魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)


第二十四話 剥奪ーシンジツー

聖王教会…ベルカ自治領におかれたここは最後のゆりかごの聖王《聖王女オリヴィエ・ゼーゲブレヒト》に由来する遺品などが多数所蔵され、礼拝堂、騎士団、修道騎士寮、そして病院をも持つ。しかし、その表の顔とは別の顔を持っていた

 

 

魔戒騎士達の鎧の修繕、魔導火補充装置、鍛錬場、ソウルメタル備蓄庫、魔導図書館、浄化の石版がおかれた《魔戒殿》が最深地下におかれている…ココには宿泊施設もあり、その一つに光が灯っていた

 

礼拝堂の半分はあろう部屋には質素ながらも高貴な気品を溢れさせるニ十人は座れよう位の広さのアンティークの円卓状のテーブル、椅子が並べられ教会騎士カリム、メイ、なのは、フェイト、意識を取り戻したはやて、ソウマ、レイジ、ジロウの前にユーノ、そしてデルクが座っている

 

アインハルト、ヴィヴィオ、ミウラ、ジーク、ファビア、ノーヴェは意識を失い倒れたタカヤを看るためこの場にはいない。やがてメイがゆっくりと口を開いた

 

 

「ユーノ・スクライアさん。無限書庫司書長である前に一般人であるハズのアナタが何故、魔戒導師、そして騎士でも無いのに鎧と術を使えるかを聞かせてくれいかしら」

 

 

「………わかりました。どのみちいつかは話そうとは決めてました……秋月家現当主であるアナタとグラシアさんには…」

 

 

そう口にしユーノは懐から二つの筆…瞬く間に二振りの白木の鞘に収まった剣へ変わった双剣と小さな袋を手にし中から、牙をむき出しにした狼の髑髏に装飾が施された鋼色のイヤリングを取り耳に付けた。すると大きな欠伸をしながらイヤリングがガチガチと牙を鳴らした

 

《ああ~よく寝たぜ~漬け物になるまでこのままかとおもったんだな~コレが………グーテンモ~ゲン、HAHAHAHAHA……ってココどこだユンユン?》

 

 

「少し空気を読んでよクトゥバ………僕の魔導身具クトゥバです…」

 

《夜露死苦、四×九=三十六!ん?のり悪いぜ~》

 

 

「っ……は、初めて見る魔導身具ね…では聞かせてくれるかしら」

 

 

「……僕が先生…秋月オウマ先生と出会ったのは今から十三年前、新しく発見されたベルカ緒王時代の遺跡を調べていた時でした……」

 

 

(十三年前?どういうこと?お父様は殲滅騎士魔煌に三十年前に殺されたはず…)

 

 

……あの頃の僕は自分が嫌いになりかけてた。僕と出会わなければ…魔法と出会わなければ、あの日、

なのはの体調に気づいていたら…

 

 

ーお前のせいだ……なのはと昨日あってたんだろ!体調が悪いって何で気づかなかったんだよ!なのはが墜ちたのは、お前の…ー

 

 

ー止めやヴィータ!ユーノくんのせいやあらへん。ウチらにも責任ある……なのはちゃんの性格わかるやろ?ー

 

 

ー……でもー

 

 

僕は何も言い返せなかった……魔法の世界に引き込んでしまってPT事件、闇の書事件に深く関与して局員として働くようになったなのは…無限書庫に勤めるようになって会う機会は少なくなったけど、顔を合わせて話す事は何度もあった

 

あの日…撃墜したって聞いた僕は目の前が真っ暗になった…何度も何度も考えた…あの時何で気づかなかったんだって

 

…自己嫌悪に苛まれながらベルカ緒王時代の遺跡発掘に皆より先に現場に向かった、忘れたかった僕は睡眠時間と食事もとらず調査し続け未発見の通路を見つけた。調べようとした時、入り口が閉じてトラップが起動した。助けをよぼうとしたけどゴーレム?の身体から思念通話を阻害する何かが出て通じない……身体も思うように動かない。おおきくゴツゴツした拳が振り上げられスローモーションのように迫る

 

 

もういいやと思った…こんな僕なんか死んであたりまえだって、そんなときゴーレムの拳が顔面で止まる…乾いた音と同時に砕けた。その向こう側に誰かの姿を捕らえたのを最後に意識をなくした。次に目が覚めた僕は岩肌に寝かせられて焚き火の前にいた…

 

 

ー目が覚めたかー

 

 

真っ黒な生地に金、赤の刺繍が目立つ民族衣装みたいな服に頭まで身を包んだ人が座ってみていた…あたりをみるとまだ遺跡の中だというのがわかった

 

 

ーあの、あなたが僕をここに?ー

 

 

ー………あのゴーレム…魔戒人形に用があったからな…破壊したそこにお前がいた…それだけだー

 

 

それっきり会話はなかった…でも助けてくれたのには変わりはなかった。ふと僕はあるものを目にする…不思議な彫金が施された筆。思わず手にしたら、穂先に光が灯った

 

ー……ほう?まさか魔導力を扱えるとはな……お前、名はなんという?ー

 

 

ーえ?は、はい……ユーノ・スクライアですー

 

 

ー………魔導筆に光を保ったまま、私と同じ構えをしてみろー

 

 

ーこ、こうですか?あの、コレはー

 

 

ー…………お前は何かから逃げているな…ー

 

 

ー…………!?…ー

 

 

ー……この遺跡は仕掛けが至る所にある。スクライアの一族ならわかったはずの仕掛けに気づかなかった…まあ、私にとってお前が抱える問題など些細なことだがな……行くぞー

 

 

ふっきらぼうに言うと筆に灯った光を頼りに進み始めた…しばらくあるいた時、光が大きくなる?なぜかわからないけど何かがあると感じた

 

 

ー………さがっていろー

 

筆を構えながら小石を広い前へ投げる。天井から無数の槍が降り注いだ…もし気づかなかったらと思うとゾッとした

 

 

ー………いくぞー

 

 

ーは、はいー

 

 

それから何時間歩いた。やがて光が見えあたりを警戒しながら一気に踏み出した。調査隊のみんなはその場にはなかった…もしかしたらと思い端末を使い連絡すると調査隊のみんなもかなり心配していて救助隊の編成し向かわせようとしていた

 

無事を伝えたけど迎えが来るまでの間、ナニをすればと考えていた時、声がかけられた

 

 

ー…迎えがくるようだな。私の用はすんだ……ココにいる必よー

 

 

 

ーま、まってください……ー

 

 

ー……………なんだ?ー

 

 

ーぼ、僕にあなたの使う魔法を教えてください!ー

 

 

ー………なぜだ?ー

 

 

ー…………………ー

 

 

ナニも答えられない…でも僕は自分の無力さと許せない気持ちが占めていた…いや、没頭することで逃げたかったんだと思う……少し間があく。そして帰ってきた答えは

 

 

ーいいだろう。ただし迎えが来るまでのあいだだけだ……ー

 

 

ーあ、あの…えとー

 

 

ーオウマ……秋月オウマだ……ー

 

 

あっさりと諒承してくれた…迎えが来るまでの間、オウマ先生は僕に実践形式で稽古をつけてくれた…内容は過酷で何度となく倒れた。でも歯を食いしばって立ち上がる。

 

先生の使う魔法…魔導術は僕達魔導師がもつリンカーコアからの魔力で生み出されたモノではなく《魔界》の力からのモノ

 

それ以上に肉体の鍛錬、魔導術、自然界における事象。とくに月の満ち欠けによる術の効果も実際に身体で受けて覚えた、それを繰り返しながら無限書庫からの救助隊が到着した日にオウマ先生は姿を消した…蓄積していたクロノからの資料請求に悪戦苦闘、なのはのリハビリを手伝いから帰ってきた夜遅くに先生が姿を見せた

 

 

ーオ、オウマ先生?ー

 

 

ー……ナニをしている、はやく用意しろー

 

 

ーな、なにをー

 

 

ー……決まっている、お前の鍛錬だ……私がいいというまで終わりはないと思え…さあ、はじめるぞ《時間》もあまりないからな………その前にいっておくー

 

 

ー?ー

 

ー私は決してお前のことを心配でココに来たわけではないからな…鍛錬、そう鍛錬がまだな終わってないのだからな…と、とにかく構えろー

 

 

……な、何なの一体……それからはフラリと現れては術や鍛錬、魔導力を叩き込まれた…なのはのリハビリに僕がみんなと交代しながらつき合ってても変わらなかった。術や体術が成功しても誉めもしてくれなかったけど…でも先生の様子が変わり始めた。なにか焦っているようだった。そして長くて辛いリハビリが終わり、なのはが再び空を駆ける姿に皆が喜びフワリと降りてきた時は少しだけ泣いてしまった

 

あの遺跡から帰ってすぐにリハビリに付き合うと言った僕にはやて、フェイトは驚いていた。ヴィータはあまり顔をみずに頷いた…あの言葉が気になって仕方なかったんだと思う

 

 

ーあ、あのときは……そ、その悪かったな…ー

 

 

ーあ、いいよ……僕にも責任があったからいわれても仕方ないよ。だから気にしないでー

 

 

なのはの全快を祝うパーティーをやろうって事になった前の日の夜、先生がフラリと現れた。でも何かが変だった。軽く魔導筆を振るうといつも先生と鍛錬している無限書庫未整理区画に転移した。目の前には巨大な岩が鎮座していた

 

 

『……ユーノ、コレを持て』

 

 

「は、はい……うわっ!?」

 

 

先生に渡された握り柄がついた幅広い板…羽子板に似た二つを手にした瞬間、重さが増し床へ落としそうになった、なんとか踏ん張ってみたけど耐えきれず地面に握った手ごとついてしまった

 

『少しはもてるようだな…それは魔戒騎士が振るう魔戒剣と同じ《ソウルメタル》で錬金してある……持つ者の心に応じ、時には隠鉄のように重く……羽毛のように軽い』

 

 

先生は僕の手から羽子板…ソウルメタルの模造剣を軽々と手にしふわふわと浮かばせ軽々と操る……なんでこうも扱えるんだろ

 

 

『ソウルメタルは己の心のありようで自在につかいこなせるようになる。確固たる己の我、信念……く!うう……』

 

「オウマ先生?どこか具合でも」

 

 

『き、気にするな…ユーノ。お前に課題を与える……この岩を五年以内にそのソウルメタルの模造剣で砕け……術や界符を用い破壊することを一切使わずに…もし使えば私はお前を破門する』

 

 

「む、無理です僕には……初めて使うソウルメタルでこの岩を砕くなんて…」

 

 

『…なにも出来ない、無理だ…三年前同様にまた逃げるのかユーノ……あの日私に力を教わりたいと言った時に話した理由は偽りか?』

 

 

「…!い、偽りじゃありません!!」

 

 

『………ならば出来るはずだ………私はしばらく…五年は此処には来れない。それまでに砕いてみろ……ユーノ、その剣を振るうとき、大事な何かを想え……忘れるな。それがソウルメタルを扱う者に必要なモノだ………』

 

 

「待ってくださいオウマ先生!」

 

 

筆を振るい無数の花びらに変わり消えたオウマ先生…それから僕は一人で先生が課した課題に取り組んだ。最初の一年はソウルメタルの模造剣を操ることに費やした…持ち上がるけど自由自在には無理だった。それでも頭上にまで掲げふらつきながら岩へ叩きつけるように斬る…でもはじかれ何度もたたらをふみながら繰り返した

 

(先生はソウルメタルを扱う時、大事な何かを想えと言った……大事な何か……僕にとって大事なモノ)

 

 

一瞬、サイドテールにまとめた再び空へ舞う誰か、リハビリにつきあってくれた髪飾りをつけた誰か、試験に一回落ちて諦めず挑む子の顔が浮かんだ…ソウルメタルの模造剣が僅かに軽くなった…迷わず振るうと岩に滑らかな傷が入った。

 

 

「や、やった…」

 

 

汗だくになりながらようやく傷を入れることができた日からソウルメタルの模造剣は少しずつ軽く、そして操れるようになってきた、毎日切りかかり弾かれながら、巨大で硬い岩に傷をつけていった…二年、三年、四年過ぎた頃にはソウルメタルの模造剣は僕の思い通りに操れるようになった

 

 

その間、無限書庫の整理やクロノからの資料請求が苦にならなくなるほど毎日が充実してきたし、たまになのは、フェイト、はやて達の手伝いもしたりしながら……でも最近、はやてがお弁当を持って僕の無限書庫に来るようになった。他の二人からも事件の資料や愚痴を聞いてるけど名前を出すと不機嫌になるのはなぜ何だろ?

 

 

そして約束の五年目…僕は模造剣を二つ構え一呼吸する…模造剣に意識を集中し一気に地面を蹴り剣を振るう…横凪、立てなぎ、ありとあらゆる方向から息つく間も無く繰り出す、すべての巉撃が吸い込まれるように岩肌を走り抜けやがて手を止め鞘に乾いた鞘滑りの音を慣らしながら収めた

 

ピシリと乾いた音が響きはじめ瞬く間に細切れになりあたりに飛び散る中、見えてきたのは未完成の鎧、白木の鞘に収められた双剣が岩に突き刺さり、小さな箱が置かれてる。よく見ると黒い封筒が張り付けられている。迷わず手に取ると魔導火で燃やす…煙の変わりに無数の文字が浮かび並んでいくのをみて声を失った

 

 

ーユーノ。お前がコレを目にしてることは、私の課した試練を乗り越えたと言うことだろう。ここにある魔戒双剣、鎧はお前の為にこしらえた。しかし時間が無く未完成だ。お前なら完全にする事ができよう………これからが本題だ、これより数年後に大きな事件が起きるだろう。もしこの先、私に出会った時は迷わず私を斬れ……もう姿こそ私であっても《私》では無いからだ。我が娘メイにも、娘の子…恐らく魔戒騎士でる者にも同様に伝えろ《必ず私を斬れ》と。師として守りし者であるお前に頼む。私の最初にして最期の弟子ユーノ・スクライアー

 

 

「せ、先生…あなたは………」

 

 

先生の手紙はやがて消え、僕はそのまま立ち尽くしていた…先生の予言通り四年後に広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティが戦闘機人、ベルカの遺産《ゆりかご》を用いてミッドチルダを震撼させる都市型テロJS事件が起きた。もしかしたらと思い、なのは、はやて、フェイトに内緒で六課の外部協力者として動いていた

 

先生ともう一度会いたい。なぜ僕に斬るよう頼んだのかを聞きたかった…本局、六課襲撃のさい魔戒法師が使う術の残俟を幾度も感じた…でも無限書庫に戻ってゆりかごの詳細を急ぎ調べなければならなかった。後ろ髪引かれる想いで戻った

 

ゆりかごは消え、コアにされたヴィヴィオも無事に救出、戦闘機人から端を発した事件は終わりを迎えた…それからずっと先生の足取りを追ったけど痕跡すらなかった。四年後に僕がホラーと対峙し先生と再会するまでは

 

 

「…………これが僕が知る先生…秋月オウマ先生のすべてです…」

 

 

「……よく話してくれたわね…でもアナタの話には矛盾があるわ。お父様は30年前に亡くなっているわ。生きてるのはおかしいのよ……」

 

 

「………メイ様、少しよろしいでしょうか」

 

 

僕の後ろに控えていた男性…デルクさんがメイさんの疑問に答えるように重々しく口を開いた…

 

 

「……先代《白煌騎士オウガ》オウル様から固く口止めされてましたが……もう隠し通すのは無理と判断しました。心して聞いてくださいメイ様、オウマ様は三十年前に起きた二重皆既日食を利用しゲートを開こうとした殲滅騎士・魔煌に殺された訳ではないのです……」

 

 

「デルク?何を?……………」

 

 

 

「………メイ様のお父上…秋月オウマ様が殲滅騎士・魔煌なのです」

 

 

「そ、そんな……なぜ、なぜ、オウマお父様が……嘘よ」

 

 

あまりの事実に動揺を隠せないメイ…同席しているカリム、なのは、はやて、フェイトも驚いていた、しかしジロウ、ソウマ、レイジは思い当たる節がある表情を浮かべながらデルクの言葉の続きを聞いていく

 

 

「オウマ様は秋月家の血筋ではありません。オウル様が違法研究所を叩き潰した際、保護した子を養子としてお迎えになったのです、オウル様に鍛えられ剣と術に関して恐ろしいまでの才をお持ちになりましたが剣斧オウガにえらばれませんでした。優秀な魔戒法師として成長しオウル様の子《マヤ》お嬢様と結ばれました。ですがマヤ様は幼き頃から身体が弱く体調がお優れになりません。オウマ様はマヤ様の身体を治すために魔戒の知識に傾倒し始めたのです…そんなときマヤ様がご懐妊されたのです……ですが」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「マヤ、頼むその子を産まないでくれ……君の命が」

 

 

「大丈夫、大丈夫……せっかく授かったオウマと私の子を産みたいの……愛するアナタの子を」

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「オウル様、プリム様からも反対されたのですが、頑なに固持し続けたのです……あまりの頑固さにオウマ様は折れました。そしてさらに魔戒の知識を極めるべく没頭しながらマヤ様をみておられました……10ヶ月後、ありとあらゆる備えをし終えお二人の子、メイ様がお生まれになりました………ですが三年後にマヤ様が…」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「マヤ!…………そんな……な、なに眠っているだけだ……」

 

 

「オウマ、マヤはもう」

 

 

「何をいってるんだよオウル義父さん。寝てるだけだ……ほらまだ暖かい…」

 

 

「いい加減にしろオウマ!マヤは亡くなったのだ……」

 

 

「マヤ…う、くううう…マ、ヤ……うっ」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「マヤ様を失ったオウマ様の悲しみは計り知れないモノ、それ以上に魔戒の力が無力であることに打ちひしがれたのです……オウル様、プリム様はオウマ様と一緒にメイ様を育て始めました……思えばマヤ様を喪われた時から運命が決まってしまったのです……オウマ様は魔導書庫に閉じこもりきりになりながらメイ様に簡単な体術を教えていた時、疲れて眠ってしまったメイ様を寝室に運ぼうとした時、寝言を聞いてしまわれたのです」

 

 

ー………はは様ー

 

 

「それがきっかけだったのかわかりません。オウマ様はメイ様の為に禁忌の術に手を出してしまわれたのです……魔導書庫の奥に封印された死者を蘇らせる魔戒の術が記された魔導書に……」

 

 

「やはりか……まさか存在していたとはな」

 

 

「ジロウ様は知っておられるのですか?」

 

 

「オウマが手にした魔導書は魔導書ではない。レギュレイスと対を為すホラーが自らの代行者にして不死なる存在《アルター》を選ぶ為に存在するいわば分身だ…死者をよみがえらせることは可能だ、しかし払われる対価は666の無辜の民の命だ……」

 

 

「待って、今の話が本当なら…三十年前に起きた事件の失踪した人たちも666人……まさか」

 

 

声を上げるフェイト…その恐ろしい事件を起こした身内がいることに驚きを隠せなかった。しかしその事件を起こした相手をかつての自分の母プレシア・テステロッサとオウマを重ねてしまっていた

 

失った命をもう一度…姉であるアリシアを蘇らせるために手段を選ばなかった母と

 

 

「………その魔導書を手にしたことに気づいたオウル様は私と共にオウマ様をおい相対しました…二つの月と太陽が重なる二重皆既日食を利用した死者蘇生の儀式を行うためにゲートを開こうと初代オウガ様が今の鎧を纏う前に使われていた鎧を闇へ落とし殲滅騎士魔煌へ変え纏われたオウマ様と…仮にも親子であるのに……」

 

 

鬱蒼と繁る木々を蹴り移動する影が二つ。交差する度に火花が散り音が木霊させながら開けた場所へと降りる二つの影

 

「そこをどけオウル!」

 

 

「どかん!お前は自分が何をしようとしているかわかっておるのか!!」

 

 

地を蹴るやいなや剣斧を横凪ぎに切り払う、が対する相手も柄の長い斧で防ぎ半回転と同時に踏み込み胴を薙ぐもオウルは鞘で受けその反動を利用し蹴りを叩き込む

 

 

「グカッ!」

 

 

「…今ならまだ間に合う!あの術式を止めろ!!」

 

 

「やめるわけにはいかない…私はマヤを蘇らせるために闇に魂を捧げた。もう一度マヤを!!」

 

 

「マヤが本当にそれを望んでいると言うのかオウマ!!」

 

 

再び切り結ぶ二人の剣速は速さを増しやがて肉眼で追えない…だが互いの身体を切り裂いていき血が辺りに舞い散る

 

 

「はああ!!」

 

 

「かあああっ!!」

 

 

激しく刃がぶっかりあいソウルメタル同士の振動音と共に衝撃波がおき足元の地面がひび割れると共に抉れ々がはぜ飛び散る。二人は鍔是りあいになりながら互いの反動を利用し後ろへ飛ぶ、素早く剣を天に構え真円を描くと狼のうなり声が響き光が溢れ白金の狼《オウガの鎧》、黒い狼の意匠が特徴的な《………の鎧》を纏い対峙し斬りかかりと共に互いに蹴りを撃ちむもぶつかり合い白金と黒の粒子が舞う

 

『……お前に《魔戒の力》を教えるべきではなかった!!』

 

 

『それがどうした!私が闇に身を捧げてさえいればマヤは死には死ななかった!メイをひとりぼっちににせずにすんだのだ!!』

 

 

ギィンと大きく振りかぶり刃をぶつけ叫ぶ二人から悲しみ、怒り、苦しみ、強い後悔が滲み出ている…

 

 

《不味いぞオウル!術式発動まで時間がないぞ!!》

 

 

首元から聞こえた声にわずかに空を見る。二つの月が太陽と重なり始め魔導文字がその周囲に広がるのを目にし焦りをみせたオウルにわずかな隙が生まれる。黒い狼の鎧を纏った騎士は好機とみたのか魔戒斧、魔戒剣を強く握り踏み込みと共に交互に斬りかかる

 

『ぬ!ぐうう』

 

 

『私の勝ちだああ!死ねオウルウウウウ!!』

 

 

重い一撃を剣斧で受けるも押され苦悶の声をあげるオウルに勝利を確信した彼の変化した魔戒斧、魔戒剣が剣斧を弾く。そのままがら空きになった胴を薙ごうとした…が無数の花弁へ変わり消える

 

 

『なっ!?』

 

 

目の前から消えた事に驚く彼に僅かな隙を縫うように、花びらが彼の背後に集まりやがて白金の狼を模した鎧を纏ったオウルが姿を見せた

 

 

『…そこか!』

 

 

『………闇に魂を売り渡した貴様の陰我。ワシが断ち斬る!!』

 

 

振り返り様に大きく魔戒斧、魔戒剣を振るい鋭く鋭利な刃が迫るもオウルは剣斧を構え刃を滑らせるように受け懐へ潜り込むと突きの構えをとりソウルメタルの鎧を纏った彼の胸板めがけ突く、震動音が響きやがて砕け貫いた

 

『ガアッ!?』

 

 

狼を模した兜の牙から血を吹き、力なくグラリと倒れると共に血に濡れ輝く剣斧が胸から抜かれた

 

 

『……』

 

 

やがて光と共に鎧が魔界へ返還、魔法衣が切り裂かれ血を流しながらオウルは崩れるように地面へ膝を付いた

 

 

「……オウマ、ワシはお前を《本当の息子》だと思っていた……お前こそが九代目《白煌騎士オウガ》の称号を継ぐ者と信じていた…」

 

 

彼の死体を前にし顔を俯かせ地面へ拳を叩きつける【八代目】白煌騎士オウガ継承者《秋月オウル》の苦悶に満ちた声はやがて降り出した雨が激しく叩きつける雨音にかき消した

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「そ、そんな……お祖父様がお父様を……デルク、なんで、なんで教えてくれなかったの!」

 

 

「………オウル様とプリム様に口止めされていたのです。メイ様が大人になり受け入れられる年齢になるまでは伝えるなと…まさかオウマ様が生きておられようとは思いもしなかたのです。お許しくださいメイ様」

 

 

席を立ちデルクにつかみかかり顔を俯かせ嗚咽の声を上げ何度も叩く……秋月家の闇、父が闇に堕ち王の代行者アルター、殲滅騎士魔煌であったこと、祖父が自ら手を下した事実は受け入れるには辛いもの

 

 

 

(………オウガ、コレもお前の血、いやアキツキ名を持つもの宿命か暗黒騎士を父に、神官を母に持つ光と闇の…)

 

戦友であるオウガのルーツを知る者であるジロウ、ソウマ、レイジもまた同じだった。その空気を破るように扉が力いっぱい開かれタカヤを看ていたヴィヴィオ、アインハルト、ジーク、ミウラ、ノーヴェ、ファビアが息を切らしながら飛び込んできた

 

 

「どうしたのヴィヴィオ、それにアインハルトちゃんまで」

 

 

「タ、タカヤさんが、タカヤさんがいなく、いなくなってしまったの!!」

 

 

「光に包まれて……探したけど見つからないんです!メイさん!タカヤさんがどこにいるか探してください!」

 

 

「な、何ですって!……!?ヴィヴィオさん、アインハルト様、少し無礼をお許しください」

 

 

言うや否や私はヴィヴィオさん、アインハルト様の首筋に手を当てた…あの時、タカヤを看ていた二人の首筋に見えた影…間違いであってほしいと思い魔導力を流した…うっすらと浮かんだのは魔導刻印。それも最悪なモノ

 

……まさかと思い他の4人をみると魔導刻印が首にしっかり浮かんでいる……まさか、全員がホラーの王復活の為に開かれるゲートに選ばれた

 

「あ、あのメイさん?」

 

 

何ども呼びかけるヴィヴィオさんの声は私の耳には届いていた…でもなんて残酷な……何とかしないといけない

 

一刻も早くアルター…いえお父様を止めないとヴィヴィオ様たちの未来、この世界が終わる?

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ー………ここは?ー

 

 

ー目を開けよ、秋月鷹矢ー

 

 

まばゆい光に包まれたタカヤが目を開く。目の前に一際強く輝く八つの光が周りに現れ形をなす…光の正体は歴代オウガ継承達の姿。しかしその顔からは怒りが滲んでいる

 

 

ーオウガの継承者でありながらー

 

 

ー鎧に込められた祈りをー

 

 

ー白き輝きを喪わせー

 

 

ー二度の心滅獣身へ堕ちたー

 

 

ー…我らはここに告げるー

 

 

ー…我ら英霊はー

 

 

ー汝、秋月鷹矢からー

 

 

ーオウガの称号を剥奪する!!ー

 

 

 

第二十四話 剥奪ーシンジツー

 

 

 




      魔導刻02.5秒…………

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