魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》 作:オウガ・Ω
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)
AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)
今回からonixさんの紅の牙、紫紺の切り札とのコラボレーションになります!
僕は誰なんだろ?
「………タカヤ…くん…」す
黒くて長い髪の女の子が目に涙を溜めながらタカヤって話しかけてくる…タカヤって僕の名前かな?でも解らないけど頭の奥で何かがうずく、それに何で剣?を握っているんだろ?
周りをみると白い火とオレンジ色の火がまばらに燃えている…
《……エレミア嬢ちゃん、あたしをタカヤの指にはめるんだ……急ぐんだ、これ以上……が消えてしまう前に》
金属の軋むようなしゃがれた声が耳に入る、でもココには僕と女の子しかいないハズなのに…ゆっくりと顔を俯かせながら、女の子が僕の手を取るとソッと指に指輪をはめる、頭の奥が痛くなったのを最後に目の前が真っ暗になった
第二十二話 魔皇ー出逢いー(Side・タカヤ)
「………カヤ…タカヤ!」
「な、なに?どうかしたんですか?ノーヴェさん?」
「ナニがじゃないだろ。さっきから何度も呼んでるだろ?」
「ご、ごめんなさい…少し考え事してて…」
…あたしにあやまるとヴィヴィオ、アインハルト、コロナ、リオのトレーニング風景へ目を向ける姿を見て小さくため息をつく
最近、正確にいうと見合いの日からタカヤの様子がおかしい。それに長かった髪が短くなってるし、何時もおしゃべりなエロ眼鏡キリクも、さっきからだんまりを決め込んでる
……まるであたしやヴィヴィオ、アインハルトと最初に出会った頃に戻った感じがする
「……………」
気づかれないようにチラッとタカヤの顔を見る。キリクごしに見える瞳から意志の光が全く見えない……やっぱりあの日に何かあったのか?
「タカヤ、少しいいか?」
「エ?な、なにですか?」
「……い、いや何でもない。そろそろ練習を切り上げるからここで待ってろよ…絶対にここにいろよ」
「は、はい………ノーヴェさん……」
頷いたタカヤを残して歩きだす…ボウっとしたまま空を眺めている姿をみる度に、あたしの胸が痛くて苦しくなる……どうしたらいいんだ
「ん?」
教会内にある更衣室に向かう、あたしの目に入ったのは一枚の貼り紙。聖王教会で不定期で行われる《月夜の演奏会》の開催の知らせ………たしか音楽には心を癒やす効果があるってきいて…
「………これなら…」
あたしは時間と場所を確認するとヴィヴィオ達がいる場所へ歩き出した
★★★★★★★★
「………うまく誤魔化せたかな」
《……半分だけな……ノーヴェ嬢ちゃんは薄々気づいているぜ》
「そっか…難しいんだねキリクさん………あの人達が知っているボク、《秋月タカヤ》を演じるのって」
《………おい、アイツラの前で「さん」付けはヤメロ……》
「……うん…」
それを最後に会話を終えてボウっと空を、ドコまでも突き抜けるような青空に対しタカヤの心はぽっかりと大事な何かが抜け落ちていた…
今まで出会ってきた人たちの記憶、築き上げた思い出…そして《魔戒騎士》であったことすらも喪っていた
なのに、なぜこの場に『インターミドルへ向けて練習をするノーヴェ達がいる場所』にいるのか?タカヤの中で、いや何かが訴えるような感覚がこの場に赴かせていた
「……ボクにとって、ナカジマさん達は何なんだろ……四十万さん達も何も教えてくれないし……キリク、ボクはみんなとどういう関係だった……ウッ!クウウッ」
《ど、どうしたタカヤ!しっかりしろ!?》
頭と胸に激しい痛みが襲い、まるで逃げるようにフラフラと芝生を歩き出し、少し離れた場所に立つ樹の幹にもたれ掛かるようにヘタレ込むタカヤ…だが痛みと熱さは一向に治まらず増し、気が遠くなっていく
(《まずい、刻印の発作の感覚が狭まってきてやがる!はやくレイジに連絡しねぇと!…》)
苦しむタカヤを見てあわて出した、そのときバイオリンの音が辺りに響きわたる、その旋律は苦しむタカヤを包みように心の奥まで浸透していくと共に胸の痛みと熱が治まっていく、ゆっくり身を起こし歩きだした。音を頼りに繁みと木々を歩き抜けた先には一人の赤いストールが目立つ青年の姿。その手にはバイオリンが握られ、まるで太陽の柔らかな陽射しにも似た音色が奏でられていくのを身体で感じる。しばらくして弾き終えた青年が切れ長の瞳を向けると軽く一礼するのをみて、あわてて返した
「…………あ、あの勝手に聴いてごめんなさい……」
「いいよ。今日の曲目のイメージを掴むための練習だったから…あまりうまくないけど」
「そんな事ないです。暖かくて包み込むような……あ、上手く例えられなくてごめんなさい…でも心の中が熱くなって…その、えと…」
「ありがとう。そんな風に言ってくれたのは君で二人目だよ…あ、自己紹介がまだだったね」
バイオリンをケースに入れ閉じ青年はゆっくりと口を開いた
「僕は紅ワタル、よろしくね《秋月タカヤ》くん」
「エ?何でボクの名前………っ!あっ?」
激しい痛みが突き刺さるように頭と胸に襲い、たまらず膝をつくタカヤ…意識が朦朧として遠のく中、断片的なイメージがあふれ出してくる
ー……俺がアークに憑いたホラーを斬る!ー
ー………笑わせるな、人間ごときの力は借りん。だが利用させてもらおうかー
ー……おのれ魔皇!人間……いや魔戒騎士!!ー
巨大な黄色い瞳にねじ曲がった角が目立つ巨人に蝙蝠をモチーフにした真紅の鎧を纏う戦士、白金に輝く狼を模した鎧の騎士が戦い、白金の鎧を粉々に砕かれ留も横凪に胴を切り払うと地へ落ちていく。空に輝く月が真紅に染まり怪しい音色が響き凄まじい破壊の余波がアークを飲み込むと、ふたたび場面が切り替わる
ー………いくな。人間……秋月オウガ、キングが命ずる。仕えろー
ー……さっきも言ったはず。この世界でのオレの役目は終わった……ー
ー世界を半分やると言ってもか?ー
ー………鎧を修復し、クィーンが斬人(キリヒト)に温もりを教えてくれた事は感謝している………だがオレにはやらなければならないことがある……ー
(…な、なんなのこれ?…頭が痛い…)
あふれ出してくる断片的なイメージと共に痛みが激しさを増していくのを感じながらタカヤはゆっくりと崩れ落ちるように倒れ意識を失った
「タカヤくん!」
『落ち着けったらワタル!はやく休ませないと不味い………聖王教会の控え室に連れて行こうぜ』
「そうだね…」
あわてて抱き止め呼びかけるワタルを諭す蝙蝠《キバットバット三世》に言われ気絶したタカヤを抱え歩きだす…少し離れた場所にある樹の影からデフォルメ化した悪魔《使い魔》がジッとみている…
「………見つけた…秋月の魔戒騎士………」
感情を表すことなく淡々としゃべるのは魔女っ子スタイルが目立つ少女…その手にある水晶玉に移るタカヤへ熱い眼差しを向けている
「……わたし達を見捨てた王には絶対渡さない……今度こそ、わたしたちのクロゼルクの悲願叶える……」
ほんのり頬を赤くしながら水晶玉から目を離し、手に取ったのはボロボロになった本、表紙には白金の鎧を纏った騎士と黒く巨大な魔獣が描かれている絵本《白金の狼と一三体の魔獣》…内容は古代ベルカ語で書かれておらず《旧魔界語》で記されたそれをぎゅっと抱きしめた
第二十二話 魔皇ー出会いー(Side・タカヤ)
魔皇ー紫紺の切り札ー(Sideクロウ)へ続く
次回、魔皇ー紫紺の切り札ー(Side・クロウ)