魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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《陰我》在るところ《ホラー》顕れては無辜の人を闇に紛れては血肉を喰らいつづけた、人々は闇をホラー恐れた



闇《ホラー》あるところ《光》あり。古よりホラーを狩る宿命(さだめ)を持つ者達がいた


ソウルメタルの鎧を纏い、その刃でホラーを斬り人をまもる者達の名を《魔戒騎士》という



今回のスペシャルゲストは、すし好きさんの作品《インフィニット・ストラトスー龍の魂を受け継ぐ者ー》から碓氷カズキくん、ザンリュウジンです


第二十五話 鷹矢ー散華ー(二)

『ウルバ、ゲートはあとどれぐらいで抜ける?』

 

 

《後少しだよジロウ…見えてきたよ》

 

 

無数の魔導文字が流れる白い空間を駆ける四つの影…いや鎧を纏ったジロウ、ソウマ、レイジ、ユーノが魔導馬と共に走る。向かうは真魔界と内なる魔界の狭間にある《アギュレイスの庭》

 

ヴィヴィオ、アインハルト、ノーヴェ、ミウラ、ジーク、ファビア…王復活の為の攫い、供物に捧げようするアルターいや秋月煌魔の執り行う儀式を阻止、皆を救い出す

 

その身に《破滅の刻印》を刻まれ、命がいつ尽きるかわからない。それでも彼らを突き動かすのは魔戒騎士、《守りし者》としての信念。それが伝わったのか魔導馬達も駆ける速さを増し蹄音が鳴り響く

 

 

『見えたぞ!皆、油断するな…』

 

 

『わかっているよ…』

 

 

『ああ!』

 

 

『はい』

 

 

白い空間…四人の前に赤黒い光が現れる。強い邪気を溢れさせるこの先には《歴代白煌騎士オウガ》が代々封印してきたホラーの王《アギュレイス》が眠る《アギュレイスの庭》…手綱を強く握りしめ光の中へと走り抜けた

 

 

……アギュレイス復活の儀式開始まで1時間と15分。雷鳴騎士、閃光騎士、白夜騎士、無銘騎士は儀式をくい止められるのか?

 

そして記憶を断片的に取り戻し、村雨良こと《仮面ライダーZX》から貸し与えられた《ヘルダイバー》を駆り聖王教会へ向かうタカヤ

 

 

「みてリオ。二つの月が近づいてるよ」

 

 

「うん、でもヴィヴィオやアインハルトさんもみてるかなコロナ?」

 

 

二つの月が重なる意味を知らず観測し、世紀の瞬間を捉えようとする人々に混じり空をみるコロナ、リオ。ミッドチルダ、いや全ての次元世界がホラーに蹂躙され滅びの時を迎えるまで後わずか…

 

 

第二十五話 鷹矢ー散華ー(二)

 

 

「くっ……なんてパワー…」

 

荒れ狂うパワーに必死にたえながらハンドルを握りしめる。さっきの声は誰なんだろう…でも今は急がないといけない。

 

あれ?…なぜ急がなければいけないんだろう…わからない。そう想うたびに誰かの顔と声がよぎり響く

 

……わからない…でも一つだけわかる。僕はこの人達を知っている。思い出そうとする度、胸と頭が激しく痛くなる。それでもいかなきゃいけないんだ。ハンドルを強く握りしめた時、目の前に無数の光の矢?が見え咄嗟に右、左によけた。かわしきれずに当たり前のめりになりながらハンドルから手が離れる。空を舞っていると感じた時には背中を地面に叩きつけられた

 

 

「かはっ!?」

 

目の前がチカチカする。必死に身体を起こした僕の目にフロントカウルを粉々に砕け横倒しになっているヘルダイバー…さっきの矢?で壊れたのがわかる。でも誰が?

 

 

『………』

 

気配を感じ目を向けた先には髑髏と斧を掛け合わせた鎧を纏った人の姿。手に持った中央部分に龍の顔、左右に伸びた斧の造形の弓を構えながら歩いてくる…なぜこんな事をしたのかわからない

 

「くっ……はあっ…はあっ」

 

 

『そんな身体でどこに行く気だ。教えてくれないかな?』

 

 

「……そこを退いてください。僕はいかなきゃいけないんだ…みんなを守らなきゃいけないんだ」

 

 

『…………守る?何を守るんだ?お前みたいな子供が?』

 

 

「わからない…でも……いかなきゃ…だから通して……ぐはっ!?」

 

 

横を抜けようとした時、僕の身体がくの字に折れ曲がる。膝を突きそうになりながら見えたのは深々と鳩尾に入る鎧に包まれた腕。思わず顔を上げた時、鷲掴みにされそのまま仰向けに頭を地面に叩きつけられた

 

 

『……笑わせるなよ。お前みたいな子供に何が…守れるんだよっ!』

 

 

「ゥアアッ!?」

 

 

今度はおもいっきり蹴り上げられ、そのまま岩肌に張り付けられるように激しく打ちつけられた…右脇腹に鋭い痛みが走るのを我慢しながら立つと、いつの間にか近づいていた。今度は右腕を掴むとそのまま膝で下から打ち付けるように蹴り上げた……パキッと何かが折れた音がした瞬間、激しい痛みが襲った

 

 

「う、うわっ……うう…うう!?」

 

 

『どうした?痛いか?……まあ痛いよね。右腕が折れてるんだから当たり前だよな?もう一度聞くけどさ…‥…お前はナニを守るんだ?』

 

 

「………!?」

 

 

『(やっぱりか。少し手荒になるが勘弁しろよ。キリク)………答えろよ?何を守るんだ!……烈風』

 

 

「ガッ!」

 

 

地に手を尽き回転胴回し蹴りが顎を蹴る。わずかにかすっただけだが脳が揺れ平衡感覚が失われふらつくタカヤにさらに追い討ちをかける。彼…《魔弾闘士リュウジンオー》こと碓氷カズキの猛攻は止まらない。

 

「が、ぐあ…がはっ」

 

正拳、裏拳、肘鉄、後頭部へ重い蹴りが決まり再び倒れるタカヤ…魔法衣、魔導衣がホラーおよび銃弾に耐えうる強度を持つと言えど生身の頭部、さらには魔弾闘士リュウジンオーの硬い装甲に覆われた五体、ザンリュウジンの刃その物を防ぐ程の強度を持っていない

 

なすがままにダメージを受け、魔法衣は切り裂かれ、下にある肉体をも傷つけられ遂に地面に倒れ伏した…

 

『立てよ……やっぱり子供の言う守るって言葉は薄っぺらすぎんだよ…その程度の覚悟しか無いんだな?そんまま倒れてな。この世界が滅ぶのを見てろよ。まあ俺にとっちゃ《この世界》で《何人死のう》が、滅びようが一切、心は痛まないんでね。《救う価値もない》この世界なんてな』

 

 

倒れ伏したタカヤの指が微かに動く、まるで掴むように地面に指あとを残しながら折れた右腕の痛みに耐えながら立った。その瞳に微かな怒りが含まれているのをみたリュウジンオー…カズキはザンリュウジンの龍の顔を模した部分に手を触れる。乾いた音と共に口に当たる部分が展開、鍵穴を差し込むような口が現れた

 

「ち、違う…」

 

 

『…何が違うんだ?バカの一つ覚えみたいに守るって言うんじゃないよな?誰かの言葉を借りた薄っぺらい理由を並べる気か!』

 

 

「くっ!」

 

 

『!!』

 

 

ザンリュウジン・アックスモードで切りかかったリュウジンオー…しかし刃が届く前にタカヤは受け止めた。折れた右腕で刃を掴む手のひらから夥しい血が流れ魔法衣を伝い地面に落ちていく

 

 

「この世界に死んでいい命、この世界が滅んでいい理由なんか何処にもない!!」

 

 

ググッと斬りつけようと力を込めたザンリュウジンの刃を生身、ましてや折れた右腕で押し返していく姿に驚くカズキ…何よりもタカヤから今までとは違う空気を感じとる

 

 

『なら、聞くけどさ…お前に取って価値が在るものなのか?この世界を守ることなんてさ!』

 

「……」

 

 

『……答えろよ!それとも何だ?正義の味方みたいに悪を倒すってありきたりな言葉をいう気か?』

 

 

勢いよく突き放すと姿が消える。逆袈裟、横凪、踏み込んでの打突…目にも止まらぬ速さで繰り出される攻撃の数々、防御する間もなく斬られ殴りつけらながら、タカヤはなぜさっきの言葉をいったのかを思い返していた

 

骨折した腕、右の第二、第三肋骨、罅の入った胸骨からくる痛みより遥かに深いところから、芯からくる頭の痛みと共に砕けたナニかが、時間が巻き戻るようにあつまり形をなしみえたのは、年の変わらない女の子数人にややつり目な金色の瞳の赤い髪の女性が一緒に鍛錬し厳しく指導しながら目標に向け進む姿にまばゆさを感じる

 

…なぜ守りたいのか…僅かな逡巡、それすらも許さないと言わんばかりに姿を再び見せたザンリュウジンの斧を胴へ叩き込み、前屈みになるタカヤに全力を込めた蹴りを胴へ決め空へと打ち上げた

 

 

『…ザンリュウジン・アーチェリーモード。子供の相手はもう疲れた……一夏や弾の方がまだましだったよ』

 

右腰にあるホルダーから魔弾キーを手にとると、ザンリュウジンを正面に構えアーチェリーモードへ。中央部…龍の顔を模した部分をスライド、手にしたキーを差した

 

 

『ファイナルキー…発動………』

 

 

ーファイナル・クラッシュー

 

 

『……ザンリュウジン、乱撃…』

 

 

ザンリュウジンの龍の顔の先端に形成された圧倒的な破壊の力が込められた無数の光の矢が撃ち放たれた…まっすぐに吸い込まれるようにタカヤの身体に迫ろうとした…

 

 

「僕が………僕が守りたいのは…………っ!」

 

 

虚無の瞳に光が宿らせ、ボロボロの魔法衣から魔戒剣斧を抜き放つ、落下しながら迫り来る矢に対し真円を描いたと同時、激しい破壊の奔流が荒れ狂い夜空を、ゆったりと弓をおろすザンリュウジンを照らした

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

『何だコレは!』

 

 

《スゴい数のホラーだよジロウ!》

 

 

ゲートを抜けた4人が目にしたのは一杯に広がる黒…夥しい数の素体ホラーが群れを成し犇めき歓喜の叫びにも似た声を上げている。彼らはアギュレイスが生み出したホラー。背中の翼を羽ばたかせ飛翔し向かうのは天敵てある魔戒騎士…ジロウ、レイジ、ソウマ、ユーノではない。メイが開いたゲートに我先に目指している。最上の餌《人間の血肉》を喰らうために

 

 

『マズい!このままでは現世にホラーが!!』

 

 

『……ソウマ、レイジ、ユーノ。先を行け!ここはオレが引き受ける』

 

 

『無茶です!ジロウさん一人じゃ……』

 

 

『……時間がない急げ!必ず後で追いつく!!』

 

 

有無を言わさぬ言葉に黙り込むユーノ、ソウマ、レイジ。しかし考えるた時すらも彼らには残されていない…魔導馬の手綱を強く握りしめ、それに応えるよう蹄を強く鳴らしジロウと雷鳴騎士破狼と烈斬を残しホラーの群の先、アギュレイスの庭へと駆け抜けながら切り裂き進んでいく

 

 

『…………あとは頼んだぞ………いくぞウルバ!!ココから先はお前たちホラーを一匹たりとも通さん!!』

 

 

ジロウの声に応えるよう嘶く烈斬、その身体から淡いオレンジ色の炎《魔導火》が燃え上がると共に雷鳴剣も荒ぶる狼が走り抜けるレリーフが刀身に彫られて身の丈を超える巨大な青龍刀《烈火・雷鳴剣》へ姿を変え、そのまま烈斬と共に跳躍、落下しながらホラーの群めがけ叩きつけるように切り払う。その衝撃で大地は大きく裂け、巻き散らかされた魔導火がホラーを焼き尽くしていく

 

《カゴシャアアアアアアア!!》

 

 

《ヒリャアアアアアアア!!》

 

 

『オオオオオオオオオ!!』

 

 

逃れたホラーも分厚く固い蹄に踏み潰され断末魔をあげる中を雄叫びをあげ疾走し、烈火・雷鳴剣振るい湧き出るホラーを殲滅する姿はまさに荒れ狂う野生の狼をも想わせた

 

 

『ジロウさん……くっ』

 

 

『振り返るなユーノ!ジロウは必ずくる!!』

 

 

『…僕達の目的はアギュレイスの復活の阻止と、供物として攫われた子達を救い出す事だ…例え最後のひとりとなっても必ず……危ない!』

 

 

暗雲立ち込める空から巨大な人工物が落ちてくる。寸前でかわす三人がみたのは巨大な人工物…いや規則的に歯車が動くそれが足だときづく。暗雲が晴れ見えたのは四足歩行の異形な龍、ギラリと睨むと背中から無数の砲口を向け撃ちはなってくる。辛うじて交わし弾?が当たった場所に目を向けると跡形もなく消滅している

 

 

『……あれは魔毆龍《ギリュス》!……』

 

 

『なんだと!メシアの髪と呼ばれた奴が何故ココに!!』

 

 

《ソウマ、おそらくアレは秋月オウマが蘇らせたモノじゃ…あの攻撃に当たればたちどころに消滅してしまうぞ》

 

 

ゴルバの声に息を飲むソウマ、しかしユーノは師であるオウマが闇に墜ちきったと確信してしまった時、レイジは魔導筆を構え大小様々なトランクを召還、号龍を起動させ一気にギリュスへ駆けだしていく

 

 

『レイジ!何をする!!』

 

 

『コイツの相手は僕がやるよ。ソウマはユーノと一緒に先を急ぐんだ!』

 

 

『しかし!』

  

 

『ソウマ。覚えているかい。僕達が魔戒騎士として最初に学んだ《譲り葉の心》を…今がその時なんだ……あとで必ず会おう。皆で!』

 

『くっ………すまない』

 

 

互いに背を向け先を走る二人の気配が無くなるのを感じレイジは眼前の敵…魔毆龍ギリュスへ向き直る。その心は信じられないほどに落ち着きゆっくり閃光剣を構える

 

 

『………魔毆龍ギリュス、かつてメシアの髪と呼ばれた古のホラー………たが負けるわけにはいかない!』

 

 

チンクの顔が一瞬よぎり閃光剣を握る手に力を漲らせながら砲撃をかわし腕を駆け上がりながら堅い外郭を切り裂いていくのを援護するよう大小様々な号龍達から魔導火が撃ち放たれ火の華がギリュスの身体に咲いていく。

 

 

 

 

 

『………ゴルバ!奴の居場所は!?』

 

 

《………みつけたぞ。ヤツはこの門の向こうじゃ!!》

 

 

無数、いや数千の人間の髑髏と骨にまじりホラーの死体を積み重ね血よりも赤い朱の柱、禍々しいまでの黒で塗りつぶされた巨大な門を前にゴルバの声が響く…

しかし鍵穴すら見当たらない事に疑問の表情を浮かべるユーノに今までだまっていたクトゥバがソウルメタルを軋ませ口を開いた

 

 

《ハハハ!コイツは驚いたな~オウマのクソが思いつきそうな術式だな》

 

 

『貴様知っているのか?解錠の方法を』

 

 

《オウヨ!………刻まれてる旧魔界語には《魔戒騎士が二人で殺し合い生き残った方が通れる》ってな………オウマのヤツ、遂に腐りに腐り切りやがったな?KOREGA♪》

 

 

笑い飛ばすクトゥバの声に緊張が走るユーノ、魔戒騎士同士が争ってはならない…古に魔戒騎士が生まれた時からある厳格な掟。破れば100日の寿命が削られ、最悪な場合は称号の剥奪、系譜の断絶もあることを知っているからこそ戦えない

 

いや、それ以上に…同じ魔戒騎士、仲間として

 

 

だが…戦わなければ門を通れない事実に迷うユーノを思考のループから戻したのは一閃、とっさにかわし魔戒双剣を構え唖然となった。先ほどの一撃、ソウマの白夜槍から繰り出されたモノ。大きく構え刃を光らせた

 

 

『な、なにを!』

 

 

魔導馬を駆りながら剣を槍を打ち合う…ただこの場合はソウマがユーノに対して一方的に仕掛けている。掟のことを忘れたのではと疑うユーノに石突きで撃ちバランスを崩させ返す槍で馬上から突き落とした

 

《何をするのじゃソウマ!いまは騎士同士が争っとる場合か!?》

 

 

 

『……ユーノ、オレはジロウやレイジと違ってお前を信用していない。この状況を招いたオウマに師事したおまえを…この門を通るには丁度いい。不安な要素は省かせてもらう』

 

 

『ソウマさん………くっ!』

 

 

疾風から降りるや地を蹴り白夜騎士打無ことソウマが槍を構え突進、貫こうとする。立ち上がりざまに無銘騎士狼無…ユーノは魔戒双剣《無銘》を白夜槍の刃にぶつけ、そらし反撃に転じる…凄まじいまでの槍と剣の切り払いで生じる衝撃波が二人の戦いの激しさをます度に門が大きく震えた

 

 

『おおおおお!』

 

 

『はあああ!!』

 

 

門を通るために、互いの命をかけ振るわれる剣…ソウルメタルの独特の振動音が辺りに木霊した

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

『…………』

 

 

リュウジンオー、碓氷カズキは構えたザンリュウジンをおろし空を見上げる。いまだに爆発の煙が濃厚に立ちこめている。僅かに一瞥し背を向けた時だ。狼のうなり声と奥底から響くような蹄の重低音が耳に入る、まさかと思い再び目を向けた先には、白金の輝く馬?に騎乗する騎士…牙を剥いた狼の面、西洋の流れを想わせる白金に黒、胸元に巻かれた《カテナ》を持つ全身の至る所に大小様々な亀裂が目立ち隙間から夥しい血を流す《オウガ》の鎧を纏ったタカヤの姿。驚きながらもザンリュウジンをアックスモードへ変え両手に持ち直した

 

 

『……しぶといな。乱撃を防いだのはその鎧のおかげみたいだな?でも大層な鎧を着たって俺には勝てないってのを教えてあげるよ』

 

 

再び姿を消した…《烈風》。いわゆる超高速戦闘を可能とするリュウジンオーのみに使えるスキル。先ほどのタカヤを翻弄しダメージを与え続けたのはこれだったのだ。しかしタカヤは剣斧を肩に預けるように動こうとしない、ザンリュウジンの刃が後わずかで鎧に触れようとした…

 

 

『何!』

 

 

『………』

 

 

何もない空を切るザンリュウジンの刃、かわしたのかと考えるも、この超高速で動く自分を捕らえることは出来ないハズ。再び刃を肩口めがけ振り下ろした…が、何かに阻まれる。魔戒剣斧がザンリュウジンの刃を来ることを予想していたかのように防ぎ、ソウルメタルの振動音と共に軽くいなされ払われた

 

 

『アナタの動きは確かに速い…普通の人なら目で追えない。でも防ぐ方法は一つ』

 

 

『!!』

 

 

『アナタと同じ土俵に立てばいい……こんな風に』

 

 

リュウジンオー、いや碓氷カズキの顔には驚いていた。烈風を使用した自分の動きに馬を操りながら追従、さらには攻撃をすべて柄や鞘に入ったままの剣斧で防ぎ、弾いている。それよりも先程とは違い強い意志を感じ取る

 

 

それどころか、タカヤは攻撃を仕掛けてきてない事に疑問かわいてくる。

 

 

『なぜ攻撃をしない!』

 

 

『…………アナタが《人間》だからだ』

 

 

『な!?…………ふざけるなよ?人間だから傷つけない?笑わせてくれるよ…最高だね。弱くて、すぐ裏切る、奪い合い、恐れ、殺し合うのと一緒だっていうのか?この世界の人間のようにさ!』

 

 

 

『……確かにあなたの言うことは正しいかもしれない……でも、全てがそうじゃない!僕の知る人達は辛い過去と向き合い、それでも必死に明日を、その先にある《未来》へ今でも歩き続けている……僕が守りたいのは…………』

 

 

刃を柄や腕で防ぐタカヤの脳裏で今までノイズ混じりだった顔がはっきりと見え、名前が浮かんできた…ヴィヴィオ、アインハルト、ミウラ、ジーク、ファビア……あの時、自身が強姦されかけ、タカヤが怒りのあまり犯人に刃を向けようとした手に必死に手を重ね止めたノーヴェの言葉が今まで本能で戦ってきた自分を…魔戒騎士として、一人の男として一番守りたい人の声と顔がさらなる力を生み出した

 

 

『……明日(あす)、先にある未来を歩みつづける人達をホラーから護るために魔戒剣斧を振るう!!』

 

 

狼のような唸り声と揺るぎない信念に呼応するよう、鎧の黒くなった部分が脱皮するように全て剥がれ落ちさらに輝きが増し、完全な白金へ変化…ほんの一瞬、形状が変化したのに気づいたカズキ、しかし瞬く間に元に戻った

 

 

『………(やれやれ、やっと思い出したか……さてお暇させて貰うかな。悪役を演じるのは辛いね)………そうか。なら行けよ……お前の信念が本当かどうか見物させてもらうよ』

 

 

『……わかりました……いくよ白煌、開け《魔戒道》!!』

 

 

主の強い意志に答えるように嘶き、前脚を上げ力強く蹄を地に叩きつける。空気が震え目の前の空間がぐらりと歪み、魔導火に煌々と照らされた石造りの長い通路が現れ手綱を引き、一気に駆け出す

 

向かうのは聖王教会最深部にある魔戒殿…罅が入った肋と胸骨、折れた右腕、切り傷の痛みに耐え血を滴らせるも力強く地獄の蹄音を鳴らしながら駆ける。皆を助けるために…全てを思い出したタカヤに待ち受けるのは最後の戦い

 

 

そして…すべてが終わりを迎える時

 

 

 

アギュレイス復活の儀式開始まで35分

 

 

第二十五話 鷹矢ー散華ー(二)

 

 

 

 

(三)に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔導刻…………00,3秒


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