アブソリュート・デュオ 覇道神に目を付けられた兄妹 作:ザトラツェニェ
戦闘シーンの描写が一部(オリジナルの場所)が上手く書けてるか心配ですが……生暖かい目で見てください……。
それではどうぞ!
side 影月
《
俺たちは開催会場へ向かうため、敷地外に出た。モノレールを降り、駅前で待機していた専用バスへと乗り込むと、十分ほどであらもーど屋上駐車場へと到着した。
普段なら多くの車が止まっているであろうこの場所も、今は俺たちが乗ってきたバスのみだ。
「ったく……全館貸し切りって、どんだけの金持ちだっての」
「しかも三日間借りきったらしいな。幾ら掛かったんだか」
「お金の無駄か……」
駐車場を見回して呟く
館内が大なり小なり損壊する事を考慮し、修繕の為に予備として数日間借りきったとの事だ。
「…………ふんっ」
城上は話し掛けてきたのが俺たちだと気付くと、眉をひそめ離れていった。
(……何かした覚えはないな……透流の方か?)
城上の態度に俺は思い当たる事が無く、適当に透流の方に何かあるのだろうと理由を付けて俺も離れ、優月の元へと行く。
「優月、作戦は覚えているな?」
「あ、もちろんですよ!兄さんこそ忘れてないですよね?」
「もちろん忘れてない。そもそも発案したのは俺だからな」
優月と話しながら頭の中で作戦を確認しているとーーー
「っと、主催が来たようだな」
橘の言葉が聞こえ橘の見る方向を見ると、車種は分からないが黒塗りの高級そうな車が、
最初に降りてきたのはリーリスではなく、彼女の執事であると言う少女ーーーサラだった。
サラが
その背後から黒衣の少女ーーー
そして三國先生も姿を現し、進行を始めた。
「皆さん。これより理事長よりお話があります。静かにするように」
「皆さん、ごきげんよう。既に存じているとは思いますが本日は本来ならば《
理事長が隣に立つリーリスを紹介するように手を向けると、リーリスはすっと頭を下げた。
「当学園の兄弟校であるフォレン聖学園から転入してきました、こちらのリーリス=ブリストルさんたっての希望もありまして、予定を変更し親睦会ーーー《
予定変更と言っても、格上の相手へ戦略を
「この《
理事長の挨拶が終わると、三國先生からルールについて改めて説明がある。
特に変更は無く、生徒全員が館内に入り、十分後にリーリスが入った所で開始との事だった。説明が終わり、俺はあらもーど内へと向かおうとしたが、そういえばと思い、理事長たちに振り返りながら言った。
「理事長、三國先生、そして月見先生、以前話したとおり、屋上は頼みましたよ?」
「分かっていますわ。館内は貴方たちに任せます。怪我の無いように頼みますわ」
理事長のその言葉に俺も透流たちクラスメイトもそして、月見先生も三國先生も驚いた。
「……?三國?他の皆さまもいかがしましたの?」
「…………理事長が他人を心配するなんてそんな事今までありましたか、兄さん?」
「……いや、無いな……」
「ーーーなっ!?」
俺と優月の反応を見て、一気に顔を赤くした理事長。
「私もこの方がこんな事を言うとは思いませんでした……」
「み、三國!?そ、それは心配くらいしますわ!気をつけてくださいよ!」
若干語尾が変わっているあたりかなり恥ずかしいようだ。よく見れば少し頬が赤い。そんな姿を見て年齢通りの反応を初めて見たような気がして少し微笑む。
そうして、館内へ向かおうとすると月見先生が寄ってきて、耳元に小声で。
「あのお嬢様があんな顔を見せるとは思わなかったぜ、良いもん見れた。ありがとうよ、《
「こっちもあんな顔するとは思わなかった。じゃあ、任せましたよ」
「くはっ、任せられたぜ。じゃあ、頑張れよ」
と言って月見先生とすれ違った。
(月見先生もらしくないな)
そう思いながら館内へと入った。
館内へ入ると、すぐに二階へ降りるエスカレーターがありそれを降りていった。電源は入っていないらしく動かないエスカレーターを下っていく。そして二階へ降りると、辺りはシンとしていて、物音は後ろから入ってくるクラスメイトのエスカレーターを降りる足音だけしか聞こえない。
「さて……それじゃあ優月、頑張れよ?俺は今から作戦通り仕込むからな?」
「はい!兄さん!」
「じゃあ……《
優月の返事を聞いて確認した後、俺は《力ある言葉》を言う。その瞬間、俺の全身を青い焔が包みーーー焔が弾けると俺は自らの《
その銀色に輝く《槍》を見て、クラスメイトは皆、息を飲んだ。
そんな反応をしているクラスメイトを一瞥して、仕込みの為に俺は走り出した。
side out…
ここはあらもーど館内、東西へ伸びた約四百メートル程の幅の広い真っ直ぐな通路と、その途中にある四つの広場で成り立っている。
生徒たちが降りてきた一番東の広場が
通路は一本道ではなく、緑と中央、中央と空の広場はそれぞれ細めの通路で移動可能。
また、館内は二層構造だが、そこかしこの通路や広場が一階と二階を繋いでいる吹き抜けである。
そんな館内は店が開いているのに、人がいないという異質な雰囲気が流れている。そんな静けさが広がる館内でーーー
銃声が響いた。さらに少し間をおいて再び銃声が何度か響いた。
「向こうへ行ったぞ、追えーーっ!!」
という声が聞こえ、突如館内は騒がしくなったーーー
「リーリス!!」
九重透流が柱の陰から飛び出し、黄金の少女の前へ立ちはだかる。
黄金の少女ーーリーリスは《
「あら、九重透流じゃない。さっきぶりね」
「……そうだな。思った以上に早い再開で驚いているよ」
透流は皮肉めいた笑みを彼女へ向ける。
「それはあたしも同じ……でも良かったわ。あんたを捜し回らずに済んで」
彼女は髪を手で払うと、《銃》の狙いを透流へ定めた。
一瞬の静寂の後ーーー銃口が火を吹いた瞬間、金属とぶつかり合う音。
透流の《
「……やるじゃない。それとも偶然かしら?」
「偶然だと思うならもう一度試してみるか?」
「……やめておくわ。あんたの事、
リーリスが《銃》を回すクセを見せる中、透流が広角を上げる。
「……いや、逃がしはしないさ。今度は
「任せろ!!」
吹き抜けを挟んだ向かいの店から橘が《
リーリスの脇にある店の中からタツが飛び出した。
「ーーっ!!」
片方に意識を向け、真逆から攻撃する。戦術としてはなかなか良いものだがーー
「シンプルだけどいい手じゃない」
タツに視線を動かし、リーリスは余裕を持って言った。
振り下ろされた《
「タツ!!横に払え!!」
その指示を聞くと同時に物陰に潜んでいたユリエが飛び出してきた。
フェンス上ならタツの攻撃は飛んで避けるしかなく、ユリエは着地の瞬間を狙って時間差攻撃を仕掛けたのだ。
予想通りリーリスはガラスフェンスを蹴って宙を跳んだーー
「なっ……!?」
一階までの高さは五メートル以上ある。だが、彼女は何事もなく着地した。
「悪くない攻めだったけど、《
ガラス天井から差し込む陽光を、一身に浴びる黄金の少女はとても綺麗で見惚れるほどだった。
「来ましたね」
その声を聞き、リーリスは声のする方へと向いた。
そこには優月が《
「あら、貴方は?」
「如月優月って言います。よろしくお願いしますね?リーリスさん」
優月はにっこりと笑った。その笑顔を見た近くのクラスメイトや、透流たちはまた見惚れてしまった。
「……ふーん、貴方の《
「優月ちゃん!!逃げて!!」
みやびが叫んだが、リーリスは銃口を優月に向けーー銃弾を放った。
が、
「……案外簡単なんですね」
『ーーーっ!?』
そこには《
その姿を見たリーリスも他の皆も瞠目していた。
「貴方……どうして……」
「……撃たれたんだよね?優月ちゃん」
「ヤ、ヤー……どう考えても当たったとしか……」
「簡単ですよ……」
「……まさか、そんな……」
そこで透流は信じたくないが、それしか防ぐ方法が無いと気付いて言った。
「《
「透流さん、その通りです」
『はぁ!?』
「初めてで出来るか分からなかったのですが……やってみるものですね」
そう、優月は
「さて、弾ける事も分かりましたしーー少し試してみましょうか!!」
(ーーーっ速い!?)
その言葉と同時、優月が十数メートルほどの距離を瞬きする間に詰めてきたのだ。
そしてそのまま、剣を上段から振り下ろした。
リーリスはバックステップで回避したが、予想以上の速さに驚いて回避が遅れてしまった為、髪に少しかすり数本の黄金の髪が宙を舞った。
「……速いわね。貴方本当に《
こうして冷静を保っているリーリスだが、内心とても動揺していた。どう考えても先ほどの距離を詰める速度は《
「……ふふっ、じゃあ一回だけ使ってみますね♪やっぱり私自身も少し使ってみたいですし……手加減はしますから
そう言うと、優月の雰囲気が変わった。それと同時に辺りが陽の光とは別に白く輝き始めたのだ。
「な、なんだ!?」
トラや他のクラスメイトたちも周囲の変化に戸惑っている様子の中ーーー優月は。
「私が犯した罪は
War es so schmahlich―」
「心からの信頼において あなたの命に反したこと
ihm innig vertraut-trotzt'ich deinem Gebot,」
彼女は周りの反応など気にしないように、自らの口から詠唱を紡ぐ。
「私は愚かで あなたのお役に立てなかった
Wohl taugte dir nicht die tor ge Maid,」
「だから あなたの炎で包んでほしい
Auf dein Gebot entbrenne ein Geuer;」
「我が槍を恐れるならば この炎を越すこと許さぬ!
wer meines Speeres Spitze furchtet, durchschreite das feuer nie!」
「ーーこれが、影月が言っていたーー力?」
透流がそんな事を呟くと同時に詠唱が終わる。
一方リーリスも何が起こっているか分からず、目の前の少女を見ていたがーーーほんの一瞬、目の前の少女が金髪のポニーテールの軍人の姿と重なって見えた。
「創造
Briah―!」
「雷速剣舞 戦姫変生
Donner Totentanz―Walkure!」
ーーーここに雷速で駆け抜ける少女が再び現れた。
「ーーーな、何よあれ……」
帯電し、こちらを見ている優月を見たリーリスは戦慄した。あれは、あの能力はまさにーーー
「あれが、《
そう透流が思うのも無理は無い。まさしく解放される力と思われるもの、だがーーー
「ちょっと違いますよ?まあ、今の私は《
そう言った途端、目の前から優月が消えた。
(逃げ……っ!?違う!!)
逃げたかと一瞬思ったリーリスだが、青白い光の残像が館内を縦横無尽に飛び回っていた。こうして跳び回ってどこかから攻撃してくるのは容易に予想出来た。
(どこから来るの!?)
これほどの速度なら正面や背後から襲われる可能性はとても高い。しかし、相手は雷速ーー青白い残像しか見えない。なので、気持ちを落ち着け、目で追わずに空気の振動などで場所を探ろうとする。
リーリスは狩りもするので相手の位置を空気の流れなどで察する
そうして、気配を探ること約二秒ーーー
(ーーー左!!)
左から攻撃が来るというのを察知。そして攻撃も速いだろうと思い、防げる自信もなかったのでリーリスは前方へ素早く移動して回避を選択した。回避後、背後で剣を振り下ろす音が聞こえ、心の中で回避出来た事に安堵するリーリスだがーー
「流石ですね。でも油断していると……危ないですよ?」
その言葉を聞いた瞬間、前方の店の前辺りから銀色の光が見えた。
(っ!?まず……!?)
それに気が付いたリーリスは無理矢理姿勢を低くし、薔薇が散らないようにしながら伏せる形で避けた。
その頭上を何かが通り抜けた音がしたと思ったら、後ろから地面が砕ける音がした。
「惜しかったですね……それと兄さん、出来たんですね!!」
『ああ、案外簡単だった。』
優月が話しかけているのは先ほどリーリスが避け地面に突き刺さった槍で、その槍から声が聞こえた。
『どうだい?リーリス。この攻撃手段は?』
「……それが貴方の《
『そうだ。設置型としてこの槍が使えるって気が付いてな?この槍が見た風景は俺も見れる上にこうして槍を通して話せるから、攻撃も正確で偵察にも使える。おまけに設置するとどういうわけか透明になるし、数も多く作れたからいろんな所にしかけてあるぜ?』
つまり、この槍は影月の目であり口であるという事だ。
「デタラメなっ……!」
『ははっ、自覚してるさ。さて、優月分かってるな?』
「はい!ではまた後で会いましょうか、リーリスさん♪」
そう言うと、優月は剣を高く掲げ、
「うわっ!?」
「きゃ!?」
「くっ!?」
そして光が徐々に収まり、辺りが見えるようになると優月と影月の槍、そしてリーリスが消えていた。
「見失った!!」
「仕方ないさ、九重……だが……」
「あ、あんなに強かったの……?優月ちゃんと影月くんって……」
その場にいた全員が呆然として、先ほどの二人のクラスメイトの姿を思い浮かべていた。
一方、あの場で閃光に紛れ、離脱した黄金の少女も近くの店の中で呼吸を整えながら先ほどの事を思い浮かべていた。
「はぁ……はぁ……何よあれ……勝てる訳ないじゃない」
《
「ふぅ……とりあえずあれは本当に後回ししないとね……透流よりも後回しになるかしら……」
そう言いながら、黄金の少女は店から出ていった。
「…………」
影月は目を瞑って自ら置いた《
彼がいるのは《
彼は開始直後に館内を回り、様々な所で自らの《
そんな彼はふと屋上駐車場に置いた槍の映像を見て呟いた。
「……どうやら、別のお客さんが来たようだな」
そう言う影月の口元は薄く楽しげな笑みを浮かべていた。
次回は後半です!
dies勢があまり出てこないという……ちゃんと出しますからね!?
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