魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)


第二十二話 魔煌ーKIBAー(クロウside)後編☆

「じゃあ、クロウくんは友達に会いに一人で来たんだ…」

 

「うん!でも道がわからなくなっちゃて…カズマお兄さとノインお姉さはなんで《デュクイズヌの森》に?」

 

 

「じ、じつは俺も迷っちゃったんだ…」

 

 

「そうなんだ。カズマお兄さ、もうすこしたらアマゾンのお家だよ」

 

 

クロウ君を肩車し話をしながら俺はアマゾンとモグラのいる場所へ歩きながら数分前に聞いたことを思い出した

 

 

ークロウ君、今、新暦何年かわかるかな?ー

 

 

ーいま?…………えっとね…ことしでしんれき85ねんだよ。どうかしたのカズマお兄さ?ー

 

 

ーな、なんでもないよ。じゃあクロウ君のお友達の居る場所へいこうかー

 

ーうん!ー

 

 

……笑顔のクロウ君を肩車しながら考える。でも今がクロウ君の言うとおり今が《新暦0085年》で間違いないなら250年余り前、タカヤ君がまだ生きている世界にタイムスリップして来てしまった事になる

 

 

 

 

あの時、オレを包んだ光の原因を考え真っ先にアイツ《剣崎一真》が浮かんだけど過去にオレを送る必要があるのだろうか?アイツがこんな手の込んだ事は絶対しないハズ。他の可能性を探っているうちに大きな樹齢千年を越える巨大な樹の根元にたどり着いた

 

「カズマ兄さ、少し待っててね……スゥ~~ア~マ~ゾ~ン、モ~グ~ラ~あそびにきたよ~」

 

 

クロウ君の声が何度も木霊する…すると足元がモコモコ盛り上がり勢いよくモグラを人間大にしたナニカか飛び出してきた

 

「チュ~チュチュ~クロウ、ひさしぶりだなあ。今日はお父さんと一緒じゃないのか?」

 

 

「え、えっとね…おれ、お父さときてないんだ…ひとりで来たんだ…でもカズマお兄さとノインお姉さときたから二人、三人かな」

 

「カズマ?ノイン?クロウの新しい《トモダチ》か?」

 

 

「うん!《トモダチ》だよ」

 

 

胸の前で指と指をあわせるクロウ君、もぐら?さん?…別な方向から風を切る音と一緒にマダラ模様の民族衣装姿の青年が現れオレをじっと見てる

 

 

「ムラサメ・か?」

 

 

「アマゾン、カズマお兄さだよ……リョウお兄さと似てないよ髪型とか、背も高くないし」

 

ウ?いまのはきいたなあ~確かに背は伸びてないけど

 

 

「そうか、クロウ。今日、は、どうした?」

 

 

「あそびに来たの!あとアマゾンとモグラにコレを」

 

クロウ君が服からだしたのは不思議なメダル…鷹、孔雀、コンドルのレリーフが掘られた赤いメダル。それを不思議そうに手にとるアマゾン

 

「クロウ、コレ、どうしだ?」

 

 

「いつもケーキをくれる《コ~ガミ》おじさんにもらったの。『アマゾン、モグラ君達が来て五十年だからね、その記念だよ』って……」

 

「そうか、ありがとう、クロウ…お父さん、心配して、ないか?」

 

 

「お父さ、《すかりえってい》ってひとにあいにいってる……さいきんあまりかえってこないんだ…でもお母さ、お父さかならず帰ってくるって笑ってまってるんだ…だからオレもしんじてるんだ」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「また君かね。私はこうみえて忙しいのだがね…」

 

 

「今日はスカリェッテイさんにお願いがあって」

 

 

「この私にお願い…ククク。君からお願いとは珍しい何かね?手短に頼めるかな」

 

 

「………このデバイスを治して欲しいんです。あなたなら可能なはず何です」

 

 

ひび割れた腕時計…格子越しに手渡されたのを目にし黙り込む男…稀代の天才にして広域次元犯罪者《ジェイル・スカリエッティ》。黒と白の髪が目立つ青年《秋月タカヤ》はさらに続ける

 

「……アキツキの技術開発チームでもAI人格のサルベージは不可能でした……」

 

「あのアキツキが誇る技術陣すらも匙をなげたから私に頼るか…私を何でもできる都合の良い技術者、いや魔法使いと勘違いしてないかね?」

 

 

「…そんなことないんです。アークの人格を元にしたデバイスを作って欲しい…僕とーーーーーの子のデバイスをあなたに…妻の力を受け継いだクロウの為に…」

 

 

「………」

 

 

『秋月様、時間です』

 

 

「……すいません。もう時間が来てしまいました……今度会うときまでアークを預けます………スカリエッティℵ/∮さん」

 

タカヤが面会室から出て、一人残されたスカリエッティ…手にしたアークに目を向けた。ひび割れた腕時計内部にあるAIコアの損傷は甚大、だが彼の手にかかればサルベージはおろか、それ以上のモノへと作り替えることができる

 

しかしそれ以上の興味が彼を支配していた

 

「………私を《義父》と呼ぶか……ククク…悪くない…」

 

そうつぶやき拘置所内にある独房へ刑務官を伴い歩き出した

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「むう~、また負けた」

 

「ははは、クロウくんにはまだポーカーは早いか」

 

 

「……つぎはボクがかつ……」

 

大きな樹の株の上には数枚のカード…家が壊れたため二、三日ここ、アマゾンのすむ森に預けられたクロウくん。外はあいにくの雨、家の中で遊べるゲーム《ポーカー》を二人ではじめてから一時間。最初は負けてたクロウくんだったけどはやっていくうちに強くなってきた

 

でもそれ以上に驚いたのは今ポーカーに使っているカード…ラウズカードの声を聞けるって事。特に♣のカテゴリーK嶋さんとよく話しかけたりしている。それに

 

ーあの子は私たちの声を《心》で聞けるようだ。不思議な…まるで太陽の暖かさを感じるー

 

他のラウズカードにも話しかけているらしい。反応は様々だけど…特に

 

ートラのお姉さ、少しよごれてるからキレイキレイしてあげるー

 

 

ーわ、わたしはトラのお姉さじゃな…あん…そんなとこ擦るな!ダ、ダメ…敏感だからやめ……んん!?みんなにきかれちゃ…っつ~!?!?ー

 

 

ー?お父さがお母さとお風呂にはいってるときの声に似てる…気持ちいいんだー

 

……クロウくん、あんまり弄ったら!?ま、まあ少し話は脱線したけどラウズカードに封印されているアンデッドたちの大半がトモダチになってるらしい…嶋さんは「将来どんな風に成長するか楽しみだ」と言ってたの思い出しながらラウズカードヲシャッフルしていると話しかけてきた

 

「カズマお兄さ、ポーカー何でそんなに強いの?」

 

「……ポーカーは相手に自分の思考を読まれないようにしながら手札を揃え勝負するゲーム。でもそれ以上に勝敗を左右するのは運。最後に勝つための《切り札》をつかむ事なんだ」

 

「……切り札?」

 

 

「切り札を掴むことは勝運を引き寄せる事につながるんだ。その一枚が絶望的な状況を変えることも…まだクロウくんにはわからないかな」

 

「…切り札…じゃあボクも切り札をつかんでみるよ。そしてカズマお兄さにもポーカーでかつ」

 

 

「その意気だ、じゃあオレからコレをクロウくんにあげよう」

 

「これ、らうずかーど?でもみんなみたいな絵?がないよ」

 

クロウくんに渡したのは未使用のブランクカード。すべてのアンデッドを封印した今では使うこともない、首を傾げてじいっとみながら訪ねてきた

 

「絵がないのはクロウくんだけの切り札って意味なんだ」

 

 

「………ぼくだけの切り札……ありがとうカズマお兄さ!」

 

…まぶしい笑顔だなもう、でも赤い髪にピンっとたった癖っ毛、金色の目が誰かと面影が似てる…もう会うことが出来ないけど今でも心の中に焼き付いているノーヴェちゃんと…

 

再びポーカーをはじめ、何回も負けながら諦めずクロウくんは遂にオレに勝った…すごくうれしそうに喜ぶ姿に負けたのに関わらず楽しい気持ちで胸がいっぱいになった

 

はしゃぎすぎて疲れたのかクロウくんが大きなあくびをして穏やかな寝息を立てる眠ってしまった

 

風邪を引くといけないと感じアマゾンが作った毛布にくるませベッドへ寝かしつけた時だ…手に違和感を感じ見る…光が指先から手首に広がる外に泊めてあるノインをみると瞬く間に光が包み込んでナニもなかったように消えてしまった

 

コレはあの時の光と同じと感じるも遅く、やがて意識が深い場所へと落ちていく、クロウくんの泣く声を最後に感じながら意識を失った

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

『……くださいマスター…』

 

 

「ノイン?ここは…あの時の場所………戻ってきたんだ…」

 

目の前に広がるのは250年前とまったく変わらい森…不思議な光に包まれたココに戻ってきたんだ。一瞬、夢かと考えたけどブランクカードが一枚抜けている。それにノインのライブラリーにはクロウくん、アマゾン、モグラと一緒に《トモダチ》の指文字を見せながら撮った写真がある

 

紛れもない現実…でもそれ以上にもう皆と会えない事が胸を締め付ける。クロウくん、モグラ、アマゾンとも二度と…

 

あの光はオレに何をさせたかったんだ。苦しめる為なのかと何度も自問自答しようとした。鈴の音が耳に響き人の気配を感じ振り返りおもわず呼吸が止まる

 

肩辺りまで伸ばした赤い髪片方を銀細工に似たモノで結び、黒のチャイナドレス?にも似た服に身を包んだ女の子が強い意志を感じさせる金色の目で少し不審そうにみている。ある言葉が自然と口に出た

 

「ノ、ノーヴェちゃん?」

 

「な、なんで、あたしのひいひい婆ちゃんの名前知ってんだ………っていうかさ、あんた何者?…新手のナンパかなにかか!?」

 

 

矢継ぎはやに、まくしたてるつり目で金色の目を向ける女の子…ノーヴェちゃんとよく似てる。とにかくナンパじゃないと言おう

 

「ナンパじゃないし。誤解だから…」

 

「ふ~ん。ホントにか?まあ、そういうことにしてやるか、……でさ、アタシんちの曾曾爺ちゃんの墓に何か用か?」

 

「お墓……っ!?」

 

お墓といわれよく見ると、森の向こうに石作りの白い塔が彼方に見え、少し先にある石碑に刻まれた文字に目が止まる

 

 

《第十代目オウガ継承者・秋月九狼、ココに眠る。享年251歳。生0081年~没0332年》

 

 

秋月九狼…クロウ…まさかクロウくんはタカヤ君の子…あまりのことに目の前が真っ暗になる。じゃあココはタカヤ君たち魔戒騎士がホラーと戦う平行世界の未来のミッドチルダなのか

 

 

「………あんた、もしかしてなんだけどさ。間違えてたら悪いんだけど。クロウ曾曾爺ちゃん、アマゾン爺が言っていたカズマ・ケンセイか?」

 

 

彼女の言葉にうなづくと大きなため息をついていきなりガシッと腕を掴まれた。お墓?とは逆方向、古い作りの屋敷へ引きずるよう歩き出す

 

「な!?」

 

 

「あんた…いや、カズマ。曾曾爺ちゃんさ亡くなるまでずっと感謝してたんだ…まあ詳しいナシは屋敷にいってからだ…あ、あたしの名前はーーーーーってんだ。曾曾爺ちゃんがさ《お袋と似てるから》って名前を97管理外世界の言葉でつけてくれたんだ」

 

 

「ち、ちょっと!引きずらないで!痛い、痛いから!!」

 

 

……な、なんかデジャヴって感じがする

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

現在《新暦0079年》

 

「じゃあ《白燐の牙》を手に入れないとタカヤちゃんは…あんまりすぎるわよ…ヒドすぎるわよ…教えて、白燐の牙はどこにあるの?クロウは知ってるのよね」

 

 

「…」

 

 

「答えてクロウ…」

 

 

「わからないんだ…白燐の牙は八代目オウガ継承者《秋月オウル》…曾曾祖父ちゃんが使ったのを最後に行方がわからない。でも手がかりは2つだけあるんだ、一つはスクライアおばさ……」

 

 

ー叔母さんちゃうからな~くろうちゃん。私は《お姉さん》や……つぎ叔母さんいうたらー

 

 

 

 

「………や、八神姉さんの中に溶けた《夜天の書》のリインフォースさんの記憶。あと一つはフォビア姉さんの持つ絵本《十三の黒いマモノと鋼の狼》にあるはずなんだ」

 

 

「…わかったわ。八神一佐とその絵本を持つフォビアから聞き出して、盗めばいいのね」

 

 

「…物騒な事をいわないで!?特にアリア姉さんが生きてる事知ったら八神姉さんが驚くし、盗んだりしたら親父が悲しむから……」

 

 

変なカギツメをキシキシならせながら走り出そうとしたアリア姉さんの腕を握りオヤジの名前を口にしたらシュンとなったのを見てホッとする。今の時代より四年後にみんな…おばさんたちは再会できた。

 

むやみやたらに歴史を変えたらいけない。

 

 

昔、不思議な緑色のリニア?が家の庭に墜ちてきた時にであった黒頭巾に鴉みたいな仮面をつけた変わったおじさん、そのおじさんに「デ~ネ~ブ!また勝手に弄ったな~歴史が変わってしまうだろ!!」コブラツイストをかけるユウ兄に「痛い!痛い!悠斗!子供の前でこんなの見せたらだめだ!悪い大人になってしまう!!」……ってマンザイやりながらいってた

 

デネブ兄、ユウ兄どうしてるかな?っと話がそれちゃった

 

いま、もし今アリア姉さんとお袋達が出会ったら歴史に悪影響を与えるかもしれない。それに俺がこの時代に直接的に関われるのはあと《二回》だけだ

 

 

「………白燐の牙…オウル曾曾じいちゃん、どこにあんだよ……」

 

 

第二十二話 魔煌ーKIBAー(クロウside後編)

 

 

「ん……」

 

 

《起きたかタカヤ?》

 

 

「キリクさん?あの何で僕、ベッドで……みんなの所に行かなきゃ」

 

《……ああ、それなんだけどよ。ワタルって奴からの伝言を預かってる……今日の演奏会に招待したいんだと…》

 

キリクさんがキシキシ金属を鳴らしながら説明してくれた、あの人…ワタルさんって言うんだ。すごく優しい音を奏でる不思議な柔らかさを感じた

 

でも、それ以上に懐かしい感じがした……ずっと昔に…

 

 

ーファンガイアのクィーンだな、オレの息子を返してもらうぞー

 

ーいやといったら?人間のアナタが私に勝てるというのかしら?ー

 

ーそこまでだ人間……我が妻に刃を向けるとは万死に値するー

 

 

「あ、う、う、あああ!?」

 

《どうした!タカヤ!!》

 

「な、なんでもないから……キリクさん 」

 

《………そうか。それよりだキリクさんって呼ぶのははあの嬢ちゃんたちの前で言うんじゃねぇぞ?》

 

 

「う、うん……じゃ行こうか……ナカジマ《…タカヤ》………ノ、ノーヴェさん達が待ってるだろうし」

 

(ヤレヤレ、記憶を失ってんのをバレなくするのがつらくなってきたぜ…)

 

 

毛布を畳んだ僕は軽く一礼して、部屋を出た……なんかわからないけど誰かに見られてるような気がしたけど、とにかくノーヴェさん達の所に行かなきゃ

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「タカヤどこいんだよ…ったく」

 

 

「ノーヴェさん、遅れてしまってごめん……アレ?ヴィヴィオやアインハルトは?」

 

 

「ん。今着替えてる最中だ……っていうか、どこいってんだよ?」

 

「あ、その……道に迷っちゃって…そしたら親切な人が道案内してくれて……せ、聖王教会って広いから」

 

 

怪しい…タカヤはあたしたちとよく来てるから道になんか迷わないはずだ…それになんか元気もないし……これ以上聞くのは無理だと考えたあたしは例の件を切り出した

 

 

「ならいいけどさ…あ、あのさタカヤ、今日の夜はヒマか?」

 

 

「え、ヒマですけど…」

 

不思議そうに応えるタカヤ…よし、今なら誘えるはずだ…まずい、滅茶苦茶ドキドキしてきた。勇気を出せあたし!コレはタカヤの為なんだから……

 

「き、今日の夜に聖王教会で演奏会があるんだ。有名なバイオリニストが来るって……滅多に聞けないらしいんだ……だからさ…あ、あ、あ…」

 

 

だ、だめだ、言葉が続かない……ええい!頑張れ、最近ライバルが増えてんだ。立ち止まんな!あたし!!

 

「あ、あたしと一緒に演奏会行かないか」

 

 

「いいですよ…ノーヴェさん」

 

 

「ほ、本とか!じ、じゃあ夜に聖王教会の会場で待ってるから……お、遅れたりしたら許さないからな」

 

 

言うだけ言うと、あたしはタカヤに背を向けてヴィヴィオ達がいる場所にかけだしていった…だって恥ずかしいし、目もあわせらんないぐらい顔が真っ赤になってるのがわかる

 

でも、はじめて誘うことが出来た。それだけでなんか…スッゴく嬉しくてワクワクしてるのが分かる

 

 

ーマスター、ようやく報われましたね…あとはマスターのターンが続くはずですー

 

 

ジェットも喜んでるし……これからは、ずっとあたしのターンだ…ライフ《鈍感》が0になるまで攻めるからな。覚悟してろよタカヤ

 

 

 

 

「ねえ、キリクさ……キリク。なんかノーヴェさん、うれしそうだったね」

 

 

《(気付いてないのかよ…記憶をなくしてもコレなんかい……まあ、あの嬢ちゃんにしてはよくやった方だ)……ん?》

 

 

幸せオーラ全開でファイズアクセル並に走り去った嬢ちゃんを見送った俺たちの背後にゴゴゴゴゴ!!って擬音が響く……タカヤも気付いたみたいらしくゆっくりと振り返ったら、ヴィヴィオ嬢ちゃん、アインハルト嬢ちゃんがハイライトの消えた瞳で笑みを浮かべながら立ってる

 

……まずい、ひさしぶりの修羅場になる予感が肌、いやソウルメタルにビンビン突き刺さるような怒気が二人から出てる。それに当てられたリオ嬢ちゃん、コロナ嬢ちゃんがガタガタふるえてるし

 

「演奏会ですか。タカヤさん、私も一緒に同伴しても大丈夫ですよね」

 

 

「エ?……あ、あの」

 

 

「わたしも演奏会、いってみたいなあ…世界的に有名なバイオリニスト《ワタル・クレナイ》さんの演奏は一度、聞いてみたかったんです…一緒に聞きませんか?」

 

 

「で、でも、始まるの夜だ…」

 

 

「その辺りは問題ありません。保護者の方と同伴なら大丈夫です」

 

 

「今日の演奏会にママ達とはやてさん、ユーノさんと一緒に招待されてるんです。これなら問題ないですよね」

 

 

「あ、あう……でも今日は」

 

 

「いいですよね、タカヤさん」

 

 

「もしかして、迷惑ですか?」

 

 

……ヤバい、こいつはもうチェックメイトだ。多分さっきのノーヴェ嬢ちゃんの会話を盗み聞きしてたんだろうな…しかも、短期間で完全に逃げ道を塞ぎやがってる。こういうトコはクラウス、ヴィヴィと似てやがるなあ

 

 

「め、迷惑じゃないし…」

 

 

「じゃあ一緒にいきましょう、いいですよねタカヤさん」

 

「では、待ち合わせの時間を決めないといけませんね」

 

しかも上目使い&笑顔のコンボは、反則だろう…タカヤの心にガツンと破壊力抜群だぜ…二人に首を縦に降ってるし…ノーヴェ嬢ちゃん、今回もあきらめな~まあ、相手が悪かったとしかいえないな

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

「………お帰りプチデビルズ…」

 

黒くて可愛いわたしの使い魔《プチデビルズ》が帰ってきた…タカヒト様、オロ様の血を引く彼《秋月タカヤ》の人間関係を調べてもらっていた。さっそく瞳を閉じて額にプチデビルズをあてる

 

秋月タカヤ…魔戒騎士であり普段はStヒルデ魔法学院《中等部》に通ってる…普段の生活はのんびりしながら、私たちを見捨てた王の子孫を守ってる

 

それ以上にエレミアの子孫と半年間一緒に暮らしてて事、二人の王の子孫、赤髪の女性から好意を寄せられてる

 

しかも今日の演奏会に三人から誘われた…もう一刻の猶予もない……あの三人から、わたしだけの騎士様《秋月タカヤ》を奪う

 

変身魔法で大人になって籠絡すればかならず堕ちる…そのための知識は万端。問題なし…

 

 

「魔女の魔法で必ず……クロゼルクの悲願をはたす」

 

 

先ずは、障害になる三人を排除する。そのためには名前を知らないと

 

少しだけ、待ってて私だけの騎士様…それからプチデビルズを再び飛ばす。もう日が暮れ始めてる森の中を歩き始める…向かうのは聖王教会

 

三人には渡さない

 

 

「………ぜったい渡さない……わたしだけの騎士様…」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「あ、あの……ノーヴェさん」

 

 

「なんか用かぁ?タカヤ。羨ましいなあ~両手に花ってさぁ~」

 

 

「こ、これは何というか……その、あの」

 

 

あう?なんかすごく機嫌悪い…両手に花って持ってないし、ただジイイイッて今座っている僕の両隣、アインハルト、ヴィヴィオを羨ましそうに見てる

 

「すごい、月と星を背景にするなんて……」

 

 

「最初の曲目は何か楽しみです…」

 

 

「あ、あの二人とも、あんまりくっつかないで?」

 

「あの、アキツキさん困ってますよ。また鼻血出しちゃいますよ」

 

笑顔でパンフレットを見ながら身体を寄せる度に甘い香りがしてくらくらする。なんでこんな事になったんだろ…待ち合わせの場所にきたらノーヴェさん、ヴィヴィオ、アインハルトの三人が待ってて、ただならない空気に演奏会会場で入場開始まで待つ人たちが気圧されてて

 

 

ーあ、あのノーヴェさん、ヴィヴィオ、アインハルト。どうしたの?ー

 

 

ーなあ、タカヤ……説明してもらえるかな?ー

 

 

……背中に阿修羅……いや鬼を浮かばせながら聞いてきた……なんとかなだめたんだけど、誰が隣に座るか揉めちゃって結局、ジャンケンで勝負をして決まったんだけど僕の隣にヴィヴィオ、アインハルト、その隣にノーヴェさんになった。途中でヴィヴィオのお母さん、八神さんと一緒にきたミウラくんも混ざってこんな席順に

 

「あ、あの…」

 

 

助けを求めようとしたらぷいって、そっぽをむかれちゃった…何故かミウラ君から黒い何かが見えた気が…ダメだ。ノーヴェさん機嫌が直らない、どうしたらいいんだろ

 

 

「ミウラ~頑張りや~………ええなあユーノくん、両手に華、いや禁断の果実に包まれんのは男の夢やもんなあ~((怒))」

 

 

「は、はやて、怒らないで?くじ引きで決まったんだから」

 

 

「ユーノ君、お休みとれて良かったね。それでなんだけど今度のお休みに地球に行かない?お父さん、お兄ちゃんがあいたがってるんだ」

 

「なのは、抜け駆けは駄目だよ…あの、今度お休みがとれたらエリオとキャロと一緒にお母さんに」

 

 

(………羨ましいなあ~もう……ってやばいやん!?なのはちゃん、フェイトちゃん抜け駆け禁止、禁止やあ!?)

 

少し離れた場所で同じ事が起きていたのを僕は気付かなかった…やがて開幕を告げる声が響くと照明が消え星と月の明かりに照らされたステージに昼間、僕を助けてくれたワタルさんが中央に立った

 

軽く一礼、バイオリンを構え静かに奏で始めた…繊細で柔らかな音色が会場に満ちる…身体に染み込むように響く度に胸の奥が熱くなる…ヴィヴィオ、アインハルト、ミウラくん、ノーヴェさんも奏でる旋律に身を任せている

 

演目の曲目全てが終わると、一斉に席を立ちワタルさんへ拍手を送ると、深く一礼し再び構えた…もう終わりのはずなのに

 

「あ、ありがとうございます。次の曲は《ある騎士》の為に弾きます……名前はまだ決まってないですけど、聞いてください………」

 

 

一瞬、僕に目を向けてから、目を閉じゆっくりと弾きはじめた…周りの人達も姿勢を正し奏でる旋律に耳を傾けた

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

曲調は最初は静かに、ゆっくりとまるで旅立ちに赴く騎士の姿が見える…何故だろう。なんか懐かしく感じる

 

旋律が流れる度、風を切りながら黒い魔物を斬り払い舞いのように剣を振るう姿…いや彼の姿を僕は知ってる………あれは…

 

 

「キャアアアア!!」

 

盛り上がりを見せた旋律の変わりに悲鳴があがった…まわりの人達がざわめきだした…まさか

 

 

《タカヤ!ホラーの気配だ!!》

 

キリクさんの声に、僕の中で何かが切り替わる…まるで別な誰かに変わるように、自然に口が開いた

 

 

「ノーヴェさん、ヴィヴィオ、アインハルト、ミウラくん、今すぐ安全な場所に逃げて!!」

 

 

それだけ言うと、僕は駆け出した…向かうのは悲鳴が聞こえた場所…逃げ惑う人達をよけ辿り着いた

 

 

「ようよう!遅い到着で……さて、ショータイムダアアアア!!」

 

身体中に鎖をつけた皮ジャン?に至るとこにピアスをつけた人が耳元まで裂けた唇から舌を伸ばしながら見てる…ここで魔戒剣斧を抜いたら人目に付くし混乱を招くかもしれない

 

《タカヤ!ヤツをココから離れさせるぞ!》

 

 

「うん…はああ!」

 

 

構えると同時に殴りかかる、でも腕で防がれ返す手で手首をつかまれ、ぐいっと引き寄せられ頭突きを受け火花が舞う。我慢し逆に両手で頭をつかみ膝を顔面に入れる。宙を舞うのを見逃さず胴へ蹴りを入れようとしたとき、何かが現れた…いや二人を盾に代わりにしている。それに盾にされた一人は魔女みたいな格好をした女の子、残る一人は知ってる顔

 

 

「動くなよ。動いたら……喰うからなあ……魔戒騎士……?」

 

 

「……………」

 

「タ、タカヤくん…っ」

 

 

黒のジャージ姿のツインテールの女の子………最近知り合ってたエレミアさん…なぜかわからないけど僕から視線を逸らした

 

 

 

第二十二話 魔煌ーKIBAー(クロウside)

 

 

 

 

 

 

 

 




キリク
《光と共に喪われていく想い。鎧もまた輝きを無くしていく…止めろ、それ以上言うな!次回、落涙ーナミダー……明かされる真実!!》

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