魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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《陰我》在るところ《ホラー》顕れては無辜の人を闇に紛れては血肉を喰らい、人々は闇を、否。ホラーを恐れた



しかし、闇《ホラー》あるところ《光》あり!古よりホラーを狩る宿命(さだめ)を持つ者達がいた……


ソウルメタルの鎧を纏い、その刃でホラーを斬り人を守る者 



その名を《魔戒騎士》という!!


第二十五話 鷹矢ー散華ー(三)

「やめてください!ソウマさん!!」

 

 

「………」

 

ソウルメタルの刃がぶつかり火花が散る。逆手に構えた魔戒双剣《無銘》を構える無銘騎士《狼無》、白夜槍を手にした白夜騎士《打無》。ユーノとソウマが刃を交えるのか。二人の背後にある赤黒く夥しい人骨を組み合わされた巨大な門。この先にはホラーの王復活を目論むアルター否《秋月オウマ》、復活のゲートとして捕らえられたノーヴェ、アインハルト、ヴィヴィオ、ミウラ、ジーク、ファビアがいる。

 

しかし門を通れるのは二人の魔戒騎士が殺し合い、生き残った一人だけ

 

 

「魔戒騎士同士が争ってる時間はないんです!やめてください!こんなのは馬鹿げています!!」

 

 

「確かにな…時間もない……だからこそだ……本気で来い」

 

 

もう語らないと言わんばかりに、白夜槍を構え直し刃を振るうソウマ…逆手に構えた無銘剣で交互に防ぎながら門を通るための別な方法を模索するユーノ…だが僅かに動きが鈍る。それを見逃さず石突きで右手首を打ち据えたまらず剣を落とした。胴ががら空きになる

 

 

「コレで終わりだユーノ!」

 

 

「……くっ!」

 

 

ソウルメタルの甲高い振動音と砕け肉を貫く音が赤黒くよどんだ空に響き吸い込まれるように消えた、僅かに間をあけ赤黒く夥しい門が積み重ねられた人骨を軋む。さながら悲鳴にも似た音と共に開く

 

 

魔戒騎士二人が戦い、勝った者しか通り抜ける事が出来ない忌まわしき門。通る資格を得たのは誰か?それは門のみが知る

 

 

 

第二十五話 鷹矢ー散華ー

 

数分前…聖王教会にある一室に二人の男女の姿…未来から来た少年《クロウ・オーファン》。そして八神はやてがいる。魔導筆を向け目を閉じるクロウ…その瞼がゆっくりと開かれ軽く肩を落とした

 

 

 

 

 

「…もういいよ八神おば……八神さん」

 

 

「もう、ええんか?ごめんなあ役に立てんで……でもキミが未来から来たなんて信じられへんかったけど、まあコレ見たら信じるしか無いやろ」

 

 

一枚の写真を手にするはやて。三人の女性に囲まれた青年が、映されたモノを恥ずかしそうに見ている

 

 

「……本当は教えることは出来ないんだけど、そんな事言ってられる状況じゃないんだ………(一応、オーナーに許可貰ってんだけどさ)」

 

 

ー今回だけは教えても構いません。確定した未来の存在であり《特異点》であるクロウくんなら…た・だ・し三回まで特別に許可します~!?ー

 

 

ここにくる前に現れた不思議な列車に招かれチャーハンを食べながら意味深にスプーンを運ぶも旗が倒れ驚く車掌?の顔を思い浮かべる。《白燐の牙》の在処をしるリインフォースの記憶が溶け込んだ最後の夜天の王であるはやてに聞くも知らないと返された。残る手がかりはファビアが持つ絵本だけ、だがアルターの手で攫われ《アギュレイスの庭》にいること

 

 

(………お袋たちが……オヤジは今どこにいんだよ!この時代でどうやって王を倒して助け出したんだ…)

 

 

拳を握りしめ血が落ちていく…そのとき、聞き慣れた音が耳に届く…ハッとなりその場を駆け出したクロウ

 

 

「クロウくん、おねがいや……みんなを、ユーノくんを助けて……リインフォース、お願いや」

 

 

胸元かけられた二つの剣十字のペンダントを強く握りしめ祈るはやて…握られた手の中で僅かに輝いた

 

 

 

 

 

(……………ゲート維持限界まで30分……連絡はおろか皆様方の気配が消えた…それ以上に強力な邪気が満ちている)

 

 

開いたゲートの向こう側から夥しい邪気が魔導衣越しでも肌に突き刺さる感覚に冷や汗を流すメイ…すでに一時間が過ぎ、術を維持し続けるには体力と精神力がガリガリと削られていくのを感じ焦りにもにた感情が胸のうちに広がるも振り払う

 

必ず四人は生きていると確信し、魔導力をさらに高めようとしたメイの耳に蹄音が徐々に近づいてくる

 

 

『ハア!』

 

 

蹄音を鳴り響かせ現れた白金に輝く魔導馬《白煌》、それを操る騎士が手綱を引く、蹄が火花を散らしながらメイの近くで止まり頭部の鎧を解除。現れたのは息子でありオウガの称号を受け継ぐ魔戒騎士《秋月タカヤ》を見て息を飲んだ

 

額から夥しい血を垂らし立つ息子の痛ましい姿…治療しようにも手が離せないもどかしさに胸が締め付けられた

 

 

「母さん、ヴィヴィオ、アインハルト、ミウラくん、エレミアさん、ファビアさん、ノーヴェさんは?」

 

 

「この向こうに……《アギュレイスの庭》に居るわ……タカヤまちなさ…!?」

 

 

言いかけるも口をつぐむ。タカヤの瞳から強い意志の光。亡くなった八代オウガ継承者であり祖父《秋月オウル》、選ばれなかったモノの魔戒法師であり教会騎士である夫《秋月ユウキ》と同じ目。《守りし者》が持つ光をみたからだ。母親としてはいかせたくなかった。鎧はひび割れ血が滴り落ちている姿を見るだけでも心が張り裂けそうだった

 

例えタカヤは刻まれた刻印の痛みに苦しもうが、鎧に埋め込まれた《魔皇石》の封印が解け命を吸い尽くされても止まらないと、《守りし者》としての信念に満ちた瞳を前に出来ることは一つだけ。愛する人との間に生まれた我が子の背中を押すことだけ

 

「…………ヴィヴィオ様たちが捕らわれている場所へ四万十様、山刀様、布道様、ユーノさんが今、向かっているわ。だから必ず合流して力を合わせ助け出しなさい」

 

 

「うん……母さん。またあとで………いくよ白煌!!」

 

たづなを強く引き鐙を鳴らす。力強く嘶く白煌と共に邪気が荒れ狂うゲートへ飲み込まれていく姿…メイの足元に何かが落ちた

 

 

「ごめんな……さい…ごめんなさい…」

 

 

大粒の涙を流し言葉を紡ぎながら、ゲート維持に神経を集中させるメイ…ただ愛する息子の無事を祈ることしか出来ない自分に泣きながらも、萎えそうになる自身を奮い立たせた

 

赤黒い空間に無数の魔導文字が溢れかえる中を駆けるタカヤ…《碓氷カズキ》、《魔弾戦士リュウジンオー》との戦いで折れた右腕、罅の入った肋と胸骨、斬られた身体が痛む。それ以上に刻まれた《破滅と忘却の刻印からの》激しい胸の痛みと頭痛が絶えることなく襲う度、記憶がひび割れ砕けようとする…そのたびに忘れてはいけない。絶対に。自分の大事な人と繋いだ絆の記憶を忘れてはいけない

 

強く、痛みをも凌駕した精神力。白煌の手綱を握る手に力が満ちソレに答えるように白煌は風を纏ったかのように駆けゲートを抜けた眼前には群青の群…素体ホラーの大群が犇めく

 

『うおおおおおお!!』

 

 

その中心で巨大な剣を振るいホラーを切り捨て、蹄で踏み潰し、空を飛翔し剣を投げつけ骨ごと砕き斬る騎士…雷鳴騎士刃狼、四万十ジロウの姿。そのまま一気に駆け寄りジロウの背後から迫るホラーを斬り伏せていく

 

 

『タカヤ!?』

 

 

『遅れてすいませんジロウさん。助勢しま…』

 

 

『…先をゆけタカヤ!』

 

『え?』

 

 

とっぜんの言葉に驚くタカヤ、剣を振るいホラーを斬りながら問おうとするも息つく間もないほど湧き出し現れる群青の群に一人では?と言おうとするのを知っていたように叫んだ

 

 

『………この先にアルターに捕らわれたお前が守る者たちがいる!時間もない、急げ!!』

 

 

 

 

有無をいわさぬ気迫に満ちた言葉を浴びせホラーを斬り伏せていくジロウ。考える時間もない…剣を振るい切り裂きながら僅かに頷きタカヤは白煌と共に駆け出しホラーの体躯を蹄で踏みならすように潰し進む

 

 

『頼んだぞ………はあああああ!!』

 

 

全身から魔導火を溢れ出させ逆袈裟に大地を削りながら刃の炎を先を行くタカヤへ飛ばす。十字状に燃え上がりホラーを焼き尽くしながら鎧ごと飲み込む、瞬く間に烈火炎装・オウガはさらに加速を増し襲いかかる群青の体躯の群を燃やし灰へ変わっていく

 

 

 

『………ジロウさん……くっ』

 

 

手綱を握りしめた時、生命の息吹すら感じられない大地が震え地割れが起き隆起していくのを見て、原因を目に息を呑む。眼前には巨大な機械仕掛けの竜が一人の騎士《閃光騎士狼怒》、布道レイジに対して砲撃を浴びせる、ギリギリで回避していくのを見て白煌と共にを向かおうとする

 

 

『レイジさん!』

 

 

『!……来るなタカヤくん!!』

 

 

『え?』

 

 

新たな獲物を目にし歪めた雄叫びを上げる竜の背中から虚無よりも暗い邪気が砲弾となり降り注ぐ、近くにいた大型の号竜に体当たりされ弾かれ、少し離れた場所に降りタカヤは見てしまった。先ほどまでいた場所にいた号竜が砲弾に飲まれ体躯が削り取られていく様を。もし体当たりされていなかったら同じ様になっていた

 

 

『………メシアの髪の相手は僕がする…タカヤくんは先を急ぐんだ』

 

 

『レイジさん一人では、あのホラーには』

 

 

『いいからいくんだ!それにコイツとはレギュレイスとの戦前に一度戦い封じたからね……さあ』

 

 

『………』

 

 

『………さあ、急ぐんだ。あの子たちが君を待っている』

 

 

その言葉にわずかに首を傾け、向き直り白煌の鐙を強く踏むと背を向け力強く蹄を鳴らし駆けてい白煌とタカヤ…

 

 

『……行ったか……あの時は……いや、今は僕に出来るのは、これだけか………はあっ!』

 

 

閃光剣に魔導火を燃え上がらせ大きく横凪に切り払う。その先には力強く蹄を鳴らし駆けていくタカヤ…魔導火が身体に触れ再び烈火炎装が纏われ風よりも速く駆け抜けていく

 

 

『頼んだよ。オウガの血を引く若き魔戒騎士《秋月タカヤ》…………』

 

 

魔導火を相手に送り烈火炎装を纏わせる…それは戦友として認めた証。そして先へ進ませたレイジは再び閃光剣を構え光輝と共に駆ける。必ず儀式の阻止と捕らわれたヴィヴィオ達を助け出せると確信していた

 

 

『さあ、いくよ。《メシアの髪》ギリュス!!ああああああああ!!』

 

 

力強く地を蹴り飛翔。ため込まれた地獄の蹄音が閃光剣に蓄積、大きく姿を変える……分厚く鋭い刃が並び幅の広い刀身には牙を向き威嚇する狼のレリーフが刻まれた巨大な片刃剣《閃光・剛刃牙》を突きのような型と共に一気に砲弾を撃ち放つギリュスの頭を捉え大きく振りかぶり切りかかった

 

 

 

 

(ジロウさん、レイジさん………くっ………今は急がなきゃ……)

 

 

白煌を走らせるタカヤ…ジロウ、レイジの二人から送られた魔導火に宿る思惟に胸を締めつける…強い信頼、そして仲間としての声無き激励。そして守りし者としての信念

 

すべては自分がココへくることを信じ、道を切り開き進ませてくれた。その想いが胸の奥で震え手綱を握る力かましていくのを感じた時、目の前に凄まじいまでの邪気を溢れさせる赤黒く巨大な門が現れる…余りにも静かさに警戒しながら近づき目にした光景に息が止まる

 

 

『そ、そんな……』

 

白と赤の装飾が目立つ魔法衣を纏う騎士…白夜騎士《打無》の称号を持つ《山刀ソウマ》。胸元を赤く染め顔を俯かせ、もたれ掛かるよう立つ…その足下には血溜まりが広がる光景に身を強はらせた

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「ん……ここは」

 

 

「アインハルトさん、ノーヴェが目をさましましたよ」

 

「よかった……でも」

 

「ヴィヴィオ?アインハルト…ミウラにエレミア、あと……」

 

 

 

「ファビア・クロゼルク……」

 

 

冷ややかな視線を向け答える魔女みたいな格好をした少女から告げられた名前を聞きながらあたりを見回す…真っ白な空間に無数の魔導文字が流れていく見たことのない空間。出口を探そうと動こうとした時、中心あたりが揺らぎはじめ黒い何かが広がり現れた降り立つ。黒地に赤黒い布が目立つ魔法衣に死人をも思わせる顔色、どす黒く澱みきった狂おしいまでの狂気を宿した瞳を向け口を三日月のように歪め近づくとヴィヴィオの前でふわりと止まり、つっうと手を胸元に触れそのまま滑らせるように下へ下ろし腹部を撫でとめた

 

 

『目を覚ましたか。忌々しい王の血族よ…おまえ達のその穢れなき胎内を破り血を浴び我らが王はよみがえよう……誇るといい穢れなき生け贄に選ばれたのだからな』

 

 

 

「ふざけないで…タカヤさんが必ず助けにくるんだから!!」

 

 

 

『ククク……アッハハハハハハ…助けにだと?無駄だ。知っているのだろ?すでに命はもう無いに等しい…ここにたどり着けたとしても私と王の前では塵芥だ』

 

 

「………っ!?」

 

 

『脆く儚き希望が砕けたとき、おまえ達は素晴らしき供物どなろう………ふ、まあいい。僅かな時を謳歌するがよい……クククク』

 

 

勝ち誇ったように笑みを浮かべアルターの姿は溶けるように消えた…そんなとき微かな声が響いた

 

 

「あなたたちは…アナタたちはいつもそう…秋月の魔戒騎士がどんな思いでホラーと戦ってきたか、命を賭けてきたか解っていない……」

 

静かな怒りが込められた声…ファビアがゆっくりと顔を上げ睨むように視線を浴びせる

 

 

「あの時からずっと、そして今も……たくさん傷ついて、そして命も……なのにアナタたちは…助けてもらえるのが当たり前だって考えてる……少しは気づいて、痛みと苦しみを…」

 

「……!」

 

問いにも似た声に誰も返せない。ただ一人だけ心が荒波に揉まれるように揺れふらふらと膝をついた…赤い髪で表情はわからない。ただ頬に伝う大粒の涙が白い空間に落ちていく

 

「…たしかにそうだ。アタシは、あたしたちは当たり前だって、そばにいたのに気づけなかった…気づこうともしなかった…でも…タカヤがアタシたちを助けに来たら………じゃう……死んじゃう」

 

 

泣きじゃくりながら紡がれた言葉…あの時、キバットバット二世とメイの会話を聞いてたのはノーヴェだった…今まで当たり前に傍にいて、笑ったり、トレーニングに付き合ってくれたタカヤの命が次に鎧を纏い、キバットバット二世、三世親子が魔皇石に施した封印が戦いの中で解けてしまえば死んでしまう。もう止まらなかった。ノーヴェから明かされた残酷な真実を前に皆の瞳から涙が落ちる…ただ無情にもタカヤがココに向かっていることを誰一人知らずに

 

 

 

 

 

 

『月が重なるまであとわずか。オウル、お前の守ろうとした世界は終わりを迎える……マヤ、もう少しだメイと共に新たな世界で暮らそう……その前に無粋な輩を始末するとしよう』

 

 

儀式の最終段階まで術式を組み入れ魔導筆を収める、振り返るアルターの眼前には切り裂かれ血が浴びせられた魔法衣を翻し立つユーノが魔戒双剣《無銘》を両逆手に正面にかまえ鋭いまなざしを向けている

 

 

「オウマ先生…いや、殲滅騎士魔煌…僕はアナタを許さない」

 

 

言葉に返すように少し笑みを浮かべ無言でアルターも鞘に収められた魔戒剣、魔戒斧を正面に抜く…もはや二人の間に師弟の縁は無いに等しい

 

 

『師である私に刃向かうか………もはや私の弟子では無い。来い魔戒騎士ユーノ・スクライア!!』

 

 

 

『「ああああああ!」』

 

 

かつての師と弟子の魔戒剣、魔戒斧が激しくぶつかり合いソウルメタルの振動音が儀式のおこなわれる岩舞台《大骸石》と赤黒い空に木霊する……

 

 




儀式開始まで20分


鷹矢の魔導刻…………残り00,1秒

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