あたしは情報部隊の精鋭達(あたしの配下になった風花聖典達の事だ)を法国に送り込んだ。
精鋭達――うん、きっと精鋭達だろう。
あたしから見たら弱兵だけど、法国では精鋭部隊だったらしいからだ。
送り込んだ情報部隊は、法国の警備体制を熟知している。そのため、外部の犯行に見せ掛けて【傾城傾国】を盗むように命令している。
作戦内容は、考えるのが面倒くさ…いや、現場判断が重要な作戦のため、風花聖典の隊長だった男に一任した。
なんか知らんが、感激していた。
その間、あたし達はキャンプ生活をしていた。
クレマンティーヌはキャンプに慣れているらしく、手慣れた様子で狩りや食事の用意をしてくれる。
オートマトンの手料理とはまた違う味付けなので、交互に料理をしてもらう事で、単調になりがちなアウトドアでの食事も楽しめた。
あたしの料理?
指揮官は料理などしないのだ。
夜はテントでオートマトンとクレマンティーヌを抱き枕にして寝ている。
二人とも柔らかくて気持ちがいい。
クレマンティーヌは肌の露出が多いからスベスベも堪能できる。
でも、こんなに露出していたら日焼けとかで、肌の劣化が進んでしまうかもしれない。
アイテムで老化はしなくても劣化はするだろう。
それは勿体無いと思う。
あたしは寝ているクレマンティーヌの肌に最上級ポーションを少し塗り込んでみる。
ふむふむ、少し肌の艶が増したような?
それなりに効果はあるようだ。
グッスリと寝ているクレマンティーヌを起こしたら可哀想だから、目を覚まさないようにスリープを掛けてあげた。
そしてあたしは、クレマンティーヌの全身に最上級ポーションを塗り込んでいく。
露出していない場所にもサービスで塗り込んであげよう。さあ、脱ぎ脱ぎしようね。
せっせと肌にポーションを塗り込む。敏感な所は優しく塗り込んだ。
ふっふっふっ、これでクレマンティーヌの全身が艶々になった。
さてと、次は本命のオートマトンだ。
ぬふふふ、我が娘の柔肌を堪能するとしよう。
“ボカリ”
服を脱がそうとしたら殴られた。
しまった。
オートマトンには、【睡眠無効】の種族特性があったんだ。スリープは効かなかった。
いつもは、あたしに合わせて眠っているフリをしてくれているそうだ。
なんて良い娘だろう。
褒めたのに服を脱がそうとした事を許してくれなかった。
罰として一人寝を言い渡された。
テントを出るオートマトンが、クレマンティーヌまで連れて行ってしまった。
うう、寂しいけど我慢しよう。オートマトンが意外と恥ずかしがり屋さんだと知れただけで良しとする。
でも、オートマトン?
クレマンティーヌを裸のまま外に連れ出すのは可哀想だよ。
寂しい一人寝から目覚めると、ボロボロになった風花聖典が【傾城傾国】を手にして戻ってきていた。
クレマンティーヌは裸のまま、外に転がされていた。体の上にシーツが掛けられていたから大事な所は見えていなかった。
良かったね、クレマンティーヌ。
*
ふむふむ。これが【傾城傾国】なのか。そのまんまチャイナ服だよね。
新たに風花聖典のメンバーが加わった情報部隊の活躍で、思ったよりも簡単に【傾城傾国】を奪取する事に成功した。
迫真の演技がどうのとかで、本当に死んじゃった人達がいたので、特別に生き返らせてあげた。もちろんアンデッドじゃないよ。
貴重な蘇生アイテム(腐るほど持ってはいるけど)を使うだけの価値が【傾城傾国】にはあった。
あたしが使いたいという意味ではなく、あたしの仲間に対して使わせない。という意味でだ。
これでオートマトンが洗脳されて、あたしのご飯を作ってくれなくなるという最悪の状況は回避されたわけだ。
良かった、良かった。
あたしは【傾城傾国】をアイテムボックスに仕舞い込むと、ほっと一息つく。
「マスター。陽光聖典の隊長が面会を求めています。紹介したい者がいるそうです。如何致しましょう」
あたしは現在、スレイン法国に滞在中だ。
情報部隊の工作で、スレイン法国の国民としての戸籍も手に入れている。
今はスレイン法国の国民達を、あたしを神とした新興宗教に勧誘している。
もちろん、軍部の実力者達も率先して勧誘している。
地味だけど、こうして少しずつ影響力を広げて、最終的には法国を乗っ取る予定だ。
力尽くでもいいけど、あたしみたいに頭がいいと、こういった戦略も可能だというわけだ。
あたしが慎重なのには当然だけど理由がある。
風花聖典の隊長が言うには、法国首脳部はプレイヤーにも有効な【傾城傾国】以外の奥の手も隠し持っているようなのだ。
隊長は自分にすら知らせない“プレイヤーを害する奥の手を隠し持つ”首脳部を警戒した。
そして隊長は、あたしの事を首脳部に知られる事は時期尚早だと判断した。
確かにノコノコとスレイン法国を訪れたりして、罠に嵌められて自由を奪われたり、アイテムを取られたりしては大変だ。
あたしはオートマトンを中心にして、隊長とクレマンティーヌ、そしてレイナース(通信アイテムを利用した)の四人に今後のスレイン法国に対する戦略を練らせた。
その結果が新たな神の布教だった。
あれ、意味が分からないの?
うん、あたしもだ。
まあ、まずは国民達と戦闘部隊の人間を配下(信徒になるのかな?)に加えて相手の牙を抜いていく事が目的らしい。
偉いさん達が気付いた時には丸裸って(丸裸って言葉にクレマンティーヌがギロリと睨んできた。外に放り出したのはオートマトンなのにあたしが恨まれている。酷いと思う)寸法だ。
何しろ、“プレイヤー”=“神”だというのなら、あたしは本物の神様だ。
過去のいなくなった神様よりも、現実にいる神様の方をそりゃ有り難がる。
特にこの命の軽い世界ならね。
「陽光聖典の隊長…たしかニグンだったな」
「イエス、マスター。信仰心の厚き者です」
最初は風花聖典の隊長に連れられてきた男だったけど、神としての力を示したら(各種スキルを発動させた)即座に忠誠を誓ってくれた。
念の為にステータスを確認したら【プリンセス教の狂信者】の称号がついててビックリした。
そしてあたしの宗教が“プリンセス教”という名称に決まった瞬間でもあった。
神としての名は、“プリンセス神”で満場一致で決まった。
巫山戯た名称ではあるけど、本当に神様が降臨しているからか、誰も気にしていないみたいだ。
むしろ国民からは“お姫様”の別名で呼ばれて親しまれているらしい。
ちなみに、普通の国民だと【プリンセス教の信者】がステータスに記載される。
あたしは溜息をつく。
「ハァ、あいつが連れてくる奴って、全員が狂信者になるから嫌なんだよね」
狂信者が、あたしを見る目は何だか怖い。
別にあたしを害するわけじゃない。逆にあたしの為に命を捨てることも厭わないみたいだけど、目がイッちゃっているのだ。
普通は、目がイっちゃってる人達にチヤホヤされても嬉しくないよね?
「イエス、マスター。人生には諦めも必要だと思います」
なんだそれは!
ちゃんと慰めてほしいんだけど。
仕方ない。大サービスで各種スキルを最大レベルで発動させてやろう。
これで神の力を感じられて、狂信者達も大喜びだろう。
「マスター、即死効果のあるスキルは停止される事を進言します」
チッ、気付かれた。
「仕方ない。進言を受け入れよう」
あたしはオートマトンにズルズルと引き摺られながら、狂信者のもとに連行された。