魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)



閑話 愛憎

新暦49年

 

 

第一管理世界《ミッドチルダ》魔法と科学が発展したこの世界では二百年に一度のあるかないかの奇跡の現象、太陽が《二つの月》が重なるという天体現象《皆既日食》に人々がその時が起こるのを今か今かと賑わい空を見上げている

 

人々は知らない。この現象が喪われたナニカを甦らせるためにミッドチルダに住まい生きる《あらゆる命》を魔獣の王への生贄として捧げ願いを叶える儀式である事を誰一人知らなかった

 

★★★★★★★

 

鬱蒼と繁る木々を蹴り移動する影が二つ。交差する度に火花が散り音が木霊させながら開けた場所へと降り立つ

 

「そこをどけオウル!」

 

 

「どかん!お前は自分が何をしようとしているかわかっておるのか!!」

 

 

地を蹴るやいなや剣斧を横凪ぎに切り払う、が対する相手も柄の長い斧で防ぎ半回転と同時に踏み込み胴を薙ぐもオウルは鞘で受けその反動を利用し蹴りを叩き込む

 

 

「グカッ!」

 

 

「…今ならまだ間に合う!あの術式を止めろ!!」

 

 

「やめるわけにはいかない…私は――――――為に闇に魂を捧げた。もう一度―――を――――――!!」

 

 

「……が本当にそれを望んでいると言うのか!!――――!!」

 

 

再び切り結ぶ二人の剣速は速さを増しやがて肉眼で追えない…だが互いの身体を切り裂いていき血が辺りに舞い散る

 

「はああ!!」

 

 

「かあああっ!!」

 

 

激しく刃がぶっかりあいソウルメタル同士の振動音と共に衝撃波がおき足元の地面がひび割れると共に抉れ々がはぜ飛び散る。二人は鍔是りあいになりながら互いの反動を利用し後ろへ飛ぶ、素早く剣を天に構え真円を描くと狼のうなり声が響き光が溢れ白金の狼《オウガの鎧》、黒い狼の意匠が特徴的な《………の鎧》を纏い対峙し斬りかかりと共に互いに蹴りを撃ちむもぶつかり合い白金と黒の粒子が舞う

 

『……お前に《魔戒の力》を教えるべきではなかった!!』

 

 

『それがどうした!掟に縛られさえしなければ――は―――は無かった!――をひとりぼっちににせずにすんだのだ!!』

 

 

ギィンと大きく振りかぶり刃をぶつけ叫ぶ二人から悲しみ、怒り、苦しみ、強い後悔が滲み出ている…

 

《不味いぞオウル!術式発動まで時間がないぞ!!》

 

首元から聞こえた声にわずかに空を見る。二つの月が太陽と重なり始め魔導文字がその周囲に広がるのを目にし焦りをみせたオウルにわずかな隙が生まれる。黒い狼の鎧を纏った騎士は好機とみたのか魔戒斧、魔戒剣を強く握り踏み込みと共に交互に斬りかかる

 

『ぬ!ぐうう』

 

 

『私の勝ちだああ!オウルウウウウ!!』

 

 

重い一撃を剣斧で受けるも押され苦悶の声をあげるオウルに勝利を確信した彼の変化した魔戒斧、魔戒剣が剣斧を弾く。そのままがら空きになった胴を薙ごうとした…が無数の花弁へ変わり消える

 

『なっ!?』

 

 

目の前から消えた事に驚く彼に僅かな隙を縫うように、花びらが彼の背後に集まりやがて白金の狼を模した鎧を纏ったオウルが姿を見せた

 

『…そこか!』

 

 

『………闇に魂を売り渡した貴様の陰我。ワシが断ち斬る!!』

 

 

振り返り様に大きく魔戒斧、魔戒剣を振るい鋭く鋭利な刃が迫るもオウルは剣斧を構え刃を滑らせるように受け懐へ潜り込むと突きの構えをとりソウルメタルの鎧を纏った彼の胸板めがけ突く、震動音が響きやがて砕け貫いた

 

『ガアッ!?』

 

 

狼を模した兜の牙から血を吹き、力なくグラリと倒れると共に血に濡れ輝く剣斧が胸から抜かれた

 

『……』

 

 

やがて光と共に鎧が魔界へ返還、魔法衣が切り裂かれ血を流しながらオウルは崩れるように地面へ膝を付いた

 

「……―――、ワシはお前を《本当の息子》だと思っていた……お前こそが九代目《白煌騎士オウガ》の称号を継ぐ者と信じていた…」

 

 

彼の死体を前にし顔を俯かせ地面へ拳を叩きつける【八代目】白煌騎士オウガ継承者《秋月オウル》の苦悶に満ちた声はやがて降り出した雨が激しく叩きつける雨音にかき消された

 

 

―――――――――

―――――――――

 

 

新暦69年

 

???

 

「どうした、立てユーノ」

 

「うう…」

 

 

全身を黒い布で身を包んだ彼の手に握られた唐草模様が描かれた筆?は金髪の髪を首の後ろで結んだ少年《ユーノ》に向けられている

 

「うう……」

 

 

フラフラと立ち上がるユーノの手には違うデザインの筆と不思議な文字がかかれた札が握られている

 

 

「…ユーノ、今一度聞く。お前は《魔戒の力》を何故身に付けたいのか?」

 

 

「……ぼくは……力が欲しい…守る力を」

 

 

「……《守る力》…ふん、そんなのは何の役にもたたん。それにお前が力を欲しいと言う動機を当ててやろう……【大事なナニか】を《魔法》で守れなかった。だから力が《魔戒の力》が欲しい違うか?」

 

 

「……はい…」

 

 

絞り出すようにかすれた声で答えるユーノにかつての自分と重ねてしまっている事に気づき苦笑する。

 

数ヵ月前、《ある目的》のためにベルカ緒王時代の遺跡を訪れた際に先に一人調査に来ていたユーノを見つけ動向を監視していた

 

だがある区画に仕掛けられていたトラップにかかりゴーレムに襲われていたユーノ…だがそのゴーレムこそある目的に欠かせない《アレ》が在るのを気づき破壊し無事に入手するついでに助けた

ユーノの《魔戒導師》としての高い潜在的素質を感じ無限書庫から迎えが来る三ヶ月の間、暇潰しも兼ね鍛え始めた。

 

まるで砂が水を吸うように《魔戒導師》として急激に成長していくユーノに驚きを隠せなかった…だがそれ以上に《魔戒の力》を求め学ぶには並大抵の事ではないと感じ理由を訪ねようやく気づいた

 

―大事なナニかを守れなかった―

 

ユーノと自分は似ていると言うことに…

 

 

「…ならば《魔戒の力》、《魔戒の術》を私から盗み己のものとするのだな……大事なナニかを失わない力をな」

 

 

「は、はい……先生!」

 

 

「先生はよせ……うっ…」

 

力強く答えたユーノの瞳から強い意思を感じ構えるも頭を押さえ膝をついたのを見て慌てて駆け寄る

 

 

「先生?どうしたんですか!?」

 

「な、何でもない……すまないが今日はここまでにする。明日も同じ時間に此所へ来い」

 

ふらふら立ち上がりながら筆を軽く振るうと無数の花弁へ変わり彼方へ飛ぶのをユーノはただ見ているしかできなかった

 

 

―――――――――

―――――――――

 

 

遺跡から四、五キロ離れたであろう川辺に無数の花びらが集まり一つになると黒いローブを纏った彼が頭を押さえながら声を漏らす

 

 

「う、うう………」

 

 

―ほう、まだ我に抗うか…―

 

「…黙れ…」

 

 

―その抵抗も直に無駄となるだろう……貴様が闇に堕ちるのは時間の問題だ―

 

 

「黙れ、お前の好きにはさせない……」

 

 

―……あの小僧を鍛えてるのは我に対する抵抗か?……だが断言してやる、お前は自らの手であの小僧の命を奪うだろう…それともお前と同じ様に闇に落とすのか―

 

 

「……ちがう!……貴様等の思い通りにはさせん…闇にも堕とさせはしない」

 

 

―……ふ、せいぜい抗うのだな……―

 

 

嘲笑うように消える声を耳にしながらふらふら立ち上がるとローブから魔導机を展開、取り出したのは作りかけの魔導筆を見つめ無言で念を込め注ぎ込む

 

 

(あと、あとどれぐらい《私》が保てる?……二年、いや一年か?私の持つすべて《術》《技術》を伝えなければ……頼む…時間(とき)よ止まってくれ)

 

彼に残された時間は余りない…だからこそ全てをユーノへ託す為に運命に抗う

 

それが先に起こる《悲劇》に繋がるとしても

 

 

閑話 表裏

 

 

 




次回は来年投稿になります!

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