魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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「い、いや……うそ……タカヤ…タカヤああああ!?」

粉々に砕け散る鎧…白金の破片は雨のように空に舞い全身から血を流しながら地に降り立ち糸が切れたように地面に倒れた

『ヌルヌグチヌ、マキイクス……クヌ、アギュレイスヌニミクツルツミミッヌカ?』


倒れたタカヤの手には魔戒剣斧が握られている。たが身体がびくんと跳ねた

「う、うう…あう!」

僅かに残った胸鎧に巻かれた鎖がはじけ、怪しい輝きを秘めた魔石……漆黒の魔皇石が輝き命を吸い始めたのだ


「誰か、誰か……タカヤを助けて!!」






第二十五話 鷹矢ー散華ー(一)

「申し訳、申し訳ありませんメイ様!私めが不甲斐ないばかりにヴィヴィオさま方を」

 

 

「デルク、アナタは悪くないわ……私がここを離れなければ……」

 

 

何度も頭を下げるデルクの肩に手をおきながら魔導筆を軽く振るう…魔戒殿の多重結界をいとも簡単に破る壊されているのが手に取るようわかる。秋月の魔戒術式を知り尽くしたお父様なら容易い

 

「秋月メイ、今は悔いている場合ではない。お前がココにいるという事は見つけたのだな」

 

 

「ええ、そこに間違いなくお父………アルターはいるわ。ヴィヴィオさま達もいる…」

 

 

軽く魔導筆を振るう。天井から巨大な鏡《魔導鏡

》が三つ現れある場所を映し出す…巨大な浮き島が見えおどろおどろしい邪気が溢れかえる光景、その場にいない筈なのに肌が泡立つのを感じながら静かに告げた

 

「……内なる魔界と真魔界の狭間……封印の地《アギュレイスの園》に」

 

 

「そこにゲートは開けるか?」

 

 

「……今から三時間後、二つの月が重なる前に転移ゲートを開ける。儀式が行われるまで4時間39分。差し引き1時間39分でアルターを倒しヴィヴィオ様達を助けだす…」

 

「そうか…タカヤは?」

 

 

「………まだわからないんです…アストラル界からも途絶されていて…」

 

 

「心配するな秋月メイ。タカヤも無事だ…」

 

オウマを父ではなくアルターと呼んだことに父オウマと闘う事を決意した事に気づいたジロウ、ソウマ、レイジの目からこれから始まる最終決戦に向け強い決意が見えた…タカヤの行方が心配で仕方ないはずだが気丈に振る舞うメイ、ゲートを開くために必要な界符、魔黒石、魔導蝋燭を揃える中、ユーノの姿がない

 

 

「ユーノくん!ヴィヴィオはどこに…教えてよ…アインハルトちゃんも…ねぇドコに」

 

 

今二人がいるのは聖王教会にある一室。事情を聞き泣き出しそうな表情を浮かべるなのはをベッドに座らせ落ちつかせていた

 

 

「落ち着いてなのは。みんなのいる場所をメイさんがさっき見つけたから………僕たちは今から三時間後にゲートを開いてヴィヴィオ達を助けに行く」

 

 

「お願い!私も、私たちをソコに連れて…「ダメだ」…え?なんで」

 

 

「…ココから先は人ならざるモノ、ホラーとの戦いだ、なのはは残って欲しい。フェイト、はやても

。ヴィヴィオ達が帰ってきたら暖かい食事を用意して笑顔で『お帰りなさい』って迎えてもらいたいんだ…コレは、なのは達にしか出来ないことだから」

 

 

「え?でも……待って!」

 

今までに無いぐらいに穏やかな笑みを見せ、コートを翻したユーノくんを慌てて裾を掴みました。だってさっきの言葉…「ヴィヴィオ達が帰ってたら」その中にユーノくんや他の人の名前がない……死ぬ気だって

 

 

「……ユーノくんも一緒に帰ってきて…」

 

 

「…うん…!?ぷはっ!な、な、な、な、な、何を!?」

 

 

頬を掴みキスした…唇が離れ正気に戻って慌てふためくユーノくんの頭を掴んで今度は長く唇を押し当てる…私のファーストキスあげたんだから必ず帰ってきて。じゃないとお話しするからね!        

 

 

「あ~~!なのはちゃんずるい!」

 

「ん~私もする!!」

 

 

「ち、ちょ!待って二人とも!ん~!?」

 

 

途中でわたしを心配して来た、はやてちゃんとフェイトちゃんの声が部屋中に響き渡るけど早い者勝ちだからね…

 

余談だが、二時間後にやつれたユーノがふらふらと歩く姿と、肌を艶々させたなのは、はやて、フェイトが目撃されたとかないとか

 

 

第二十五話 鷹矢ー散華ー(一)

 

 

「ファビアさん……くっ」

 

頭に激しい痛みが走りながら歩く…でもどうやって探せばいいかわからない…ファビアさん……あれ?誰だっけ?

 

わからない…でも僕は守らなきゃいけないんだ…あの子と、赤い髪に金色の瞳の女の人…夢にまっすぐ走りつづける金髪の色違いの瞳の子、碧銀の髪の子、元気いっぱいな子、不思議な訛りで話す子の砂嵐がかかった顔がよぎる…

 

 

行かなきゃ…でもどこに連れ去られたかわからない…

どうすれば…僕の耳に低い音が響いた。振り返ると白地にトリコロールカラー、鋭角的なフロントカウルが目立つバイクの姿。まるで意志があるように近づいてきて止まった

 

 

ー乗れ。秋月タカヤ……ヘルダイバーにー

 

 

「え?」

 

 

ー時間が無い。早く乗れー

 

 

また聞こえてきた声…何だろ昔、いや最近聞いたような…でも今は助けにいかなきゃ。声の主にお礼を言いながらバイクにまたがる…なんか懐かしいと思いながらアクセルを全開にし走り出した…スゴいパワーとスピードに振り落とされかけたけど必死にハンドルを握りしめた

 

★★★★★

 

 

「いったか坊主は?」

 

 

「ああ…滝さん」

 

 

「まさかあん時のバイク泥棒がユウキの息子だったとはな……ホントよく似てやがるな。でもなあお前があんなに気にかけるなんてな」

 

少しからかいまじりで話すのはファビアに頼まれ買い出しに出かけた滝和也、その問いに無言で返す青年《村雨良》。その目はタカヤが乗るヘルダイバーを見つめている…バルゴとの戦いの最中に語りかけた声の主の正体だったのだ。バダンを抜け記憶が無く街をさまよっていた自分自身とタカヤを重ね、人殺しと言われ悩み苦しむのをみて激を飛ばしたのだ

 

 

 

「さあな(……タカヤ、あとはおまえ次第だ)なあ滝さん、この食材どうする?」

 

 

「どうするって……手で運ぶしかないだろ。捕獲するのマジ疲れたぜ」

 

 

…見送る二人の背後にはファビアから頼まれたグルメ食材の山々に冷や汗をかく滝を尻目にヒヨイヒヨイ担ぎ上げる村雨…後に巨大なニンニク?実?が山を移動する噂が流れたらしい

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

聖王教会、演武場

 

 

「…………ゴルバ、今度の戦いは恐らく最期になるな」

 

 

ーうむ、ソウマ。ウェンディ殿には言わなくてよいのかー

 

「な、なんでウェンディの名前がでる!?戦いの前だぞ!?」

 

 

ー照れるな。往く前にいちど会えば良かろうに?それとも別れが辛いのか?ー

 

 

「……っ…そうじゃない。魔戒騎士のオレなんかよりもっと良い相手がいるはずだ……いつ死ぬかわからないオレと一緒にいるよりもっと幸せになれるはずだ」

 

 

ぶっきらぼうに言うソウマにゴルバはややあきれながらため息をついた…あの大戦からの付き合いで不器用でまっすぐな性格だと知っていた

 

ナカジマ家に居候するようになって何かにつけて世話を焼きたがるウェンディに最初は迷惑していたが、それが普通に、当たり前になり買い物という名のデートを繰り返すうち《大事な存在》に変わっていった

 

…ただ、自分みたいな…ホラーから人を守るためにホラーに憑依された人を斬る。守るためにホラーに憑依された人を斬る…

 

手をふとみると真っ赤な血にまみれている…がそれは幻…こんな俺の手ではウェンディを幸せになんか…

 

 

「………ソ~ウ~マ~っち♪」

 

 

「う、うわあ!?ウ、ウェンディ!?何でココにいる!?」

 

 

背中に魅惑のメロンを感じながらふりほどこうとししたソウマ、しかしさらに強く抱きしめさらに密着、服一枚越しの柔らかさを否応がなしに感じまくるソウマ。無理やり引きはがそうと手をかけようとしたが止まる。ウェンディの身体が微かに震えている

 

 

「………ナニがあったウェンディ?」

 

 

「……あはは、何でもないッスよ…ソウマっちこそ元気ないじゃないッスか?だからこうして元気にしようかなって…あたし、こんな事しか出来ないから…」

 

「……そんなことはない」

 

 

「え?」

 

 

「…お前からいろんな事を教えてもらった。もしウェンディと出会ってなければ…俺は路頭に迷っていただろう…俺は…」

 

…コレからこの世界の運命を決める戦いに赴く。お前とはここでお別れだ。と言おうとするも言葉が続かない…たとえいえたとしてもウェンディの悲しみに染まる表情しか浮かばない。それ以上に死に別れた妻と雰囲気が似てたのもあった

 

 

「今朝、不思議な夢を視たんッスよ……ソウマッチが……どこか遠くにいっちゃう夢を…追いかけるんだけどドンドン遠くに……」

 

 

「ウェンディ…俺は…いかな…」

 

「……言わなくてもわかってるッス…あたしが今から言うのはわがままかもしんないっすけど……い、いや。やめておくっ…や、やっぱり……か、か、」

 

 

「………心配するな。必ず帰ってくる……まだ流行りの服や店を教えて貰ってないからな」

 

 

「必ずッスよ………ん」

 

 

自然と顔が近づき唇が重ねられた……やっぱりウェンディには頭があがらないなとソウマは思いながら何度も重ねた

 

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

騎士寮

 

 

「ジロウ先生、コレは?」

 

 

「オレの指導によくついてきてくれた修了書みたいなものだ。コレから先、お前達はその剣でいわれなき暴力で苦しむ多くの人達を救うだろう。オレからお前達に最後に言うことがある…………絶望的な、先が見えない状況に陥ろうとも、わずかな可能性を見いだせたなら絶対に諦めるな…ソレが必ず道を切り開くきっかけになる。忘れるな」

  

 

「「「「はい!ジロウ先生!!」」」」

 

 

騎士候補一人、一人に言い聞かせるジロウ。候補生の胸元には色とりどりの飾りが施されたお守りがついている。元気に答える姿に嘗ての教え子…魔戒騎士たちを重ね笑みを浮かべ歩き出す……もう会えないと思うと寂しい。ゲートが開くまで二時間、聖王教会の魔戒殿で待とうと考えてると、背後に気配を感じ振り返ると、ギンガ、オットー、ディード…三人がやや戸惑いながら立つていた

 

 

「オットー、ディード、それにギンガさん。何のようだ?」

 

 

「……ジロウさん、あの………行くんですよね」

 

 

「ああ…」

 

「………そうですか」

 

 

 

ギンガさんの後ろにいるディード、オットーの顔色が曇る。二人にはオレが魔戒騎士である事を教えていない…知り合って日は浅いが二人は教会で眠り続けるイクスヴェリアの身の回りの世話を献身的に続けている。それにココで候補生達に指導している時には食堂の新メニューの試食を頼んでくるようになった……でも場所が遠いに関わらずギンガさんがここに来て昼餉を共にするようなってから色んな表情をみれた

 

ギンガさんと二人の過去をカリムから聞いてる、ふつうの女と変わらない…自らの過去を受け入れ未来へ歩いている……三人には幸せになってほしい。アギュレイス復活を阻止しヴィヴィオたちを必ず助け出す事は世界を、人々の未来を守ること、ギンガさん、ディード、オットーの幸せにつながるハズだ

 

 

「あのジロウ様……か、必ず陛下を、陛下達を連れて帰ってきてください……も、もちろんアナタさま方も一緒に」

 

 

「まだ、ジロウ様には僕とディードが作る新メニューの味見をしてほしいんです…コレからもずっと。だから」

 

 

 

「………わかった。ディード、オットー。なら美味しい食事を用意して待っててくれ。ギンガさんと一緒に…ん?」

 

 

「約束ですよ…ジロウさん………わたし信じてますから」

 

 

ギンガさんが抱きついてくる。何故かわからないが少し頬を膨らませたオットー、ディードも…三人の為にも必ずアギュレイス復活を阻止する…オレたち魔戒騎士が命にかえても必ず

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「ん~これでよし」

 

 

《ようやくできたかい。かおがいまいちかねぇ》

 

 

「はは、確かにそうかな…でもコレなら魔戒殿の守りは大丈夫だ。僕たちが《アギュレイスの庭》に行ってる間、頼んだよ《号竜・零式》」

 

レイジの前に置かれた無数の鞄が震え、ガシャガシャと展開し黒みかがった鉄にも似た金属、無骨な作りの二本脚に支えられた胴体にやや不細工な竜の顔の魔導具《号竜・零式》が跳ねながら蜘蛛の子を散らすようにその場から離れていくのを見届け魔導机を畳み

始めた時、気配を感じ振り返る。腰まで届くほどの銀髪を揺らす眼帯をつけ管理局員の制服越しでもわかる豊満な胸にくびれた腰にスカートから覗く美しい脚…誰もが振り返るほどの女性にレイジは笑みを見せた

 

 

 

 

「……チンクさん。どうしたんです…あっ!?」

 

 

「…いくなレイジ殿……」

 

 

駆け寄り様、レイジの身体に抱きついたチンクの言葉から不安、恐れが感じ取れる。微かに震える身体を包むよう抱きしめた…

 

 

「…もうレイジ殿や、ソウマ、ジロウ、ユーノ、タカヤ同様に残された時間が無いのは知ってる。なのに何故、行こうとするのだ!お願いだ……いくな」

 

 

 

「……チンクさん、あそこにはあなたの妹ノーヴェさん、そして高町さんのお子さんの友達がいる…ホラーの王アギュレイスが現界したら命は喪われ、この世界に住む人々は一人残らず喰われてしまいます。僕は魔戒騎士として…あなたの大事な家族、ノーヴェさん、ノーヴェさんにとって大事な人たちを助けたいんです……」

 

 

「………!」

 

 

「それに、僕はチンクさんには笑顔でいてもらいたい…だからもう泣かないで…」

 

 

顔を上げたチンクの涙を指ですくいながら、穏やかな笑みを浮かべるレイジ…その瞳の奥に強い信念の光を見る、少ししてゆっくりと離れた

 

 

「……なら約束だ……必ずみんなと帰ってきて……私をこんな体にした責任をとってもらってないんだからな」

 

 

「はい……チンクさん、少し手を」

 

 

「…………!?コ、コレは」

 

 

「僕が帰ってくるまでエルヴァを預かってください……」

 

 

レイジに握られたチンクの左手薬指にはめられ輝く魔導輪《エルヴァ》に驚く…古より魔戒騎士が愛する女性に自身の一番大事なモノを預ける。それは必ず愛する女性のもとへ戻る事を意味する

 

それを知らずか知ってか、どんどん顔が真っ赤になっていき俯かせたのを見たレイジは拙いことをしたと勘違いした時、唇に柔らかな感触…見慣れた顔に銀髪、

眼帯…チンクがキスしてることに気づいた

 

 

「……チ、チンクさん!?に、にゃにお!?」

 

 

「わ、わたしからのお返しだ………と、とにかく!必ず帰ってくるのだ!帰ってきたら……い、いまよりスゴいのをするから!」

 

 

まくしたて、一気にその場から駆け出すチンク…

 

 

「………はい。必ず帰ってきます……チンクさんのところに」

 

魔戒剣を手にし走り去るチンクへ向けつぶやくと魔戒殿へと歩き出した頃

 

 

「クロウ…」

 

 

「わかってる……アリアおばさ「次言ったら刺すわよ」……お、お姉さん。行こう。オヤジと先生たち、おふくろたちを助けに…」

 

 

「もちろんよ!タカちゃんには私の××××としっぽり、獣のようにたくさん×××して、×付けして貰て、他の子よりも早くクロウを産んでもらわないと……」

 

 

「な、なにいってんだアリアおばさん!いろいろ危ない発言しちゃダメだから!?はう!?」

 

 

「ク~ロ~ウ~!?前にも言ったわよね~私はまだピチピチの二十代よ!おばさん言うなああああ!!」

 

 

「ひゃ、ひゃめて~くみんにしい!(や、やめて、引っ張らないでぇ!?)」

 

 

おら~!とクロウの頬をむにい~とつかみ伸ばすアリアこと戦闘機人No.Ⅱ《ドゥーエ》…未来の甥とおばさんのスキンシップはしばらくしてようやくおさまり、肩で息をしながら自身のデバイス《アーク・エッジ》を起動、動きやすさを重視した黒地に紫のラインが入ったジャケット、黒のライダースーツにも似たバリアジャケットに身を包んだクロウは厳つい装甲が目立つ手甲を上に振り上げ拳を叩きつけた

 

 

「うし、これで遅れた時間は取り戻せる…どうしたアリアお姉さん?」

 

「なんでも無いわよ、さあいきましょう」

 

 

 

一瞬、クロウと妹と姿が重なり、やっぱり親子ねとドゥーエは思いながら再び生をうけてからの日々を思い出し本当に未来から来たと確信した…それからはタカヤに刻まれた破滅と忘却の刻印を解く《白燐の牙》を探していた…ミッドチルダに点在する魔導図書館を探し回りようやくクロウ、ドゥーエはその在処のヒントを突き止めた

 

 

ービュクリヌネクブア・ワ・ムルヌシヌム・ヌ・マヌルムム・ニ・ヌグイヨヌルアラワツル(《白燐の牙》は《守りし者》を《守る者》の強き願いと想いにより現れる)ー

 

 

 

難解な旧魔界語を解読し得られたのはコレだけ。正確な場所を掴むにはファビアの持つ絵本、はやてに会う、つまりはメイがいる魔戒殿に行かなければならない。二人は乱立するビルとビルの間に光で出来た道の上を駆けていった…この世界に六人の乙女の穢れなき魂をゲートに復活を果たそうとする死醒王アギュレイス、アルターの思惑を阻止する為、夜に染まる街を走る

 

そして三時間後…聖王教会最深部《魔戒殿》。無数の赤い蝋燭《魔導蝋燭》が煌々と赤、緑、黄色、白金、紫炎の炎がゆらゆら揺れ退座に置かれ磨き抜かれた巨大な鏡《魔導鏡》、色とりどりの界符が天井にかけられた紐《魔導縛》に規則的に貼り付けられ風に揺れ、《仙水》が幾重にも円を描き石作りの地面を流れる

 

「準備はできました………皆様、準備はいいですか?」

 

 

白を基調とした魔導衣に様々な魔戒文字を書き込んだものを身に纏い、魔導筆を構えるメイの言葉に頷くレイジ、ソウマ、ジロウ、ユーノはゆっくりと魔戒剣、魔戒槍、魔戒双剣を鞘走らせ天に向け構え素早く円を切る…狼のうなり声と馬の嘶く声を木霊せながら光が満ち現れたのは希望

 

 

白夜騎士《打無》、閃光騎士《狼怒》、雷鳴騎士《破狼》、無銘騎士《狼無》…ソウルメタルの鎧に身を包みそれぞれの魔導馬に跨がり蹄を鳴らし嘶くのを手綱を引き抑えた

 

 

「……先にも話しましたが、このゲートをあけていられるのは1時間と39分が限度、それまでにヴィヴィオ様たちを助けだし、死醒王アギュレイス復活の儀式を行うアルターを止めます……私はココに残りゲートを維持にする為動けません。ですがあなたさま方のサポートを可能な限り行います」

 

 

『わかった…往くぞソウマ、レイジ、ユーノ!』

 

 

『『『おう!/わかった/はい!』』』

 

 

手綱を引き蹄を鳴らし先を行くのはジロウ…雷鳴騎士破狼、深みがある蒼に銀の装飾が目立つ二本角が前へ突き出た頭部に白い鬣を揺らし走る愛馬…魔導馬《震月》。艶やかな紫の体躯に鋭利な鬣を備えたレイジ、閃光騎士狼怒の《光輝》、白い体躯に赤、銀、鋭利な装飾に赤いラインが目立つソウマ、白夜騎士打無の《疾風》、そして鋼色に赤い装甲が目立つ未完成さを感じさせるユーノ、無銘騎士狼無の《無銘》が正面に開かれたゲートへ一直線に突入、水しぶきをあげるように鏡の表面が揺れ魔導文字が溢れ出し四人がアギュレイスの園へ向かったと同じ時刻、聖王教会から離れた場所でも戦いが起きていた

 

 

「く、くうう……」

 

 

『どうした?早く立ちなよ……守るんだろ?』

 

 

「く、そこを通して……みんなの所に行かなきゃ……守らなきゃ」

 

 

『……聞こえないなあ~お前の言葉……特に人から借りた言葉なんか説得力の欠片も無いんだよね!』

 

 

「かはっ!」

 

横倒しになったバイクの近くに倒れうずくまるタカヤの顔を掴み、そのまま鳩尾めがけ重い拳を叩き込み殴り抜いた。木の幹に背中から叩きつけられ息が止まるもすぐに咳き込みながら立ち上がるタカヤの瞳に映るのは全身を斧と髑髏をモチーフにした鎧に身を包んだ戦士《魔弾闘士リュウジンオー》がゆっくりと近づいてくる

 

 

『さあ、見せてみなよ?お前の戦う理由ってヤツをさ……お子様みたいな、ありふれた言葉なんか聞き飽きたからさ?』

 

 

ふらふらしながらタカヤは剣斧を杖代わりにし立ち上がった

 

 

第二十五話 鷹矢ー散華ー(一)

 

 

 

 

(二)へ続く

 




魔導刻……00,9秒、00,8秒、00,7秒……


…アギュレイス復活儀式開始まで1時間38分99,9秒………


予告


『ああ~聞こえないなあ。カビ臭い騎士道を信じ切る子供の戯言なんてさ…薄っぺらいにも程があるんだよ。ほら、さっきみたいにもう一度いってみなよ』


「ぐ…くうあっ!?」


『守るんだってさ?一分と少ししか、あの変な鎧を纏えないと戦えない騎士…魔戒騎士に守れるものってないんだな』



   次回 鷹矢ー散華ー(二)








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