魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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WHERE THERES LIGHT,SHADOWS LURED AND FEAR RAINS
(光あるところに漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた)




AND BY THE BLADE KNIGHTS,MANKIND WAS GIVEN HOPE.
(しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ)



幕間 眼鏡(加筆修正版)

《…メイのやつ、俺をこんな所に封印しゃがって……なあどう思う?…ってお前は継承者が現れねぇと眠ったままだったな…ああ退屈だぜぇ~》

 

台座に刺さった幅広の黒塗り鞘に収まった剣斧から目を離す。オウルが死んですぐにアイツの手でこんな狭い部屋に封印されちまって四年もいればため息つきたくなる

 

話し相手は剣斧オウガだけなんだが喋らねぇし、魔導身具の俺じゃ身動きできねぇし動けたとしても扉一杯に張られた界符が邪魔しちまう

 

……まあいい少し寝るか…

そう決め目を閉じしばらくしてウトウトとしながら俺はアイツと初めてあった日の事を思い出した

 

 

幕間 眼鏡(加筆修正版)

 

「アイツ等が人間界にいって百年…俺もついてけば良かったな…」

 

あくび?をしながら岩肌に座りながら辺りをみる、ここ《真魔界》は何にも無い…前は話し相手が二人、いや三人いたんだが……

 

 

『人間と共存できる可能性』

 

『人間ってどんなんだろう?』

 

『人間の生活とやらを見てみたいねぇ』

 

……って理由で長年の知り合いである俺をほんの少し居眠りしてる間に勝手に人間界にいきやがった

 

ったくよ…他の仲間《ホラー》は人間を餌だと言うけど…俺はそうは思えねえ…あああ~俺も人間界に行けば良かった!!

 

そう叫んだ俺の目の前に突然光が広がりやがった

 

「…ん、アレはまさか《ゲート》ついてるぜ!!」

 

突然開いたゲートに俺は迷わず通った…出口がどうなってるか知らずにな…

 

『な、何だこりゃあ……しかもアレはレギュレイス、人喰い野郎じゃねえか!!』

 

 

 

俺の目の前に広がっていたのは白夜が空に広がり、白い鎧を纏った騎士がレギュレイスと戦い、さらに騎士や炎人の中に信じられないモノを見ちまった

 

『…ホラーが騎士達と手を組んでるって…信じられねぇ…』

 

 

「おい、お前…」

 

振り返ると黒鉄色の魔法衣着た十代前半のガキが俺に変わった魔戒剣?を首筋に当ててやがる

 

「お前はレギュレイスの手先か?」

 

『ふざけんな!あの人喰い野郎と一緒にすんな!ガキ!!』

 

 

「…ガキじゃない、秋月煌牙(アキツキオウガ)だ…お前、名前は!」

 

 

『…名前なんかねぇよ!』

 

言葉と同時に互いを攻撃したかに見えたが実際は互いの背後に迫ったカラクリをガキ…煌牙は剣で頭蓋を割り、俺はその無機質な仮面を龍を模した爪で砕いた

 

「…じゃあこれが終わったらいい名前をお前につけてやる、ハアッ!」

 

『そおかい!!』

 

俺達は互いに背を合わせながらカラクリを殴り切り裂きながら一体、また一体と数を減らしていく

 

 

だが多勢に無勢だ…回りにいた騎士や炎人がまた一人、倒れていく中ふとガキの顔を見ると泣いてやがる…よくみるとコイツの耳についてる飾りは倒れた騎士と同じモノだ

 

魔戒騎士の訓練を終えた奴等は共に学んだ証として御守りを貰うと昔聞いたことがある

 

まさか倒れているのはガキの友か…コイツは泣きながらも剣を振るい続けてる。辛いはずなのになぜコイツは剣を振るうんだ?

 

「…少し離れてろ」

 

悲しみを振り払うかのように意志を込めた言葉に従い離れた直後、頭上に剣を構え真円を描いたガキは光に包まれやがて収まる

 

牙を剥いた狼の面、西洋の意匠を持ち鋼色の鎧を纏った騎士…色から判断して新しい系譜の魔戒騎士だとわかった

 

『……白夜の魔獣レギュレイスとその眷族…お前達の陰我!俺が断ち切るハアアア!!』

鋼色の狼がカラクリを切り裂き、穿ち…しかし無数のカラクリに囲まれた時ガキの剣が変形し柄の長い斧へと変わり回転し凪ぎ払いやがった

 

このガキ…秋月煌牙を面白い奴だと考えている内にいつの間にか守るように戦っている事に気付き笑いが込み上げた時

 

白い鎧を纏った騎士が弓を構えレギュレイスが居る天に向け光輝く矢を放つ

 

『―――――――――――――――!!』

 

言葉にも表すことができない断末魔をあげ封印される人喰い野郎《レギュレイス》と同時にカラクリの軍勢も消滅する

『…あの人喰い野郎、また甦るだと…』

 

『…やったのか…だがッ!』

 

鎧を返還した秋月煌牙はそのまま倒れそうになる…俺が寸前で受け止めた

 

『…白夜騎士か…』

 

 

光が降り注ぐ中、白夜騎士が鎧を返還し終えると白と赤の外套を纏った青年が此方へと歩いてきた

 

《久しぶりじゃな》

 

白夜騎士の腕輪…龍を模した部分が軋むと懐かしい声が聞こえてきやがった

 

「ゴルバ、このホラーを知ってるのか?」

 

 

《…昔からの知り合いじゃ…だが何故お主は此所に来たのだ?》

 

相変わらず爺くさいなと感じながら此所へ来た経緯を話す…聞き終えた時にはガキ、秋月煌牙も目をさまして俺を見ていた、爺…ゴルバが意外な提案をしてきた

 

《…お主、この若き騎士…秋月煌牙の魔導身具になる気はないかの?》

 

『俺に秋月煌牙の魔導身具になれだと…いいぜ!但しひとつ条件がある』

 

《条件じゃと?》

 

『俺は腕輪や指輪にはせず…そうだな秋月煌牙と同じ視線でこの世界を見る事ができる形にしてくれ』

 

 

《お主は相変わらずじゃな…どうする?》

 

 

「それを決めるのは秋月煌牙だ…魔戒騎士、法師としての才能は此所でも有名だからな…」

 

「俺は未熟だ…ゴルバ殿…ソウマ」

 

『おいおい、さつき迄の威勢はどうした秋月煌牙?』

「う、うるさい!」

 

光の雨が降り注ぐ中、白夜騎士、じいさん…ゴルバは俺を秋月煌牙に任せる事を決まるとオウガは笛を取り出し曲を奏で始めた

 

倒れ命を落とした騎士、炎人達の魂を弔う曲が辺りに響き渡ると光が天へと昇っていく

 

その光景に俺は知らず知らずの内に涙を流していた…僅かな時しか共に戦っていないのに関わらずに…

 

―――――――――――

―――――

――

 

《ふあああ~よく寝たぜ、これが俺の新しい身体か》

目を覚ますと俺は新しい身体…魔導身具になった事を実感する

 

「目を覚ましたか…不具合はないか?」

 

《ああ、むしろ調子がいいな…ところでこの魔導具はおまえが作ったのか?》

 

 

辺りを見ると壁には無数の魔戒剣が飾られ、その反対には数多くの秘薬、魔導筆が数多く置かれている

 

 

「俺は此所《閑垈》では有名らしい…そう言えばお前に名前をつけると言ってたな」

 

 

《カッコイイのを頼むぜ…》

 

作り終えた魔導筆を台におきしばらく考え口を開いた

 

「…お前の名は、キリクだ」

 

《キリク?》

 

 

「…旧魔界語で『絆を結ぶ』と言う意味だ…」

 

 

「秋月殿、元老院から召集が来ました」

 

 

 

「元老院から?何のようだ…キリク早速で悪いんだが」

 

 

《おう、よろしく頼むぜオウガ》

 

 

オウガは俺を目に掛け黒鉄色の外套を纏うと其のまま空間を切り裂き入り口を開くと中に入り元老院へとむかったんだが、まさか向かった先であんな指令を受けるとは思ってもいなかったぜ

 

―――――――――

――――

 

「此所とは異なる世界へ行き十三体のホラーと王を狩れですか?」

 

「…先のレギュレイスとの戦いで多くの騎士と炎人の命が失われた現在、貴方しか適任者がいません…」

 

「…わかりました、指令ありがたく受けさせていただきます」

 

「…待ちなさい…」

 

 

オウガは神官に軽く一礼しその場から去ろうとすると呼び止められた

 

 

「…何でしょうか…」

 

 

「…今この場には私しかいません…オウガ、貴方にばかり辛い事を押し付……」

 

「…母さん…俺は『守りし者』として人々を十三体のホラーと王から守り抜きます…だから泣かないでください」

 

 

「オウガ…例え世界は離れていても私は貴方を…」

 

其所にいたのは神官の仮面を脱ぎすて異世界へ赴く息子の未来を想う一人の母の泣く声が魔導火が照らす神殿内に響く

 

 

もちろん俺は二人の会話を聞くのは無粋だと知っているから眠っていたぜ…本当にな

 

―――――――――

―――――――

 

指令を受けて数ヵ月後、誰もいなくなった木造の小屋に一人たたずむ室内を見渡す

 

 

「此所ともお別れか…」

 

《なんだ寂しいのかオウガ?》

 

「ああ…」

 

ソウルメタルの軋ませる音を耳に聞きながら何も無くなりガランとした室内の真ん中にゆっくりと座り目を閉じる…元老院から指令を受け俺は十三体のホラーとその王―――を追い明日の夜旅立つ

 

 

此所とは異なる世界へ…正直不安もある…だが俺はこれから向かうその世界に住む人々をホラーから守らなければならない

 

 

指令だからと言うわけではない…二度とこの世界に戻れないと母である神官にも言われたが俺の決意は変わらない

 

 

『守りし者』として俺はその世界に向かうのだから…

 

そう思いを巡らしていると背後に気配を感じ剣斧に手を添え立ち上がり目を開けると意外な人物達が立ってる

 

「驚かせてすまないなオウガ」

 

「ジロウ、レイジ、何故此所に!?」

 

《皆で酒を酌み交わしに来たんだよ…》

 

 

《僕もいるよキリク》

 

 

《エルヴァ婆さんに、ウルバまで…》

 

 

「オウガ、今日は無礼講だ…美味い酒も用意してある…肴は…」

 

「俺が持ってきた…」

 

《オウガ、キリク、今宵は『陰我消滅の晩』…皆で飲み明かそうではないか》

 

「ソウマ、それにゴルバ殿まで…」

 

驚く俺の前に大きな酒瓶とツマミを持った白と赤、青、魔導衣を着た三人と魔導具達は粗末な木の円い台の上に、酒瓶とツマミをその近くに置くと其々の杯を取り酒を注ぎキンと杯を軽く鳴らし酒宴が始まる

「オウガ、昔を思い出すな…」

 

…ジロウが酒を注ぎ入れ一気に飲み干しフウッと息をつき語りかける…あの頃まだ騎士見習いだった俺達は互いに切磋琢磨し訓練に明け暮れながらホラーから人々を守る立派な魔戒騎士になる夢を持ち毎日を過ごしていた

 

泣いたり笑ったり挫けそうになっても互いに励まし合って晴れて魔戒騎士になった時は皆で喜んだ

 

「…あの頃はきつかったけど楽しかった…」

 

「ああ、でもあの時の面子は俺達だけになってしまったな…レイジ」

 

ダン…ソウマも酒を飲み干し呟くとレイジもうなずく…俺は新しい系譜の魔戒騎士として新たな鎧と魔導馬を授かりレギュレイスとの戦いに参加したが共に学んだ友の多くが死んでしまった

 

 

「…皆、いい奴だったな…」

 

死んでいった友は今でも俺達を見守っている…そう思いながら注がれた赤酒を勢い良く飲み干し空になったソウマの杯に注ぎ入れキンと軽い音を鳴らし再び飲み干す

 

《キリク~どうしても別世界に行っちゃうの~寂しいよ》

 

《昔からの知り合いが居なくなるのは寂しいの》

 

 

《まったくだねぇ~》

 

《俺もさウルバ、エルヴァ、ゴルバ…》

 

 

傍らでは魔導具達が台座の上で会話に花を咲かせている…キリクと雷鳴騎士破狼『四十万ジロウ』、閃光騎士狼怒(ロード)『布道レイジ』が持つ魔導具エルヴァ、ウルバとは古くからの知り合いだと聞いた時は驚いた

 

これも何かの縁なのだろうか?

 

 

レギュレイスとの戦前から三人の友、レイジに魔戒法師としての技術を、ジロウからは騎士としての剣を互いに競い合いながら鍛練を重ねやがて騎士、法師として実力は此所【閑垈(カンタイ)】では有名になった

 

 

実際キリクはレギュレイスとの戦いの後に俺がはじめて作った魔導具である意味?最高の出来だ…それにこの魔戒剣斧はレイジ、ジロウ、ソウマがが俺の戦い方に合わせ拵え錬金してくれたものだ

 

 

レギュレイスとの戦いの前までは魔戒斧と魔戒剣を両手に構え戦っていた俺にとって最高の贈り物だ

 

 

白夜騎士打無(ダン)『山刀ソウマ』からは――――――の扱いを付きっきりで指導してもらった。酒を飲みながらソウマ、レイジ、ジロウの顔を見て明日で別れると思うと辛い…

 

 

「オウガ、久し振りにアレ歌うか…」

 

 

「…そうだな」

 

 

「昔みたいに歌うか」

 

 

杯に残った赤酒を一気に飲み干しまだ魔戒騎士の訓練をしていた時に皆で歌ったのを口ずさんだ…この場には四人しか居ない筈なのに無数の声が聞こえてくる

 

《…オウガ、俺をかけてみろ》

 

キリクに言われた通り掛け辺りを見て驚いた…俺達の周りには死んだ筈の友が、仲間達が笑顔で歌っている

 

―オウガ、向こうに行っても風邪とか曳くんじゃねえぞ―

 

 

―お前は誤解されやすいからな~まあ解ってくれる奴が向こうにも必ずいるさ―

 

―いい女を見つけるんだよ…あたしみたいなね―

 

 

―どんなに遠くに離れていても僕たちはオウガの友達だ―

 

 

(あ、ああ…ありがとう皆…)

 

亡き友達の魂の声を聞き応え涙を流すオウガ…やがて歌い終わるといつのまにかに彼らは消えやがて四人とも酔いつぶれ雑魚寝した

 

今日は陰我消滅の日…魔戒騎士達にとってホラーが現れない日は家族とゆっくり過ごせる、だが三人と魔導具達は遥か彼方の異世界へ旅立つ友と最後の日を過ごす事を選んだ

 

―――――――――

――――――――

 

「…新しき系譜の魔戒騎士【秋月煌牙】、これから赴く世界をホラーとその王から守り抜くのです…ゲートを開きます」

 

 

高くそびえる古城、元老院最上階、夜空に満月が輝く空まで伸びた長い石畳の橋に俺は一人で立つ

 

その背後の壇上に白夜騎士、雷鳴騎士、閃光騎士が横一列に並び神官が厳かに告げると同時に目の前に魔導文字が幾何学的的模様を拡げ巨大なゲートが開かれた

 

 

「…行くぞキリク」

 

《ああ!》

 

 

魔戒剣斧を抜き放ち上段に天に向け構え真円を描く、光に包まれ現れるは牙を剥いた狼をあしらった兜に西洋の意匠を併せ持つ鋼色の鎧を纏った騎士が馬…魔導馬に乗り蹄を大きく踏み鳴らしゲートへ向け駆けていく

 

『ハアッ!』

 

 

蹄音が響き火花を散らしながら駆けるが蹄音が一つ、また一つ増えていく

 

不思議に思い隣を見ると白夜騎士、閃光騎士、雷鳴騎士、各々が魔導馬に乗り共に隣を駆けて行く

 

 

『オウガ、忘れるな』

 

 

『…どんなに離れていようとも』

 

 

『俺達の心は共にある!』

 

レイジ、ジロウ、ソウマの激励の言葉が俺の胸に響き渡り目頭が熱くなりながら手綱を握りさらに駆けゲートへと突入する寸前俺は叫んだ

 

 

『ジロウ、ソウマ、レイジ、さよならは言わない…またいつか、先の未来で会おう!』

 

 

それに応えるかの様に声が聞こえたのを背中で受け無数の魔導文字が走る白い空間内を駆け抜けて行く

 

生身でのゲート突破は不可能だが鎧を纏う事で可能になりさらに装着時間も無制限になる

 

 

どれだけの時が過ぎたのだろうか、ふと目を向けた先に大きな光が見え俺は手綱を強く握り締め魔導馬――を走らせる

 

《オウガ!出口だ…あと悪い知らせだホラーの気配を感じるぜ!!》

 

 

『…早速ホラーと遭遇か…急ぐぞキリク!!』

 

 

手綱を強く握りしめ更に勢いよく駆け出す。徐々に光は大きくなり俺達はその中へと突入した

 

 

――――――――――

―――

 

 

二つの月が夜空に輝きある城下町を照らし…まるでナニかから逃げるよう人々が逃げ惑っている。そのナニかから守るよう三人の男女が安全な場所へと誘導する姿が見えた

 

 

 

しかしそれを嘲笑うかのように樹木の太い根がまるで意思を持っているかのようにその行く手を阻む

 

「クラウス、ここもダメです!」

 

 

「オリヴィエ、イクス、まだ諦めるな!」

 

 

「でも…もう…エレミアは!」

 

「エレミアはいま逃げ遅れた人たちを安全な場所へ誘導している!あなたも早く」

 

 

クラウスと呼ばれた青年が拳を構え行く手を阻む樹の太い根を砕こう拳を振るうもとするも自身も傷つき拳を押さえる彼に向けどこからともなく声が響く

 

『ナカヤ、ラハタヤラカタニツイニ(諦めろ、貴様達人間は我らにおとなしく食われる。それが運命なのだ)』

 

 

この世界の言語ではない旧魔界語…その意味を解する者はいない

 

 

しかし三人はだいたいの意味をわかってしまうが闘志を奮い立たせ民達を守るように立ちはだかった時辺りが急に明るくなる

 

 

「クラウス!アレは!!」

 

空に白金色の淡い光が広がり無数の光に彩られた文字が激しい水流の様に溢れだしてくる

 

 

『~~~~~~~~!!』

 

馬の嘶く声と力強い蹄音が辺りに響き渡り光の中から鋼色の鎧を纏った騎士を載せ鋼色の馬が駆け地面に降り立つと同時に剣?を蜻蛉の型に構え馬?の腹を蹴り蹄音を響かせ私達の眼前を駆け抜けていく

 

『ハアアアアアアア!』

 

『ア、アカナ!ホゼマキイクスナナハホホナカリ!?(バ、馬鹿な!何故魔戒騎士が此所に居る!?)』

 

 

突然、空から光と共に現れた騎士?に驚き叫ぶ魔物が無数の鋭くとがった樹の根を勢いよく伸ばし全方位から攻撃するも剣で袈裟、逆袈裟で切り払い、刀身を楯にしながら間合いをつめていく姿に私達はある少女が告げた預言を思い出す

 

 

 

―彼方より来たりし魔獣と王、生けとし生ける者達を喰らい尽くした時、世界は闇に閉ざされる―

 

 

―同じ彼方より白く煌めく火を使いし鋼の狼顕れ、魔獣と王を狩り尽くしこの地に光をもたらさん―

 

まさか彼が鋼色の狼?見ると兜?は牙を剥いた狼の面、全ての根を切り払い終え剣を構えた瞬間全身から白く煌めく火が立ち上ぼり辺りを煌々と照らす

 

 

『貴様の歪んだ陰我!俺が断ち切る!!』

 

 

再び樹の根を使い攻撃を仕掛けるも炎を纏った剣で切り払われ魔獣の身体を大きく横に構えた剣で切り払い抜け蹄から火花を散らしながら反対側に踏みとどまり断末魔を挙げ消滅するのを見届けた彼の身体から光と共に甲冑?が空に舞い消えさると剣?を携え黒鉄色の外套を纏った少年が姿を現した

 

 

「まずは一体か…キリク他に気配は?」

 

 

《いや、全く感じないぜ…ん?》

 

 

 

「あ、あの貴方が『鋼の狼』ですか?」

 

 

「…鋼の狼?…お前は誰だ?」

 

 

「…私はオリヴィエ、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです」

 

 

「………秋月煌牙だ…」

 

 

この日俺とオウガはオリヴィエ嬢ちゃん達、後の聖王女、覇王、冥王、黒のエレミアとの出会いを境に永きに渡るホラーの戦いの日々が始まったんだ

 

 

この時代はあらゆる場所に《陰我》宿りしオブジェが多数あったが四人の理解者がいたお陰でエレメントの浄化と十三体の《死醒ホラー》と《死醒王》の封印に成功し平穏が戻った

 

オウガは数十年から百年単位で封印が解けることを予見し次の世代を育てる為、四人と別れた

 

思えばこれが最後の別れになるって知らずにな…その間血を引くもの達は様々な世界に召喚されたりしながら眠りから醒めた十三体の死醒ホラーと死醒王との壮絶な死闘を繰り広げた…八代目にあたるオウルは一番長生きでフロニャルドって世界に召喚され暴れていた魔獣を倒すんだが帰る時にその倒した魔獣…正確にいや浄化して狼の化身である元《土地神》プリムが着いてきていきなり逆プローポーズした日にはさすがに驚いたぜ

それからしばらくして娘が生まれ大きくなるまでさんざん『キリク、キリク』って遊び道具にされたときはうんざりしたが楽しかったなあ

 

一人の剣士と出会い結ばれしばらくしてメイが生まれた……

 

 

――――

――――――――

 

「変わったな…………!」

 

 

「…そこをどけオウルウウウウウ!」

 

「ワシは、お前を本当の……だと…本当の………だとも思ってた!もはや、もはや!お前を…………と二度と思わん!!」

 

 

互いに激しく剣を切り結ぶ老人とフード?を被る……、息を切らす間もなく繰り出される剣撃に辺りの空気、大地、木々が震えつばぜり合い反動を利用し後ろへ飛び構える姿…なんだこの記憶は!?

 

互いに剣を天に向け真円を描き光が降り現れたのは《白金》、闇よりも暗い《黒》の騎士

 

『はあああ!』

 

『があああああ!』

 

 

 

下段、上段、横凪ぎに火花を散らし切り払う黒の鎧騎士…だが僅かに見せた隙をつきすれ違い様にオウルの剣斧が深々と黒く輝く鎧を貫きそいつは声をあげずに息絶え地に倒れ伏した

 

 

「…すまんメイ…ワシは……を救えなかった……許してくれ…キリク…メイには……お前の記憶を…」

 

光と共にもとの姿に戻ったオウルが俺を手に取り魔導筆を向けた瞬間なにかが……消え…て…いく……

 

 

――――――――

―――――――

 

 

《な、なんだったんだ今のは…》

 

目をさました俺は先程の夢を思い出そうとするが薄靄がかかったように思い出せねえ。

 

《ん?》

 

剣斧オウガがナニかと共鳴してやがる、しかもオウルが使っていた頃と同じソウルメタルの振動音…薄暗い室内に響き乾いた音ともに無数に貼られた界符が弾けとんだと同時に扉が開き現れたのは黒く長い髪に魔法衣姿の小さいガキ、俺の横を通り抜け剣斧オウガと向き合った

 

「きみがぼくをよんだの?」

 

尋ねると嬉しそうに共鳴したのを見て手を伸ばしソウルメタルで出来た剣斧オウガを軽々と抜きやがった…まさか

 

《まさかこんなチビッコが剣斧オウガに選ばれたとはな》

 

「え?だ、だれかいるの」

 

《ここだ、こ・こ!!》

 

 

「め、眼鏡さんがしゃべった!?」

 

《眼鏡じゃねぇ!俺様の名はキリク様だ!!》

 

「きりく…さま?うんすごくかっこいいなまえだね…ねぇきりく」

 

 

《なんだチビッコ?》

 

 

黒塗りの鞘に収まった剣斧オウガを立てかけたチビッコはいきなり俺を持ち上げ笑顔でこういったんだ

 

 

「ぼくと『ともだち』になろうきりく♪」

 

 

《…………と、友達だと!?このキリク様とか!?》

 

「うん!あ、ぼくはあきつきたかや…よろしくねきりく」

 

 

この日、魔導身具でホラーである俺とタカヤは友達になった…

 

この日から《九代目白煌騎士》としてホラーから人を守るという長く辛い運命がはじまったんだ

 

 

幕間 眼鏡

 

 

 

新キャラ紹介

 

 

名無しの上級ホラー(後のキリク)

 

年齢 忘れた!

 

 

趣味 ねえな…だが魔導身具に錬金されてからは様々な世界の景色をみることだな

 

 

千年前、白夜の魔獣レギュレイスとの大戦時に開かれたゲートを通り現れた上級ホラー…ゲートを通り抜けた直後魔戒騎士になりたての秋月煌牙に斬られそうになるがレギュレイスとの繋がりを否定し襲い掛かったカラクリを撃破したことで共闘することに

 

レギュレイス封印後、ゴルバの薦めもありオウガの魔導身具になることを了承し『眼鏡型魔導身具キリク』へ錬金され歴代白煌騎士のパートナーとして魔界やホラーに関する膨大な知識を元にサポートすることになった

 

 

現在はかなり人間文化に染まりエロい発言が多いが友達のタカヤを常に心配している

 

 

なおキリクの本体は今でも真魔界にある奇岩石内に封印され何時でも戻ることができる

 

 

陰我消滅の日

 

 

二十年に一度ホラーが絶対に現れない日で魔戒騎士達にとって家族とゆっくり過ごせる日でもある

 

 

白夜の魔獣《レギュレイス》

 

白夜の結界を通じて現れる最強最悪の魔獣

 

仲間を増やす際はレギュレイスが産み出した仮面を素体ホラーに被せることでカラクリを増やし人間を食らっていく大食いのホラー

 

ホラーの始祖であるメシアとは別系統のホラーであり同族であるホラーからも恐れられていたが千年前に初代白夜騎士打無が放った《鷹燐の矢》で封印された

 

 

 

白夜の大戦

 

千年前、タカヤの先祖秋月煌牙、山刀ソウマ、四十万ジロウ、布道レイジ、若き魔戒騎士、魔戒法師、さらに人間と共存を考えるホラー達と共に白夜の魔獣レギュレイスとの壮絶な戦いを挑んだ。あまりの激しい戦いに生き残ったのは十数人にも満たなかった

 

 

元老院

 

南、北、東、西にある番犬所(正式名称ばんけんところ)と魔戒騎士、魔戒法師、魔戒導師を束ね管轄する

 

元老院には一流の魔戒騎士、魔戒法師、魔戒導師が招聘、所属し重要度の高い任務が与えられるがその反面、自身の実力を過大評価しプライドが高い者が多く、番犬所に所属しない魔戒騎士、魔戒法師を格下に見る者達もいる

 


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