじいまでの咆哮が響き渡る。

 

何こいつら、ウザいんだけど。

 

 

 

 

 


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