アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹 作:ザトラツェニェ
ちなみにそのタグ関係の話は第九話でも若干触れられています。
とりあえず楽しんでいただけたらと思います……どうぞ!
side 優月
安心院さんが入学してから数日ーーー私は授業が終わると、すぐに寮に戻って授業道具を置いた後、学園内のある場所を目指して歩を進めていました。
その場所はこの学園内に複数ある内の一つのガゼボーーーガゼボとは東洋の庭園や公園にあるパビリオンの一種ーーー分かりやすく言うと、日本の公園によくある屋根のある休憩所、つまり西洋風
「綺麗ですね……」
目的地に向かう途中、ふと綺麗に手入れされている花壇に目を向けて呟く。
花壇には真っ赤な薔薇が一面に咲き乱れていて、むせかえるような薔薇の香りもして、それはとても美しいのですが……。
「…………」
私はその花を見ても、嫌な記憶しか思い出しません。
この学園に来て、二週間程経った頃に行われた《
「ヴィルヘルム……」
聖槍十三騎士団の一人、思えばあれが、私たちが一番最初に経験した殺し合いでした。
そして聖槍十三騎士団がこの学園に干渉するきっかけにもなったと言える相手でしょう。私はあれ以来、このような薔薇が咲き乱れる場所に来るとあの時の記憶が蘇ります。
「……はぁ……」
その記憶に対して様々な意味を含めたため息をはき、目的地に向かう足取りを早くしました。
薔薇が咲く花壇を抜け、今度は色とりどりの花が咲く花壇に挟まれた道を歩いて行くと、目的地のガゼボが段々と見えてくる。
そこにはすでに二人の人影がいて、私は早歩きで急いで向かう。
そして辿り着いたガゼボにいた人影の正体はーーー
「お待たせしました。待ちましたか?リーリスさん」
「いいえ、あたしもさっき来たーーーと言いたいけれど少しだけ待ったわね。まあいいわ、座ってちょうだい。サラ、彼女にミルクティーを」
「はい、お嬢様」
リーリスさんと執事のサラさんです。
彼女は私にチェアに座るように促し、サラさんは鮮やかな
「ありがとうございます」
「いえ」
お礼を言われたサラさんは恭しく礼をした後にリーリスさんの後ろに立ちました。
とりあえず私は一口、注いでくれたミルクティーを飲んでみる。
喉越しがあっさりとしていて香り高く、適度な甘さも絶妙でとても美味しく、思わず呟いていました。
「美味しい……」
「ふふっ、絶品でしょ♪透流も同じ事を言ってたわ♪」
「透流さんも……サラさん、今度淹れ方教えてください!」
「え?ーーーは、はい。構いませんよ」
「ありがとうございます!今度兄さんに淹れてあげよう♪」
「優月、淹れ方を教えてもらうのもいいけれど、そろそろここに呼んだ用を聞かせてくれないかしら?」
リーリスさんは足を組みながら少し苦笑いを浮かべて言ったので私は我に返り、少し恥ずかしい気持ちになりました。
「あ、すみません……実はリーリスさんに相談がありまして……もしよかったら、サラさんにも聞いてもらいたいですし、よかったら二人の意見もいただきたいです」
「私もですか?」
「はい。お二人じゃないと相談出来ないものなので……」
「……それについて言われた時からずっと気になってたのよね。なんであたしたちなの?影月とか、安心院さんとか他にも透流とかいたでしょ?」
「それについては後ほど分かると思います。まずは聞いてくれませんか?」
そうリーリスさんに問うと、「……分かったわ」と言って話を聞く態勢になり、サラさんは私を見て頷いてくれました。
そして私は頭の中で言うべき言葉を整理した後、話始めました。
「実は最近ある事で悩んでいまして……」
「珍しいですね。兄妹揃って頭脳明晰でお嬢様とは違って、授業に毎日しっかり出ていて、性格もいい貴方が悩みなんて……」
「ちょっとサラ、何軽く主をディスってるのよ……」
半目でサラさんを見るリーリスさん。そしてそんな視線を受け流すサラさん。しかしリーリスさんのその態度は怒っていると言うより、どこか諦めた感じに見えたのはなぜでしょう?もしかして自分で自覚してるんでしょうか?
「……はぁ、まあいいわ。で、そのある事って?」
リーリスさんは疲れたようにため息をはいて私に向き直りました。そして私は話を続けます。
「はい、ある事とは兄さんに関してでして……」
「影月?どうかしたの?」
「最近兄さんが構ってくれない……というか最近朔夜さんの部屋に行ってるみたいなんですよね……なんででしょう?」
「「…………え?」」
……あれ?なんか二人ともぽかんとした顔をしてますけど……。
「え?私、何か変な事言いましたか?」
「……い、いえ、ですが予想外の人物の名前が出てきたので……」
「……ねぇサラ、そんな家族事情みたいな事をなんであたしたちに相談してきているのか理解出来ないんだけど……理解出来ないあたしはおかしいのかしら?」
「いえ、私も分かりませんからご安心を……しかし話の内容的にに影月さんや朔夜様に関係しているので彼らには聞きにくいと言うのだけは理解出来ます」
サラさんがそう言いました。確かにこの事を兄さんに聞いても「別に大した事じゃない」とか言いそうですし、朔夜さんに聞いても同じような返答しか返ってくる気がしません。
「兄さんたちに聞いても、教えてくれなさそうですし……まともに相談出来そうなのはリーリスさんとサラさん位なんですよ。他の透流さんとかに聞いても、あまりいい意見が聞けなさそうですし……」
「……巴に話したら何か叫びながら走って行きそうね……そうね、頼られるのは嬉しいけれど内容が……ちょっとサラ?」
確かに巴さんだったら「影月の不埒者ー!」とか言って走って行きそうなので、ろくに相談出来ません。そもそもこういう?関係の話はリーリスさん以外には話せそうにありません。
もちろんそういう関係の話では無いと思いますけど……少し話すと多分誤解する人は多い気がします。
(前々から思ってたけど……やっぱり影月と朔夜って……)
(はい、実は私も少し疑っていましたが……おそらくそうかと……彼女の話でほぼ確実かと思われます)
(そうね……でも、まだ
リーリスさんとサラさんは何やらコソコソと小声で話していますが、何を話してるんでしょうか……?
「何話しているんですか?」
「い、いえ何でもないわ。う〜ん……朔夜が影月に自分の研究の事でも聞いてるんじゃないの?あるいは手伝いとか?」
「う〜ん……そう思うんですけど、兄さんだけでなぜ私は呼ばれないのかな?と思いまして……どちらかと言うと、私の《
そう告げると二人は黙って考え込んでしまい、私も何も言う事が出来ずに数分間沈黙が続きました。
今日の天気は晴天で、暗い気持ちや空気を流してくれるような心地よいそよ風も吹いているのですが……このガゼボにはそんなそよ風が吹いてきても、この気まずい空気は流れませんでした。
「「「…………」」」
(……本当に気まずいです……)
そう内心は思ったものの、私が言い出した事ですし、他に言う言葉が無いので仕方ありません……。
そんな時間がさらに数分ーーー唐突にリーリスさんが口を開き、その沈黙を破りました。
「……そうね。貴方から構ってほしいって言ってみたらどうかしら?あまり自分から構ってほしいって言ってないでしょ?」
「う〜ん……でも忙しそうなので言えなくて……」
「そういうのは自分から言ってみないとダメですよ。私もお嬢様と同意見で、構ってほしいと仰ってみたらどうでしょうか」
リーリスさんとサラさんから出た案はそういうものだった。
確かに私自身そう考えて、構ってほしいと言ってみようと思ってたのですが……こういう時はなぜか気が引けて言えないんです。
そんな状況なので朔夜さんと話し、言ってみようと思ったあの言葉も結局は言えずーーー
「後は朔夜の部屋に行ってみる事ぐらいかしら?あたしはそれくらいの案しか出せないわよ」
サラさんも頷いていました。
つまり理事長室に突撃をしろって事でしょうか……あまり乗り気はしませんがーーー仕方ありません。あの言葉を言う為にも覚悟を決めないと。
「そうですか……ありがとうございます」
私はミルクティーを飲み干し、立ち上がる。
「あら?もう行くの?もう少しゆっくりしていけばいいんじゃないかしら?」
「誘いは嬉しいのですが今回はこのくらいで。恥ずかしい話ですが最近兄さんに構ってもらえなくて、欲求不満なんです。夜は安心院さんがいるので難しいですし」
「兄妹仲がいい事ね。……それとも貴方がブラコンなのかしら」
後半何か小声で言ってましたが、私にははっきり聞こえなくて首を傾げました。
「ーーー?まあいいです。私は行きますね?また今度ゆっくりお話ししましょう?兄さんとかも呼んで」
「ええ、分かったわ」
そして私は相談に乗ってくれた二人に改めてお礼を言ってから、寮へ向かう事にしました。
「兄さん?ここにはいませんね……」
寮へたどり着いた私は早速、兄さんと私と安心院さん(厳密に言うと彼女は違いますが)の部屋を覗いてみましたが、誰もいません。
「……ラウンジですかね……」
私は部屋を後にし、ラウンジへと向かう。
ラウンジに着くと数人のクラスメイトたちがくつろいでおり、その中に見知った顔もありました。
「ん?優月ちゃんじゃないか。君も休憩か何かかい?」
私に気付き、声をかけてきたのはこの数日ですっかりクラスに馴染んだ安心院さんです。
彼女は読んでいた漫画から視線を外してそう言い、安心院さんの言葉で数人のクラスメイトが私の方を見てきましたが、私の姿を確認すると皆自分のやっていた事を再びやり始めました。
「いえ、兄さんを探していまして……見てませんか?」
「影月君かい?僕は見てないなぁ……皆は見た?」
「見てない」
「分からないよ」
「知らないぜ」
「右に同じく〜」
安心院さんの呼びかけに答えてくれる皆さん。誰も知らないのかと思い、教えてくれた人たちにお礼を言って別の場所を探そうとした時ーーー
「あ、私、見たよ!校舎の方に向かって歩いて行ったよ!」
一人の女子生徒がそう言ってくれました。
「ーーーだそうだよ。何の用かは知らないけど、行方を知ってた人がいてよかったね?」
「はい!皆さんありがとうございました!安心院さんもありがとうございます!」
私は皆さんにお礼を言って、校舎へと向かう事にしたーーー
side out…
no side
ーーー時は遡り、優月がガゼボを目指し歩いていた頃ーーー
「……発見出来ましたか……資料もいくつか見つけたと……ええ、ならばすぐに回収なさい。そして学園の地下の格納庫に収容して大至急修理を……専門外なのは百も承知ですわ。でも旧世代の兵器ですし修理もできるでしょう?なるべく早く……劣化が酷いのも分かっていますわ。……ええ、武装も当時の資料を元に復元、修理をお願いしますわ。……それでは頼みますわ。では……」
朔夜は理事長室にある電話を切り、安堵の息をはいた。
先ほど電話をしていた相手は、この学園の研究員だ。内容は朔夜が指示したある孤島にてある兵器といくつかの資料を発見したという報告だ。朔夜はその報告に対し指示を出し、現在に至る。
「これで一つ……後の兵器は……開発も難しいのでとりあえず未定ですわね」
なぜ彼女が兵器回収を指示するのか?それはここ最近あった出来事に起因する。
数週間前に行った臨海学校にて現れた集団ーーーこの場合は聖槍十三騎士団ではなく、《
それを受け、朔夜は警備に《
その中で一枚の興味深いーーーそれでいて利用出来そうな旧世代の兵器資料を見つけた。
今から百年程前ーーー2005年にアラスカ・フォックス諸島沖にあるシャドー・モセス島で極秘に開発されていた核搭載二足歩行戦車ーーーすでにこの説明で分かった者もいるだろう、「メタルギアREX」の開発資料である。
極秘であるが故に当時その情報は一切表に出ずに隠されていた兵器の資料をなぜ彼女が見る事が出来たのかーーー
その理由は一世紀という途方も無い時間が経ち、当時の関係者たちが一人もいなくなったので情報統制が緩くなったという事。
そして表の世界では出ていなくても裏の世界では詳しい情報が開示されていた事が理由にあげられる。
「……はぁ……」
「メタルギアREX」を動かす事が出来れば、騎士団相手には太刀打ちできなくとも、人間相手ならば対抗できるだろう。
朔夜は「メタルギアREX」の資料を机の引き出しにしまい、別の資料を出す。
その資料も重大書類であり、これもまた朔夜の興味を惹きつける内容のものだった。
「レーベンスボルン……」
レーベンスボルンーーーハンイリヒ・ヒムラーが設立した福祉施設ーーーしかし裏では超能力を持った子供を生み出す研究が行われていたと、朔夜の手元の資料には書いてある。
一見何の関係も無いように見えるが、聖槍十三騎士団黒円卓第六位、イザークはこの施設で生まれたのだからそういう意味では無関係とは言えない。それにーーー
「……私も似たようなものですわね」
朔夜自身も思う所がある。自虐的に笑う彼女は自分の生い立ちを思い出していた。
当時、《
長年の研究の末、彼女の祖父の研究は段々と形になっていたが、彼は自分の年齢では研究を成し遂げ、求めた結末に至り、見届けるのは難しいと感じ始めていた。
その為、彼は自分の研究を次に繋ぐ為にある事に着手した。それはーーー
自らの研究を
そのような第五天が聞いたら憤怒しそうな思惑で創られたのが、朔夜だった。
彼女は普通の子として生まれる筈だったが、祖父の研究を継がせるという勝手な理由があった為に生まれる前にその進む道を決められてしまった。
彼女は遺伝子操作によって、高い知能を備えてこの世に生を受ける。それこそ生後数ヶ月で会話が出来る程の知能を持ってーーー
「……彼も創られた、と言えるのでしょうね」
イザークは僅か二ヶ月で誕生し、常人の五倍もの速さで成長したと書いてある。
自分と同じく研究で生み出された「異常」な子。そこに興味を惹かれたのだ。
朔夜自身も自分が異常な人間であると認識している。天才ーーー朔夜を知る者は誰もがそう呼ぶが、その二文字の裏に隠された真実はそのような異常な背景がある。もし常人が聞けば憐れみを感じるだろう話だ。
「……でも最近の私はお祖父様の意志に背いてますわね」
自分は祖父の研究を継いだ、ただの操り人形。そう言われたし、そう思ってもいた。だが、最近の出来事で朔夜の変わる事の無かった意志が段々変わってきた。祖父の研究を成し遂げるという意志ではない、別の意志が朔夜の胸中へ渦巻く中ーーー
「朔夜、入るぞ」
そこへ一人の青年が入ってきた為、彼女の思考は一旦中断された。
side 影月
「朔夜、入るぞ」
ドアの向こうの返事を聞く前に、俺は部屋へと入る。
「返事をしてから入ってきてと何回も……もういいですわ」
俺を呼び出した
「で、用ってなんだ?何か話でもあるのか?」
俺が近付いてくる朔夜を見ながら問うとーーー
「ちょっとこちらへいらして」
「ちょ、おい!」
いきなり手を掴んで引っ張られる。俺は驚きの声をあげるも彼女は構う事なく手を引いて、来客用のソファーに座らされた。
そして座った俺の膝へ朔夜が頭を乗せる。
「……朔夜、何を……?」
「疲れたのですわ。少し
……その為だけに俺を呼んだのかこの人は。
内心呆れるものの、朔夜はその水晶のように透き通った紫色の瞳で「ダメですの?」と無言で訴えかけてきた。……ダメだ、可愛い。
その無言の問いかけにやはり俺はダメとは言えずーーー
「……仕方ない。少しだけだぞ」
「くすっ、ありがとうございますわ♪三十分経ちましたら、起こしていただけます?」
「了解だ。それじゃあ、ゆっくり休みな」
「ええ、おやすみなさい……」
それから一分程経つと、規則正しい寝息が聞こえてきた。膝で眠っている朔夜の顔を見ながら、俺は部屋に入った時の彼女の顔を思い出す。
(どれくらい寝てないんだろうな……)
部屋に入ってきて、朔夜の顔を見た時に思ったのはそんな感想だった。
その感想を抱いた理由は彼女の目の下のクマが安心院の入学前日に会った時より酷くなっていたからだ。おそらくあの日以来、あまり睡眠を取らず、仮眠も少ししか取っていないのだろうと予想出来る。
(眠れない程仕事が忙しいのか……確か十一、二歳だよな……?それなのにそんなに頑張ってるとは……)
今、俺の膝を枕にして寝ているこの少女はこの学園の理事長であり、最高責任者である。そんな少女が一体どれだけの仕事をしているのか、俺には分からない。
しかしーーー今とても疲れているのは理解出来るし、さらに俺に頼りたいという気持ちも感じ取れた。
俺はふと、彼女の闇色の髪を撫でる。少しでも疲れが取れるようにと思ってやった行動だ。……撫でるととてもいい香りが鼻腔をくすぐる。
「うぅん……」
寝ていた少女は突然頭に触れられたからか、無意識にビクッと体が震えた。でもそれに構わず撫でていくと徐々に体の強張りが消えていき、薄っすらと気持ちよさそうな顔を浮かべ、また規則正しい寝息が聞こえてくる。
(最高責任者とか言っても、こうして見るとやっぱり幼い少女なんだな)
俺は彼女の寝顔を見ながら無意識に頬が緩んでいた。その事に気付くのは五分後の事である。
そして起こしてと言われた三十分が経った。
「朔夜、時間だぞ」
「すぅ……すぅ……」
「……起きないか……」
経ったのだが……朔夜が起きない。そんな熟睡する程寝てないのかと少しばかりの呆れや、心配を感じつつも優しく体を揺らしてみる。
「お〜い、起きろ〜」
「………………」
「……今揺らされて起きたんじゃないか?」
「………………」
揺らすと寝息が途切れ、沈黙した朔夜にそんな事を言ってみる。しかし反応が無かったのでやっぱり寝てるのだろうと理由を付ける。
どうするか……壁にかかっている時計を見るともうすぐで三十分を過ぎてしまう。おそらく彼女はこの後もすぐに片付けなくてはならないような仕事がある筈だ。だからすぐにでも起こさないといけないのだろうがーーー
「……じゃあこれでどうだ」
そう言って、俺は朔夜の
ーーー数秒で彼女の頬から顔を離して顔を見てみるが、起きる気配はない。
(仕方ない……なら最後の手段を……)
最後の手段として、再び顔を近付ける刹那ーーー白い二本の腕が俺の首と後頭部に絡みつき、引き寄せられる。そしてそのまま少女と唇が重なった。
ーーー長いようで短い口づけが終わり、口が離れると彼女に睨まれる。
「全く……やるのなら口にしてほしかったですわ」
「…………やっぱり起きてたのか。口にするのは最終手段だ」
そう言うとふっと優しい笑みに変わった朔夜は起き上がって俺の目を見つめてくる。
「初めからしてもいいんですのよ?それに、してほしい事を思っていたのは嬉しいですわ」
「美しい眠り姫はキスで目覚めるものだろ」
朔夜にそう返すと、彼女は頬を赤らめて「冗談がお上手ですわ」と小声で顔を逸らしながら言った。
だから俺は朔夜の肩を掴んでこちらを向かせてーーー
「冗談だと思うか?」
そう笑みを浮かべながら再び口を重ね合わせるーーー
「兄さん……?」
しかしふと不意にいつも聞き慣れた声で呼ばれ、呼ばれた方向ーーードアの方を向くと、優月がドアを開けたまま唖然としていた。
「あーーー」
「優……月?」
俺はなぜ優月がここに?とか、いつから見ていた?などの疑問は思い浮かばなかった。ただこの時は頭の中が真っ白になって何も考えられなかったのは覚えている。
そんな双方ともに固まったままの時間が数秒経った後ーーー
「あ……えっと……お、お邪魔しましゅた……」
優月は顔を真っ赤にして勢いよく扉を閉めて、走り去るような音が段々と離れて行った。てか今なんか噛まなかった!?
「……ちょ、優月!?待て!待ってくれ!!」
俺はそう叫び、廊下へ飛び出す。飛び出す間際に「み、見られましたわ……」とか後悔したような声が後ろから聞こえた気がするがーーーそんな言葉を無視して廊下へ出ると、かなりの速さで走っていく優月の姿を確認出来た。俺はそれを追いかけて行く。
「優月!待ってくれぇぇぇ!!」
「兄さん!?邪魔しませんから追いかけないでください〜!!」
ーーーその後なんとか優月を捕まえて朔夜と共に誤解を解いたり、朔夜が俺に告白したなどの出来事を話してひとまず事態は終結した。
ちなみに逃げる優月とそれを追う俺の姿を見た生徒たちは様々な憶測話(ついに仲良く追いかけっこをするようになったとか)を想像し、俺たちに実際はどうなのかと聞きに来て面食らうのはまた別の話だったりするーーー
……ちょっと分かりづらい所が多々あると思います。仕方ないんだ……最近のリアルがちょっと忙しいのが悪いんだ……。
マリィ「ねぇ、ザトラ」
うわっ!?マリィ……さん?どうしましたか?
マリィ「ちょっと言いたい事あってね。わたしやレン、シロウとかはまだ出ないの?」
まだです……もう少し先ですかね……
マリィ「む〜……わたしは回想で出たからまだいいけれど、他のみんながかわいそうだよ」
あ〜……はい。なんとか早めに出せるように頑張りたいと思います……。
マリィ「それともう一つ……聞きたいんだけど」
あ、何でしょう?
マリィ「あなたはサクヤの事が……好きなの?」
……好きですよ?前にも言いましたよね?ロリコンではないですけど。
マリィ「あなたは……黒髪に紫目の人好きなの?なんかシラキインリリチヨって人も好みだって聞いたけど」
……マリィさん、その情報どこで聞きました!?
マリィ「カリオストロからーーー」
ちょっとメルクリウスにお話があるので行ってきます!誤字脱字・感想意見等よろしくお願いします!
マリィ「あ、それとたまにあとがきでわたしたちも遊びにくるよ!それじゃあ、ザトラの小説を見てくれてる人たちみんな本当にありがとう!」