魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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「タカヤさん…」

狭間なる世界でタカヤの無事を祈るヴィヴィオ、アインハルト、ミウラ、ジーク、ファビア、ノーヴェ…先ほどまで見えていたタカヤとアギュレイスの戦いが途絶えて数分。無事なのかが気になって仕方ない様子が見て取れた

「大丈夫だ、タカヤなら負けないに決まってるだろ…」


「そうですね…必ず私たちの所に帰って来てくれるはずですよね」



「はい、だって祈っていたら秋月さんを強く感じたんです…」


「ワタシも感じた……」



「ウチもや……なあ皆、さっきのナカジマさんのアレの事で少しだけ話したいことあんやけどええん?」


何故かわからないが強く確信している皆にジークがした話……しばらくしてコレがとんでもない事に発展するとは誰も予想し得なかった



WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)





第二十五話 鷹矢ー白燐/紅ノ牙ー(後編)

『ヌグスカ!マキイクシ!!』

 

 

『はあああ!』

 

 

真魔界、その曇天の空を駆けるのは禍々しい異形の体躯を晒し翼を広げ叫ぶ黒き魔獣の王《アギュレイス》、ヴィヴィオ、アインハルト、ノーヴェ、ミウラ、ジーク、ファビアの想いにより甦った白燐の牙、歴代オウガ継承者八人の魂、魔皇石が融合し生まれた最強のオウガ《白燐ノ煌牙》…六対の蝙蝠の翼を羽ばたかせ剣斧《白燐煌牙ノ真剣斧》を構え迫る

 

 

『ヌクムヌクム、ズムヲシックルタキスムズケハ、クルシツヌル!!』

 

 

無数の腕をはやし空間跳躍させ背後に転移、無数の拳が襲いかかる。その時《白燐ノ煌牙》の腰から伸びた九つの尾がびくりと動き光の速さをこえた動きで拳打を防ぎはじき受け流した。そのまま鷹矢は剣斧を魔戒斧モード《白燐煌牙ノ真斧》へ変え大きく体を捻らせたとき、各部パーツが六方に分解し魔導火が隙間をうめ巨大な刃と変化、アギュレイスへ力いっぱい叩きつけるように斬りつけた

 

 

『グヌアアアアア!!』

 

 

左目が大きく切り裂かれぱっくりと開いた傷口から血飛沫が勢いよくまきちらかされ雄叫びが曇天の空を震わせ響き渡った

 

 

 

第二十五話 鷹矢ー白燐/紅ノ牙ー(後編)

 

 

 

『ぐ、グアアア……』

 

 

激しい胸の痛み、そして鎧を引きはがそうと身を焼かれながらホラーが群をなしのし掛かってくる重さを耐えふりほどこうともがくジロウ…ミシミシと鎧が軋んだ時、彼の耳にヴァイオリンの旋律が届いた

 

 

『こ、これは………』

 

 

    ーどうか帰ってきてー

 

    

     ーあなたの無事をー

 

 

    ー…みんなで待っていますー

 

身体に染み込むような旋律からギンガ、ディード、オットーの自分の無事を願い込められた強く純粋な想い…そして顔が浮かんだ瞬間、握られていた雷鳴剣から凄まじいまでの光と雷が生まれ群がるホラーを吹き飛ばし消滅していくのを意にも介せず再び襲いかかろうとしたホラーの動きが止まる

 

空よりも蒼く、鋭さを増した鎧に雷にも似た黄金のアンクレットが両脚甲、拳、肩に具現化。その背に黄金の翼が大きく広がりパチパチと絶えず放電させ立つ姿に怯んだ

 

 

       ー迅雷ノ破狼ー

 

 

黄金の装飾が追加され更に大きく三日月状の刀身中央に設けられたタービンが火花を散らし回転、放電し続ける雷鳴剣……新たな姿へと変わった《雷鳴月牙轟刃》を肩まで上げ構え一気に地を蹴った

 

 

『ぐるああああああああああ!!』

 

 

牙を大きく開き叫ぶ姿は野生の狼…いなウルフェン族のコーヒーにうるさい彼の姿を彷彿させ、力いっぱい振り抜いた瞬間、無数の雷が生まれ衝撃波と共にホラーの群を瞬く間に飲み込み消し飛ばし、空へ逃げようとするホラーへ雷光が剣の形を取り胴を、頭を貫き強烈な電撃を与え消滅させていく中、ジロウは雷鳴月牙轟刃を振るい飛翔しながら変化した鎧に込められた想いを全身に感じていた

 

 

『ウオワアアア!!(ギンガさん、オットー、ディード、おまえたちの想い確かに受け取った!オレは必ず帰ってくる!!)』

 

 

背後から迫るホラー数体を纏めて斬り伏せ地面へと叩きつけ地割れが起き雷光が地面を走り一体、また一体を飲み込んでいく

 

 

 

『ギヒャアアアア!!』

 

 

『アビヨアアアア!!』

 

 

 

断末魔が響く都度、雷光が瞬いていく…埋め尽くさんばかりの素体ホラーの群れが焼かれ消滅、分厚い刃に力任せに叩き潰され切られ光の雨が時折、降り注ぎ貫いていき後には迅雷ノ破狼が勝利の雄叫びをあげる姿があった

 

やがて旋律はレイジ、ソウマ、ユーノが戦う場へと流れていく

 

 

 

「く、ダメか……(チンクさん……)」

 

 

無数の虚無の砲弾を前にチンクの名前を口にした時、胸の痛みが消え旋律が形となり包み込んだ。

 

 

    ー………レイジ殿…どうか無事にー

 

 

旋律から自分を想いエルヴァを握りしめ祈るチンクがはっきりと見え左手に光が集まり《クナイ》が現れる。直感的にそれを迷わずつかみ取り閃光剣は逆手に構え素早く真円を二つ描いた。レイジを飲み込もうとした虚無の砲弾が眩い光と共にかき消され爆ぜた。ギリュスが牙を剥き出しながら殺意を溢れ出させたさきにいたのは

 

 

白銀のクナイをも想わせる鋭角的な装飾、緩やかな曲線から鋭さを併せ持つ紫紺地の鎧。背中には鎧旗をなびかせる騎士が《龍と馬》を合わせた白銀と紫紺の巨大なバイク?にも似た何かが歯車?を軋ませ、マフラー?から排気ガスの代わりに魔導火が吹き出させるそれに跨がる手綱をひく姿が逢った

 

 

    

     ー砕牙円刃・狼怒ー

 

 

『………いくよギリュス……』

 

 

手綱を引くと暴れ馬のように体躯を揺らしマフラーが後部に展開、四基のノズルから魔導火が吹き出し加速、一気にギリュスへ迫り体躯を道変わりに駆け上がっていく

 

 

『ヌ、ヌガャアアアアア!?』

 

 

タイヤが通る度、肉が裂け更に魔導火がこれでもかと焼き尽くしていく痛みに叫び声を上げながら振り落とそうともがくがタイヤから伸びたクナイが深々とスパイク替わりに突き刺さりふりほどけない、しかも刺さったクナイは数秒後に爆発し身を削っていく

 

 

『フ、フガアアアアア!!』

 

 

メシアの髪と呼ばれた自身を圧倒する存在に恐怖したギリュス、この忌々しい存在《魔戒騎士》を滅ぼすため自身の身体に無数の虚無の砲弾を形成、撃ち込んできた

 

『そう同じ手は通用しない!!』

 

 

レイジの声に応えるように砕牙円刃の両サイドがガシャガシャと左右、そして後部カウルが開き現れたのは百、いや二百以上のクナイが列を成し並び一斉発射。無数の虚無の砲弾へ突き刺さり爆発、瞬く間に消えると先ほどまで身体を傷つけていた魔戒騎士の姿がない

 

 

慌てて姿を探すギリュスを太陽にもにた光が照らす…その中に一つの影。魔導火を全身から激しく燃え上がらせ加速し近づく《砕牙円刃・狼怒》。正面に文字で描かれた円が幾重にも展開し貫いていき黄金の光がフロントカウルに集まり輝きを増していく

 

 

 

『メシアの髪ギリュス!再び闇へ還れ!!』

 

 

 

『ギュリアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

ギリュスの頭へと突貫、身体の中心を貫き肉をえぐり黄金の光が跡形もなく消滅させ勢いよく飛びだし地面へ着地、タイヤ?がこすれえぐりながら魔導火の轍が激しく燃え立たせると同時に全身に光が亀裂のように走り、全身が泡立つように膨れ上がり限界を迎え爆発消滅し、後には鎧旗をなびかせ立つ砕牙円刃・狼怒がうなり声をあげた

 

 

 

「く、逃げろ女!」

 

 

「女ってなによ!お義姉さまと呼びなさい!!」

 

 

「……ちいっ………よけろ!!」

 

 

血に染まる魔法衣を翻し槍を大きく横へ凪ぎホラーの顔面を貫き、勢いを殺さず背後から迫るホラーへ叩きつけるソウマ。しかしホラーの勢いは収まる気配がない…クロウが張った水鳥の刃陣は破られ軽口を叩くドゥーエも疲れの色が見えるも

 

 

(未来の義弟を死なせるわけにはいかないわよ……ウェンディ、チンク、ノーヴェ、オットー、ディード…妹達の為に!)

 

 

萎えそうになる闘志を奮い立たせクロウから預かった界符《雷》、《火》、《水》と魔界語でかかれたのを数枚取り出し投げる…円を描くように配置された瞬間、あたりに魔導文字が光の矢へ変わりが怒涛の勢いで無数のホラーの身体を貫き消滅させていく。しかしホラー達の動きが止まる。顔を見合わせ共食いをし始め巨大な肉塊へかわる

 

 

「な、なにを!」

 

 

《気をつけろソウマ!蠱獣化するつもりじゃ!!》

 

 

ゴルバの叫びと共に肉塊がはぜる。現れたのは女性の上半身に下半身が蛇の巨大ホラー《ズュダム》。赤い唇を歪め髪から無数の蛇を模した骸骨を飛ばてくる。その数は一つではなく百を超え、目を赤く光らせソウマ、ドゥーエを囲み黒く変色した血で汚れた牙を剥き出しにし襲いかかる。とっさに術で防ぐも障壁はいとも簡単に砕きドゥーエを飲み込もうとする

 

 

「ハアッ!!」

 

 

裂帛の叫びと共に白夜槍を構え牙を防ぐも、血を流しすぎた身体はもう限界を迎えていた時、ソウマの耳に不思議な音色が届き見えたのはウェンディの祈る姿

 

 

(………ウェンディ!?………)

 

 

 ーソウマっち…待ってるッスよ。あたしはー  

 

 

…声と共に構えた白夜槍が反応するように形状変化、眩い光に包まれ晴れた先には巨大な槍を構えメカニカルな趣を持ち緩やかな曲線を持ち後部に翼を広げ魔導火を燃え上がらせるライディングボードに乗る白夜騎士の姿

 

 

 

     ー天翔應鱗・打無ー

 

 

『………ハアアアアアア!!』

 

 

 

魔導火が激しく燃え、加速しながら逆回転し蛇躯を横凪、穿ち、貫き通しながら自身の丈を超える身体を軽々と持ち上げ勢いを殺さず投げつけた。あまりの衝撃にぶつけられた蛇躯は粉々砕け霧散していくのをズュダムは怒りを露わにし大地を削りながら蛇行し迫る

 

 

『シャアアエアアアオアアアア!!』

 

 

 

『……さがっていろ…』

 

 

「え?ちょ………もう言うこと聞かないんだから」

 

 

前屈みになり白夜槍…巨大な鏃に様々な装飾が施された覇天白夜槍を横へ構えると紫色の魔導火が全身をつつみ、ごうっと燃え盛らせ切りかかる。それを意に介さないよう鋭い突起が生えた尻尾を叩きつける。刃で受け流し切り払いながら連続突きで堅い外郭を貫いていく。たまらず叫び声を上げるのを見逃さず懐へ潜り込むと覇天白夜槍がさらに大きくなり握り手が一メートルの太さへ変わるも地面を削りながら渾身の力を込め下から上へ叩き上げ、そのままジュダムの巨大な体躯を空へ押し上げた

 

 

 

『ギ、ギャリハアサカア!?』

 

 

凄まじい速さで打ち上げられるジュダム。その直上にはライディングボード?に乗る天翔應燐・打無が覇天白夜槍を構え一気に加速。刃を突き立て魔導火を流し込みつつ地上へ加速。刃を伝い身体を燃やされながもがくジュダム。ライディングボードを足場に飛翔するとボードが、さらに形状変化し翼の形へなると装着。巨大化しさらに加速し勢いをつけ石突きへ蹴りを叩き込んだ。

 

『うおおおおお!!』

 

 

 真下に目にも留まらぬ速さで何度も何度も叩き込み、奥へと貫き進み堅い肉、血が吹き出し火に焼かれながらジュダムはボコボコ泡立つように膨れ肉塊となる前に地上へ落下、凄まじい衝撃波と煙を舞い上がらせ大きなクレーターを刻み込んだ

 

その中心に巨大化した覇天白夜槍の石突に立ち翼を広げ腕を組んだ天翔應燐・打無の姿…

 

(………なんでハート型になってるのかしら?)

 

ジュダムが消滅したクレータ…なぜかわからないがハート型に。心の中で盛大に突っ込みを入れるドゥーエの耳に…

 

 

    ーハート型は気にするな!ー

 

 

 

…とアイス好きな腕だけ怪人の言葉を耳か聞こえたのは気のせいだと思うしかなかった…

 

 

 

 

儀式の間で斬り合うアルター…オウマは歯ぎしりし力任せにユーノを蹴り飛ばし忌々しく睨みつける。魔戒騎士達に刻んだ《破滅の刻印》そして《破滅と忘却の刻印》が解かれた事を本能的に悟り怒りに震え魔戒剣、魔戒斧を擦りあわせ火花を散らす。あと少しで望まれぬ子である秋月鷹矢を殺せたはず…計画が狂わされ殺気を溢れかえらせている

 

 

 

 

「我が刻みし証を……おのれ……だが、まだだああっ!!」

 

 

頭上に真円を二つ描き、瞬く間に闇につつまれ狼のうなり声と共に鎧を纏い殲滅騎士《魔煌》へ姿を変え魔煌剣を逆手に、魔煌斧を正面に構え地を蹴り迫る、対するユーノも正面に真円を描き中へ地を滑るよう駆けながら《狼無》の鎧を召還、纏うと同時に双剣で斬り合う

 

 

『秋月オウマ……アナタの望みはもう叶わない!』

 

 

『戯れ言を!』

 

 

『もう、もう気づいてください!過ぎ去った過去は変えられない…一度咲いた花が二度と咲かないように…命もまた同じなんです!』

 

 

『………黙れ』

 

 

『過去は変えられない。でも今を戦い未来を変えれる。それを僕に教えてくれたのは………オウマ先生!あなただ!!!』

 

 

『…だ、黙れえぇ!!』

 

 

魔煌剣、魔煌斧を振るい力任せに斬りつける。しかし魔戒双剣の刃と柄で防ぎ、刃を滑らせ流し身体を捻り蹴るも肘と膝に挟まれふさがれ鎧越しに太ももを切り裂かれ魔導文字が血飛沫のように吹き出させ地におちた

 

『うわっ!?』

 

 

『…我には勝てないとわからぬかユーノ?最後のチャンスだ…闇を受け入れろ。永遠の命と力を手にできる……このようになあ!』

 

 

魔煌斧、魔煌剣を強く握りしめる。全身が膨れ上がるのをみて驚くユーノ…魔戒騎士にとって禁忌の姿《心滅獣身》へと変貌するも黒い魔導力に押さえ込められるよう闇に包まれはじけた。

 

 

鋭く鋭利、触れれば斬られる禍々しさと尾てい骨あたりから背骨を想わせる尻尾を揺らし、ひび割れた亀裂に赤い血のようなラインが走る鎧を纏い血走った紫色の瞳を向けうなり声を上げる魔性の狼

 

 

     

      ー堕煌仞・魔煌ー

 

凄まじい邪気を惑わせながら魔煌滅仞剣を振るう。闇の波動を帯びた斬撃を受け止める狼無…

 

 

『ぐあっ!?』

 

 

……防ぎきった筈なのに全身から血を吹き出した…斬られた痛みと言うより蝕まれるような感覚に包まれるのをニヤリと笑いみているオウマ

 

 

《気をつけろユンユン!ナロ~ウ、剣に闇の波動を纏わせぶつけやがった。ソウルメタルでも防ぎ切れね……》

 

 

『くっ!……』

 

考える隙も与えないと言わんばかりに間合いを詰め切りかかるオウマ…その太刀筋は自分が知るものではない闇に飲まれ堕ちた者の意志を刃越しに感じ取る…あの時の弱い自分を見捨てず鍛え上げてくれた恩師はもう死んだ

 

 

なら自分に出来るのは…歪んだ陰我にとらわれる師の魂を解き放つ……命を絶つことだけ。魔戒双剣を握る手に力がこもる。出会いから別れまでの日々が蘇る度に剣が打ちつけられ振動音が響き渡る…しかし闇の力を纏わせた刃は容赦なく身体を蝕んでいく

 

 

 

『あはっ、あははははは……死ねぇユーノォ!』

 

 

鍔ぜりあうが魔煌斧に押し負け弾かれ、がら空きになった胸元へぶあつく禍々しい魔煌剣の分厚い刃が迫ろうとした時、音色が響きユーノの持つ魔戒双剣、狼無の鎧に淡い光が灯り未完成の狼無の鎧…正確にはソウルメタルが覆われていない部分を埋めるように広がっていく

 

 

 

  ー……ユーノくん!負けないで!!ー

 

 

 

 

旋律に込められた、なのは、フェイト、はやての声を聞いた瞬間、魔戒双剣に三色の光があふれ凄まじい奔流となり魔煌剣の刃を防ぐと同時に、オウマいや魔煌を吹き飛ばし岩肌へ叩きつけられるも何事と無かったかのよう立ち上がるも動きがとまる

 

 

…透き通るような翠の鎧地、そして《牙狼の鎧》にも似た牙をむいた狼の面(おもて)、流線かつ鋭利な鋭さを持ちあわせ、背中に鎧旗をなびかせ立つ背後に幾重も《星》、《雷》、《夜》を意味する魔導文字が円環状にならぶや否やと共に魔導火をあふれ返させ立つ姿

 

 

 

 

      ー戰烈応心・狼武ー

 

 

『ば、バカな!想念による変化?まさかアストラル界に張った結界を超えただと!?………コレが出来るのは……ふふふ……闇のキバ……いや黄金のキバかああああ!!』

 

 

ーもう、もう終わりだ……今代のオウガ継承者は秋月家の伝承にある《仮面の男》達から助力を受けている。お前の負けだ……いや、私たちのー

 

ーまだ消えていなかったか!くだらぬ残滓が!!ー

 

 

ー……すべては私の弱さがお前を生み出した日から始まった………マヤを失ったあの日から…もうお前の望みは叶わないー

 

 

 

内に潜む存在の言葉に狂ったように叫ぶオウマは力任せにユーノへ殺意を込めた刃できりつける。太刀筋も関係ない乱撃とも取れる軌道からくる刃を魔戒双剣……生まれ変わった《狼武双剣》で流れるように受け、滑らせ身体をひねりざまに右腕を切り払あえ血飛沫にも似た魔導文字が散る。互いの意地、信念、想いを秘めた必殺の一撃がぶつかり儀式の間におかれた石舞台が二人を中心にめくれ衝撃波と共に岩肌が吹き飛ぶ。

 

 

 

 

『うわああああああああ!!』

 

 

『がああああああああ!!』

 

 

鍔ぜりあい睨みつけ剥き出しの牙を大きく開き叫ぶなか時が動いた。オウマの魔煌剣が右肩へ撃ち込まれようとした…が、それを寸前で腰を沈め交わし様に右逆手に握られた狼武剣が魔煌剣が握られた左腕ごと肩口に刃を滑り込ませ大きく切り払う。自らの腕を切り落とされた事で僅かな間隙が生まれた

 

 

『……………闇に囚われたアナタの陰我!僕が断ち切る!!』

 

 

狼のうなり声をあげ狼武双剣を心臓めがけデスメタルの鎧を砕き、刃が深々と貫いた

 

狼武の瞳に涙が光りおちたと同時に凄まじいまでの爆発が起き二人がいる儀式の間に溢れかえった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヌグギガア!』

 

 

 

曇天の空を超音速で飛翔し迫る白燐ノ煌牙にサジッタの矢、溶解液を織り交ぜた攻撃を繰り出すアギュレイス。しかし歯牙にもかけることなく背中にひろがる蝙蝠の翼《牙翼》を巧みに操り身体を捻らせ回避する様に感じるのは恐怖…今まで歴代オウガ継承者と戦い負け封印されても感じなかった

 

何よりも奴の身体から溢れ出す魂氣から間違いなく自分を滅しに刃を向けるコイツはなんだ

 

 

 

『マチリキシ、クスムニニイニンヌイヌツヲナルウ!ヌルガシムブヌクル!!

 

 

 

ならば懐柔し配下に加えてやろう。魔戒騎士と言えども人間だ、限りある命しかもたない。あの男《秋月オウマ》のように此方からの誘いに乗るはずだと巧みに甘言を囁く

 

 

 

『断る!』

 

 

『ヌ、ヌルチ!』

 

 

『……大好きな人と結ばれ子供を産むことで命は次へと繋がれ紡がれていく事で僕たち、人は永遠を手にしている……ただ自分だけが生きるだけの永遠はひとりよがりにすぎない。ただの自己満足だ!!』

 

 

アギュレイスから放たれた誘惑の甘言を、サジッタの矢を切り払い砕きながら拒絶、叫ぶと正眼の構えから逆袈裟へと持ち手を変え《白燐ノ煌牙真剣》へ変え胴から肩口を巨大化した刃が肉を焼き骨を砕きながら切り裂いてく

 

 

 

『マキリチシ、ナハニウズルフルヌブ!!ヌリツチグヌツ(魔戒騎士、貴様はいつか死に血も絶える!人間である限り滅びは免れぬ!!)』

 

 

『……例え、死んだとしても!』

 

 

 

『ニル!?』

 

 

 

『…遙か先絶えたとしても……』

 

 

 

『ギアッ!』

 

 

 

『……この剣斧と鎧に込められた意志、騎士の誇りを継ぐ者がいる限り魔戒騎士は滅びはしない!!』

 

 

 

肩口まで駆け上がり勢いをつけ自身の数倍の体躯を持つアギュレイスの顔面へ無数の蹴りを叩き込み距離を取った背後に歴代オウガ継承者達の姿が浮かんだ

 

 

 

ー秋月鷹矢よ…今こそ我らの力使うとき……白煌よ、今こそ真の姿となりて甦れ!!ー

 

 

英霊の声が静かに響き、砕け散った魔導馬《白煌》の破片が意志を持ったように浮かぶと鷹矢のいる場所へ跳び燃えりはじめた…そして炎の内から現れたのは金よりも白く輝きを秘めた馬と龍の意匠を持ち合わせ、矢をつがえる中心には機械的なタービン、装甲に様々な光が走り輝く巨大な弓が静かに現れたそれを手にした瞬間、歴代オウガ継承者がこれを使いアギュレイスを封印してきた光景が流れ込む

 

なぜ今まで弓に関する事が今代の継承者秋月鷹矢に伝えられなかったのか…八代目にあたるオウルが鷹矢が生まれて二年後になくなったことが起因している

 

継承者から次の継承者へ伝え守り抜かれたアギュレイス封印の秘技を今、英霊達の魂を通じ伝えられ、本能的に胸に手をおくと白燐の牙…魔皇石と融合したそれを引き剣斧へ近づけると変化が起きた。全身の要所に配された狼を象った鎧が離れ吸い込まれ巨大な矢《白燐九狼ノ矢》へ変わり弓につがえ引き絞る…機械的なタービンが高速回転、彩りの光、いやタカヤを想う少女達の魔力光が溢れ鏃に埋め込まれた魔皇石へ吸い込まれて輝きを増していくなか感じるのはヴィヴィオ、アインハルト、ミウラ、ジーク、ファビア、ノーヴェの想い、そして魂となりながらも自身に力を与えた英霊達

 

 

自分だけの力ではない…コレは

 

 

『スヌリ!オウガヌマキリチシ!!』

 

 

『僕一人じゃない……僕たちは一つなんだ……………アギュレイスよ!永久の闇に還れ!!ハアアアアアア!セヤアアアアアアアアアア!!』

 

 

 

無数の刃、円輪、矢、溶解液が襲いかかる寸前、限界まで引き絞られた弦を解き放った!凄まじいまでの光と衝撃波を生み出し突き進む矢にふれた瞬間、粉々に砕け霧散させながら光はやがて無数の狼の姿へ変わりアギュレイスの身体を貫きながら食いちぎり、魔皇石が容赦なく力を吸い尽くしていく。今まで自身を封印してきたモノとは違う、確実に滅ぼされていくのを貪られながら感じ恐怖した

 

 

 

『ーーーーーーー、ーーーーーーーーー』

 

 

断末魔の叫びがアギュレイス封印の地に木霊する…やがて巨大な体躯はしぼみ吸い尽くされ魔導文字が空へ吸い上げられていく中、苦しげに忌々しいモノへ投げかける嘲笑にもにた声が響く…それに応えるよう頭部鎧を解除した

 

 

『……………守りし者として剣を取り続け戦う。その時がくるまで…』

 

 

 

『ヌルキニ……ヒハハ、ヒハハハハハハ……アーーーーーーーー』

 

 

跡形も無く完全に消滅したアギュレイスの変わりに白燐九狼ノ矢が天を舞いゆっくりと降りてくる。それを掴むと鎧が返還されボロボロの魔法衣を血に染め、大きく肩で息をするタカヤ。しかしアギュレイス封印の地が大きく揺れ出した

 

 

「こ、これは?」

 

 

《タカヤ!アギュレイスの野郎が消滅したから封印の地が崩壊を始めやがった……早く脱出しねえと虚数空間に飲まれるぞ!》

 

 

ヴィヴィオたちを安全な場所へ逃がすために向かったキリクの叫びにはっとなり見る、大地に亀裂が広がり隙間から虚数空間が見えた。出口を探し力を振り絞り岩を蹴るも見つからない…焦り始めたタカヤが着地しようとした岩が虚数空間にを飲まれ身体が投げ出された

 

「くっ……」

 

 

その時、誰かに自分の手がつかまれた…目を向けた先にいたのはヴィヴィオ、アインハルト、ミウラ、ジーク、ファビア、ノーヴェ。腕を伸ばし手を絡めしっかりと掴む顔は今まで見たことのない笑顔に自然と笑みを返し力強く手を握りしめた瞬間、光に包まれた

 

 

 

 

「メイ、あの子達とタカヤは、ユーノはまだか!」

 

 

 

「まだ……です…ヴィヴィオ様達の気配も……くっ、それまでゲートを維持しないと」

 

 

 

現世…聖王教会最深部で《アギュレイスの庭》に繋がるゲートを全魔導力を振り絞り維持しているメイ。その後ろにはジロウ、レイジ、仮面の女性から手当てを受けるソウマの声に額から汗を流しながら応える

 

 

結界維持限界時間は五分を過ぎた。ゲートの向こう側からは濃厚な邪気とは別な何か、異なる力を感じるの数分前、この場に《アギュレイスの庭》から弾き出されるようジロウ、ソウマ、レイジ、そして仮面の女性《アリア》が現れた。疲労困憊の状態でありながらタカヤ、ユーノへの助力へ向かおうとするも阻まれた…アギュレイスの力により遮られ行く事が出来ず時間だけが過ぎていくのを見ているだけしか出来ない

 

 

その時、ゲートの向こう側からまばゆい光が溢れ出し飲み込み現れたのは本来の姿を取り戻し復活したキリク、その足元にタカヤに寄り添うように倒れたヴィヴィオ、アインハルト、ミウラ、ジーク、ファビア、ノーヴェの姿

 

 

「あ、あ……タカヤ……」

 

 

「ただいま……」

 

 

皆に、寄り添われるような形で笑顔を向けるタカヤにすぐに駆け寄りたい気持ちをグッと抑えた時、ゲートが大きくゆがむ。慌てて振り返るも襲いかかった波動に弾き飛ばされた…ゲートから見えたのは魔導筆を構えた腕、そして何かが地を滑り止まる

 

 

「う、うう…」

 

 

何か…魔法衣も身体も傷だらけのユーノに驚き近寄るジロウ達、だが魔戒剣を手にしゲートへ視線を向けた先、右腕を肩口から切り落とされ胸に《狼武剣》を深々と突き刺し立つアルター…《秋月オウマ》の姿にメイ、タカヤも警戒する中、素顔を露わにしゆっくりとタカヤ、メイの順に視線を向け、胸の魔戒剣を力任せに引き抜きメイの足元に滑らせた

 

「………目を覚ましたら渡せ……」

 

 

端的に告げ、背を向け広がりつつあるゲートに目を向けるオウマは迷わず中へと入った…なにをする氣だと言わんばかりの行動に理解できない。ただひとりだけわかったモノがいた

 

 

「まさか……あなたはゲートを!?」

 

 

「………アギュレイスの残滓…邪気と虚数空間と繋がりつつある…ここまで開ききったコレを閉じるには方法はただひとつ!!」

 

 

 

アルター、父秋月オウマの目的を悟り声を上げたメイの前で、全身から夥しい程の邪気、魔導力を溢れさせながら術式を自らの胸から流れ続ける血を媒体に構築する様が映り、それに伴いゲートが閉じ始めた。が同時にオウマの身体が岩のように変質していく光景に皆は息をのんだ

 

 

「………内側から閉じるしかない……遥か昔、魔戒騎士、法師達が《エイリス》を七体のホラーの邪気を使い封じた術式を応用すればな……」

 

 

「な、なんで、いまさら……何が目的なの、こんな事をしたって……私はっ!」

 

 

 

「………」

 

 

ただ無言でメイをみるオウマ…身体の半分は岩へ変わっていく。しかしまだやることがある…動かなくなりつつある身体をタカヤへと向けさせた。死人をも想わせる肌に色素が抜け落ちた白髪、折れた右腕に手を添え剣斧をもち立つ姿に義父と重なってみえた

 

 

「……秋月鷹矢。しかと焼き付けろ……闇の誘惑に負け叶わぬ願いだと気づかず本当の願いすらわからなかった愚かな男の姿、その末路を…」

 

 

首から下が岩へ変わり顔だけが残されていく姿に頷くタカヤから視線を離し目を閉じ、ただ一言を紡ぎ出した

 

 

「………メイ、お前の本当の……願い…に…気づけず……すまなか……っ……た……」

 

 

 

完全に岩となった…秋月オウマは崩壊するアギュレイスの園と共に堕ちていき、直後に完全にゲートが閉じきった。

 

 

「お、お父様……オウマお父様…」

 

 

泣き崩れオウマの名前を呼び続けるかすれた小さな声を漏らした、ジロウ、レイジ、ソウマ、仮面の女性、キリクはオウマが最後の最後に娘の為、孫であるタカヤにすべてをたくしたのだと気づくも何も言わずただみていた時、気を失っていたノーヴェが目を覚ました

 

「……ん、タカヤ?」

 

 

「あ、ノーヴェさん。気がついたんですか?」

 

 

「うん…えと…タカヤ。お、お、おかえりなさい」

 

 

「た、ただいま………あれ?」

 

 

突然足元が滑り、もつれるようにノーヴェと一緒に倒れ込むタカヤの顔いっぱいに甘い匂いと柔らかさにに包まれた…まさかと思いギギギと傷む身体を起こしみえたのは、柔らかであらゆるモノを包み込む包容力の象徴に顔を埋めている

 

 

まずい、殴られる…と覚悟し目を閉じたタカヤ。だが還ってきたのは意外な言葉だった

 

 

「……仕方ないなタカヤは。コレよりスゴいことしてやるって約束したけど…我慢できないのか?」

 

 

 

「え?ええ!?ちょノーヴェさん力を込めないで…ほ、骨が…」

 

 

「…大丈夫だから、あたしに任せ……どうした?顔が青いけど…タカヤ?」

 

 

「……んきゅ」

 

 

真っ青な顔のタカヤを見て慌てだしたノーヴェ…全身の切り傷に折られた右腕、疲労困憊…血を流ししすぎてからのひさしぶりのタカヤ特有のアレはまさに毒だった

 

 

「あ~ノーヴェ!抜け駆けしたらだめだよ!」

 

 

 

「そうです!さっき決めたばかりなのに」

 

 

 

次々と意識を取り戻した、まるで大岡裁きのように身体を密着され、胸の柔らかさに女の子特有な匂いに遂に意識を手放した…

 

 

 

 

 

 

 

第二十五話 鷹矢ー白燐/紅ノ牙ー(後編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦いも終わり、それぞれの日常が戻りヴィヴィオ嬢ちゃん達とリハビリを兼ねたインターミドルへの練習に付き合うタカヤ


そして、嬉しい知らせが届いた。遂にアイツも年貢のおさめときだな~


最終話 明日



ブーケをとるのが誰かすごく楽しみだな~まあ、修羅場は間違いないけどな








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