アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹 作:ザトラツェニェ
ちなみに幻想郷編は四話から五話位の長さを予定しています。
では、今回もお楽しみください!
side 影月
周囲を見回すと、どこもかしこも不気味な目があるスキマ空間内を俺たちは落下していた。
「……おい、紫。いつまで落下していれば着くんだよ?」
もはや落下する感覚に慣れた俺は、空中で胡坐をかく姿勢になって共に落ちている紫に半眼を向けながら問う。
「さあ?それはこのスキマ次第よ」
「そんな事言って……このスキマ空間を生み出したのは紫さんでしょう!?しっかりしてくださいよ!」
頭を下にして真っ逆さまに落ちている優月が怒ったように言う。
まあ、確かにこんな事態を起こした本人が「さあ?」とか言って首を傾げていたら怒りたくなるのも分かる。
「香ちゃん、大丈夫?」
「全く大丈夫じゃないですよ〜!!」
「え、影月さん!た、助けて!!」
一方、妹紅は以前落とされたから慣れているのか、
そして美亜は顔を真っ青にしながら、俺の方に手を伸ばしてきた。
「大丈夫かーーーっ!?」
俺はそう言いながら、美亜の手を引っ張って引き寄せようとしたが、その瞬間薄暗く不気味な目があるスキマ空間に眩い光が差し込んだ。
その光に俺たちは揃って目を覆い隠す。
「さあ、着いたわ。ここが幻想郷よ」
そんな紫の声が聞こえ、光にも慣れた俺たちはゆっくりと瞼を開く。
『うわぁ……!』
そこには一面雪景色に覆われた自然溢れる美しい世界が
鬱蒼と生い茂る木々が広がる森。
少し前の時代の家々が集まっている人里のような場所。
それなりに大きい湖とその
静かに煙を上げている大きな山。
その光景はここがまさに俺たちのいる科学に溢れた世界とは全く違うという事を再認識させる。
そんな事を刹那の間に考え、現実逃避をしていた俺は紫に視線を向けた。
視線を向けられた紫は「どう?私の幻想郷は?」とでも暗に感想を求めているような顔をして俺たちを見ていた。
しかしそれに答える余裕が俺たちには無かった。なぜならーーー
「紫ぃ!!パラシュート無しのスカイダイビングさせるとかどういう事だぁ!!」
俺たちは現在、とてつもない浮遊感と恐怖を感じながら、高度四千メートル程の所から自由落下しているのだから。
「え?だって貴方たちも飛べるでしょう?」
「飛べねぇよ!!何当たり前の事を聞いてるんだみたいな顔で言うんじゃねぇ!!」
「に、兄さん!もう地面が!!」
わざとらしく首を傾げる紫に俺は怒鳴るが、優月の声を聞いて即座に下に視線を向ける。見てみると地面は後数百メートル程の所に迫っていた。
「っ!REX!!」
俺は瞬時に《
side out…
幻想郷の東の端にはある一つの神社が建っている。
博麗神社ーーー博麗の名を持つ巫女が住んでいる幻想郷で一番重要とも言える場所である。
そんな神社の境内で、降り積もった雪をスコップで掻き出している一人の少女がいた。
「今年も雪が多いわね……
少し暗めの茶色の髪、茶色の目、赤を基調として所々に白が入った冬用の巫女服を着て、頭に赤い大きなリボンを着けた見た目十代位の少女は、空を見て苛立ったように文句を言う。
そう、この少女こそ
そしてそんな霊夢に言葉を返す者がいた。
「そうか?今年の雪も去年とあまり変わってないぜ?」
その声に霊夢は呆れたように息をはいて、後ろへと振り返る。
「何の用よ、
「よっ!そんなに嫌そうな顔をするなよ。ちょっと慧音から言伝を頼まれてな」
そこにいたのは、金髪に金色の目、白のブラウスのような服の上に黒い服を着て、スカート部分に白のエプロンを着けた冬服を着ている箒を持った少女だった。
霊夢と同じく見た目十代位の少女は魔法使いが被るような黒い三角帽の
彼女の名は
「慧音から?まさかまだ妹紅は見つからないのかって催促の内容じゃないでしょうね?」
「あ〜……それも言われたが、今回はもう一つあるぜ」
「もう一つ?」
「「最近、紫が妹紅捜索の報告に来ないのだが、何か聞いてないか?」だとさ」
「あー?知らないわよ。最近見てもないし。というかさっきも
「呼んだ?」
すると今度は神社の方から、薄い茶色のロングヘアーを先っぽの方で纏め、少し赤が混じった茶色の目をした霊夢や魔理沙より幼い少女が、少々おぼつかない足取りで歩いてきた。
その少女の頭の左右からはその身長とは不釣り合いに長い捻れた角が二本生えていて、その角の片方と後頭部には可愛らしいリボンが着けられている。
服装は冬場だというのに、白のシャツに紫のロングスカートを着用し、腰には紫色の瓢箪と三つの異なる形の分銅を鎖で吊るしている。
彼女の名は
「おっ、魔理沙じゃないか。久しぶり〜」
「おう。相変わらずいつものように酔ってるな、お前は」
「いいじゃないか〜。それが私の個性ってもんなんだからさ」
「別に悪いとは言ってないぜ」
萃香は霊夢と元へと辿り着くと、ふらふら〜としながら霊夢に寄りかかった。
「ちょ、くっつくな!」
「いいじゃないか〜。神社からここまで歩いてくるのに疲れたんだから〜」
霊夢は萃香に離れるように言うが、萃香は明るく笑いながら離れようとしなかった。
そんな二人を尻目に魔理沙は顎に手を当てて、呟く。
「う〜ん……霊夢どころか、紫と付き合いの長い萃香も知らないとは……冬眠にでも入ったか?」
「紫は幻想郷の奴らを見捨てて、冬眠なんかしないさ」
魔理沙の呟きに、持っていた瓢箪の中の酒を飲みながら萃香は言い、魔理沙はそれもそうかと納得して頷く。
「あいつ、なんだかんだ言ってそういうのはしっかりしてるからなぁ……」
「そうねぇ。妹紅の行方が分からない限りは放っておく事はーーーん?」
そこで霊夢がふと視線を空へと向けて、声を上げる。
それに魔理沙と萃香はどうしたのかと首を傾げながらも、霊夢と同じ方向の空を見る。
その先にはかなりの高さから落下してくる六つの点があった。
「なんだありゃ?空で弾幕ごっこでもしてた妖精たちが落ちてきたか?」
「それとも天人が揃って落ちてきたのかしら?」
その点の正体を予想する霊夢と魔理沙。
しかし鬼の萃香だけは、その目で六つの点の正体を見抜いていた。
「……あ〜……霊夢、魔理沙。あれ、助けに行った方がいいよ?」
「あ?なんでよ?」
「あの中の四人位かな?服装が外来人っぽい」
「「……え?」」
頬をかきながら言う萃香に、霊夢と魔理沙の顔色は徐々に青ざめていく。
その反応も無理は無い。霊夢や魔理沙などの一部の人間や、幻想郷に住む人外たちの多くは普通に空を飛べるので、ああやって落下しても特に騒ぎ立てる事は無いのだがーーー外の世界から来た普通の人たちは、当然ながら空は飛べない。そんな飛べない人たちをあのまま放っておけばどうなるのかーーー想像に容易い。
つまり今すぐにでもこの神社から飛び出してその外来人たちを助けなければ、彼らは地面に叩きつけられ、潰れたトマトのようになってしまうのだ。
「っ!霊夢!!」
「分かってる!!」
「私も手伝うよ!」
それを理解した三人は、即座に神社から飛び立った。
「なんであんな上空から落ちてきてるんだろうな!」
「知らないわよ!そんなの紫にでも聞きなさい!!てか、そんな詮索も後!急がないと!」
霊夢と萃香はその身一つで空を飛び、魔理沙は手に持っていた箒にまたがって六つの点の元へと猛スピードで迫っていく。
しかし、如何せん見つけるのが遅過ぎた。
「くっ!間に合わない!!」
落下してくる六人の人影は徐々に落下速度を上げ、もはや三人がどれだけ速く飛んでも間に合わない程の速度となっていた。
助けられないーーーそんな思いが霊夢と魔理沙の心に広がり、二人は思わず視線を下げてしまう。
その時ーーー
「っ!?あれは!?」
霊夢と魔理沙から少し遅れながら付いてきていた萃香が驚いたかのように声を上げた。
その声を聞いた霊夢と魔理沙は顔を上げる。
そこにはーーー
「「何(だ)、あれ!!?」」
見慣れない形の大きな鉄の塊ーーー見た感じ、河童の作るロボットのようなものが空中に現れ、着地姿勢を取っているのを見て、霊夢と魔理沙は驚愕する。
そしてーーー幻想郷中に響く程の大きな音と高さ六十メートル程の雪柱を上げて、ロボットらしきものは地面へと落下した。
「「「………………」」」
その驚きの光景に、三人は宙に浮かびながら、上がった雪柱を呆然としながら見ていたがーーー
「…………はっ!助けに行かなくちゃ!」
一番初めに我に返った霊夢の声で魔理沙と萃香も我に返り、例のロボットが落ちた場所へと飛んでいった。
ロボットが落下した場所に数十秒遅れで着いた霊夢たち三人がまず最初に目撃したのは、あのロボットの着地の衝撃で薙ぎ倒された大量の木々。
そして特に目立つ損傷も無く佇んでいるあのロボットの姿だった。
「……なあ、あのロボット……結構かっこよくないか?」
「そうかしら?それよりも、あんな高さから落ちてきたにも関わらず、無傷な事の方が気になるんだけど……」
「どうする?近付いてみる?」
「「…………」」
三人は上空であの怪しげな物体に近寄るかどうか、話し合っていた。
そして三十秒後、博麗の巫女としてあんな怪しい物放っておけないと言う霊夢と、初めて見る巨大なロボットに興味津々な魔理沙と萃香の意見が合い、上空からゆっくりと近付く事になった。
そして三人の距離とロボットの距離が、残り十メートル程となったその時ーーーロボットが突然動き出した。
「っ!!なんだ!?」
攻撃されるのかと思った三人は即座に体制を整えたが、その警戒は杞憂だったと知る。なぜならロボットは頭部と思われる場所を雪上の上に付き、まるでお座りしているかのような状態になって再び止まったのだから。
そして、そのロボットの頭部と思われる場所が開く。
そこからはーーー
「危なかった……皆、無事か?」
「はい……何とか……」
「私も大丈夫……影月さん、ありがとう」
「香ちゃん、怪我は無い?」
「大丈夫ですけど……ここ狭いですよ〜」
「わざわざこんな物出さなくても、私が何とかしたのにねぇ」
「いきなり空中に放り出して、成り行きを見守ってた奴が何言ってんだよ!」
六人の者たちがロボットの操縦席らしき場所から騒がしく降りてきた。
霊夢たちはその中の二人が見知った顔だという事に気が付き、今度は堂々と近付く。
そして、少し不機嫌そうな顔で霊夢が話しかけた。
「紫……妹紅……」
「あら、霊夢じゃない。おひさー♪」
「おや、霊夢じゃないか。二ヶ月ぶりくらいか?」
「そうね……まあ、どこに行ってたとか色々聞きたい事はあるけど、まずはーーー」
「あのロボットなんだ!?紫が出したのか!?」
そこで霊夢の言葉を遮って、魔理沙が目を輝かせながら興奮したように紫に問いかける。
「私じゃないわ。これを出したのはそこの青年よ」
紫は持っていた扇で影月を指す。
そして魔理沙は影月にずいっと顔を近付けて問う。
「お前が出したのか!?このかっこいいロボットを!?」
「あ、ああ……」
幻想郷に来て早々、美少女に顔を近付けられた影月は若干身を引きながらも肯定の返事を返す。
その返事を聞き、魔理沙のテンションがさらに上がった。
「マジか!すげぇな!!」
「あ〜……はいはい。魔理沙、もういいから……とりあえず全員神社に来てくれる?」
めんどくさそうに頭をかいた霊夢は、このままここで話すのは得策ではないと思い、そう提案する。
それに紫や影月たちは了承の意を示し、博麗神社に向かって歩き出した。
「さて、それじゃあ霊夢もお茶を持ってきてくれた事だし、お互い自己紹介から始めましょうか」
博麗神社に戻ってきた後、霊夢が全員分のお茶と煎餅をちゃぶ台に置いて座ると、紫がそう切り出す。
「そうだな……まずは俺たちから。俺は如月影月、こっちの黒髪の子は俺の妹の優月だ」
「妹?その割には似てないな」
「よく言われるよ。それでさっきから俺の服を掴んでるこの金髪の子は美亜。そして妹紅の隣に座っている子は織田香だ」
影月がそう言うと、今度は霊夢たちが自己紹介する番となった。
「そう。私は博麗霊夢、この博麗神社の巫女よ」
「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」
「私は伊吹萃香、誇り高き鬼だ」
「神社の巫女に、魔法使い、最後に鬼と来たか……普通なら信じられないって切り捨てたいが……」
「特に萃香さんのあの角は、見る限り本物ですねぇ……」
「ありゃ、随分と冷静だね?私は人攫いをするあの鬼だよ?怖くないのか?」
「う〜ん……正直、それ程怖くは……。まだあまりあんたの事を知らないってのもあるけど、危険そうな感じも無いからな」
「それに伊吹って言うと……もしかして貴女はあの
「ご名答〜♪よく知ってるね?」
「まあ、伊吹って名前と鬼だと聞くと……」
「はいはい、鬼云々の話は後にしてくれない?それよりも、あんたたちは一体何の目的で幻想郷に来たのよ?」
影月と萃香のやり取りを遮った霊夢は、目つき鋭く問いかけた。
まあ、彼らの目的が分からない為、霊夢がそのような態度で聞くのも無理は無い。
それを聞いた影月は、幻想郷に来た目的を言う。
「俺たちは友人を助ける為に紫に頼み込んで幻想郷に来たんだ」
「友人?」
「はい……。ある事故で大怪我を負ってしまって、目が覚めない友人の為に……」
「って事は、永遠亭の連中に用って事か?」
「いいえ、その友人はその事故がきっかけで魂が肉体から抜けているのよ。つまり用があるのは幽々子と四季映姫ね」
「なるほどねぇ、どこかに行ってしまった魂を呼び戻す為に来たんだね?」
萃香が持っていた瓢箪の酒を飲みながら言う。
「魂を呼び戻すねぇ……まあ、それなら確かに幽々子や四季映姫の専門ね」
「後は、妹紅が住んでいる幻想郷ってどんな所だろうかって気になったからな……いわゆる観光目的もある」
苦笑いして言う影月の言葉に、霊夢は顔を顰めながら、隣に座っていた紫に耳打ちする。
(紫……大丈夫なの?彼ら……)
(問題無いわ。別に何か変な事を考えているわけでは無いし……それに妹紅からの頼みだしねぇ)
(あ?どういう事よ?)
(忘れかけていた人の心を思い出したって事よ。それに私たちを
扇で口元を隠しながら笑う紫に、霊夢は首を傾げた。
「とりあえず、まずは人里に行かないとなぁ……慧音も心配してるだろうし」
「ああ、ものすごく心配してたぜ。寺子屋の授業に支障が出て、逆に子供たちが心配する位にな」
魔理沙からそう聞いた妹紅は苦笑いを浮かべた。
「そっかぁ……悪かったね」
「あんた、本当に悪いと思ってるの?言っておくけど、あんたの捜索には幻想郷中の奴らが協力してたんだからね?ここにいる私たちとか慧音はもちろん、アリスとか咲夜とか早苗とか妖夢とか鈴仙とか妖怪の山の天狗や河童たちも探してたから、正直もっと感謝してほしいんだけど」
「おい、霊夢!」
「いいんだ、魔理沙。本当に迷惑かけて悪かった。そしてありがとうな」
「どういたしまして」
感謝しろと言った割に、妹紅のお礼に対して簡潔に返事をした霊夢に影月たちは眉を顰める。
そんな霊夢に対して、魔理沙がフォローを入れる。
「霊夢はいつもこんな感じでな。生まれ持った性格って奴だから気にしないでくれよ。それにこんな態度しながら、内心ではきっと嬉しく思ってる筈だぜ」
「魔理沙」
「つまりツンデレって奴ですか?」
「そうよ」
「何?ツンデレって?」
聞いた事の無い言葉だったのか、萃香が尋ねる。
それに紫が答えた。
「ツンデレっていうのは、初めはツンツンしてるけど何かのきっかけとか、好きな人の前ではデレデレする人の事よ」
「へぇ、つまりアリスみたいな奴の事か」
「アリスはツンデレって言うより、純粋に親切ってだけじゃないかしら?貴女と一緒にいるアリスを見てるけど、そんな感じがするわ」
「何さらっと他人のプライベートを覗き見してんだ、お前」
紫に半眼を向ける魔理沙だが、紫はどこ吹く風という風に受け流していた。
「さて、それじゃあ人里に行くかなぁ」
「おっ、慧音の所か?なら私も行くぜ。影月たちにも色々興味あるしな」
「私も行くわ。ちょっと買い物に行かなくちゃいけないし……」
「霊夢が行くなら私も〜」
妹紅がそう言って立ち上がると、霊夢たちもそれぞれの理由を述べて立ち上がった。
その理由の中に気になる事があった影月は問いかける。
「魔理沙、俺たちに興味があるって?」
「そりゃそうだろ?あんなでっかいロボットを呼び出せるなんて早々出来る事じゃないぜ!後で色々と教えてくれよな!」
「ロボットって……」
「あながち間違ってないんじゃないかな?」
「それもそうだが……」
「そんな事より、早く行くわよ」
そう言って霊夢が外に出ようとするのを見て、影月たちも後に続くのだった。
人間の里ーーーその言葉の通り、幻想郷において人間が住む里の事である。
文明レベルは江戸時代末期から明治時代に入る頃の日本に相当し、昔ながらの木造平屋が軒を連ねており、様々な店も多い為にいつも人間で賑わっている。
「うわぁ……結構大きい町ですね」
「ここには幻想郷にいる人間のほとんどが住んでるからね」
「たまに妖怪とか妖精も見かけるけどな」
「あ、影月さん!団子屋さんがありますよ!!」
「団子……」
「団子……うっ、頭が……」
「ダメだよ影月、美亜ちゃん。香ちゃんの団子を思い出しちゃあ……」
「うっ……その、なんかごめんなさい……」
そんな賑やかな会話をしながら、一行はある場所へと向かっていた。
その場所とはーーー
「もうそろそろだ。あそこの角を曲がって少し行けば寺子屋だよ」
「寺子屋……昔の学校ですね?」
「そうだ。私はそこで教師をやっている奴と親友みたいな間柄でね。心配かけちゃってるだろうなぁ……」
そう言いながら苦笑いする妹紅が寺子屋に向かう道の角を曲がったーーーその時。
「もーーーーーこぉーーーーーー!!!」
「ぐふっ!!?」
「なっ!?」
突然青い物体がおそらく妹紅の名を叫びながら、妹紅の鳩尾へと突っ込んできた。
それを受けた妹紅は、苦しそうな声を出して数メートル程吹き飛ばされて、地面に倒れる。
それを見た影月たちは驚きの声を上げるも霊夢、魔理沙、萃香、紫は特に気にしてもいないようだった。それどころか皆、またかと言うような呆れた顔をしている。
そんな妹紅の上に、突っ込んできた青色の物体が馬乗りになって、妹紅に頬ずりをする。
「もこぉー……よかった、無事だったんだな!!」
「お、おう……ってか慧音、出会って早々に私の鳩尾に頭突きをかますのはやめてくれ……いくら私が死なないと言っても痛いんだからな……」
「もーこぉー……」
「聞いてねぇ……落ち着いてよ、慧音」
「あの、妹紅さん、大丈夫ですか?」
香の言葉に妹紅は、大丈夫と言って、慧音を退かして立ち上がる。
「痛かった……とりあえずただいま、慧音」
「おかえり、妹紅。ーーーって霊夢に紫もいたのか」
そしてようやくいつものテンションに戻ったのか、慧音がようやく霊夢たちに気が付く。
「あんたは本当に妹紅が絡むと豹変するわねぇ……道のど真ん中にも関わらず、いちゃつくし」
「っ!!す、すまない……」
霊夢のうんざりしたような言葉に、慧音はシュンと元気を無くして頭を下げた。
「妹紅さん、彼女が慧音さんなんですか?」
「そうだ。慧音、紹介するよ。この四人は私が別の世界に二ヶ月程いた時に世話になった友人たちだ。本当はまだいるんだけどね」
「友人か……妹紅もやっと新しい友だちが出来たか」
「はいはい、悪かったね。友だちが少なくて」
怒ったようにそっぽを向く妹紅に慧音は苦笑いした後に、影月たちに向き直る。
「初めまして、だな。私はこの人里で寺子屋の教師をしている上白沢慧音だ。慧音と呼び捨てて構わない」
「分かった。俺は如月影月だ」
「私は影月の妹の如月優月といいます」
「私は美亜よ」
「私は織田香と申します!妹紅さんとは昔からの付き合いでよくお話しさせてもらってます!」
「ほう……昔からの付き合いか」
「……彼女は紆余曲折あって、千年ぶりに会った友人だよ」
『千年ぶりぃ!?』
拗ねたような妹紅の言葉に慧音のみならず、初めて聞いた霊夢、魔理沙、紫、萃香も揃って驚きの声を上げる。
「ちょ……じゃあ、この子も不老不死なの!?」
「うんにゃ、その手の事に詳しい人曰く、過去から転生したんじゃないかって話だよ」
「転生?それって死んだ者が別の者に生まれ変わる事じゃなかったか?その時には確か記憶も無くなるって聞いた事があるから、転生した彼女が妹紅に関する記憶を持っているのはおかしいだろ」
「……なあ、とりあえず場所を移さないか?今、俺たちすごく目立ってるんだが……」
そう聞いた霊夢たちは視線を周りに向けた。
その瞬間、霊夢たちに視線を向けていた里の人たちが目を逸らして立ち去り始めた。
どうやらかなりの大声で言い合っていた為に、結構目立ってしまっていたらしい。
「……そうね。移動しないと……」
「なら寺子屋に来てくれ。丁度さっき来客も通したからな」
「来客?」
「咲夜にアリス、それと妖夢に早苗……後はお前の式も来たぞ」
「あら、藍も?」
「珍しい顔ぶれだな。何の用で通したんだ?」
「妹紅の捜索に関しての報告会って事で、私が呼んだんだが……」
「ついさっき、解決してしまったな」
そう言って笑う妹紅に、慧音も「そうだな」と言って笑う。
「とりあえず案内しなさいよ。あ、喉も渇いたからお茶も所望するわ」
「ああ、分かってるさ。ついてきてくれ」
そう言って、寺子屋へと向かって歩き始める慧音の後ろを、影月たちはついていくのだった。
次回は寺子屋内の様子と……戦闘かな?影月と優月が誰と戦うのかは次回のお楽しみというわけで……。
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