アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹   作:ザトラツェニェ

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久しぶりの投稿です。仕事が始まって忙しい……これからもこんな不定期更新になりますがよろしくお願いします。

あ、それとユリエさんお誕生日おめでとうございます!

ユリエ「ヤー、ありがとうございます」

妹紅「作者のぉ、ついさっき四月一日はユリエちゃんの誕生日って思い出したな?」

うぐっ……すみません……



第四十九話

side 影月

 

二日目の夜、《狂売会(オークション)》開始から五分後ーーー爆発音と共に、ホテルが揺れた。

直後、耳障りな非常ベルの音がホテル内に鳴り響く。

 

「よし!」

 

動きやすい普段着に着替えていた俺は壁に大きく開いた風穴から、ホテルの敷地内を見渡して叫んだ。

 

「《焔牙(ブレイズ)》!」

 

そして俺の手に現れるのは銀色の聖槍。眩い銀色の光を放つ槍を、俺は外へと投擲する。

投げられた槍はある程度飛ぶと、空中で四つに分裂してバラバラに飛びーーーある地点まで行くと眩い閃光を放った。

 

「さあ、始めようか!」

 

辺りが一瞬の間だけ昼になったのではないかと思う程の眩い閃光が収まるとそこにはーーー

 

『『『『ーーーーーーーーーー!!!!』』』』

 

鋼鉄で出来た恐竜にも怪獣にも見える兵器ーーー一体のメタルギアREXと三体のメタルギアRAYが、耳を塞ぎたくなる程の軋んだ咆哮を上げた。

 

「……ザミエルも反対側で派手にやっているみたいだな」

 

ホテルの反対側からはザミエルが火砲を連発しているのか、連続した爆発音が聞こえてくる。

 

「さて、これだけやればホテル内の警備もほとんど外に行くだろ」

 

目の前でREXが機銃(一応非殺傷)を掃射して、《(ゾア)》を蹴散らす様を見て呟く。

 

「さて、外はREXやRAYに任せて俺もユリエたちと合流するか」

 

(君が今いるのは五階、子供たちと優月ちゃんたちがいるのは十階だよ!)

 

「了解!」

 

そう言って俺は、新たに作り出した銀色の聖槍を片手に走り出した。

 

side out…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が《(ゾア)》か……」

 

その頃、影月と同じ五階の廊下にいた透流は、目の前に立ちはだかる敵を見て、そう呟いた。

目の前には黒服が破れ、鱗のような皮膚を露出させた人(あら)ざる者が立っていた。

口が裂け、長い舌がちろちろと見える姿は何処と無くトカゲーーー蜥蜴(リザード)のように見える。

 

「ほう、その名を知っているとはな」

 

蜥蜴(リザード)の《獣》はどこからか響くような声質で言葉を発した。

 

「てめぇ、よくもやってくれたな……!」

 

次に響いたのは、先ほど透流と戦闘して倒れた筈の男の声。

その者の姿もまた、人では無い。両手には巨大な爪、尖った鼻にずんぐりとした体型と、モグラのような姿ーーー土竜(モール)になっていた。

どちらも動物のような特徴を持っているがそれは外観のみで、あえて言うなら動物をモチーフにした全身鎧を着ているようにも見える。

 

(昔見た特撮番組に、こんな感じの奴らが出て来たっけか)

 

透流がそんなどうでもいい事を考えていると、二匹が咆哮を上げながら襲いかかってきた。

透流は蜥蜴(リザード)の噛みつきを避け、土竜(モール)の爪を《(シールド)》で防ぐ。

 

(強い!けどーーー強過ぎはしない!!)

 

《楯》で爪を押し返した透流は、尻尾を振るう蜥蜴(リザード)の攻撃をかい潜り、全力で肘を叩き込んだ。

それと同時に肋骨の折れる音が鈍く響く。

 

「ご、ぶぅっ……」

 

だらだらと唾液を零しながら崩れる蜥蜴(リザード)

そこへ動きの止まった透流を狙い、土竜(モール)が両の爪を突き込んでくる。

しかしーーー

 

「邪魔だぁっ!!」

 

「がぶぁっ!?」

 

横合いから合流した影月が、全力で投擲した《槍》が土竜(モール)の胴体を貫きーーー廊下の先、突き当たりの壁まで吹き飛ばした。

吹き飛ばされた土竜(モール)は突き当たりの壁へと大きな音を立てて衝突、崩れた壁の下敷きとなって動かなくなった。

 

「大丈夫か?透流」

 

「ああ……なあ、影月」

 

「ん?」

 

透流は青褪めた顔で、突き当たりの壁を指す。

 

「……さっきの攻撃って非殺傷だよな?」

 

そうじゃなければ、先ほどのはかなりショッキングな光景だ。

 

「当然。死んじゃいねーよ?」

 

「そ、そうか……ならいいぞ」

 

「さよか。なら早く十階に行くぞ!」

 

そう言って走っていく影月を見て、透流は内心恐怖を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

立ちはだかる敵を一瞬で倒しながら十階に到着した影月と透流は、優月、ユリエ、橘と合流する。

 

「トール……!」

「兄さん!」

 

そこには数人の《獣》と構成員を倒したメイド姿のユリエと、動きやすい普段着を着た優月が立っており、その近くでは橘が子供を庇うように立っていた。

 

「ユリエ、橘、優月!怪我は無いか!?子供の方は!?」

 

「大丈夫です、トール。誰も怪我をしていません」

 

ユリエの返答に安堵の息をはいた透流と影月は、橘と子供たちの様子を(うかが)う。

二人は西洋系の少年少女で、一人は着物を着た日本人の女の子だった。

三人は麗奴(レイド)と呼ばれているだけあって、どの子も容姿がとてもいい。

内、西洋人の少年と少女は《獣》を目にした恐怖からか、大きな声を上げて涙を流し、着物を着た日本人の女の子は呆然とした顔をしていた。

橘が西洋系の少年少女にたどたどしい英語(途中から見かねた優月が代わったが)で、仲間と合流したから脱出するといった事を伝えた。

 

「そちらの首尾はどうでした?」

 

「予定通りに大暴れした後、客室の天井をぶち抜いてから非常階段を使って来た」

 

「俺の方も敷地内でREXとRAYを暴れさせてるよ。それとさっきREX、RAYの視界に護陵衛士(エトナルク)を確認した」

 

(ザミエルも順調に殺ってるみたいだね)

 

「なるほど。では私たちは首尾どおりーーー」

 

安心院のスキルで脱出するーーーそういう作戦だ。

脱出した後は、近隣に設営された作戦行動本陣まで子供たちを連れて行けば、任務完了である。

 

「さて、それじゃあーーー」

 

転移を始めようとした直後、影月たちの前に黒服の男が一人、現れた。

男は武装をしておらず、子どもを連れた影月たちを見ると、特に騒ぐ素振りもなく近付いてくる。

 

「ったく、ガキ共の様子を見に来たら、まさか敵さんがいるとはな……」

 

男はため息を一つはくと、妙な事を言い出した。

 

「行けよ」

 

「は?」

 

自身の背後に向かって親指を差す男に、影月たちは目を丸くする。

 

「ただし男は通行止めだ」

 

「……つまり俺と透流はダメだと?」

 

「そういうこった」

 

「いいのか、そんな事して?」

 

「いいわけねーだろうが。《力》を示し続けて改革しなくちゃならねーってのに。……けど、気に入らねぇ事はやりたくねぇ。失点は別の形で取り返してやるさ」

 

悪事、犯罪を厭わない組織に属する者とは思えない一言である。

 

「面倒だな……透流、どうする?」

 

「ユリエ、橘、優月。子供たちを連れて先に行ってくれ。すぐに後を追いかける」

 

「分かった。では我々はーーー」

 

「ナイ。その必要はありません」

 

透流と橘の言葉に、ユリエが首を振る。

 

「すぐに終わりますので」

 

ユリエはそうですよねと言わんばかりに透流を見た。

 

「……ふっ、その通りだなユリエ。透流!一撃で終わらせろ!」

 

「ああ!」

 

透流は黒服へと向き直り、弓を引くかのように拳を引き絞る。

 

「チッ、バカ共が……どうやら野郎を潰さねーと分らねぇってか!!」

 

黒服は吐き捨てるように叫ぶと、変質を始めて巨躯となっていく。

 

灰色熊(グリズリー)ーーー三島レイジ……行くぜぇ!!」

 

上げた名乗りを示すかのように、熊の特徴を持つ全身鎧の化け物となった男は、丸太のように太い腕を振り上げて襲い掛かる。

 

「打ち砕けーーー雷神の一撃(ミヨルニール)!!」

 

灰色熊(グリズリー)が頭上に構えた腕を振り下ろし、透流は最強の一撃を放つ。

決着は一瞬でついた。

数百キロもの巨体は吹き飛び、そのまま壁にめり込んだ。

 

「がっ……強すぎる……」

 

そう呟いた灰色熊(グリズリー)はがくりと力を失った。

透流はユリエに向き直り、ぐっと親指を立てると、ユリエもぐっと親指を立てた。

 

「透流さん、すごく……一撃必殺……でした!」

 

(優月ちゃん……)

 

優月の言葉に安心院が呆れたように呟く。

そんな優月に影月が苦笑いを浮かべる。

 

そんな彼はふと、今も一人呆然とした様子の着物を着た日本人少女に気が付いた。

上はしっかりとした着物を着ながら、下はピンク色のスカートを履いている少女は三人の中で一番容姿がいい。

そんな少女は先ほどからピクリとも動かず、その瞳には光が宿っていない。

そんな少女の様子が気になった影月は、その少女に近付いて目線に合わせるようにしゃがみ込んで話しかける。

 

「大丈夫か?」

 

「……あ……!」

 

影月に話しかけられ、今までどこを見ていたのか分からなかった少女の瞳に光が灯る。

そして自らの顔を覗き込んだ影月の顔を確認した瞬間、顔が青褪め始めた。

 

「い、や……」

 

「どうした?俺もそこのお姉さんたちと同じ仲間だ。怖がらなくてもーーー」

 

「やめ、て……!近付かないでください!」

 

そう少女が叫ぶと同時、エレベーターや階段から拳銃やマシンガンを持った黒服たちが現れ、影月たちに向かって銃撃を始めた。

 

「っ!隠れろ!!」

 

「きゃっ……!」

 

「ヤ、ヤー!」

 

完全な不意打ちだったので、透流も咄嗟に《絶刃圏(イージスディザイアー)》を使う事が出来ず、全員が散り散りとなって近くの部屋へと逃げ込む。

 

「大丈夫か?怪我は?」

 

「あ……だ、大丈夫です……」

 

影月は逃げ込んだ先の部屋で、先ほどの銃撃から庇う為に抱きかかえて連れてきた着物の少女へと問い掛ける。

少女は抱きかかえられた事に驚きながらも、怪我が無い事を伝える。その返事を聞いた影月はその少女に「良かった」と言って微笑んだ後ーーー銃撃音が鳴り響く廊下に視線を向けた。

 

「くそっ……安心院!あれを出してくれ!こいつら、邪魔だから倒した方がよさそうだ!」

 

(分かったーーーほら、出来たぜ!)

 

すると、影月の目の前に一つの細長い筒状の物体が現れた。

 

「よし!これならーーー君、目と耳を塞いでくれ。合図するまでそのままでな?」

 

「え……?は、はい」

 

着物の少女が言われた通り目をつぶり、耳を塞いだのを確認すると影月は念話で皆に警告した。

 

(皆、目をつぶって耳を塞げ!子供たちにも伝えろ!)

 

(りょ、了解!)

 

影月は返事を聞くと筒状の物体のピンを抜き、廊下へと放り投げた。

そして数秒後ーーー廊下でパンッ!と甲高い音と目が眩むような閃光が発生する。

 

「うわっ!眩しい!」

 

「耳が!!」

 

「くそっ!スタンかーーーぐあっ!」

 

爆発したスタングレネードの効果によって、視覚も聴覚も一時的に麻痺した黒服たちは銃撃を中断せざるを得なくなる。

その隙に優月が物陰から飛び出し、手にした《焔牙(ブレイズ)》で黒服たちに斬り掛かった。

優月は自らの《焔牙(ブレイズ)》で閃光を放てるという技を持つ為、閃光弾やスタングレネードといった類は効かない。そんな強みを利用して、優月はスタンして思うように動けない黒服たちをものすごいスピードで無力化する。

そして閃光が収まり、辺りに響き渡っていた甲高い音も収まる頃には、黒服の男たちは全員床に倒れ伏していた。

 

「ふぅ……終わりましたね。皆さん、出てきていいですよ」

 

「よくやった優月!……もう目と耳を開けていいぞ」

 

影月は目の前にいる着物の少女の肩をトントンと叩くと、少女は恐る恐る目と耳を開く。

 

「終わったんですか……?」

 

「ああ、ちゃんと言う通りにしていたみたいだな。えらいぞ」

 

そう言って少女の頭を撫でる影月。

 

「……あの」

 

「ん?」

 

「さっきは、近付かないでくださいなんて言って……ごめんなさい」

 

「……気にしてないさ。それよりも早く行こうか」

 

少女の謝罪を笑って受け入れ、廊下へ向かおうとした影月だったがーーー

 

 

 

「……ん?なんだあれ?」

 

ふと視界にとある物が映り、足を止める。

影月の視線の先には、爆発で壁に開いた大きな風穴。そしてーーー

 

「……火の鳥?」

 

その穴から覗く夜空に浮かぶ赤い物体に影月はそう呟く。

なぜなら、その赤い物体は数週間前にニュースで取り上げられた物体にそっくりだったからだ。

そしてーーー

 

「あ、あれは……!」

 

影月が抱きかかえている少女もまた、そんな火の鳥を見て驚愕の表情を浮かべる。

 

「あれは、もしかして……あの方の……?」

 

「どうした?」

 

そんな表情を浮かべているとは知らずに影月は少女の顔を覗き込みーーー息を呑んだ。

 

「ああ……やはりあの人は……」

 

その少女が頬を赤く染め、嬉しそうに涙を流している様子を見たからだ。

一体どうしたんだーーーそう問いかけようとした時。

 

「居たぞ!!」

 

「っ!!」

 

新たな追っ手ーーー数十人の黒服を纏った男たちが銃を持って現れ、影月たちに銃弾の嵐を浴びせる。

 

「牙を断てーーー《絶刃圏(イージスディザイアー)》!!」

 

しかし黒服たちが撃った銃弾は、すべて透流の作り出した結界に阻まれる。

 

「くっ……早く転移しよう!安心院!」

 

「……待ってくれ透流」

 

結界を維持しながらも脱出を叫ぶ透流を制したのは、先ほど逃げ込んだ部屋から出てきた影月だった。

 

「なんだ影月!早くこの子たちを連れて逃げないと……!」

 

「……この子、俺たちに頼み事があるってさ」

 

「何……!?」

 

そう言って透流は結界を維持しながらも視線を向ける。

そこには、着物に身を包んだ日本人の少女が透流の瞳を見据えていた。

 

「お願いがあります。私を、この建物の上へ連れて行ってもらえませんか?」

 

「……それはつまり屋上って事かしら?」

 

そんな少女のお願いに答えたのはーーー

 

「なっ……!?」

 

赤く派手な大輪の華と形容するに相応しい少女だった。

真っ赤なドレスに身を包む黄金の少女ーーーリーリス=ブリストルは空を舞いながら銃を構えて引き金を引いた。

回数は、マシンガンを手にした男たちと同数。直後、黒服たちが苦痛の声を上げ、ガシャガシャと床にマシンガンが散らばる。

軽い音と共に着地した少女は、呻く男たちなど気に掛けた様子も無く、透流へと顔を向けた。

 

「はぁい♪お待たせ、透流♡」

 

手にした本物の拳銃をくるくると回してぱちりとウインクして笑ったリーリスは、次に先ほどお願いを言った少女に視線を向ける。

 

「で……貴女はなぜ屋上に行きたいのかしら?上は危険よ」

 

「それは……会いたい人がいるからです!」

 

先ほど透流に対して向けていた視線とは明らかに違う冷たい視線に、少女は戸惑いながらも自分の気持ちを話す。

 

「会いたい人……?上にはメドラウト(化け物)しかいないわよ」

 

「違います!あの人は……妹紅さんは化け物なんかじゃない!!」

 

「……え?妹紅?」

 

リーリスは予想していなかった答えなのか、間の抜けたような返事を返す。

 

「……妹紅っていうのは?」

 

「さっき飛んでいた方です!私たちとはよく親しくしてくれたんですよ!」

 

『………………』

 

そう言って嬉しそうに笑う少女の顔に、影月たちは顔を見合わせて黙り込む。

そんな影月たちの反応を見た少女は、先ほどの笑顔を引っ込めてシュンと項垂れる。

 

「……ごめんなさい。迷惑……ですよね。今も私たちを守る為に大変だっていうのに、こんな事まで頼んでしまって……分かりました。私のお願いはいいので早く逃げましょう」

 

「……兄さん」

 

「……分かってる。透流とリーリス、安心院もいいか?」

 

「……ああ、構わないぜ」

 

「あたしも構わないわ」

 

(僕も異議無しだぜ)

 

影月は透流とリーリスと安心院の返事を聞くと、項垂れたままの少女の頭に手を置く。

 

「はぅっ……!」

 

「分かった。そんなに言うなら連れて行ってやる」

 

「透流、影月、ここはあたしが引き受けるわ」

 

そう言ったリーリスは動きやすくする為に、ドレススカートを引き裂いてスリットのようにした。

 

「なら私もここに残ります」

 

そしてそんなリーリスに並んで、優月も《刀》を構える。

そんな彼女たちの前には、先ほどリーリスが撃たなかった黒服たちが次々とその姿を変質させていた。その数は優に十は超えるだろう。

 

「グルァアアアアッッ!!」

 

内一匹の《(ゾア)》飛び掛かってくる。

 

「ここは通しませんよ!」

 

だが優月が《刀》を《獣》へと向けて、剣先から雷撃を放つ。

雷撃は外れる事無く《獣》へと命中し、全身から煙を上げながら倒れ伏す。

 

「さあ、早く行ってください!」

 

「本当に《666(こいつら)》、気に入らないわ。子供の未来を奪おうってその魂胆が。だからーーー絶対に許さないわ……!!」

 

静かに、だがそれでいて怒りを込めたリーリスはさらに、《力ある言葉》を発する。

 

「《焔牙(ブレイズ)》」

 

その言葉に呼応し、《(ほのお)》が舞う。

 

「こ、これはーーーリーリス、お前……!?」

 

リーリスを中心に吹き荒れる《焔》を目にし、透流たちは目を疑う。

《焔》がーーー蒼かった為に。

 

「……行って、皆。その子たちを日常にーーーそして、その子のお願いを叶えてあげて」

 

背中を向けたまま、リーリスは請う。

 

「……リーリス、こんな時にカッコつけるのは死亡フラグなんだぞ?」

 

「ちょ……いいでしょ!?カッコつけさせてよ!!」

 

「大丈夫ですよ!私がいる限り、リーリスさんには怪我させませんから!」

 

「ははっ、頼もしい事だ。でも二人共、無理はするなよ?」

 

「ええ!」

「はい!」

 

「二人とも頼んだ!影月、ユリエ、橘、行くぞ!!」

 

透流は先頭を、影月は着物の少女を抱きかかえ、ユリエと橘も残る二人の子供をそれぞれ抱きかかえて走り出した。

階段を駆け上がり、途中で出くわした黒服や《獣》を倒す中ーーー

 

「なあ、妹紅さんってどんな人なんだ?」

 

影月が抱きかかえている少女に問い掛けた。それを透流たちも聞く中、少女は再び笑みを浮かべて答えた。

 

「さっき私が言ったように、よく親しくしてくれた方です。優しくて面倒見も良くて、何より強い方なんですよ!」

 

「なるほど……どれくらい強いんだ?」

 

話を聞いていた透流が気になったのか、そのような事を聞く。それに少女はーーー

 

「そうですね……よく織田軍が総軍で襲い掛かっても、勝てないと噂されていました」

 

「織田軍……?」

 

影月が少女の言葉に首を傾げる。

 

(織田“軍”って……)

 

(影月君、もしかして彼女……)

 

(ああ、もしかしたら……)

 

心の内で安心院とある一つの仮説が思い浮かんだ影月は、その仮説が正しいのか知る為に少女の過去を覗いてみようとしたが、その前に透流が屋上に通じる扉を開いた。

 

(っと、その事を調べるのは後にするか)

 

そう思いつつ扉の先に視線を向けると、二人の男が離陸準備の整ったヘリに乗り込もうとしていた。

一人はスキンヘッドの黒服、そしてもう一人は《圜冥主(コキュートス)》筆頭、《第四圜(ジュデッカ)》メドラウトだ。

 

「ほう、《聖騎士》が追いかけてくるには早いと思ったが、まさか《超えし者(イクシード)》までが潜り込んでいたとはな」

 

メドラウトは《焔牙》を見て、影月たちが何者なのかを即座に察した。そしてーーー

 

「《聖騎士》や《超えし者》だけではないぞ」

 

突如響き渡る第三者の声。その声は上空から聞こえ、その場にいる全員が夜空を見上げる。そこには宙に浮かび、咥えた葉巻からは紫煙をくゆらせる、半身に火傷を負う軍服の炎魔がいた。

 

「おお……!まさかLetzte Bataillon(ラストバタリオン)の一人まで潜り込んでいたとはな」

 

「どうやら……騒ぎを起こした者のようです……上へ向かっていると……報告が……」

 

無線で連絡を受けたのか、スキンヘッドからの話を聞いたメドラウトは影月たちの顔を見回す。

 

「我々《666(ザ・ビースト)》に牙を剥いた事を後悔させてやれ。下の奴ら(エトナルク共)にもな」

 

「……承知……しました……」

 

主の命に頷いた後、スキンヘッドが宙へと大きく飛び上がった。

 

「皆、離れろ!!」

 

黒服の姿が、宙空で変質する。内側から服が裂け、これまで立ち塞がったどの《(ゾア)》よりも分厚い鎧皮膚が盛り上がる。

 

「オォオオオオオ!!」

 

一瞬で男は化け物と化し、咆哮と共に頭上で組んだ両手を振り下ろしてくる。

そして轟音と共に、ホテルが揺れた。

 

「なんて破壊力だ……」

 

崩落し、階下が見える程の大穴を目にして透流は呟く。《(レベル4)》の彼でも、雷神の一撃(ミヨルニール)を使わなければこれ程の破壊は出来ない。

もうもうと石埃が立ち込める中で、化け物は影月たちを睨め付ける。

体の大半は灰色がかった分厚い鎧皮膚、そして顔の鼻があった部分には角のようなものが現れている。

それだけであるのならば、サイーーー(ライノセウス)といった印象だが、体中のあちこちから白と黒のまだら模様をした毛がだらんと垂れ下がっていた。

 

「ああもう……めんどくせぇな……!」

 

影月がそんな化け物を見て言う中、メドラウトを乗せたヘリが離陸する。

そんなヘリに意識を向けるものなど、今この場にはいなかった。

最も、余裕のあるザミエルは目の前にいる影月たちの支援が任務なので、意図的にヘリを見逃しているのだが。

 

「……死……ね……!」

 

正体不明の《獣》は、その場から動かずに腕を振るう。無論、間合いは遠く拳が当たるような距離ではない。が、空を貫き飛来するものがまだら模様の体毛が数本、まるで投げ槍の如く影月たちに襲い掛かる。

 

「くっ……!!」

 

透流は《楯》で受け止め、影月、ユリエ、橘は子供を抱えて飛び退く。

そしてそんな体毛を飛ばした《獣》に向かって、人一人を丸々飲み込める程の大きさの火球が飛んでいきーーー着弾、爆発した。

 

「ぐ……!」

 

しかし《獣》は全身にかなりの火傷の傷を負ったものの、倒れる事は無かった。

 

「ほう……形成程度では倒せんか。以外と丈夫だな」

 

「貴……様……!!」

 

《獣》は先ほどの火球を放った相手ーーーザミエルを見据えて腕を振るい、棘槍(きょくそう)を放つ。

それにザミエルも対抗して、背後に浮かべた魔法陣からシュマイザーを出現させて迎撃する。

 

「っ!今だ安心院!子供たちを抱えたユリエと橘を……!」

 

(分かったぜ!強制転送!)

 

安心院がそう叫ぶと、ユリエと橘、そして彼女たちが抱きかかえていた西洋系の少年少女の姿が消えた。

 

(咄嗟だったから、直接味方本陣まで飛ばす事は出来なかったけど……近くへは転移出来たぜ)

 

「十分だ。ユリエと橘が目的を達成したら、呼び戻してくれよ?俺はこの子の目的が果たされるまで守ってるから……」

 

(分かってる……それよりあの《獣》の《力》、厄介だね)

 

影月と透流が視線を向けた先には、今だザミエルと派手に殺り合ってる《獣》の姿がある。

 

「棘のような体毛は、ヤマアラシーーー豪猪(ポーキュパイン)といった所だな」

 

「透流、お前詳しいな」

 

「ユリエと一緒によく観ている動物番組の知識だけどな」

 

そう言って透流が苦笑いを浮かべた直後ーーー

 

「ぐおぉ……!」

 

連続した爆発が発生し、《獣》の姿が爆炎と煙によって包み込まれる。

 

「あの棘槍、見てるとベイを思い出す。奴ほど荒々しい戦いぶりではないがね」

 

すると今まで宙に浮いていたザミエルが腕を組んだまま、影月たちの隣へと着地する。

先ほどの連続した爆発は、ザミエルが放ったパンツァーファウスト。

それが《獣》やその周辺に着弾した。直接命中したなら並の人間など言うに及ばず、普通の《(ゾア)》であっても致命傷になり得る攻撃だった筈だがーーー

 

「ーーー来るぞ」

 

ザミエルがそう言った直後、未だ晴れない煙の中から《獣》が飛び出し、一瞬で間合いを詰めて重厚な拳を振るう。

ザミエルはそれを後ろに後退して難なくかわし、影月も着物の少女を抱きかかえながら大きく後ろに飛ぶ。

しかし透流だけは頭を低くしてその一撃をかわし、太もも部分に上から下へと斜めに叩き折るようなローキックを打ち込んだ。だがーーー

 

「ぐっ……!」

 

鈍い音と共に、透流の表情が歪む。《獣》の鎧皮膚はどこも相当に硬い。まるで岩の塊を蹴ったような感覚が透流の足に伝わる。そんな一瞬だけ、透流の動きが止まった。

 

「透流っ!!」

 

影月の叫びとほぼ同時に、透流はバックステップで化け物から離れ、寸前まで透流が立っていた場所に巨大な拳が振り抜かれる。

僅かでも判断が遅かったらやられていたーーーそんな事を透流は思っていたが、攻撃はそれだけで終わらなかった。

拳から僅かに遅れたタイミングで、繋ぎ目から生えた棘槍が拳と同じコースを走る。

 

(しまっ……!)

 

間合いは拳より広く、その為に透流は避けきれない。

しかしーーー

 

「うわっ!!」

 

突然、透流は誰かに後ろ首を引っ張られてバランスを崩す。そんな一瞬の行為で透流は奇しくも棘槍をかわす事が出来た。

そして透流の後ろ首を引っ張ったのはーーー

 

「……複数の《力》を宿す者……《獣魔(ヴィルゾア)》か」

 

(ゾア)》ーーーいや、《獣魔(ヴィルゾア)》を見て、そう呟いたザミエルだ。

 

「あ、その……助けてくれてありがとうございます……」

 

「未熟だな。しっかりと敵の攻撃を見極めろ。無闇矢鱈と突っ込んで攻撃しても意味が無い。下手をすれば、先ほどのように反撃を食らう。……私が助けるのは先ほどで最後だからな」

 

ザミエルは透流の顔を見ずにそう告げた。そしてそんなザミエルに視線を向けられている《獣魔(ヴィルゾア)》はーーー

 

「貴様……《獣魔(ヴィルゾア)》という名……どこで知った……」

 

「さあね。知りたければ吐かせてみたらどうかな?まあもっともーーー」

 

そう言うとザミエルは再び襲い掛かってきた《獣魔》の拳と棘槍をかわしーーー腹部を蹴り飛ばす。

 

「ぐ……ぅ……」

 

「この程度の《力》しか持たない《獣》ごときがなし得る事でもないが」

 

ザミエルは腹部を蹴った反動で大きく後ろへ飛び退く。

それと入れ替わるように透流が素早く懐へと潜り込み、ザミエルが蹴った所に拳を叩き込む。

 

「邪魔な……!」

 

しかし透流の拳は大したダメージにならず、《獣魔》は再び拳と棘槍の二段攻撃を仕掛けて来る。

透流はそれをかわすと同時に体を回転させ、左のバックブローを叩きつけた。

それも《獣魔》にとっては蚊が刺したに等しいようで、拳を振り上げる。

 

だが、その拳が振り下ろされる事は無かった。《獣魔》の太い腕に《鉄鎖(チェイン)》が絡み付いていた為に。

 

「ふう……何とか間に合ったな、九重。それと安心院は勝手に私たちを転移させるな……突然転移したから驚いたよ」

 

「女ぁ……!!」

 

《獣魔》が忌々しげな目で見た先には、先ほど安心院によって子供たちと共に飛ばされた橘が《獣魔》の腕に絡み付いた《鉄鎖》を引っ張り、苦笑いしながら立っていた。

 

「私と……力比べ、を……する気か」

 

「ーーーっ」

 

そう言った《獣魔》は腕を引いて、橘を徐々に引き寄せる。

 

「甘、い……私と……力比べをするなら……《獣》を、十体は持ってこい……」

 

「ーーーっ、ーーーぐっ!」

 

引きずられる橘の足下のコンクリートにはヒビが入り始める。

そしてそんな力比べに飽きたのか、《獣魔》は橘を手繰り寄せる為に思いきり腕を引く。

その動きを読んでいた橘は、引き寄せられた反動を利用してコンマ一秒早く懐へと飛び込んだ。

 

「橘流ーーー龍哮ノ衝(りゅうこうのしょう)!!」

 

中国拳法でいう寸勁(すんけい)に近い技だろうかーーー橘は鎧皮膚へ触れるようにして掌を押し当て、気合いと共に力を叩き込む。

踏みしめた足下のコンクリートは、橘を中心として一瞬でヒビが広がった。やはりそれも《獣魔》にとってあまりダメージにはならなかったようだが、僅かに体が揺らぐ。

 

「今だ、九重!!」

 

「おうっ!!」

 

橘がそう叫んで飛び退いた後ーーー透流は《獣魔》の懐へ入り込み、弓を引くような構えをとる。

モーションの大きい雷神の一撃(ミヨルニール)は、その性質上回避されやすい。しかし橘が作ったこの瞬間は、雷神の一撃の隙を補って尚、余りあるものだった。

 

「おおおあああああっ!!」

 

そして透流の持つ最強の一撃が《獣魔》の胸元を貫き穴を穿つように叩き込まれた。

確実に決まった。手応えはあった。だがーーー

 

「……なかなかの威力だ……が……この体を沈める程では……ない……」

 

《獣魔》は倒れなかった。僅かに数メートル程、後退させたに過ぎなかったのだ。

 

「そ、んな……雷神の一撃(ミヨルニール)が……効いてない、だと……?」

 

「小僧!集中を途切れさせるな!」

 

茫然自失となった透流の耳に、ザミエルの忠告が届くが、今度はコンマ秒遅い。

我に返った透流は目前に迫っていた《獣魔》の拳をガードしようとするがーーー

 

「う……あぁっ……!」

 

日に放てる雷神の一撃、その限界となる二発目を放った弊害によってガードが間に合わず、透流の頭に拳が命中、体ごと吹き飛ばされた。

受け身も取れず、硬いコンクリートの上を大きく二度バウンドしてダウンする。

すぐさま透流は起き上がろうと、膝を突くもーーー

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

頭を殴られた影響で走った激痛に顔が歪み、声にならない声を発する。

 

(ぐ、くっ……!!マトモに、喰らっちまった……けど……)

 

やられたわけではないと自らを鼓舞して顔を上げる。その先にはーーー

 

「オォオオオオッ!!」

 

宙空を舞いながら両手を組み、咆哮を上げながら鉄槌を振り下ろそうとしている《獣魔》がいた。

 

(《絶刃(イージス)……間に合わな……)

 

咄嗟に腕を交差して、来るべき衝撃に備える為に身を丸めて《楯》で攻撃を受け止めようとするもーーー

 

(ん……?)

 

突然、透流は浮き上がるような感覚を感じーーーさらに背後から轟音と振動が響き渡った。

透流はそんな不思議な感覚に疑問を感じ恐る恐る目を開けると、そこには透流が見慣れた《絆双刃(デュオ)》の少女の顔があった。

 

「ユリエ……?」

 

「トール、大丈夫ですか?」

 

メイド服を纏ったユリエは透流の顔を覗き込んで問い掛ける。

 

「あ、ああ……ユリエが助けてくれたのか?」

 

「ヤー、危ない所でした」

 

そう言って降り立ったユリエは透流を降ろす。

 

「奴は?」

 

「下だ」

 

屋上に出来た二つ目の穴ーーーその縁に立った橘が《鉄鎖》を構えたまま、下に視線を向ける。

そこには不気味な笑みを浮かべながら、透流たちを見上げている《獣魔》がいた。

 

「これ程……手こずる相手は……久しぶりだ……」

 

そう言うと《獣魔》は、大きく跳躍して穴から飛び出して屋上に着地した後、一番近くにいた透流に向かって腕を振るった。

それを透流は咄嗟に飛び退き、豪腕の一撃を回避する。しかし最初の攻防と同様に、ワンテンポ遅れて襲い来る黒い影がある。

 

「二度も同じ手を喰らうか!!」

 

その二撃目は《楯》で防いだーーー筈だった。

だが、防いだ瞬間に黒い影は透流の腕へ《楯》ごと巻き付いた。

 

(こ、れはーーー魚の……尾びれ……?)

 

ぬらりと黒光りするそれは棘槍とは違う。まるで魚類が持っている尾びれのようだと認識した直後ーーーバチィッ!!っと何かが弾けるような音が辺りに響き渡った。

 

「っぐ、ぅぅうあああああっっ!!」

 

直後、透流の全身に余すところなく全て同時に鈍器で殴られたような衝撃が襲い掛かった。

 

「トール!!」

 

その様子にユリエが透流に触れようとするもーーー着物の女の子を安全な場所に置いてきた影月に止められる。

透流はそのまま受け身も取れずに倒れ伏し、それと同時にユリエが(そば)へ駆け寄る。

 

「いま、のは……」

 

「電撃……。私の奥の手であり……貴様ら《超えし者(イクシード)》の……天敵となる……攻撃だ……」

 

「……そうか、《焔牙(ブレイズ)》の弱点を突いたのか」

 

《焔牙》とは自らの《魂》を武器として具現化する。

それはつまり、自らの弱点である《魂》を敵に対して振るっているという事に他ならない。《焔牙》の弱点は自らの《魂》である《焔牙》を破壊されるか、その《焔牙》を()()()()されるかの二つである。

今回の電撃の場合は後者ーーー《焔牙》を通して透流の《魂》を直接攻撃したという事だ。

 

「私の電撃は元の《力》の十倍以上……かつて闘った《超えし者》も……皆、この手で敗れ去った……」

 

「でも、私たちはその程度じゃ負けないわよ」

 

そんな《獣魔》の言葉に返事を返す者がいた。

その言葉に屋上にいた全員が声の聞こえた方向ーーー屋上に通ずる扉へと視線を向けた。電灯の明かりが無い暗がりの奥からはカッカッと響くヒールの音と、コツコツともう一つの靴音が近付いてくる。

程なくして、月明かりの下に姿を現したのはーーー

 

「あら♪また会ったわね、透流」

 

「皆さん、無事ですか?」

 

赤いドレスを身に纏う《特別(エクセプション)》の少女と、黒く美しい髪を伸ばした《異常(アニュージュアル)》の少女だ。

 

「リー、リス……優月……」

 

「遅くなってごめんなさい。次から次へと増援が来るから、いくらあたしたちでもちょっと時間が掛かったわ」

 

くるん、と《(ライフル)》を回して悪戯そうに笑うリーリス。

 

「一先ず間に合ってよかったですね。そしてーーー」

 

優月は近くで隠れて様子を見ていた着物の女の子に顔を向けて、笑顔を浮かべる。

 

「貴女の会いたかった妹紅さんも丁度来たみたいですよ」

 

そう優月が言った直後ーーー

 

 

 

 

 

「すごい騒ぎだな。私も混ぜてくれよ」

 

突然上空から、新たな少女の声が聞こえた。

 

「っ!も、妹紅さん!」

 

着物の女の子が嬉しそうな声を上げる中、影月たちや《獣魔》は上を見上げて目を見張った。

月明かりで美しく輝く銀髪、一点の曇りも見受けられない白い肌、燃え上がるような深紅の瞳、そしてその少女の背中から生える一対の鳥のような羽ーーーそんな少女は愉悦を交えた獰猛な笑みを浮かべながら、屋上にいる者たちを見下ろしていた。

 

「飛んでる!?それにあの羽は……」

 

「……ニュースでやってた火の鳥だな……」

 

「ん?君は……!?」

 

少女ーーー藤原妹紅は隠れていた着物の女の子へと目を向け、直後に瞠目した。

 

「その格好にさっきの声ーーー(こう)ちゃん!?」

 

「はい……!お久しぶりです、妹紅さん!」

 

着物を着たーーー香と呼ばれた少女は、屋上へと降り立った妹紅へと抱きついた。

 

「妹紅さん……!ずっと会いたかったです……!」

 

「香ちゃん……」

 

抱きついて嬉しそうに笑う香を見て、妹紅は複雑な顔になる。

そんな二人にーーー

 

「邪魔だ……!」

 

興が削げたと言うように《獣魔(ヴィルゾア)》が腕を振って棘槍を放った。

しかし、飛来した棘槍は横合いから割り込んだリーリスがすべて撃ち落とす。

 

「感動的な再会の途中に攻撃なんて、最低ね。それにあたしの未来の旦那様と、大切な友人をよくも傷つけてくれたわね。覚悟しなさい!!」

 

「リーリス……ブリストル……。手を出さずに……帰せという命を受けたが……先に仕掛けられた以上……我らにも体面がある……覚悟するのは……貴様だ……!」

 

「上等よ!!」

 

再び棘槍を放とうとした《獣魔》だが、それよりも速くリーリスが引き金を引く。弾丸は《獣魔》の頭部へと命中するが、僅かに頭を振る程度の反応しか見せなかった。

 

「随分硬いみたいね」

 

「その通り……だ……貴様の《焔牙(ブレイズ)》が……通用すると思うな……」

 

「なら私が前に出るよ。嬢ちゃんは援護してくれ」

 

「私も前衛に行きます」

 

そう言って妹紅と優月がリーリスの隣へと並んだ。

 

「……貴女、さっきの子は?」

 

「さっきの見て危ないと思ったから後ろの方へ下がらせたよ。……さっきは庇ってくれてありがとうね」

 

「構わないわ。それよりも貴女は闘えるの?」

 

「闘えるけどあいにく身体は弱くてな。でも、まあーーーあの程度の化け物なら一度も死なずに倒せるよ」

 

にっと笑った妹紅を見て、呆気にとられるリーリスだったが、少しして彼女も笑みを浮かべた。

 

「分かったわ。なら援護は任せてちょうだい!」

 

「分かった。そっちの黒髪の嬢ちゃんも死ぬなよ?」

 

「当然です。こんな所で死んだりしませんから!」

 

そして優月は《獣魔》へと向けて走り出し、妹紅もそれに続く形で走る。それと同時にーーー

 

「私たちも行くぞ!」

 

橘が発言した瞬間、倒れ伏している透流とそれに付き添っているユリエ、そして隠れている香以外が一斉に動き出す。

 

「せぁっ!!」

 

まず始めに動いたのは橘。彼女は《鉄鎖(チェイン)》の先端についている(しずく)型の分銅を回して、《獣魔》へと放つ。

《獣魔》はそれを腕でガードし、金属同士がぶつかり合うような音が響き渡る。

 

その隙を優月が攻める。彼女は《獣魔》へと肉薄し、《(ブレード)》を連続して振るい始めた。以前ザミエルと戦った際に見せた剣舞(トーテンタンツ)を彷彿とさせるその動きは以前より洗練されており、彼女が毎日しっかりと鍛錬を行っている事が見て取れる。

だが《獣魔》はそんな剣戟をかわしたり、腕でガードしながらあしらう。

 

「お……のれ……!!」

 

そうして暫しの間そのような攻防を続けていた両者だったが、《獣魔》が埒が明かないと判断し、優月の攻撃の隙を狙って拳を振り回して棘槍を飛ばす。

 

「っ!!」

 

襲い掛かる棘槍を見た優月は苦々しい表情を浮かべながらも、一旦回避する為に《獣魔》から距離を置く。だがーーー

 

「無駄だ」

 

今度は《獣魔》が優月へと接近して拳を振るう。

 

「くっ……!」

 

大きく後ろへ飛んだ為、拳は紙一重でかわす事が出来たがーーー

 

「っ!うあっ……」

 

鋭い切っ先が優月の左肩を斬り裂き、鮮血が飛び散った。

 

「優月!」

 

今度は影月が《(ランス)》を片手に接近する。

 

「死にに……来たか……」

 

それを確認した《獣魔》は優月に向けて振るおうとしていた両腕を、影月に狙いを変えて振るった。直後、数多くの棘槍が影月に襲い掛かる。

それを見た影月は神槍に力を込めて棘槍へと向ける。そしてーーー

 

「メタルギアRAYーーープラズマ砲」

 

その言葉と共に神槍から(あまね)く全てを灰燼とする黄金の一閃が放たれた。

 

「何……!?」

 

棘槍が一つ残らず黄金の一閃に飲み込まれ、屋上のコンクリートをも抉る様子を見た《獣魔》は瞠目したのも一瞬、咄嗟に宙へと飛んで回避する。

その後、先ほどまで《獣魔》が立っていた場所を黄金の一閃が抉り取っていく。

 

「今のは……いったい……?」

 

先ほどの一閃を回避し、宙からその威力を目の当たりにした《獣魔》は再び影月へと視線を向ける。そしてーーー再びその目は瞠目する。

 

「宙にいるなら避けられまい。合わせろ、小僧」

 

「分かってる!」

 

「私もやるかねぇ」

 

「私も協力するわ」

 

そこには魔法陣から無数のパンツァーファウストを出現させたザミエルと、十五程の神槍を周りに浮かべた影月、右手に炎を揺らめかせる妹紅、《銃》を両手で支えるようにして腰だめになったリーリスが《獣魔》を見上げていた。

 

Panzer(パンツァー)ーーーFeuer(フォイア)

「メタルギアREXーーー対戦車誘導ミサイル」

「炎符『フェニックスの羽』」

「《撃射承・榴(フェイスピアーズⅠ)》!」

 

その言葉と共に、今度は無数のパンツァーファウスト、十五発の誘導ミサイル、鳥のような形をした数十個の炎の弾、そして爆発を起こす銃弾が撃ち出される。

 

「貴様ら……!!」

 

両腕を振るい、迎撃の為に棘槍を放つ《獣魔》だったがーーー

 

「ぐ、があぁああっ!!」

 

パンツァーファウストとミサイルは幾つか撃墜出来たものの、リーリスの銃弾を皮切りに影月が放った誘導ミサイル九発と数多くのパンツァーファウスト、そして妹紅の弾が命中する。

 

「終わったか……?」

 

「まさか、ありえないわ。さっき影月が撃ったプラズマ砲が当たったら終わってたかもしれないけどね」

 

先ほどの攻撃の影響で出た煙が宙に漂って《獣魔》の姿が見えない中、影月の疑問にリーリスが呆れながら答えた。

 

「……来るぞ!」

 

ザミエルがそう叫んだ直後、煙が一気に晴れる。

 

「ルゥアアアアアッ!」

 

咆哮を上げた化け物は棘槍を上空へと向けて放った。

 

『ーーーっ!!』

 

その意図を全員が理解したと同時、宙空に放たれた棘槍は先端を反転させーーー豪雨のように影月たち目掛けて降り注いだ。

そんな降り注ごうとしている悪意の《牙》に向かって、リーリスは《銃》を頭上に構えて叫ぶ。

 

「《撃射承・郭(フェイスピアーズⅢ)》!」

 

引き金が一度だけ引かれると、銃口からは無数の弾丸が拡散して放たれ、棘槍を撃ち落とした。すべての棘槍を撃ち落とし、リーリスはぼんやりと光る《銃》を《獣魔》に向けて言う。

 

「面倒ね……早く倒れてちょうだい!狙め撃て(ロックオン)ーーー《撃射承・彗(フェイスピアーズⅣ)》!!」

 

すると銃口から眩い光を纏った弾丸が放たれる。

放たれた弾丸は光の尾を引きながら《獣魔》の肩口を貫いた。

 

「グッ……オォ……貴様……!」

 

コンクリートの上に墜落した《獣魔》は貫かれた部分を押さえながら立ち上がる。

 

「そこの嬢ちゃんの言う通りだな。さっさと死ねい」

 

そして今度は炎を纏った妹紅が《獣魔》へと向けて駆け出す。

だがーーー

 

「ま……だだ……!」

 

その僅かな隙を突き、《獣魔》は残された棘槍をすべて上空へと放つ。その標的は隠れてこちらの様子を見ていた香だった。

 

「え……?」

 

「ーーーっ!」

 

その狙いに気付いた妹紅は即座に方向転換し、香の元へと走り出す。

 

「《撃射承・郭(フェイスピアーズⅢ)》!」

 

妹紅は咄嗟に香を庇うようにして覆いかぶさったが、リーリスが二人に傷一つ負わせまいと無数の弾丸を放つ。

次々と降り注ぐ棘槍は撃ち落とされ、妹紅と香は傷一つ負わなかった。

ーーー数人が捕まるという犠牲と引き替えに。

 

「きゃあぁあああっ!!」

「うあぁああっ!」

「あぁああああっ!!」

「ぐっ、がぁ……!」

 

隙が生まれた瞬間、《獣魔》の第三の武器ーーー電撃を発する尾びれが何本か伸びてリーリス、優月、橘、妹紅に絡みつく。

ちなみに香は妹紅が咄嗟に手放したので無事である。

リーリスと橘の手から《焔牙》が零れ落ちた。

 

「形勢逆転……だ。卑怯と罵って……いいぞ……」

 

「んっ、く……冗談じゃ、ないわ……あんたを悦ばせてなんか、やらないわ……」

 

電気が流れるのが止まり、リーリスは叫び声ではなく、苦しそうに意志を口にする。

 

「まあ……構わぬ……が、さて……どうするか……」

 

そう言って《獣魔》は思案し始めた。

数刻前までは組織の対面を保つ為、ここにいる全員の命を奪おうとしていたが、こうして生きたまま捕らえた以上、話は変わってくる。ドーン機関と敵対する組織にとって、リーリスは大きな利用価値がある存在なのだから。

 

「ど、どうするも何も……あんたが、あたしたちにやられてゲームセットに決まってるじゃない……!」

 

そう言ってリーリスは絡みついた尾びれを引きはがそうとするがーーー再びバチッと音が響く。

 

「んっ……あ……体、しびれ……あぁ……」

 

「安心……しろ……貴様だけは……殺さずにおいてやろう……」

 

「ーーーっ」

 

その言葉に透流が息を飲む。それはつまり、リーリス以外の者たちは殺されるという事でーーー

 

「護ろうとした相手が無惨に殺される様を……見るがいい……」

 

「ーーーーーー」

 

その言葉を聞いた瞬間、透流の《魂》が震えーーー

 

「さ、せない……!」

 

よろめきながらも立ち上がる透流からは《黒雷(こくらい)》が帯電し始める。

 

「皆を……リーリスを……護るんだ……!何があっても護るんだ……!だから……!」

 

そして電撃の弾ける音が響き渡り、透流の脳内では昨夜の記憶が(よみがえ)る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親に感謝しろよ。……()()()()()()()()()()()()()

 

ユーゴの指先から生まれた黒い光は、弾けるような音を立てた。

 

「黒いーーー静電気……?」

 

「そんなちゃちなもんと一緒にするのは勘弁しろよ」

 

「では何だと言うのだ?」

 

呆れたように言うユーゴへ、橘が答えを求める。

 

「雷、さ。……それも特別製のな」

 

「ほう……魔術か」

 

「その通り」

 

ザミエルの言葉に返事をしながら、ユーゴは黒い雷が弾ける指先を透流の胸元に向ける。

 

「こいつは一度だけの、十三秒だけの魔術だ。使えばハンパじゃない《力》をお前に与えてくれるーーーが、リスクもハンパじゃない。本来なら魔術の素養が無い奴には扱えない代物なんだがーーー」

 

ユーゴはニヤリと笑う。

 

「お前には神の加護がある」

 

「神……?どういう事だ?」

 

「人は神の名を与えられる事で《魂》に僅かばかりだが加護を授かるのさ。その僅かな加護がこいつを扱う《力》になるって事だ。お前に与えられた神の名、それはーーー」

 

『雷神トール』

 

透流、ユリエ、影月、優月、そしてザミエルがその名を口にする。

 

「かつて北欧神話にて最強の戦神と名を馳せた雷の神……なるほど、つまりこの小僧には雷神の加護がついていると言うのだな?そしてーーー」

 

「この黒い雷も扱えるーーーただし、さっきも言ったようにハンパじゃないリスクがある。……選ぶのはお前だ、透流」

 

その言葉に透流は少し俯いた後にーーー黒く光を放つ雷を見つめて、頷いた。

 

「よし、決定だな。じゃあ今からこいつの使い方と使う為のキーワードを教えてやる。キーワードはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解放(リベール)ーーー《十三秒ノ雷命(サーティーンリミット)》」

 

 

 

 

初めて口にする《力ある言葉》を唱えた直後、透流の全身に《獣魔(ヴィルゾア)》の電撃を遙かに超える凄まじい衝撃と激痛が走る。

 

「がっ、ぐぅっ、あぁあああああっ!!おぁああああああーーーーーーっっ!!」

 

痛みは絶叫と化し、封じられていた《黒雷》は透流の肉を、骨を、血を、そして《魂》の全てを繋いでいく。

 

「と、透流……?」

「ト、トール……!」

 

突然絶叫を上げ、《黒雷》を纏う透流の姿にリーリスは呆然と目を見開き、ユリエは心配そうに見つめる。

 

「大丈夫、だ……」

 

そうは言うものの、透流の体の中では《黒雷》が荒れ狂っていた。

それは《黒雷》が。彼の《魂》を蝕んでいっているのと同時にーーー《力》を得ている事の証明なのだ。

 

「……皆。今、助けるからな」

 

そう言って透流は床を蹴り、囚われているリーリスの元へと駆ける。その速さはまさに雷鳴の如き速さだった。

そして透流はリーリスを捕まえている尾びれを手刀で断ち切った。そしてすぐさま方向転換し、橘を捕まえている尾びれも手刀で両断した。

 

「きゃあっ!」

「うわっ!」

 

突然、体の動きを封じていた尾びれから力が失われ、リーリスと橘は床に尻もちをつく。

 

「ったぁ……」

 

「いたた……九重、もう少し優しく降ろしてくれたまえ……」

 

「悪い、二人とも大丈夫か?」

 

「ええ……それより、それが昨夜の……」

 

「ああ、でもその話は後だな。今は優月と妹紅さんをーーー」

 

「それなら大丈夫です」

 

そう言ったのは優月だった。彼女は手にした《(ブレード)》で尾びれを斬り裂く。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴様……なぜ私の……電撃が効かない……!?」

 

「残念でしたね……私は自分の体も雷化出来るし、雷も操れるので電撃は慣れっこなんですよ。それでさっきはわざと捕まったフリをして貴方を斬ってやろうと思ってましたが……」

 

優月は視線を透流へと向けて言った。

 

「透流さんに任せる事にしましょう。それよりもーーー妹紅さん、いつまでそうやって捕まってるフリをしているんですか?」

 

「ありゃ、やっぱりバレてたか」

 

そう言うと妹紅は全身に炎を纏って火だるまになり、尾びれを燃やし尽くしながら笑う。

 

「ぬぅっ……!」

 

「いや〜、なかなか気持ちいい電気だったよ。欲を言えばもうちょっと強い方が好みだったけどねぇ」

 

そう言ってケラケラと笑う妹紅だが、彼女は今現在進行形で火だるま状態だ。そんな普通なら笑えない状況なのに笑っている妹紅の異常性に《獣魔》のみならず、透流、ユリエ、橘、リーリスが唖然とする。

 

「透流、時間制限があるんだからさっさと決めようぜ」

 

「あ、ああ……」

 

影月の言葉に我に返った透流は、強く床を蹴った。

疾風迅雷ーーーまさにそんな言葉を形容するに相応しい速度で《獣魔》の懐に潜り込んだ透流は、疾風のように拳を叩き込む。

 

「ぐ……ぅ……」

 

鈍い音と共に化け物から声が漏れた。

 

(よし!)

 

「たかが一発で……何を喜ぶ……私を倒せるとでも思うのか……」

 

手応えを感じた透流を見て、僅かに怒りの色をにじませて《獣魔》は言う。

 

「たかが一発、か……だったら百発喰らっても同じ事を言えるか!?」

 

雷のような速さと力で透流は、重厚な鎧皮膚の一点に集中して何十発も打ち込む。ーーーそしてついに勝負を決する時が来た。

 

残り三秒。ビキィッ!!と鎧皮膚にヒビが入る。

 

残り二秒。拳を固め、弓を射るかのように引いて構える。

 

残り一秒。《獣魔》の拳が透流の頬を裂く。

 

そしてーーー

 

穿()ち砕けーーー雷神の一撃(ミヨルニール)!!」

 

《黒雷》を纏った拳が鎧を穿ち砕きーーーホテルの外へと吹き飛ばされた《獣魔》は、咆哮を上げながら落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、こっちも終わるか」

 

そう言った影月の視線の先には、影月が操っているメタルギアRAYやメタルギアREXによって倒された《666(ザ・ビースト)》の構成員や《(ゾア)》を捕まえている護陵衛士(エトナルク)たちがいた。

制圧完了までは時間の問題だろう。

 

「やっと一息つけますね……」

 

「ああ、それよりも優月、左肩は大丈夫か?」

 

「あ、はい。もう止血しましたし、傷も少し塞がってきましたよ」

 

優月が指を指した所を見ると、斬り裂かれた部分が少しずつ治癒されていた。

 

「……これも新しい永劫破壊(エイヴィヒカイト)の効果か……そういえば透流は?」

 

「透流さんならあそこでリーリスさんに膝枕してもらってますよ……あれだけ激しい戦いをしてたので動けないんでしょうね」

 

「だからって膝枕か……まあ、リーリスが勝手にやったんだろうけど……それにしてもユリエの目が怖いな……」

 

見ると、リーリスが透流を膝枕してそれをユリエが睨んでいるという光景が広がっていた。そんな二人の間で身動きが取れない透流はこちらに助けを求めるように視線を向けていた。

 

「……行かないのか?視線で助けを求められているようだが」

 

「行ってやりたいが、行ったら行ったで面倒な事に巻き込まれるから放置する……」

 

近くに寄ってきたザミエルにそう返した影月は、次に妹紅と着物の女の子の姿を探した。

 

「彼女たちならあそこで話しているよ」

 

するとそんな影月の様子を見て察したのか、橘が少し遠くを指す。

そこには妹紅と香の二人が楽しげに話していた。

 

「……あの二人はどうするか……」

 

「そうですね〜……とりあえず一緒に来てもらいましょうか?妹紅さんのあの《力》も気になりますし……」

 

「……そうだな」

 

この後の方針を決めた影月と優月は、妹紅と香へ向かって歩き出した。

 




今回も新キャラ織田香を出しました!ちなみに後一人登場予定のキャラがいますが……出てくるのはまだまだ先です!

次回は後日談的なものを投稿する予定です!

誤字脱字・感想意見等よろしくお願いします!

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