魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)



第十七話 獅子(改)

「すごいこれ全部なのはさんが作ったんですか」

 

「ううん、これは全部タカヤ君が作ってくれたんだ」

 

「ア、アキツキ先輩がですか!?」

 

「『みんなが頑張ったごほうびに僕が作ります』って言ってたからね♪」

 

今日の選考会でみんなは最高のスタートを切った…で今は高町さ……なのはさんの家で軽いお祝いをやってるみんなの驚く声を耳にしながらキッチンではタカヤが丁寧にフルーツを盛り付けていく

 

《タカヤは参加しないのか?》

 

「これが出来たらいこうかな。…よし出来た!」

 

 

《なあ、さすがにこれは懲りすぎじゃないか?》

 

 

「え?そうかな…今日はお祝いだし」

 

 

生クリームで包まれたスポンジの上に季節の彩り様々なフルーツがデコレートされたフルーツケーキとブルーベリーソースをかけたチーズケーキを見て満足そうに頷くタカヤにため息をついた

 

(…全くこういうところはユウキそっくりだぜ)

 

「ヴィヴィオ、アインハルト、コロナ、リオ、追加のスイーツどうぞ」

 

「うわあああ~きれいです」

 

「食べるのが少しもったいない気がします」

 

「これ本当にアキツキ先輩が作ったんですか!?」

 

 

「すごく美味しいですこれ!」

 

「あ、慌てなくていいから!あとお土産用にも作ってあるからね」

 

 

「「「ほ、ほんとですか!」」」

 

「う、うん…」

 

目をキラキラ輝かせるアインハルト、リオ、コロナに少し驚きながら頷くとパアァッと笑顔になった

 

 

「ねえフェイトちゃん、やっぱりタカヤ君、アキツキ一尉の…ん?」

 

「あ、私が出るよ」

 

チャイムが鳴り玄関に出ると金髪に翡翠色の瞳に眼鏡をかけた青年を見て少し顔を赤くなるフェイト

 

「ユ、ユーノ?今日はどうしたの」

 

「うん、ヴィヴィオたちのインターミドル選考会の結果をロッサから聞いたんだ」

 

「そうなんだ。ユーノも上がっていかない?」

 

 

「え、でも…」

 

「むう~いいから上がる!!」

 

「あ、ひ、ひっぱらないでフェイト!?」

 

ずるずるとリビングに引きずられソファーに座らされた

 

「あ、ユーノさん♪」

 

「相変わらず元気だねヴィヴィオ……リオもコロナ…アインハルトさんに…君は?」

 

 

「あ、はじめまして僕はタカヤ・アキツキっていいます…えと何か僕の顔についてますか?」

 

 

「い、いや何でもないよ…僕はユーノ・スクライア。よろしくねタカヤ君」

 

 

不思議そうな顔をするタカヤに首を横に振るユーノ。だが最近無限書庫の未整理区画で発見した絵画《騎士と鉄腕》に描かれた人物とタカヤが似ていた事に驚いていた

 

(…解読できた文字にはオウガ…アキツキ…それにエレミア…ロッサが妙な事言ってたっけ)

 

 

第十七話 獅子(一)

 

 

数時間前、聖王教会

 

―やあユーノ、実は義姉さんが妙な予言をしてね―

 

―妙な予言?――ああ興味があるならあとでコレ見てくれるかな…じ、じゃ僕はここで―

 

 

―見つけましたよロッサ!今日は絶対に逃がしませんよ!!―

 

 

―そういうことだから……さらばだまた会おうシャッハ!!アデュー!!―

 

 

―待ちなさいロッサ!―

 

逃げるロッサを鬼気迫る顔で追いかけるシャッハを見ながら私室へ戻り渡されたデータ端末を開いた

 

―印刻まれし古の白金、蒼、白、紫紺の狼。火に身を焼かれ水が枯れはて尽き乙女たちの落涙、地を濡らす

 

黒き獣の王 六ノ門を超えるとき数多の地は闇に染まる

 

 

されど先より赤き狼、去りし時より鉤爪の乙女現れ蒼、白、紫紺の狼を印より解き放つ

 

白金の狼、強く想いし者の願いを背に翼と数多の光宿りし矢にて闇を永劫に彼方へ消し去らん

 

 

あまりにも不吉で難解な予言…度々でる白金、狼の言葉にユーノは四年前のJS事件と同じ…それ以上のナニかが迫ってることを感じてならない

 

「ユーノくん、久しぶり」

 

「久しぶり…って昨日会わなかったかな?」

 

「あはは、そうだね」

 

「………なのは、昨日ユーノと会ったってどういうことかな?」

 

 

ソファーにならんで座る二人の背後に人数分のフルーツケーキを皿にのせたニコニコ笑顔のフェイト、でも目が怖い

 

(なのは、抜け駆けはダメって言わなかったかな!)

 

(にゃはは、ごめんフェイトちゃん)

 

 

(な、なんかすごく居づらい!?)

 

 

「ヴィヴィオさん、お母様たちってまさか」

 

「はい、そのまさかなんです…」

 

ユーノをはさんで座るなのはとフェイトから何やらオーラが立ち上るのを見て怯えるアインハルトの前では……

 

「ユーノくん、あ~ん」

 

「あ、あ~ん」

 

「ひ、一人で食べれ…」

 

「「あ~~~ん」」

 

二人から切り分けられたケーキが乗るフォークを差し出され冷や汗を流すユーノ

 

「ふう~平和だねキリク」

 

(こ、コレのどこが平和なんだ?どう見たって修羅場だろうがあああああああ)

 

(……………………………………キリク、修羅場ってナニ?)

 

(こ、このド天然がああああああ!)

 

 

リビングから離れたキッチンで皆の分のフルーツケーキを疑問符を浮かべながらラッピングするタカヤにキリクの叫び声(思念通話)が響いた

 

 

――――――――

―――――――

 

クラナガン市内

 

 

「さてコレで全部揃ったな」

 

市内にあるスポーツ用品店タチバナから出る…不足しがちなモノを買い出しに来たんだけど今日はあたし一人だけじゃない

 

「すごいです、見たこともない機械が沢山ありますね…分解して良いですか」

 

 

「や、やめるのだレイジ殿!公共物分解はダメだ!?」

 

 

「ふむ、これがギンガ殿が使う《こぉひい豆》…良い香りだ」

 

「ジロウさん、まだ袋を開けないでください!空気に触れると味が落ちますから」

「む、すまないギンガ殿…………スゥ~」

 

 

「ウェンディ、俺の魔法衣を返せ!」

 

 

「ヤっすよ♪それよりアタシが選んだ服を着るッス!そんな服じゃ目立ちすぎッスよ」

 

「…ゴルバ、俺の魔法衣はそんなに目立つのか?」

 

《ウェンディ・ナカジマ嬢の言う通りじゃ、それに今日の目的を忘れたわけではなかろう?》

 

 

「……く、わかった……着たら必ず返せウェンディ」

 

 

家に居候中のコイツらにこの世界についての説明と案内するためギンガ姉とチンク姉、ウェンディがついてきてんだけど

 

レイジは街中にある端末を不思議な形をしたドライバーで分解するのをチンク姉が大慌てで止めて

 

ギンガ姉の通いつけの珈琲豆専門店《カフェ・マル・ダムール》で豆が挽き終わるまでの間に出されたコーヒを香りを嗅いですぐカッと目を見開いて飲み干していきなり『釣り入らない』っていきなり拳大の金塊をコートから出して慌てたり

 

 

ウェンディにコートをとられたソウマがまるで恋人みたいに追いかけっこしたり…まあ確かに今風の服じゃないし、それ以上にウェンディも妙に構いたがってるし

 

 

過去からタカヤを助けるために現れたって聞いてたから仕方ないって感じながら歩くあたしはショーウインドウの前で足がとまる

 

ガラスケースの中には純白の様々なフリルで飾られたウェディングドレス…なんかきれいだな

 

「なに見てるんッスかノーヴェ……コレってウェディングドレスッスよね。もしかして」

 

 

「ち、ちがう!あ、アタシは別にドレス着てみたいなんて思ってな…」

 

「あれ~あたしそんなこと聞いてないッスよ(笑)♪ウェディングドレス姿のノーヴェにタカヤン完璧に見惚れちゃうかもしれないッスよ」

 

 

見惚れる…ニコニコ笑うウェンディの口から出た言葉がぐるぐる頭を駆け巡る

 

もしウェディングドレス着たアタシを見たらタカヤは何て言うんだろ

 

一瞬、アタシの頭に顔を真っ赤にしたタカヤの顔が浮かぶ…まずい胸がすごくドキドキしてきた

 

 

「あ、ここ試着もできるみたいッスから今からタカヤンを呼ぶッス……あれタカヤンッスよね?」

 

 

端末を開き呼ぼうとしたウェンディの手が止まりあるほうへ目を向けてる方を見る、少し離れた場所で黒鉄色のコートを纏った見慣れたタカヤ?の歩く姿

 

今日はなのはさん家でヴィヴィオたちの護衛もかねて軽いお祝いするって聞いてたんだけど

 

もう終わって帰るところか?少し驚かしてやるか

 

ゆっくりとタカヤ?に近づき恥ずかしさを我慢してアタシはおもいっきり抱きついた

 

「つ、つ~かまえた」

 

「う、うわあ!?」

 

でも勢いが強すぎたせいか勢いよく地面に倒れこんだ

 

「イタタタ~何すんだよアン………ゲッ!?」

 

 

黒く長い髪にアホ毛がピンと立つタカヤより少し強気な目でアタシを見てなんか驚いてる…とりあえず謝っか

 

「だ、大丈夫か?どこも痛くないよな」

 

「だ、大丈夫だけど…さっきのは何なんだよ」

 

「その、アタシの知り合いに似てたからつい…でも本当にごめんな!」

 

「も、もういいからさ…俺そんなやわな鍛え方してないし…ほら」

 

ポリポリほほをかき平気だって感じで手をヒラヒラさせる。なぜかわかんないけどタカヤと同じ匂いを感じる

 

「な、なあこんなこと聞くの失礼だって思うんだけどさ…アタシとどこかで会わなかったか?」

 

 

「…会ってない……それよりみんな待たせてるみたいだから早く行った方がいいぜ…じゃあな」

 

 

「ま、待て…お前の名前は!?」

 

「……クロウ、クロウ・オーファン…」

 

そういうとアイツ、《クロウ・オーファン》はアタシの前から去っていったのを見ながらみんながいる場所へと歩いていった

 

…クロウからずっと昔から知ってるって感覚を感じながら

 

――――――――

―――――――

 

 

(まずい………に会っちまったあああ!?)

 

 

ビルの上で座る俺の頭に浮かぶのはさっきの出来事…幸い正体に気づかなかったみたいでよかったとしょう!

 

でも親父がいたらややこしくなってたかも知れねぇなあ

 

《クロウ、薬が切れかかってるぞ?早く秘薬を飲んだ方がいいぜ》

 

腕に嵌まった双頭の龍を象った腕輪型魔導身具ライバのキシキシと擦れるような音と声と同時に髪に変化が起きる

 

「やっべ!薬、薬…あった」

 

 

うっすらと赤みがかるのを見て慌てて魔法衣から《変容の秘薬》をとり一気にのみ干すと再び黒へ戻るのを見てため息をつくとそのままビルからビルへと飛びながらやがて姿が見えなくなった

 

 

―――――――

――――――

 

 

「フヒ!フヒヒヒヒ…殺したいなああ」

 

足元に転がる缶をおもいっきり蹴るも壁に乾いた音を響かせカラカラと落ちるのを見てさらに苛立ちを募らせながらシートがかけられたナニかに近づき一気に引き剥がす

 

赤く塗られたバイク…ホイールやマフラーにはまだら模様に黒いナニかが付着している

 

このバイクは猟奇的殺人愛好者が愛用していたモノ…それを手に入れた日から普通の人であった彼は狂ってしまった

 

暗闇に紛れては人を引き殺しタイヤ越しに骨と肉が潰れる感覚に絶頂に近い快感を覚えた

 

最初は老人、次は成人女性…引き殺す度に心は悦びに震えたが最も快感を覚えたのは子供を引き殺したときだ

特に夢に向かってひたすら前に進む子供から夢と命を奪う度に昂り快感が堪らなかった

 

今の時期はインターミドル…瑞々しい柔らかい肉が、骨が潰れる感覚を思い浮かべたとき声が響く

 

 

―ヒチヲヒキツキリヌイク?

 

頭に響く声は人語ですらなかったが意味はわかってしまった彼はうんうんうなずく

 

―ヤヤバオリヌクイヤクスリ、シシルバクリシフウダイダ…ホクニキイツリハシイクウダセ!―

 

脳裏にイメージが流れ見えたのは金髪と碧銀のオッドアイの少女二人…コイツらを引き殺したらもっと気持ちいいだろう

 

―ヤニスル、クイヤニスリカ?―

 

 

「あひひ、こんなガキ殺せるなら契約してやるぜ…」

 

―アイズ、クイヤニスルヌ!!―

 

 

「アアアアアアアアアアアアアア!?」

 

声が響いた瞬間バイクから無数の魔界文字が溢れ彼の体に突き刺さるように吸い込まれ悦びに満ちた叫び声が暗い路地裏に響き渡ると彼はバイクに乗り夜に染まる街へ走り出し姿が見えなくなると風が舞い全身フードに覆い隠された人物が現れた

 

「ふふふ、上級ホラー《リィオウ》よ、オウガの称号受け継ぐ者の命と記憶を削り尽くせ……私は邪魔者の相手をしょう」

 

そう呟き闇よりも黒く輝くデスメタルに包まれた右腕を軽く振るうと黒い花びらが包みながら風が起こる、やがて治まると姿は消えてなくなっていた

 

―――――――――

―――――――

 

 

「ギンガさん、すまないが少し別行動をとっていいか?」

 

 

「あ、僕もいいですか?」

 

「…ウェンディ、すまないが魔法衣を返してくれ…今の俺には必要なんだ」

 

 

「で、でもジロウさん達はまだ此所に慣れてないんじゃ」

 

「そうだ、レイジ殿は機械を見ると分解したがるから放ってはおけない」

 

「ソウマっちはすぐ喧嘩腰になるから心配っす!」

 

ギンガ、チンク、ウェンディから言われるが三人は首を横に降らなかった

 

「大丈夫だ、必ずギンガさんの家に我々は戻る」

 

 

「はい、だから信じてくださいチンクさん」

 

 

「………………俺もだ、ウェンディ…」

 

三人の目を見てしばらくしてため息をつくと、時間までに必ず変えるようにと強く念押しされギンガ、チンク、ウェンディは先に家へ戻るのを見届け三人は人気がない場所へと歩いていき立ち止まった

 

 

「いい加減出てきたらどうだ!」

 

「ふふふ、さすがは古の魔戒騎士…打無、狼怒、刃狼だ、今日はお前たちに」

 

声が響く渡り三人は背後を振り返る、全身フードに覆い隠された人物がたたずんでいる。驚く三人を無視し黒く輝く手を振るう、辺りに花びらが舞うと同時に姿が消え魔戒剣、魔戒槍を身構え警戒する三人。だが黒いナニかが姿を顕し、胸に鈍い衝撃と焼き付くような痛みが襲い堪らず地面へうずくまった

 

「うう!」

 

「ぐ、ぐああ」

 

 

「うぐ!」

 

「刻印を与えに来た…………せいぜい残りわずかな命を過ごすがいい」

 

うずくまる三人を見下ろしながら再び歩き出しやがて黒い花びらが舞い、その場から完全に消え去り苦しみ悶える三人だけが残された

 

――――――――――

―――――――――

高町家

 

「リオ、コロナまた明日ね」

 

「うん、ヴィヴィオ、アインハルトさんまた明日」

 

「あ、待ってみんな。お土産」

タカヤさんが今日のお祝い会で作ったお菓子が入った丁寧にラッピングした箱をリオとコロナに手渡してます

 

少し前になんでそんなにお菓子作るのが上手いんですかって聞いたらタカヤさんのお菓子作りの腕はお父さんに教えてもらったって笑顔で答えてくれました。なのはママの実家「翠屋」に負けないぐらいにタカヤさんのお菓子はすごく美味しいんですよ

 

…でも最近タカヤさんの様子がおかしいんです。まるでわたしやアインハルトさん、ノーヴェと距離をおく的な感じがして

 

何かあったのかなタカヤさん

 

「ごめんね片付けまで手伝ってもらって」

 

 

「いえ、キッチンを使わせてもらったから当たり前ですよ…よしこれで終わり」

 

使ったボウルや器具を棚へ直しシンク回りを軽くふき終えなのはさんに後を任せてリビングに向かう。ソファーにはヴィヴィオとアインハルトが今度の練習に向けてどうするか会話してて、そのテーブルではティオがキリクに噛みついている

 

《や、やめろティオ!俺をかじるなああああああ!?》

 

「なあああああ~♪」

 

 

かじかじとかじられ叫ぶキリクをティオから救いだしかけた…あ、残念そうな目で僕をじっとティオが見てる

 

「あ、ごめんねティオ…そうだ」

 

魔法衣から猫じゃらしを取り出すと目を輝かせじゃれはじめる…なんかかわいいなティオ

 

(タカヤ、胸の痛みはどうだ?)

 

「にゃ、にゃ、にゃあああ!?」

 

(…大丈夫だよ…一応痛み止めと忘防の界符を張ってるし…)

 

「う、うにゃ!!」

 

 

狙いを定め猫じゃらしに飛びかかる…でも素早く動かしティオから逃げる

 

(…だがあくまで一時しのぎだぞ!それにあの嬢ちゃんたちには何時までも隠し通せねえぞ!!)

 

(…キリク、近いうちにアキツキ屋敷に戻ろうと思う…もしかしたら刻印を解く方法がオウルひいじい様の魔蔵庫にあるかもしれない)

 

(…そうだな…あとタカヤも身体の《浄化》をしないとな…)

 

刻印を打たれてからもトレーニングに付き合う合間を見計らって僕は魔導図書館で《破滅と忘却の刻印》について調べた…それに関する本は見つかったんだけど解く方法が記されたページが紛失していた

 

正確に言えばごく最近誰かが『魔導図書館』に入りその記述が書かれたページを破り持ち去っていた

 

でも『魔導図書館』には厳重な結界が幾重にも展開してるため魔戒騎士、魔戒法師、魔戒導師、そしてアキツキ家の血を引くもの、許しを与えられた人間にしか入ることができない

 

今アキツキの血を引くのは僕と母さんの二人しかいない

 

許可を与えた人間は過去にほんの一握りしかいないしもう存命していない(最近別作品のキャラにメイが通行許可証をあげたのをタカヤは知らない)

 

 

いったい誰が…

 

「にゃ!!」

 

「うわあ!?」

 

「え?」

 

「きゃ!」

 

考え込んでた僕の背後からティオが手に握られた猫じゃらしを見事にキャッチ…うでがぐいっと引かれそのまま隣にいるアインハルトとヴィヴィオに倒れてしまった

 

 

「イタタタ、ご、ごめんヴィヴィオ、アインハルト大丈……」

 

 

「…ん…そんなに握らないで」

 

 

「…そんなに強くされると痛いです」

 

二人の声でハッとなると同時に手に柔らかい感覚…目を向けると手が二人のささやかだけど柔らかい胸を鷲掴みにしてる

 

「うわあああ!?ご、ごめん!?」

 

 

あわてて二人から離れるタカヤを見たユーノは

 

「あはは、なんかデジャブって感じがするね」

 

 

「ユーノ君、今度のお休みいつかな?」

 

「今度のヴィヴィオ達の試合に見に行かない?」

 

 

「来週…うん、空いてるよ」

 

「じゃ決まりだね♪」

 

「うん」

 

二人からのお誘いを受け困惑しながら頷くユーノ、こっちもいい感じになっていたのだった

 

――――――――――

―――――――

 

 

「では私はこれで」

 

「またねアインハルトちゃん」

 

「また遊びに来てね」

 

「は、はい」

 

「じゃあ僕もそろそろ」

 

「あ、わたしも見送りにいっていいですか」

 

 

「え?べ、別にいいけど…何で?」

 

 

夜になりアインハルトを家へ送ろうとするタカヤに着いていくと言うヴィヴィオに聞いてみる

 

「え、それはまだ話したいことがあって…それに今度の練習のメニューを」

 

 

「……うん、いいよアインハルトもいいかな?」

 

 

「私は別にかまいませんけど…ではいきましょうか」

「え?ちょ、ちょっと二人とも引きずらないで!?」

 

少し間を明けそういうとアインハルトとヴィヴィオに挟まれながら腕を組まれ歩いていく

 

「じ、じゃあ僕もそろそろ……って?なのは、フェイトはなしてくれないかな?」

 

「もう少しだけお話ししたいんだけどいいかな?」

 

 

「うん、ダメかな……?」

 

「う?す、少しだけならいいよ」

 

涙目プラス上目使いの二人を前にし頷きそのままリビングに引きずられるように歩いていくユーノから微かに鈴みたいな音を響かせていたことに二人は気づかなかった

 

―――――――

―――――

 

クラナガン中央区

 

 

「え?家に戻るんですか!?」

 

「う、うん、でも戻るっていっても二、三日ぐらいかな」

 

「う、家にですか。あ、あのお母様とは…」

 

「うん、この前仲直りしたんだ……あ、話それちゃったね。今度の特訓メニューに僕も参加するってノーヴェさんに言わなきゃ…ってヴィヴィオ、アインハルト!?」

 

 

「よかった、タカヤさんとメイさんが仲直りができてよかったです…」

 

「本当によかったです…お母様と仲直りできて」

 

少し涙目になるヴィヴィオとアインハルトをあわてて落ち着かせる…あの時母さんの魔導筆を握ってなかったら本当の気持ちをわからず仲直りなんてできなかった

 

それに魔戒騎士をやめようとした僕があの日、ヴィヴィオとアインハルトとノーヴェさん、エレミアさんに出会ってからかなって思う時があった

 

「うん、でも皆のお陰か……」

 

《…タカヤ!強い邪気…ホラーの気配だ!!》

 

キリクの叫びと魔法衣から剣斧を抜き二人を守るように立つ、同時に爆音を轟かせナニかが風を切りながら迫る

 

「くっ!」

 

剣斧で受けるが正面からの重い衝撃にたまらず声を漏らし辺りにソウルメタルの振動音が響かせながら力任せに火花を散らせながら振り抜くとナニかが壁にけたましい音と共にぶっかる

 

「はあっ、はあっ…キリク、今のは?」

 

《気を付けろタカヤ!コイツは上級ホラー『リィオウ』猟奇的殺人者が愛用したバイクをゲートに出現したようだ》

 

僕は魔法衣から複数の界符と水が入った小瓶数本をとり素早くアインハルトとヴィヴィオの回りに陣を描きながら魔導筆でサッと界符を撫でる

 

同時に、二人の回りに結界が生まれ魔導文字が浮かび上がり包み込んだ

 

「アインハルト、ヴィヴィオ、そこでじっとしていて!」

 

 

「「は、はい」」

 

 

二人に背を向けるとゆっくり剣斧を抜き構える

 

 

『ヤッヤクリヌハ!オウガ!!』

 

雲の切れ目からの月明かりに照らされバイクと獅子が一体化したような体躯を持つホラーリィオウが姿を表す

 

 

「フツリニハチニダスニイナイ(二人には手を出させない)…」

 

『ヨウヌカヌ(どうかな?)』

 

僅かに体を揺らした瞬間姿が消え背後からなにかが砕ける音が響く

 

「え?」

 

 

「きゃあ!」

 

 

振り返るとアインハルトとヴィヴィオがリィオウの手に捕まれてる姿…あの上級ホラーでも破壊するのが困難な結界を破壊したの!?

 

『クキキ…フウヌルヌチヒイククイクヌク(王の血を引く二人をもらっていく)!!』

 

「待て!」

 

「タカヤさん!」

 

そのままリィオウは身体、下半身をバイク?に変え夜の街を疾走していくのを見てタカヤは駆け出す。だがバイクとの差が広がっていく

 

 

「す、すいませんこれ借りていきます!!」

 

「あ、ちょっと待て!」

 

道端に停車していた白いカラーのSUZUKIのKATANAに跨がりエンジン全開にし男が叫ぶのを無視しホラーリィオウを追いかける

 

 

「あんにゃろ~人の前でバイクを堂々盗んでいくとはな」

 

「どうしたんだ滝さん?」

「ああ、今さっきお前のバイクがガキんちょに盗まれたんだ…どうした村雨」

 

「これが代金かもな…」

 

「ん?………て、これダイヤの原石じゃねぇかよ!!…あのガキいったい何モンだ」

 

 

足元にあった袋からは拳大のダイヤの原石を見ながらパンチパーマに長身の男とドクロが描かれたヘルメットを片手に持った男は呟いていた

 

――――――――

―――――――

 

《お、おいタカヤあんまり飛ばすな!》

 

「そうも言ってられないよキリク!あのホラーからアインハルトとヴィヴィオを取り返さなきゃ!!」

 

 

風を切りながらアクセルを強く回し借り物のバイクでリィオウに追いすがるタカヤ…だがキリクはあることに気づいた

 

《な、なあタカヤ…お前バイクの免許持ってるのか?》

 

「…………キリク、免許って何?」

 

《……む、無免許じゃないかあああああああああ!?》

 

「み、見えた!飛ばすよ!!」

 

キリクの叫び声を無視しアクセルを絞り先行するホラーリィオウにあと僅かと迫るがその体躯に変化が起こる、背中が盛り上がり巨大な獅子の腕が生え殴りかかってきた

 

「うわっ!」

 

ハンドルを操作し右へ、左へかわすも攻撃の手は緩まず徐々に距離が開いていく…タカヤは剣斧を抜き放ちその拳を受け流しながら鎧召喚を行おうと真円を正面素早く描いたが

 

「グアッ!」

 

 

 

胸に激しい熱さを伴った痛みに思わずハンドルを切り損なうが必死に立て直しなんとか斬り祓う(う、うっ、くうううう!!)

痛みに耐えながら追走するタカヤ…だが痛みがさらに激しさをましさらに頭痛が襲い集中が途切れそうになる

 

『ホヘシタマクイクス?フフノマヌダクフウノイヌチハニイゼ(どうした魔戒騎士、このままだと王の血を引くものの命はないぞ)!!』

 

「く、くうおおおお!」

 

痛みにこらえ再び真円を描き光が腕を包むと同時にタカヤは鎧を腕部分に装着し剣斧オウガを構え再び繰り出された巨大な腕を切り払いながら近づく

 

「ヴィヴィオとアインハルトを返せ!」

 

『ヤ~ヤネ!(や~だね)』

 

攻撃を繰り出しながらさらにスピードをます二人…だが再び激しい痛みに襲われ剣斧を振るう腕が鈍り捌ききれずタカヤの身体をとらえる

 

(く、間に合わない)

 

 

痛みで思考がままならないタカヤに襲いかかろうとした瞬間何かがよぎり火花を散らす

 

「え!?」

 

「しっかりしろ!あんたそれでも魔戒騎士かよ!!」

 

魔戒双剣《赤煌牙》で防ぎながら叫ぶ黒鉄色の魔法衣に黒く長い髪を振り乱しながら守るように走るバイクの上に立つ少年の姿に驚くタカヤ

 

「き、君は?」

 

 

「んなことはどうでもいい!今はあの二人を助けることが先だ!!」

 

そう言い切りバイクを走らせる少年、タカヤも体勢を直し走らせながらある事に気づく

 

この先は市街地、このまま行ったらホラーの存在が知られ混乱を招く…位相結界を張るにも時間があまりない

 

《不味いぞタカヤ!市街地に出るぞ》

 

《クロウ、どうする!》

 

 

キリクとライバの悲鳴にも似た声が響いたとき辺りが異様な空間に包まれホラーリィオウとタカヤ、クロウが残された

 

「こ、これって魔導八卦結界陣!?」

 

《しかもこんな大規模結界を展開できるのは魔戒法師と魔戒導師だけだ…まさかメイか?》

 

(母さん、ありがとう)

 

心のなかで礼を言うタカヤ…ただ一人クロウだけは浮かない顔をする

 

(こ、この魔導八卦結界…まさか『あの人』だあああ!)

 

――――――――

―――――――

 

 

「ふう、なんとか間に合った…」

 

右手に魔導筆、左手に複数の界符を構え大規模結界を展開させるのは金髪に翡翠色の瞳に眼鏡をかけ魔導衣を纏った青年…《魔戒導師》ユーノ・スクライアは額に汗を流しながら

 

「でも、なのはたちに何て言おうかな…」

 

これが終わったらなんて説明するかを考えながら結界維持に勤めていた

 

―――――

 

『オヌレマキイデウシ!』

 

「あんた、まだうごけるか?」

 

「え、うん…いきなりで悪いんだけど協力してくれるかな?」

 

「別にいいぜ…んじゃま王様二人を助けにいくか」

 

アクセルを鳴らしバイクを加速疾走させる二人に対しリィオウは腕をスッと向けると肘から下が分離し凄まじい加速と共に打ち出された

 

「く、ハアアアア!」

 

ハンドルから手を離しすれ違い様にタカヤは横凪ぎ一閃、クロウは素早く切り払うと同時に衝撃波を起こし向かってきた拳の軌道を逸らし切り落としていく

 

 

『や、ヤヌ!ヌヌゼクヌクヅムヲタスクヨウトスル(な、何!なぜこのガキを助けようとする)!』

 

「アインハルトとヴィヴィオは夢へ向かって進もうとしている!一歩ずつ、確実に進む二人の邪魔はさせない!!」

 

ホラーリィオウの攻撃をかわしながら叫ぶタカヤ、やがて大きく開けた広場に出るとリィオウを囲むように回りを走るがリィオウの口から信じられない言葉を耳にした

 

 

『ノマエシルヌイヌキ、クヌフタリ…スイオウハクリーンナヌダズ(お前知らないのか?この娘は聖王の複製品…人造魔導師、クローンだ!)!』

 

「!」

 

タカヤはリィオウの肩部に拘束されたヴィヴィオを見ると顔を反らしうつむかせてる

 

『シヌンマエヌヒクブヌネクギノツヌツミニウミダサリヌンタクリーンナヌダズ(四年前にゆりかごの鍵の為だけに産み出されたクローンなんだよ)!』

 

 

「く!」

 

上半身を回転させながらタカヤとクロウが乗るバイクに殴りかかり寸前でバイクから飛び降りそのまま頭をとらえ斬りかかるも頑強な腕で受けられ辺りにソウルメタルの振動音が桁ましく響く中、タカヤの目に鎖に縛られたヴィヴィオの姿…その目から知られたくなかったといわんばかりに涙が一筋落ちる

 

『ユヤリ、シングンジャニインダヨ!イネツグルヌナイユツトフヤコグッコステンダヨ!!トツチミツイヌクンクイヌンダム!!クイツガシンダッチクヌシムユツフイヌンダヨオオオ!!(つまりコイツは人間じゃねえんだよ!血の繋がらない親娘なんだよ!!ペットみたいな関係なんだだよおお!!クローンが死んだって悲しむ奴なんていない、だから喰っちまっていいだよおおお!!)』

 

「………違う!!」

 

 

ホラーリィオウの言葉を耳にしながらタカヤは静かに凄まじいまでの怒りを込め叫ぶ…

 

 

「…例え生まれかたがどんなに違っても!」

 

 

『ギカアアアア!?』

 

 

魔戒斧に切り替え力任せに顔面を斬りさらに柄の部分で顎を殴り付け無防備状態になるリィオウ

 

「なのはさんとの血の繋がりがなくても!」

 

すかさずクロウがアインハルト、タカヤがヴィヴィオの体に絡まり拘束していた鎖を斬り払い魔導文字が立ち上る中、抱き抱え地上に降りる

 

 

「…ヴィヴィオがなのはさんと一緒に歩んだ日々は、築き上げてきたたくさんの思い出、いや互いを強く想う『気持ち』は本当の『親娘』と変わりはしない!死んでいい人間なんていない!!」

 

「た、タカヤさん…」

 

 

胸と頭が激しく痛むのを耐えながら優しく涙目になるヴィヴィオを下ろし駆け出すと同時に素早く真円を描き光に包まれる

 

『…生まれかたが違う、血が繋がらないと言う理由で命を…ヴィヴィオとアインハルトの未来を奪おうとするお前の歪んだ陰我を断ち斬る!!』

 

 

『ヤ、ヤッチミルロロロロ!!』

 

99.9秒の魔導刻が刻まれるのを感じながら地を蹴り身体を捻り回し蹴り、さらに連続キックを顔面に決めながら胴を袈裟斬りに切り払うが背中からは生やした骸骨と化した獅子の顔から無数の刃を生やした鎖を打ち出すもビル壁を砕いていくがすべてかわされ弾かれ、切り落とされた鎖が壁へ刺さると溶け落ちていく

 

《気を付けろ!奴の鎖はソウルメタル以外の金属や物体を溶かす性質みたいだ!(おかしいぜ、過去のリィオウにこんな能力はなかったはず……こんな事が出来んのは…まさか!!)》

 

 

「…ここでおとなしくしろよ!」

 

 

「は、はい」

 

 

双剣を交互に構え素早く左右に真円を描くと光が左右から溢れ包まれ顕れたのは金の瞳が輝かせる赤い狼を模した仮面に両肩から腕が隠れるほど伸びた黒字に金の魔導文字が描かれた鎧旗が目立つ騎士

 

赤煌騎士九狼(クロウ)が魔戒双剣《赤煌牙》を構え駆け出す

 

『ハアアア!』

 

 

『え?君も魔戒騎士なの!?』

 

 

『まあな、さてさっさと倒すぞ…』

 

《白金》と《赤》の狼…オウガとクロウが互いに剣をリィオウに構え走りだし襲いかかる刃を生やした鎖をかわしていく

 

『ハアアアアアア!』

素早く掻い潜り抜け足?いや車輪を切り裂こうとするが素早く回避され巨大な腕がクロウを力一杯殴り飛ばすが寸前でタカヤが受け止めヨロヨロと肩をかりながら立ち上がる

 

『く、強いな…(これが若い頃の親父が戦っていた《死星ホラー》かよ…エルトリアに居た奴よりも強い!!)』

 

 

『思ったより身体が堅い……白煌!!』

 

大きく叫ぶと共に眩い光がタカヤを包み魔導馬『白煌』に騎乗、蹄を力強く鳴らし火花を散らせながら剣斧オウガをオウガ重剣斧へ姿を変え上段に構えた…だが再び激しい頭痛と胸の痛みが襲いかかる

 

(く、くううう!?)

 

 

思わず意識が遠退きかけるも必死に繋ぎ止めるが眼前に巨大な腕が轟音と共に二つ襲いかかりなんとか一つを切り払うが僅かに反応が遅れてしまう

 

『くっ!』

 

『来い!白竜弐式!!』

 

金属の乾いた音が鎧旗から響くと金属色の竜…白竜弐式が小さく鳴き身体がバラバラに分解し乗り捨て転がっていたSUZUKIのKATANAにカシャカシャと取りつき雄叫びと共に赤いメカニカルな馬へ姿を変え跨がるとリィオウとタカヤの間に割って入りその巨大な腕を赤煌双牙剣で防いだ

 

 

『しっかりしろ!』

 

目の前には赤いメカニカルな馬に乗るクロウの姿に驚くタカヤ。いきなり赤いメカニカルな馬が突然暴れ始め手綱を引き落ち着かせる

 

『お、落ち着け白竜弐式!(やっぱりまだ調整が必要だな…時間もあまりねぇし)…一気に決めるぞ!!』

『あ、う、うん!いくよ白煌!!』

 

同時に蹄を鳴らし走り出す白金と赤の魔導馬?は激しく動き回りながらリィオウの攻撃をかわし撹乱。重剣斧で脚を、双剣を組み合わせた《赤煌双牙剣》で的確にダメージを与えていく

 

《タカヤ/クロウ!あと二十秒しかないぞ!!》

 

 

『『わかった!/おう!』』

 

リィオウの正面をとり駆け抜けながら蹄の音が徐々に地の底から響く音へ変わりタカヤの持つオウガ重剣斧が《大オウガ重剣斧(重斧)》、クロウの赤煌双牙が分厚く幅広の超重量の双剣《大赤煌双牙剣》へ姿を変えリィオウの周囲を回りながら厚く堅い外郭をバターのように切り裂きたまらず雄叫びをあげるリィオウの目に二つに輝く月が写る

 

『ハアアアアアアアアア!(く、くうあああああ!?)』

 

 

その一つに影が見え、やがて大きくなり白金の光が辺りを照らしながら、風斬り音と共に巨大な大オウガ重剣斧を構え、激しい胸の痛みに耐えながらリィオウの頭から胴を真っ二つ叩き割り雄叫びをあげ巨大な体躯が砂が崩れるように消滅しその場にバイクが残されるが魔導文字が立ち上ぼりやがて消え去った

 

『ハア、ハア…くッ!』

 

《タカヤ!鎧を返還しろ!!》

 

うなずくと同時に鎧が魔界に返還され胸を押さえながら膝をつく

 

「あ、あんた、大丈夫か!!」

 

「う、うん…ありがとう…ヴィヴィオとアインハルトは?」

 

 

「あ、ああ二人なら大丈夫だ(…親父……)」

 

 

「た、タカヤさん…」

 

「ヴィヴィオ?」

 

 

「…聞きましたよね…わたしが《聖王のクローン》だって…」

 

「…ヴィヴィオ……」

 

「…いやで…え?」

 

「違うよ、リオやコロナ、アインハルト、なのはさん、フェイトさんと笑って、喧嘩したり、遊んだり、インターミドルに向かってひたすらまっすぐに頑張って練習するヴィヴィオは今を生き未来を目指す普通の女の子だよ…誰がなんて言おうとね」

 

 

「…………!」

 

「うわ?ヴィヴィオ?」

 

「少しだけ、少しだけこうさせてください……」

 

 

「う、うん…」

 

 

少しの間タカヤの胸に抱きつくヴィヴィオ…その姿を見ていたクロウは静かにその場をあとにしビルからビルへ飛び移動しながらながら

 

(親父……なぜこの時代に送ったか少しだけわかったよ…俺に足りないナニかがあるんだな…なら俺はソレを知る必要があるな)

 

そう心のなかで呟き夜の静寂へと消え去った

 

 

―――――――

――――――

 

「あ、あの~アインハルト、それにヴィヴィオ…何で腕組んでるのかな?(む、胸が当たってる!?)」

「別になんでもないです」

 

「そ、そうですよ」

 

 

あれから魔導八卦結界陣が消えるまで抱きついていたヴィヴィオがようやく落ち着いたんだけど「まだ怖い」からって理由で腕を組ながらアインハルトの家へ向かっている

 

なぜかわからないけどアインハルトも腕組んでるし…胸が当たって鼻血が出そうになるのを必死に押さえようやくアインハルトの家にたどり着き入るのを確認しながら周囲に貼った界符の効果を確認しそのままヴィヴィオを送るため歩き出した

「あ、あのタカヤさん」

 

 

「どうしたのヴィヴィオ?」

 

「…タカヤさん最近なにか隠し事してませんか?」

 

 

おもわずドキッとなった…キリクの言う通り気づかれちゃったかな

 

でも僕は…この胸に刻まれた『破滅と忘却の刻印』の事を黙っていないといけない

 

鎧を召喚する度に僕の《命》と《記憶》が喪われていくのを知ったらヴィヴィオは悲しむから

 

さっきの戦いで失われた記憶は《ヴィヴィオ》、《アインハルト》の名前…名字で呼ぼうとした僕に慌ててキリクが教えてくれたからなんとかごまかしたと思った

 

「な、なにも隠し事はしてないよ?」

 

 

「…ほんとにですか?」

 

「うん…ホントに」

 

 

「ならいいです、そのかわり今度タカヤさんの実家に行っていいですか?」

 

「え?なんで?」

 

 

「タカヤさんがどんな場所で生まれて育ったのか見てみたいんです…ダメですか?」

 

「…う~ん…いいよ」

 

「いいんですか!」

 

「ついでにアインハルトとノーヴェさん達も一緒に誘って…グハッ!?」

 

すさまじい一撃が鳩尾に入り堪らず地面に膝をつく…な、なにかやったの僕?

 

 

「そういうと思いました…でも楽しみにしてますね♪じゃおやすみなさいタカヤさん」

 

不機嫌オーラから明るいオーラに変わり笑顔で玄関に入るのを見届け歩き出した…でも激しい胸の痛みに襲われなんとか人通りの少ない路地に入り胸を押さえうずくまる

 

「ううう、くううう」

 

 

《タカヤ!しっかりしろ……ん誰だ!》

 

複数の気配を感じふらふら立ち上がると見慣れた三人…ジロウさん、レイジさん、ソウマさんが立っている

 

「タカヤ、しっかりしろ」

 

 

「まさかと思うけど…」

 

ソウマさんが無言で僕の胸のジッパーを開く、赤黒い羽を広げた魔導文字が広がり脈打つ姿に驚いている

 

「やはりか…」

 

「すいません、この事は皆には…」

 

 

「そう言いたいが…」

 

顔を見合わせたジロウさん達が胸元を大きく広げ見せたのは僕の刻まれた刻印とは違う黒い刻印…《破滅の刻印》が脈打ちながら見える

 

 

「そ、そんな…ジロウさん達まで破滅の刻印を!」

 

 

「僕たちもさっき刻まれたんだ…まさか『二回目』になるなんてね…」

 

 

少し乾いた笑みを浮かべながらレイジさんは呟いた

 

第十七話 獅子

 

 

 

 

 




キリク

破滅の刻印を刻まれ僅かな時しかないジロウ、レイジ、ソウマ、タカヤ…だが僅かな望みをかけタカヤは一年ぶりに実家へ戻るがノーヴェ達も着いてきた!

それにメイの様子がおかしいぜ


次回 帰郷!(一)


―『守りし者』、『守りし者を守る者』と帰郷せし時、新たな試練が訪れる!!―

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