魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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アキツキ屋敷 アスレチック施設


「はあ、はあ、つ、疲れたああ~」


「た、タカヤさんの体力の源がなんかわかった気がします…」


「アキツキ先輩って子供の頃からこんなのを?」


「はあッ…でもあの施設は無理ですよ…」


「「「ですよね~」」」


芝生の上にへたり混む四人は同時に声をあげるとデルクがクーラーボックスからスポーツドリンクを差し出してくる

「はあ、すごく美味しいです」

「あの~デルクさん」


「はい、なんでしょうかヴィヴィオ様」

「タカヤさんって小さい頃からここで鍛練を?」

「ええ、正確な言えば6歳から此所で訓練を始められました。ユウキ様からは剣と魔法を。メイ様からは体術と魔導術を学ばれました」


「そうなんですか…あの、小さい頃のタカヤさんってどんな感じでした?」

アインハルトの言葉にピクッと反応するヴィヴィオ、ノーヴェに少し笑みを浮かべデルクはあらかじめ用意していた一冊のアルバムを出し開いた

そこには生まれたばかりのタカヤと囲むようにたち笑みを浮かべる若い夫婦と祖父、そしてデルクの姿があった


その写真にみいる中、一枚にノーヴェの目が止まる。少し泥で汚れたタカヤが満面の笑みで野菜を抱き抱える写真


「気になりますかな?ノーヴェ様?」

「あ、ああ。これって何時のやつなんだ?」


「これはタカヤ様がはじめてお外へお買い物にいかれ帰ってきた時にとられた写真です…あの頃は本当にかわいかったですよ。メイ様は特に仕事が終わられ戻ってきたときはずっと抱き締めておられましたからね」

そしてデルクの口から今から9年前、タカヤがはじめてお買い物した時の話が始まった






特別話 タカヤくん(四歳)の大冒険!+α

「おと~さん、おか~さん。いってきま~す♪」

 

「怪我をしないようにねタカヤ」

 

「タカちゃん、何かあったら…何かあったから必ずお母さんを呼ぶのよ~」

 

「は~い♪」

 

さんさんと照らす朝日を浴びながらゆっくりと転送ポートに歩くタカちゃんの姿はいつ見ても可愛い…だってユウキ譲りの良い匂い、愛らしさ、私譲りの黒く長い髪に犬耳にユウキ特製お出掛け着姿のタカちゃんは…………………スッゴクっ!可愛いの!!!

 

もし誘拐されたらと思うと私は、私はああああああ!!?!」

 

「メ、メイ?落ち着いて!犬耳出てるから!?」

 

「え?そ、そう…じゃあ着替えて行きましょうか」

 

タカちゃんの姿が完全に見えなくなったを見て屋敷にあるクローゼットルームで目立たない服装に着替え転送ポートで後を追った

 

タカちゃん…タカちゃんはユウキとお母さんが必ず守ってあげるからね!!」

 

「め、メイ?あんまり大声だすと気づかれちゃうから静かに!?」

 

 

特別話 タカヤ君(四歳)の大冒険!

 

一時間前 アキツキ屋敷

―ABSORB・QUEEN…EVOLUTION・KING!―

 

光る、しゃべる、ラウズ機能完全再現!DXキングラウザー!君も今日からブレイドだ!!―

 

「ワアアア、すごいやあ《きんぐらうざ~》…」

 

目をキラキラ輝かせ見るのは現在ミッドの子供たちに大人気の特撮番組『仮面ライダーブレイド~紫紺の切り札~』

 

毎朝アキツキ屋敷のリビングで早起きし夢中になってみているのは頭に犬耳を生やし尻尾をパタパタさせるタカヤ君(四歳)…がそのあとのコマーシャルに目を奪われてしまった

 

―野菜がたっぷり入って体も心もポッカポカ…ハ○スシチュー、家族と一緒に食べようね―

 

(『しちゅ~』…きょうはおと~さんがごはんつくるっていってた…そうだ!)

 

画面を消し立ち上がり向かうのはアキツキ屋敷の厨房…思い扉を顔を赤くしやっと開けタカヤは食材とにらめっこするユウキの足に抱きついた

 

「今度の教会食堂デザート決定戦にロッサに勝つにはやっぱりスペシャルババロア…」

 

「おはよ~う、おと~さ~ん」

 

「うわ?どうしたんだいタカヤ」

 

「えっとね…きょうのゆうごはんは『しちゅ~』だったよね?」

 

「そうだよ、きょうはタカヤの大好きなシチューだよ」

 

ひょいとその体を持ち上げタカヤを肩車し笑顔で答える

四年前、難産の末生まれるも母メイ、父ユウキのたっぷりの愛情受け目にいれても痛くないほど元気に可愛く成長したタカヤに笑顔で訪ねた

 

 

「えっとね…ぼくお外にでて《しちゅ~》につかうお野菜をかいにいってきていいかな?」

 

 

「え?タカヤ…今なん…」

 

 

「ダメええええええええええええええ!!」

 

ドゴオオオン!と凄まじい破壊音と共に厨房の壁が砕け現れたのは魔導筆を構えた魔法衣姿のメイ、魔導筆を鳴らしながら風のようにタカヤをユウキから奪い取り思いっきり抱き締めた

 

「タカちゃん、お外は危険で一杯なのよ。ましてや街にはモヒカン(?)や頭に鋼鉄のヅラ男(?)や世紀末覇者(?)や【俺の名をいってみろ】(?)やテラフォーマーズ(?)みたいな不審者がたくさんいるのよ?」

 

「メ、メイ、そ、そんな不審者はたくさんいないと思うけど(特に最後のは)…」

 

「いいえ!ユウキ、不審者一人見たらモヒカン《以下略!》は千人はいるのよ!それにタカちゃんはスッゴく可愛いから知らない女【少年愛好者(ショタコン)】が拐って骨の髄まで全部食べられるに決まってるわ!!」

 

 

――――――――

 

……自分も人のこと言えないん…/だ、黙りなさいいいい!!/ギャアアアアアア!!

 

by作者

 

――――――――

――――――

 

 

「しょうねん…あいこうしゃ…ってなに?」

 

「あっ…タカちゃんはまだ知らなくて良いのよ~今日は買い物にいかず私とユウキと一緒にお家…」

 

 

「…おそとにおかいもの…いっちゃダメなの…おかあさん」

 

犬耳を元気なく項垂れさせうるうるした《虹彩異色》の瞳で見られたメイの頭の中では…

 

―――――――

――――――

 

 

―静粛に!これより第999回タカちゃん会議を始めるわ!―

 

―議長!ここはお買い物にいかせるべきでは?―

 

―イヤ!タカちゃんは絶対に拐われる!(年上の女に)―

 

―だがタカちゃんの成長を見るために必要なのでは―

 

―うっ?それは一理あるけど…―

 

沢山のメイが脳内サミットを開く光景…すでにこれとは違う議題が何度も繰り返されていた

 

タカちゃんを乳離れさせるにはどうすればいいのか

 

タカちゃんの髪を伸ばすか伸ばさないか、三つ編みにするかしないか

 

 

先月【アキツキホビー事業部】から無断で販売されそうになった《犬耳タカちゃん人形》を処分するかしないか

 

魔戒騎士と法師の修行をいつ頃からさせるかさせないか

 

 

等々がメイの頭で何度も繰り返され脳内サミットは僅か一秒で決議が下された

 

 

「お外には…」

 

「メイ」

 

そっと近づきユウキはメイの耳に界符《念符》を貼りつけ念話で語りかけた

 

―メイ、もうタカヤも四歳になったんだよ…そろそろ外の世界を知ってもいいんじゃないかな―

 

―で、でも…外はダメよ…私の時みたいになったら…―

 

―…街の風景、街にすむ人々、それはすごく刺激になって必ずいい経験になるって思うんだ…お買い物にいかせてあげよう―

 

―ユウキは心配じゃないの…―

 

―心配だよ、でもお買い物をしたいというタカヤの意思を尊重したいんだ―

 

―うう~でも~―

 

―そんなに心配なら僕がこっそりついていけばいいからさ…ダメかな―

 

少しの沈黙、やがて…

 

 

―わかったわよ…お買い物にいかせてあげる…でも私も着いていくわ。何かあったら絶対にタカヤを守るわよ―

 

―わかったよメイ―

 

――――――――――

――――――――

 

「おか~さん?」

 

「タカちゃん、お、お買い物…い、いっていいわよ」

 

「やったああ~おか~さんだ~~いすき」

 

 

パアアアっとなる笑顔と言葉を聞きメイも頭から犬耳と尻尾を出しちぎれんばかりにパタパタさせるのをユウキは笑いながら見ていた

 

―――――――――

――――――――

 

 

「おそとにとうちゃ~く…あれここ教会だ」

 

《転送ポート》から出てぼくはここが教会の中央だと気づいた…どうしょうぼくポートの使い方わからない…う~ん

 

「あらタカヤちゃんじゃない…」

 

「あ、アリアお姉ちゃん…あ、おはようございま~す」

 

「!…お、おはようタカヤちゃん…今日はどうしたの」

 

「えっと~きょうのばんごはんにつかうおやさい買いにきたんだ…でも教会にでたんだ」

 

「あら、少し待ってね…えっとどこにいきたいの?」

 

「…アモンってお店ににいきたいの」

 

「《アモン》たしか中央区にあったわね。はい終わったわよ…でも使用まで五分ばかり時間かかるわね」

 

アリアお姉ちゃんは少しなやんですぐにゆきさきをにゅうりょくしてくれます…このまえお父さんとはぐれて泣いたぼくをみっけてくれた優しいお姉ちゃんです

 

――――――――

――――――――

 

 

私がこの子とあったのは数ヵ月前。ドクターの命令でここ聖王教会本部に潜入し目的のモノを盗み出す算段がつき決行まで少しばかり余裕があり暇潰し程度に教会内を歩いていた私の耳に泣く声が届いた

 

 

普段なら気にしないはずなのに声に引き寄せられるように歩き出会ったのは

 

―おと~さん、どこにいるの?――

 

真っ黒な長い髪で顔が隠れた四歳ぐらいの男の子が泣きじゃくっている…

 

―どうしたのキミ?―

 

―ぐす、おば~ちゃんと…はぐれちゃ…っ…た…―

 

―………じゃあ私と一緒におばあちゃんを探そうか―

 

―ぐす、いいの?―

 

―ええ、ちょうど私も暇だったし…じゃいこうか…その前にキミの名前は?―

 

―タカヤ…タカヤ・アキツキだよ…おねぇちゃんは?…―

 

―………私はシスター・アリア…じゃあ探しにいこうかタカヤちゃん―

 

 

―うん、アリアおねえちゃん―

 

涙をふき立ち上がるこの子の手を握り歩き出した…なぜ私はこの子のおばあちゃんを探してるのかしら

 

それに手を握っているとスゴく安らぎを感じるのはなぜ?

 

今まで私がしてきた行為がすべて洗い流し清められ癒すような暖かさといい匂いをこの子から感じるのは何故?

 

―タカちゃ~ん!―

 

―あ、リームおばあちゃんだ―

 

―タカちゃ~ん、よかった~怪我してないわね~うんうん抱き心地も変わらないし最高ね~あら、あなたは?―

 

―私はシスター・アリアです…騎士リーム・グレイス様(……なんなのこの若さは?どう見ても二十歳にしか見えないわ!?)―

 

―(あら、中々の美人さんね~こんな娘いたかしら?でも悪い娘には見えないしそれに姉妹がたくさんいる気がするような…)わざわざタカちゃんを見っけてくれてありがとうねシスター・アリアちゃん…あ、今からお茶会しない?―

 

 

―え、でも―

 

―遠慮しないの♪これはタカちゃんを見つけてくれたお礼なんだから。じゃレッツら、ゴ~♪―

 

 

なし崩し的にお茶会に誘われ出されたケーキと紅茶はスゴく美味しかった、それ以上にこの子《タカヤちゃん》を膝の上に乗せて頭をずっと撫でてたことをリームにいわれるまで気づかなかった

 

なんかこういう子が欲しい…お茶会を終え眠ってしまったタカヤちゃんと騎士リームと別れ自室で秘匿回線を開きすぐにドクターに頼んだけど

 

―すまないね、今手が離せないんだ…なんならその子をアジトにつれて教育して見るのはどうだい?―

 

 

―…やめておきます…では私はこれで…―

 

 

通信を切りベッドにた折れ込み枕に顔を埋めながら何故ドクターの言葉に従わなかったのだろうと考える

 

つれていけば私好みの男に…私だけを見て私だけを愛する男に育てられる

 

でもそれをしたらなにかが狂う気がするし【連れていくんじゃねぇ!!】って声が聞こえるの気のせいかしら?

 

今に至るまで理由がわからない…でもはっきりとしてるのはこの子を私達の側に連れていってはいけないという警告にも似た感覚だった

 

「アリアお姉ちゃん?どこか具合悪いの?」

 

「え?大丈夫よ、少し疲れただけかな」

 

 

先月から管理局と聖王教会に行き来したせいか疲労していた私に気づいたタカヤちゃんはナニか閃いた顔をする

 

「じゃあぼくのとっておきのマホウ(?)で元気にしてあげる♪」

 

 

不思議な彩りの服のポケットから黒地に白金の模様が施した少し大きめな筆を取り出すとパタパタと少し歩き離れ私に向け構え大きく円を描くように回し始めた

 

「……やまれ~やまれ~めさおにな~~る♪」

 

鈴の音が響くと無数の彩り鮮やかな蝶が一斉に私の体を包む…なんかスゴく癒されて自然に笑顔になっていくのがわかる

 

でもこれ魔法なのかしら?

 

「げんきになったかな?」

 

「うん、元気一杯よ」

 

「よかったあ~あ、そうだアリアおねえちゃんにこれあげるね」

 

筆を大事にしまいかわりに私の右手にナニかをつける…木の温もりと金属のひんやりした感覚、みると銀色に輝く龍を木の台座にはめた変わったブレスレットがはめられている

 

「これは?」

 

「ぼくが《まかいじゅ》と《そうるめたる》ではじめてつくった《おまもり》だよ。アリアおねえちゃんがけがをしないようにたくさん念を込めたんだ」

 

 

にっこり笑うタカヤちゃんを見てるとなんか胸の奥が熱い…今まで手玉にとってきた男たちに抱いた感情とは全く違うのが沸き起こってくる

「どうしたのアリアおねえちゃん?」

 

「え?な、何でもないわよ!もう転送ポートが使えるみたいよ…お買い物にいかないと帰るの遅くなるわよ」

 

「あ、そうだった」

 

 

トテトテと転送ポートに入るタカヤちゃん、なんか名残惜しい気持ちで一杯になる…だってあと少ししたら私は地上本部に潜入しなければならない

 

もうタカヤちゃんと会うことができなくなる

 

「アリアおねえちゃ~ん」

 

 

「え?」

 

「ぼくね…アリアおねえちゃんのことだいすきだよ~♪またあおうねえ~」

 

転送ポートから消える寸前に聞こえた笑顔のタカヤちゃんの声を聞きしばらくボウッとしドキドキする私の足元にナニかが落ちる音がする

 

みると真っ赤な血が水溜まりみたいになってる…私は知らないうちに鼻血を出して………

 

―ぼくね…アリアおねえちゃんのことだ~~いすきだよ~♪またあおうねえ~―

 

「………………ブハッ!!」

 

何度も何度もタカヤちゃんの声を頭に響かせながら私は意識を手放した

――――――――

――――――

 

「やっと【中央区】についた~」

 

転送ポートからでたぼくの前にはたくさんの人があるいてる…おとうさん、おかあさん、リームおばあちゃん、きょうかいの人、デルク以外の人にであうのははじめてでドキドキしてます

 

「えっとこのまままっすぐ行って…」

 

おと~さんにわたされたメモをたよりに狭い路地裏を歩いていく…なんか暗くてこわい

 

 

 

でもぼくは【おとこのこ】。 しょうらいはりっぱな《まかいきし》になるんだからおかいものをがんばるもん!

 

「おかいもの~♪おかいもの~♪きょうはひとりでおかいもの~おと~さんのしちゅ~のおやさいひとりでかいにいくんだよ~」

 

 

《ぐるるるる》

 

大きな声でうたうぼくの後ろからうなり声…ゆっくり後ろをむくとまえに大きないぬがきばをむいてうなってる

 

 

《ぐるるるる》

 

《ぐうううう》

 

みぎからひだりからも大きないぬがきばをむいてぼくをみてる…こわい…でもぼくは【おとこのこ】にげないもん

 

「うううう~!」

 

こわいのをがまんしながらぼくもうなり声をあげたんだけど三匹の大きないぬは全然ひるまない

 

《ガウウウ!》

 

めのまえにいた大きないぬがきばをむいて飛びかかってきたからあわててよけようとしたけどいしにつまづいてころんでしまう

 

(…おと~さん!)

 

心の中でおとうさんをよんだしゅんかんでした

 

《キャ、キャンキャン!?!》

 

おそいかかってきたいぬが背をむけてにげてく…なんで?それに《おとうさん》の匂いがしたけど

 

「気のせいだよね…アモンまであと少し…がんばろう♪」

 

―――――――

―――――――――

 

 

「ふう、なんとか間に合った~」

 

「間に合ったじゃないでしょユウキ!あと少しで野良犬に噛まれるところだったのよ!!」

 

少し離れた路地裏に立つ二つの影。黒髪ロングの犬耳が生えたメイが魔導筆で術を放とうとするのを必死になだめるユウキの姿

 

…途中でタカヤを見失ってあわてて探したけどまさか野良犬に襲われてたのを見て思わずいつもの三倍の殺気を飛ばして追い払った…でもタカヤはメイと同じで耳と鼻が異常にいいから気づかれたかもしれない

 

「ごめん、ごめん…そんなに興奮しないで…また犬耳出てるから」

 

 

「うう~またごまかして~」

 

「ごまかしてないから…それに」

 

「え/////」

 

グイッとメイの肩を抱き寄せるとさっきまで機嫌が悪かったのが嘘のようにおさまった

 

「犬耳姿のメイは誰にも見せたくないんだ…」

 

「うう~ずるいわ…でも次にタカちゃんが危なくなっ…」

 

「よう姉ちゃんたちぃ~」

振り返るといつの間にかガラの悪いモヒカン、頭に鋼鉄のヅラを被った中年、世紀末覇者(?)【俺の名をいってみろ】、テラフォーマーズ(?)が囲んでいる

 

ホントにいたんだ…でも【姉ちゃんたち】って?

 

「こんなところであいびきかあ~ずいぶん欲求不満みたいだな~けけけけ」

 

 

「なんなら俺たちが可愛がってやるぜ~ヘッヘッへ~」

 

すごい顔のモヒカンがメイの肩をさわる…ビクンと体を振るわせうつむく……い、いけない!

 

 

「なんだあ?触られただけでいっち…アパァアアアアア!?」

 

勢いよく宙を舞うモヒカンA…その顎は見事に砕けているのを見て一斉に目をむけた先には蹴りの構えをとるメイの姿

 

 

「…私にさわったわね………台所の三角コーナーにたかるコバエ…」

 

「な、触ったのがなんだよ!へへ~もしかしてホントに…グパアア!」

 

今度は肘鉄が顔面に突き刺さりビクビク震わせながら地面に沈むモヒカンB…それを冷たい目で見下ろすメイ

 

「私に、私に触っていい男は…」

 

「アパァ!」

 

「ユウキと!」

 

「パフィイイ!?」

 

「タカちゃん!」

 

 

「ギュパ!」

 

 

「デルクとアキツキ・インダストリ関連支社の社員とその家族一員だけよ!!」

 

「シ、ショッカー!?」

 

 

群がるモヒカン&テラフォーマーズ&sを殴り飛ばし蹴りを叩き込む、やっぱりまだ【あの時】の事件が尾を引いてる!今はメイを止めなきゃ!! でも背中からガシッと羽交い締めにされ身動きがとれなくなる僕の体をまさぐってくるうう!?

 

「ゲヘヘへ、捕まえたぜ~中々の上玉じゃないか…さて《あの女》を大人しくさせるためにお前を剥かせてもら……………て、てめえ【女】じゃないのかよ!?バッチいぜモロにさわっちまっ……ヒイイ!?」

 

「…今なんていった……」

首を絞める腕をグググッと掴み上げ反対方向にねじ曲げ地面に叩きつけられた【俺の名をいってみろ】男の目の前には

 

「僕は女じゃない、僕は男だあああああああああ!!」

長い茶髪をユラユラしながら叫ぶユウキの顔面グーパンチを喰らったのを最後に意識を失った

 

「な、なんだコイツら!アビバアア」

 

「ま、まて話せば…ヴァルヴァロ!」

 

「オジャアアア!?」

 

「アダダダ、ひでぶううう!?」

 

 

「フフフフ…しゃべらないで空気が穢れるわ…選択肢をあげる…拘置所に行くか【真魔界】に逝くか…どちらか嫌な方を選ばせて・あ・げ・る(黒笑み)♪」

 

 

「僕のどこが女だって…言ってごらん(黒笑み)」

「「「「「「「「「「「「「ヒ、ヒイイイイイイイ!!/どっちもイヤアアアアアアアア!?」」」」」」」」」」

 

 

数分後、通報を受け駆けつけた陸士108部隊隊長『ゲンヤ・ナカジマ』が見たのは崩れ落ちたビルの外壁に気絶し倒れたモヒカン、テラフォマーズ、俺の名を言って見ろ、ete…指定暴力集団【ケルベロス】メンバーがビクビクしながら壁に体を半分突っ込み、犬神家みたいに突き刺さった姿。病院に収容されたメンバーは口々に

 

 

「お、鬼だ…この街には二人の女の皮を被った鬼がいるんだああああ」

 

「二度と貴方には触りません、触りませんからああああ!!」

 

 

「来るな、来るなああああ!?」

 

「す、すいません貴方は男です…立派な男ですうう!」

 

大層なにかに怯えながら無事に退院した者は別の管理世界へと姿を消し拘置所に入った者はなにかに怯える日々を過ごしたそうだと記録しておく

 

記録者ゲンヤ・ナカジマ

 

――――――――

―――――――

 

 

「おかいもの~おかいもの~おやさいかいにアモンまであとも~うす~こし~♪…あれかな?」

 

 

歩いたさきに【AMON】と大きくかかれた看板がみえる…でもなんかこわい感じがする

 

ここのおやさいはぼくのおと~さんがよくつかうからぜったいにかわなきゃいけないんだ

 

「ん~なんだボウズ。ワシの店に何かようか~?」

 

 

「ひうっ?」

 

 

 

目の前には不思議な民族衣装に赤ら顔のスッゴク大きなおじいさんがたってる

 

「んん~ボウズ、どこかであったか…」

 

「う、うう…ほ、ぼくは…ぼくはタカヤ、タカヤ・アキツキです!このおみせにあるおやさいをかいにきました!!」

 

 

「アキツキ?……ふん~~ふむ~ん~~…ボウズ、お前の親父はまさかユウキという名前か?」

 

 

「は、はい…ぼ、ぼくのおと~さんです……」

 

 

「一人で来たのか?」

 

「う…は、はい」

 

「こっちにこいボウ…タカヤ、野菜はこの店の中だ」

 

せをむけあるくおじいさんのあとをあるいていく…回りにはりっぱなおなべやふらいぱんがところせましと並んでます

 

このおなべはおと~さんのつかってるのとおなじだ

 

「ついたぞ、タカヤ」

 

「え、うわあ?」

 

ふわりとからだが浮かぶと小さな椅子に座らされるぼくの目の前には色とりどりのたくさんの野菜がならんでいる

 

「つかう野菜はタカヤが選ぶんだ…」

 

「え?ぼくが…わからないよ」

 

「…野菜の声を聴くんだタカヤ…」

 

そのままおじいさんはだまってぼくをみていた

 

――――――

―――――――――

 

このボウ…タカヤをみて驚いてしまった…小さい頃のユウキと顔と容姿が似てる

 

まさかとおもいユウキの名前を出し尋ねるとビクビクしながら『はい』と答えた

 

子供が生まれたと聴いていたが……な・ぜ・か・ワシに会わせてくれんかった…恐らくメイあたりが『あの顔は絶対に怖がるから会わせたらダメエエエ!』と言ったんだろ。ハンサムなワシの顔の何処が怖いんだ?だがこうしてお買い物に来させるとはな親になると変わるもんだ

だがな二人とも気配がバレバレだ…幸いタカヤは気づいてないみたいだがな…

 

さて、どんな野菜を選ぶか…いや選ばれるかな?

 

 

「ん~…きめた」

 

な、今朝いれたばかりのスプリングオニオンを選んだだと?

 

「えと…きみにきめた♪え、ありがとうってそんなことないよ」

 

に、入手困難なハニーキャロット…目の前で次から次へ野菜を選んでいくタカヤにワシは驚いた

 

間違いないユウキの血を【食材の声】を聴く才能を受け継いでる!

 

「あの~ぜんぶえらびましたけど」

 

「あ、ああ、すまんな…」

 

かご一杯に野菜をいれたタカヤが不思議そうな顔で見てる…全くユウキによく似ておる

 

「金額はこれだけになるが」

 

「は、はい…たりますか?」

ポケットから包みを取り出し渡されみるとお金の他に紙切れが一枚入っているがすぐにレジにいれた

 

「ああ、十分だ…一人で帰れるか?」

 

「だいじょうぶ、だってぼくはおとこのこだから…うんしょっと…じゃあアモンおじいちゃん。またね~」

 

「おう、またなタカヤ…やれやれユウキとよく似てるな」

 

 

野菜が入った袋を手に元気よく歩くタカヤを見送ると二人の気配が店から離れていくのを感じながらレジの椅子に座り紙切れに目を通した

 

―アモンさん、タカヤを絶っつ対に怖がらせないでくださいね―

 

 

―怖がらせたら真魔界に送るわよ―

 

 

「………くくっ!アハハハハハ!ったく二人して親バカめ…これでは将来子離れできなくなるぞ…だがユウキのアレまで継いでるかもな…将来が楽しみだ」

 

 

 

立ち上がりワシは「閉店」と書かれたプレートをかけ十年ものの赤酒を瓶から汲み一気に飲み干した

 

―――――――

――――――

 

 

「んしょ、んしょ…」

 

転送ポートがある公園まで場所まであと少し…アモンおじいちゃんのお店から大分あるいたけどまだとおい

 

うう、おやさいがおもい…でもがんばらなきゃ

 

「あ?」

 

「きゃ?」

 

誰かとぶっかり転んでしまう…じめんにやさいがころがるおといたいのをがまんしながらたつと桃いろのかみのワンピース姿の子がなみだをいっぱいにめにためてる

 

「あ、あの…」

 

「あ、あう…ボクこそ、ご、ごめん…おやさいひろうね」

 

おどおどしながら拾ってくれるけどうごきがおかしい…みると膝からちがながれてる

 

「…すこしがまんして…」

「え?な、なに」

 

ポケットからまど~ひつをとりにぎるそっと口許に近づけいきをかるくふきかけて光る穂先でスッとなでる

 

「どうかな?」

 

「ぜんぜんいたくない…いまのまほうなの?」

 

 

「うん、まほうだとおもう…じゃひろおうか」

 

 

「うん」

 

ころがったやさいをぜんぶ拾うとふくろにいれたぼくはその子とすこしだけしゃべりながらあるいていく

「ボクとおなじとしなんだ…ひとりでおかいもの…ボクはなにもできないしとりえもないから無理…」

 

 

「できるんじゃないかな?」

 

「え?」

 

「ボクがみせたまほうもさいしょはダメだったんだ…たくさんれんしゅうしてできるようになったんだよ」

 

「でもボク…」

 

「だいじょうぶ…すこしずつで一歩ずつまえへすすめばいいとおもうよ」

 

 

「そうかな」

 

 

「うん♪あ、じゃあぼくいくね…またね」

 

転送ポートがある場所につきその子にてをふりながらアモンおじいちゃんにおしえられたざひょうをいれ光に包まれながらちからいっぱい手を振ったけど姿がみえなくなった

 

またあえるといいな

 

―――――――

――――――

 

「一歩ずつ…ボクもがんばれるかな」

 

さっきわかれた子のことばをくりかえしながらあるきながらボクはあるいていく

 

あのまほうもだけどすごいなあの子…あ、なまえききわすれちゃった…

 

 

「ミウラ~」

 

「あ、おかあさん」

 

「あら、なんか嬉しいことあったの?」

 

 

「うん!でもひみつ♪」

 

「そうじゃあ帰りましょうか」

 

 

元気よくあるきだすボクをみて笑うおかあさんといっしょにお家にかえりました

―――――――――

―――――――――

 

「おかえりなさいませユウキ様、メイ様」

 

「いまもどったわデルク」

 

「デルク、タカヤはまだ戻ってきてないよね?」

 

「はい、ですがそろそろ戻られる頃かと…さあお召し物をお着替えください」

 

屋敷の扉で出迎えた秋月家の家令デルクの言葉にうなずき急いで着替える

 

いま着てる服はあのならず者達と戦ったせいであちこちが破け埃と汗の匂いがする

 

タカヤは匂いに敏感だからすぐあの場所に僕たちが居たって気づいてしまうから急がなきゃ

 

「メイも急いで…メイ?」

 

「え、わ、わかってるわ急いで着替えましょう(帰ってきたらタカちゃんをたくさんハグハグしてあげる)」

 

最初は不安一杯でタカヤが転んでもグッとこらえ、ユウキに止められること数十回…私は耐えた…充分すぎる程耐えすぎたわよ!

 

いそいそ着替え長い髪をいつもの様にまとめ魔法衣ユウキも普段着に着替え終え庭園に出ると同時に扉が開いた

 

「おとうさん、おかあさん…おやさいかってきたよお♪」

 

 

すこし汚れたお出掛け着姿に元気よく笑顔でただいまとお野菜を抱き抱えトテトテ駆け寄るタカちゃん…でも勢い余って庭園の石畳に転んでしまう

 

「タカちゃ…「メイ、すこし待つんだ」…え?」

 

駆け寄ろうとする私の肩に手をおくユウキと私の前でタカちゃんがゆっくりと手をついてたちあがろうとする

 

 

「く、うん…う、うん」

 

 

目に涙をためながらすこしふらふらしながらたちあがると野菜が入った袋を抱き抱えゆっくりと確実に歩いてきてそして私達の前に来た

 

「ただいま、おとうさん、おかあさん」

 

「お帰りなさいタカヤ…よく頑張ったね」

 

「タカちゃん、タカちゃあああああん」

 

「お、おかあさん、いたい、いたいから…それにおやさいつぶれちゃうよおお」

 

数分後ようやく離れ私はタカヤの右手を、ユウキは左手を繋ぎ屋敷へと歩いていく…季節は冬なのに暖かな温もりをしっかりと感じ その日夕食はユウキ特製シチュー、手作りパン、生パスタ、タカヤがいつもの三倍おかわりして今日あったことや出会った人の特徴を身ぶり手振りを交えながら笑顔で話してくれた

 

「アモンおじいちゃんってすごくおおきくて怖かったけど優しい匂いがしたんだよ…あとね…」

 

 

ユウキのいうとおりお買い物にいかせて大正解だったわ…なんか行く前と違って逞しくなった

 

なんか寂しいけど知らないうちに成長するのね…

 

「あとね、おやさいの声もきこえたんだよ…」

 

「タカヤも聞こえたんだ、じゃあ簡単な料理を教えてあげるね」

 

「うん♪」

 

「タカヤ様、立派になられましたね…デルクは、デルクは嬉しくてたまりません」

 

 

その日の秋月屋敷から三人の親子と家令の笑い声が絶えることがなかった

 

 

――――――――

―――――――

 

 

新暦75年

 

(ああ、私…死んじゃうんだ)

 

冷たい床の温度を感じながら想うのは妹達と

 

―アリアおねえちゃん―

 

聖王教会であったタカヤちゃん、あれから時間があれば何度か覗きにいったけどタカヤちゃんはいなかった

 

稼働前の妹達と会いたかった…

 

でもタカヤちゃんとも会いたかった

 

ピアッシングネイルの上に五年前に貰った手作りのお守りが輝いてる…これのお陰かわからないけど怪我に逢うようなことが無くなった

 

でもいままで私がやって来たことの報いなのだろう。最高評議会の脳ミソを始末しレジアスの息の根を止めた直後、現れた騎士ゼストの槍を受け命もあと僅か

 

死にたく…な…い…

 

 

ま…だ…生き…たい…

 

生きて妹達……と…タカヤちゃ…ん…に…

 

―…ヤヤイスウナク、ワチチガネマエヲチスクツハグル(かわいそうな子、私がお前を助けてあげる)―

 

不思議と安らぐ慈愛に満ちた声を耳にし私は意識を失った

 

 

それから数分後、シグナムから連絡を受け現場に入った局員が見たのは机にうつ伏せになり息絶えたレジアスと少し離れた床に真っ黒な木の枝と葉が血だまりを囲むように辺りに散乱していたが黒い文字が立ち上ぼり跡形もなく消え去った

 

 

―――――――――

――――――――

 

あたたかい、柔らかな温もりに包まれながらまどろんでいた…でも何か声が聞こえる

 

―クヌクハワチシナイ!ワチシガムムルイテスイムスムメズムシテナルヌヌカ!!(この子は渡さない!私の愛しい娘が目覚めるのはまだ早い!!)―

 

『それを決めんのは魔界樹、アンタじゃない!!その人自身が決めることだ!!』

 

 

―ヤマレ!(黙れ!)ノマエニハワチシツヌルムムカ!!(お前に渡してなるものか)―

 

 

鈍い衝撃が私がいる場所に響く。私自身が決めること、私は何がしたかったんだろう…私は

 

 

『目をさましてくれ!!今、あなたの妹たちがいる世界が大変なことになりかけてるんだ!!』

 

 

…妹?…そうだ私は妹たちがいて…妹たちにあいたかったんだ…

 

『グアッ!魔界樹!その人を解放してくれ!!』

 

 

必死に私に呼び掛ける声…私はまどろみから抜け目を開ける。赤い鎧を纏った騎士が赤く輝く騎馬に跨がり木の根っこ?を切り払い駆けながらその距離を詰めていく

 

 

「う、うう…」

 

 

―ツヌツヌガ!(近寄るな!)―

 

 

『いい加減にしろよ!魔界樹!アリアおばさんはあんたの娘じゃない!!はあっ!!』

 

赤く輝く騎馬が大きく前足を地面へ降ろす。同時に衝撃波が起こると手に持つ双剣が巨大な片刃剣へ変化し襲いかかる木の根を切り払うと高く跳躍、大きく上段に剣を構え魔界樹の固く頑丈な樹皮を削り切り裂かれ断末魔をあげる中、、木の根や葉に包まれたくすんだ金髪に穏やかな寝顔を浮かべる女性に赤い鎧の騎士が近づき、寸前で鎧が光と共に消え失せ少年が抱き抱えた

 

「ま、まじかよ…何で魔界樹に取り込まれてんのさ?」

 

《クロウ、魔界樹が消えかかってる。早くでないと空間が消えるぞ?》

 

 

「わあってるよ…はあ、起きたらなんて説明しょうか」

 

《正直に話した方がいいぜ?》

 

 

「うう~」

 

大きくため息をつきながら女性を抱き抱えながら現実世界へ続くゲートを抜けるクロウ、だが女性にすでに意識が戻っていることにまだ気づいていなかった

 

 

続きは帰郷のおまけにて

 

 

 

特別編 タカヤ君(四歳)の大冒険!+α

 

 

最後に様々な要望書いてくれたジャマールさん、このお話のプロットを提供していただいたオニキスさん、アンケートに協力していただいたユーザーの皆様ありがとうございました!

 





「こうして、タカヤ様は立派にお買い物を終えて帰ってきました…あのノーヴェ様、ヴィヴィオ様、アインハルト様、どうかなされましたか?」


「い、いや何でもない(…タカヤって小さい頃からかわいかったんだな……でもメイが最大の敵だな…どうすりゃいい!アタシ!?)」


「ええ、何でもないですよ(タカヤさんのお母様が最大の壁になりそうです…)」


「は、はい、何でもないですよ(…い、今のうちにタカヤさんのお母様と)」


何でもないといいながらも心のうちで色々考える三人、果たしてタカヤを射止める戦いを制するのは誰か…それは神のみぞ知る。


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