魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)


第十九話 雷鳴(後編)

「…………」

 

「…………」

 

 

…あの後、気がついたジロウはギンガ何度か話しかけようするも、一方的に無視され避けられてる

 

こんなことになったのもジロウの《悟空タッチ》に責任があるんだが…だがギンガのデバイスブリッツキャリバーが鳴り響く

 

 

「どうしたギンガさん?」

 

「…すいませんジロウさん、私急な用事が入ったので失礼していいですか?」

 

 

「ああ、別に構わないが……急な用事とは一体なんだ?」

 

「…仕事のです……じゃあ鍵を渡しておきますので…」

 

「…ああ」

 

暗く思い詰めた表情が消し、何度も謝りながらその場を後にするギンガ。だが先程見せた表情からナニかを感じとりジロウはコートを翻すと風があたりを舞うとその場から消え去った

 

 

第十九話 雷鳴(後編)

 

 

「たしかここね……」

 

 

「おう、約束通り来てくれたみたいだな~管理局員さんって真面目だね~」

 

 

ジロウと別れたギンガが向かった場所は空き家となった屋敷…数年前にある家族が夜逃げした結果、無人となり手入れは無く床や家具に埃が分厚くたまっている

 

「ふざけないでください!私にあんなのを送ったのは何が目的ですか!?」

 

 

「落ち着きなって、ほら」

 

 

怒りを露にするギンガに対しヘラヘラ笑う男はある写真を投げ渡した、パシッとつかみ見た彼女の身体がガクガク震えだした

 

写真に写っていたのは今から四年前に起きたゆりかご事件に拉致され改造された自分の姿、青ざめ震える彼女に近づきながら男は舐めるような視線でギンガを見ながら喋りだした

 

 

「…まさか四年前の事件の戦闘機人様が人間様に化けて平然と暮らしてたとはなあ…」

 

 

「………きゃ?はなして!」

 

腰に触れてきた手を叩くギンガ、一瞬呆気にとられる男は再びヘラヘラ笑いだした

 

 

「そんな事していいのかなあ~?そう言えば姉妹がいるんだよなあ。更正施設にいた戦闘機人が家族ごっこしてんだよなあ?世間には顔や素性は公表されてないんだったよな……もし、俺がコレを然るべき報道機関に提供したらどうなるかな?」

 

 

「あっ!あなたまさか!?」

 

「そう、あんたの親父ゲンヤ・ナカジマは管理局をクビ、せっかく引き取った戦闘機人様は一生が真っ暗に閉ざされちまう訳よ…」

 

 

「やめて!お願いします!それだけはやめてください!!」

 

埃だらけの床に土下座するギンガの胸中にはこれから明るい未来を歩むウェンディ、チンク、ノーヴェ、ディエチの姿、ソレを守りたいが為必死に額ををすり付けんばかりに頭を下げる姿に男は気を良くしたのかポンッと肩に手を置く

 

 

 

「まあ、俺は優しいからさ……口止め料がわりにココの口座に金を入れてくれれば気が変わるかもなあ」

 

懐から一枚の名刺―私立探偵ショウ・クルキイ―と名前が印刷されたのを手渡されたギンガ、

だが書かれていた金額の高額さに声をあげた

 

 

「なんなんですか!こんな金額払えません!!」

 

 

「なんだよ、あんたにとって家族って大事じゃないのかよ……んじゃあさ別な方法にするか」

 

 

「え?きゃあああ!」

 

 

「そのいやらしい身体で金をがっぽり稼いでもらおうかあ?あはは中々揉みこごちがいいじゃないか?」

 

 

「い、嫌、離して…離して!!」

 

 

知らない男、ショウ・クルキイに制服越しとはいえ身体をまさぐられる感覚に嫌悪感を露にし咄嗟にブリッツキャリバー、リボルバーナックルを展開と同時に意識を刈り取るつもりで思いっきり殴った……だが信じられない光景が眼に映る

 

「いきなり危ないじゃねぇかよ……」

 

 

片手で平然とリボルバーナックルを受け止め先程まで浮かべていた笑みは消えショウの瞳からは嗜虐の色が見える

 

「少しばかり調教が必要だな!オラア!」

 

 

「あう!」

 

鳩尾めがけ拳を叩き込む男…その思い一撃にたまらずくの字に膝をつき悶えるギンガ、しかし美しい髪をむんずと掴み引き上げる

 

「少し優しくしていりゃいい気なりやがって!女はな黙って俺たち男の言うことだけ聞いていりゃ良いんだよお!」

 

振り挙げた手がそのままギンガの顔面をとらえた瞬間、バキッと音が屋敷に響かせながらギンガが床へと投げ出される…だが青い影が寸前でギンガの身体を受け止めた

 

 

「あん。誰だ手前!?」

 

 

「…………………」

 

 

 

無言でギンガを抱き抱えるのは短く切り揃えた黒髪に切れ長の目、胸元が大きく広げ青みかかったコート《魔法衣》を身につけた青年が全身から怒りを露にしショウ・クルキイを見据え歩き出すと近くにあったベッドに自身の魔法衣を敷きギンガを横たわらせた

 

「ジロウ…さん?」

 

 

「ギンガさん、すまない……だが今はゆっくり休んでくれ……」

 

スウッと一枚の札をギンガの赤く晴れた頬に張り付けるとゆっくり瞼が閉じていき穏やかな寝息を立てるギンガに優しい眼差しを向けながら背後にいるショウ・クルキイへ向き直った

 

 

「お前、ギンガさんに何をした?」

 

 

「え?教育だよ教育!金が払えねぇって、だから親切に身体で払えっていったのによ……これだから女ってやつ……な!?」

 

 

眼にも止まらない速さで顔前へ手が延び握られたライター《魔導火》が開き炎が点る、ショウ・クルキイの瞳に魔導文字が現れた

 

《ジロウ!こいつホラーだよ!!》

 

魔導鏡ウルバの声が響くと同時にショウ・クルキイはニヤリと笑い蹴りあげるが当たる寸前で足を掴み、頭突きを食らわす

 

 

「ぐあっ!」

 

 

「はあっ!」

 

体勢が崩れたと同時に拳が顔面をとらえるが弾かれ肘がジロウの顔面にヒット、だが膝撃ちが胴へ極り堪らずうずくまるショウ・クルキイが苦悶の顔を浮かべながらふらふら立つ

 

「ふ、ふざけるな…その女は金づるだ……金の卵だああああ」

 

 

叫んだ瞬間、魔導文字がショウ・クルキイの身体を包み、やがて無数の蠍が合わさったような体躯に背後から延びた三本の尻尾、その先から異臭と共に液体が落ち床が瞬く間に腐り落ちていく

 

 

《気をつけてジロウ!アイツはホラー・スコルピス。女の首を斬ることに悦びを感じながら処刑された男が被っていた帽子とあの人間をゲートにして現れたみたいだよ》

 

 

「ああ!はあっ!!」

 

 

直刀両刃の魔戒剣《雷鳴剣》を構えじりじり間合いを積めるジロウ。だが彼がなぜこの場にいるのか?それはギンガの態度から長年の経験をもとに誰かから脅されているのではないかと気づいた結果だった

 

だが不馴れな場所でギンガを探すのは容易ではなく場所がわかり駆けつけた時には、ショウ・クルキイに殴られる姿を見てナニかが切れていた

 

 

ソウルメタルの振動音を響かせながらスコルピスと切り結ぶジロウからは凄まじい迄の剣気がみちあふれる

 

『ヌヌリ!タキイクス!!クリヌヂクルヌ!!』

 

背中から生えた尻尾から腐敗液を無数に飛ばすも八双に構えられたジロウの剣の前では切り払われていく様に恐れを抱き始めた

 

 

「……もう、終わりか……」

 

鋭い視線を向けながら身体の前に雷鳴剣を構え回転するよう回りに円を描く…光の円が頭上へ上がると中心が砕け光に包まれる、ベッドに寝かせられたギンガの瞳が微かに動き開かれる

 

(蒼い…狼?)

 

 

狼の唸り声が響くと共に光が晴れ現れたのは、荒々しい野生を感じさせる蒼い誇り高き狼を思わせる造形、牙を向いた狼の面を付け、柳刃状に変化した魔戒剣《雷鳴剣》を肩に担ぎ前屈みになりながらスコルピスを見据える騎士

 

 

雷鳴騎士刃狼《バロン》が姿を顕し大きく構えた雷鳴剣を構え駆け出すと逆袈裟に切り払い、返す刃で胴を凪ぎ回転し回し蹴りを決め壁へ叩きつける

 

『ヌ、ヌギク…ヌギキクキインキズムリシハグナヌヌ!(な、何故だ、刻印を刻まれているのになぜに動ける!)』

 

 

『この程度の痛みなどギンガさんが貴様から受けた仕打ちを思えば軽いモノだ!』

 

 

『グ、クヌニ!』

 

 

壁を壊し再び襲いかかるスコルピス、今度は拳と背後の尻尾を使い連携してくる…がジロウは最低限の動き、まるで激流の川を流れる一枚の葉の様に交わしていく

 

『どうした、オレに当ててみろ……はあっ!!』

 

 

小さく呟いた瞬間回転しながら地を蹴ると背後にたち、雷鳴剣で尻尾を切り払い蹴り飛ばすと壁と壁を蹴りながらまるで野生の狼ならぬ《ウルフェン族》を彷彿させる動きで翻弄するジロウが繰り出す雷鳴剣がすり抜け様にスコルピスの固い外皮を切り裂いていく

 

『…ガ、ガアアア!スウヌダクヌウンヌヲヤルチ!ダキリヨルシキクニ(そうだ、この女をお前にやろう!だから許してくれ!!)』

 

 

『ふざけるな!』

 

 

眼前に現れ束を握りしめた拳でスコルピスの顔面を殴り抜き

 

 

『女はモノではない!』

 

殴り抜きと同時にムーンサルト・キックを脳天へ決め叫ぶジロウの身体から魔導火が燃え上がり大きく月を描くように剣を構える

 

『女を道具のように扱い、弄び悦びを覚える貴様の陰我!オレが断ちきる!!』

 

『が、がああああ!』

 

 

同時に駆け出すもジロウは再び壁を蹴りながら回転、魔導火が刃を照らし素早く懐へ滑るよう潜り込み横凪ぎに切り払い、返す刃で正眼に構えスコルピスの真ん中から切り払った

 

 

『グ、グキヤアアアアアアア!』

 

身体を魔導火で焼かれながらもショウ・クルキイの魂の声がジロウの耳に響く

 

―い、嫌だああ死にたくないい……俺はもっと女どもをくるしめたいんだああ……言うこと聞かなければ顔を殴れば聞くのによお―

 

『……黙れ外道……女の顔は髪と同価値だ……いかなる理由があろうとも女の顔を殴る奴は最低の屑がやることだ………』

 

 

―ん、んなの…知るかあああああ…………………………―

 

 

魔導火が完全にホラーを焼き尽くしたの見て鎧を返還したジロウは膝をついた……胸の痛みと熱さに堪えながらギンガがいる場所へと向かった

 

 

―――――――――――

――――――――――

 

 

「ん、あれ私何で……え?ジ、ジ、ジロウさん?」

 

 

「ん、気がついたかギンガさん……まだ無理はしない方がいい」

 

(な、何でジロウさんが私をだっこしているの?さっきまでのは夢?でもハッキリ覚えてる)

 

 

夕焼け空の下、人気が少ない道を歩くジロウ…両手は塞がれている。何故ならギンガがいわゆるお姫様抱っこされていたからだ

 

「あ、あの…ジロウさん……あの…」

 

 

「……………いつか必ず話す……それまで待っててくれるか?」

 

先程の廃屋でのジロウの姿について聞こうとするも、その瞳から嘘偽りない意思を感じたギンガはその言葉にうなずくとウトウトし始めた

 

 

「ジロウさん……約束ですよ…」

 

 

「ああ」

 

 

優しい笑みで答えるジロウにどぎまぎしながら眠りについたギンガ…だが帰りが遅いことを心配し玄関で待っていたゲンヤにその姿を見られひと悶着があったとだけ記しておく

 

 

第十九話 雷鳴(後編)

 

 

 




刻印を解く手がかりを見つけられず秋月屋敷から戻ったタカヤは三騎士に報告へ向かう


その頃、謎の失踪事件を追うはやてに上層部より捜査中止命令がくだった


不可解な命令に疑念を抱き、独自調査を進めるはやてだったが…


次回!盟約!!


黒き魔獣が夜天の王に迫る!!



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