魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》 作:オウガ・Ω
「…ぐす」
お互い自己紹介をした直後でした、目の前で泣き出した年上で同じ学院に通うタカヤ・アキツキさんを見て少しだけ驚いています
アキツキ…何故か、なのはママの名字『高町』と響きが似てて、其れに他人とは思えない感じが、まるで昔から知っている…そんな感じが私の胸のうちに沸き上がっていました
第四話 演武
私は今、ノーヴェさんに紹介された女の子…高町ヴィヴィオさんと歩きながらお話を、自己紹介をしながら見ている
…小さな手、脆そうな体…だけどこの紅と翠の鮮やかな瞳…
私の記憶にある間違うはずもない聖王女の証…
「あのアインハルトさん?」
「ああ、失礼しました」
「あ、いえ…あ、あの少しいいですか」
「なんでしょうか?」
ヴィヴィオさんはノーヴェさんに引きずられ必死に抵抗するアキツキさんを見てから
「アインハルトさんは、アキツキさんのお友達ですか?」
「…アキツキさんはクラスメイトです、あのヴィヴィオさんどうかしたのですか?」
「あ、あの…今日はじめて会ったのに何故か昔からアキツキさんを知っている感じがして…おかしいですよね」
…ヴィヴィオさんもなにかをアキツキさんから感じているみたいです
もしかして私と同じ…かと考えましたがそれを振り払い、しばらく歩くと区民センターに入ると手合わせをするためヴィヴィオさんと別れ着替え終えロッカーを閉めコートに入りました
―――――――
――――
ノーヴェさんに引きずられ区民センターに入りコートの脇に立ち軽く柔軟をする高町さんを見ながら辺りを見る
……昔僕が鍛練した場所に比べ、狭いと感じながらも今日手合わせをする二人…高町さんとストラトスさんが来るの待っているとノーヴェさんが近づいてきた
「…アキツキ」
「ノーヴェさん?…僕は」
「…無理に話さなくていい…ただこれだけ聞かせてくれ…お前迷っているだろ」
迷っている…その言葉を聞き体を震わせる、何故気づいたんだ
「…あたしはこれでもコーチの真似事もしてっからよ、才能や気持ちを見る目だけはあるつもりなんだ…」
少し照れながらも僕を見ながらを話を続けた
「…昨夜のアレ?と戦っていたときの動き、いや太刀筋に迷いが見えた…あたしの知り合いに剣を使うのがいるからわかるんだ」
そう言われた僕の脳裏にある言葉が浮ぶ
―魔戒剣斧オウガは使い手の心次第では時間さえも切り裂くのよ、迷いが在ると太刀筋は鈍り……―
鍛練場で魔戒剣斧オウガを構える僕に黒く長い髪を揺らしながら魔導筆を向け淡々と説明しながら……は爆符を数枚とりだし投げ其れを切り払う
…これ以上思い出したくはなかった、家を魔戒騎士を捨てた僕には関係ないはずなのに…あの人、…の言葉が頭に響く
「…お前が何故迷っているかは解らねェ…もしあたしに出来ることがあれば協力してやる」
真っ直ぐ僕の眼鏡?越しの瞳を覗くノーヴェさん…でも、ちょっと顔が近いんです…其れに胸が見えて
「あ~いいところですいませんッス…二人が着たよ」
「だ、誰がいい感じだって!?ウェンディ!!」
「…姉としては、流石にショタコンはいただけないな…」
「チンク姉までそんな目であたしを見るのか!?」
いきなり現れた二人、会話の内容からすると、どうやらノーヴェさんの姉と妹?みたいだ
なんか勘違いしてるみたいだし、ノーヴェさんの顔が髪と同じぐらい赤くなってる、試合もそろそろ始まる頃だと感じた僕は二人に声をかけた
「あ、あのう…ノーヴェさん困らせない方がいいですよ…お姉さんに…其れに妹さん?」
「ば、馬鹿なにいってるんだ」
「わ、私が、この姉が…妹…妹、妹、妹……………」
妹さん?がいきなり顔をうつむかせ近くの椅子に座るしかも体育座りして呟く、そろに座っている辺りが暗くなっているのは気のせい?
背後から肩を軽く叩かれ振り向いた僕に
「アキツキ…お前が悪い、無事に生き延びろよ…」
なんか哀れむように僕を見るノーヴェさん、何かしたの僕は?
「じゃあ、あのアインハルトさん!よろしくお願いします」
「…はい」
やがて二人の準備が終わり、ノーヴェさんがコートの中央に出てくる
「んじゃスパーリング四分1ラウンド」
ストラトスさんと高町さんはコート中央近くに来てかまえる、今回は射砲撃と拘束禁止の格闘のみのと告げ、そして掲げた腕が声と共に降り下ろされた
「レディ、ゴー!」
ノーヴェさんの掛け声と同時に、軽快なステップをしながら高町さんが仕掛けた
姿勢を低くし懐に飛び込むと右拳を顔面へと繰り出す
しかしそれをストラトスさんは読み最小限の動きをで拳を弾く
回りの歓声が響くなか僕は気づいた
(どうしたんだろ、ストラトスさん…あんまり楽しそうに見えない)
ストラトスさんの表情はまるで違和感を感じつつ手合わせをしている
―――――――
――――――
高町さんは真っ直ぐに…ひたすら打ち込んできます……
繰り出される拳、蹴りの連撃をかわし、または受け流しながら私は考えていました
まっすぐな技、きっとまっすぐな心、だけどこの子は……
連撃を繰り出し僅かな間隙を縫い構えその体に踏み込みと同時に掌啼を打ち込む
(私が戦うべき王ではない…)
私の放った掌手が胴体へ決まりヴィヴィオさんは空を舞う、それを見た他の方々が動こうとした瞬間
黒鉄色の何かかがマット迄一メートルの所で現れフワリと受け止める姿
「…高町さん大丈夫?」
黒鉄色のコートを纏った少年…タカヤ・アキツキさんがヴィヴィオさんをお姫様だっこ状態で立っていました
――――――
――――
危なかった、後少しで床に高町さんが落ちると判断した次の瞬間、床を蹴り跳躍し抱き抱えるように受け止めた僕にオットーさん、ディードさん(待っている間に自己紹介した)は驚いている
高町さんの意識が在ることを確認して安心するけど…何故か身体を震えさせている、やっぱりどこか怪我を?
いきなり顔をあげ凄くいい笑顔な高町さん、なんかすごく嬉しそう顔に対して、ストラトスさんは何か落胆した顔になり踵を返した
「お手合わせ、ありがとうございました」
「あ、あのっ!!」
いきなり高町さんが僕から飛び降りるストラトスさんの背中に言葉を掛ける
「すいません、わたし何か失礼を………?」
「いいえ」
「じゃ、じゃあ…あのわたし…弱すぎました?」
少し間が空け、高町さんの問いに答えた
「いえ、趣味と遊びの範囲内でしたら充分すぎるほどに」
その言葉を聞いた瞬間、高町さんの顔が悲しみに染まる…
「申し訳ありません、私の身勝手です」
「あのっ!すみません…今のスパーが不真面目に感じたなら謝ります!」
追いすがるように言葉を投げかける高町さん…その言葉に足を止め振り返り意外な言葉を口に出した
「…アキツキさん…私と手合わせいいでしょうか」
「…何で僕と?」
…何故僕と手合わせしたいんだと考える僕にストラトスさんはある構えを取る
「何故その構えを!?…」
腕を剣に見立て添えた拳を向ける型に僕には見覚えのありすぎる…魔戒騎士しか知らない筈の決闘を意味する構えを…何故ストラトスさんが知っているんだ?
「これの意味をわかりますね…アキツキさん」
…僕はやむ無くコートを脱ぐと高町さんに預けキリクを外す
「高町さん、後これも預かってくれるかな……どうしたの高町さん?」
「い、いえ何でもないです」
キリクを渡したときじっと僕の顔を観て慌てて離れて皆のいる席へといった
やはり僕の顔に何かついてるのかな?と考えながらストラトスさんと向かい合うと示し会わせたように構える
「……………」
「…………………」
お互いに動かない…いや動けない
一流同士の戦いでは先に動いた方が負けになる
しかし此所を借りていられる時間も余りない
僕は仕掛ける事を決め動く
素早く床を蹴り間合いを詰めフェイントを織り混ぜながら拳を撃ち込む
其れを無言で最小限ね動きで、拳を受け流され驚く
(…ひたたすら鍛練を重ね研鑽し無駄のない防御だ………くっ!)
間髪入れず放つ蹴り、拳を織り混ぜだ連撃を捌きながら考え気を引きしめる
でも…
―――――――
―――――
「す、すごい…」
わたしは目の前で凄まじい速さで拳と蹴りを撃ち込み、其れを受け流す二人…アインハルトさんとアキツキさんの動きを見て驚いています
アインハルトさんが蹴りを撃ち込みますが、其れをかわすと懐に踏み込み拳、または蹴り…其れを繰り返していました
無駄のない、俊敏さと獰猛さを秘めた美しい動きを見せるアキツキさん。けどその動きの中にわたしは迷いを感じてました
―何故僕は戦っているのだろう―
それしか言い表せないモノを感じていると
「ヴィヴィオも感じたか……アインハルトもだがアキツキの迷いはかなり深刻だ…ッ!そろそろ決めるみたいだ」
ノーヴェの言葉を聞きアキツキさんとアインハルトさんに視線を移すと二人が技を放つべく構えていました
―――――――
―――――
強い…まさか彼、アキツキさんがわたしと撃ち合えるとは思ってもいませんでした
フェイントを織り混ぜ繰り出した攻撃を軽々とかわすその姿は夢に出てきた魔戒騎士と重なるのを振り払い、体を沈め懐に入り下から上へと繰り出された鋭い拳を寸前で回避、微かに服を掠り何かが切れる音を耳にしながらすぐに構え直した私に対し彼の動きに迷いが濃く出て来ていました
私達の戦いをみるヴィヴィオさんとノーヴェさんも其れを感じているみたいです
(これ以上は長引かせると時間もありますので…これで決めさせていただきます)
互いに距離を置き構えた私を見てアキツキさんも構え…
「…もう止めよう…僕よりもストラトスさんは向き合わなきゃいけない人がいるはずです」
「え?向き合わなきゃいけない人…ヴィヴィオさんのことですか?」
コクリとうなずきアキツキさんは話を続ける
「…高町さんは強くてそれに真っ直ぐだ…心も……僕よりもあなたの想いを受け止めてくれるはずです」
そういい終えると構えを解きコートから出ていこうとする
「ま、待ってください……アキツ…!?」
振り返り彼に追い縋り彼の前に回り込み立ちはだかる私は見てしまった
哀しみと苦悩に満ちた顔をみた私は何も言えません
その時なにかが断続的に破ける音が聞こえ何か肌寒さと共に舞い散っていく
「………………………」
何故かアキツキさんが石みたいに固まり、目が私の身体の一点に注がれ鼻から赤いものが垂れマットへ落ちていく……私の攻撃がヒットし…
「ブハアアア!?」
勢いよく鼻血を吹き出しやがてそのままマットへ倒れるアキツキさんに駆け寄ろうとした私は肌寒さを感じる見るとアンダーシャツが破け、更にブラとショーツまで破けてる…あの時の鋭い拳が服を破壊していた事に気付いた
「き、きゃあああ!!」
胸元をおさえ座り込んだ私の悲鳴が区民センター中に響き渡ったのでした
―――――――
―――――
「…落ち着いたかアインハルト?」
「はい………」
アレ?から少したった…服を着替えたアタシとアインハルト達は現在ロビーにいる
近くのソファーで横になりまだ気を失ってアキツキもいる
「アキツキさん、大丈夫でしょうか…」
「…まあ大丈夫だ……少し刺激が強すぎたみたいだ」
コイツ、アキツキは謎だらけだ…出身地もわからねぇし、其れにデバイス?キリクも妙に人間くさい
「ノーヴェさん。もう一度、ヴィヴィオさんと試合を組んでくれませんか」
「何でだ?」
「もう一度、今度は試合形式でヴィヴィオさんと拳を交えてみたいんです」
もう一度やりたい…そういいまっすぐな瞳でアタシを見て頼むアインハルトから強い意思を感じる…
さっきからチラチラ様子を伺うヴィヴィオをアタシは手招きした
「あ~そんじゃまあ…来週またやっか?今度はスパーじゃなくてちゃんとした練習試合でさ」
「ああそりゃいいッスね」
「二人の試合楽しみだ」
アタシの肩を抱きながらウェンディが乗ってくる…ディエチやリオ、コロナも二人の試合を見るのを楽しみにしてるみたいだ
「…わかりました、時間と場所はお任せします」
「ありがとうございます!」
「い、いえ…あ、後」
ヴィヴィオに礼を言われて戸惑いながら意外なことを言ってきた
「で、出来てればアキツキさんにも立会人になって欲しいんです…」
「別に構わねぇが…」
ソファーに目を向けると気がついたのかアキツキが此方を見ている…だけどなティッシュを詰めたままくるんじゃねぇ
無言の圧力に気づいたのかティッシュを捨てるとアタシ達の側まで歩いてきた、試合に立ち会ってほしい事を伝える
「…いいですよ…それとストラトスさんさっきはごめんなさい!」
深々と頭を下るその姿、その姿を見た皆の反応は様々だ
何せ、あの動きを見せられた後じゃ本当に同一人物なのかと疑いたくもなるしな
一週間後に再戦するのを決めた後、ヴィヴィオはチンク姉と共に帰っていくのを見送り
何も言わずに帰ろうとするアキツキの腕をガッチリと掴み其れに姉貴やティアナ、アインハルトが驚く
「あ、あのノーヴェさん?これは一体?」
「今から、アタシ達と飯食いにいくぞ…」
「え、ちょっと?」
一方的にそう言ったアタシは必死に抵抗するアキツキを引きずり店へと向かう
「ねぇ、ティア…ノーヴェがショタコンの道へ走ろうとしているよ!どうしょう!?」
「あ、アタシに聞かないでよ!……年下か自分好みに…」
何か失礼な事を抜かす二人を気にせずアインハルトと共に店へと歩いていく
誤解がないように言っておく……アタシはショタの気はないんだからな!!
第四話 演武 了
キリク
『一週間後に紐パン嬢ちゃんとオリヴィエ似の嬢ちゃんの再戦が決まる一方タカヤは俺にあるものを作るように頼んできた…こいつを作るのしんどいんだぜ……次回、再戦!日常の影に闇迫る!!』