魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》 作:オウガ・Ω
第一話 邂逅(改)
私は夢を、夢を見ています…
遥か古代ベルカ
聖王、覇王、冥王…長く続く乱世を終わらせたいと願いながら…三人の想いは同じ筈なのに…互いに戦うことしかできなかった時代
そんな時でした…遥か次元の彼方から魔獣ホラーが現れたのは
人の心の闇より生まれし魔獣『ホラー』
陰我宿りしオブジェをゲートにし人へ憑依し顕れるホラーになすすべもなく喰われる民達を、人々を守るため三人の王は手を取りました…でもホラーと戦うにはあまりにも無力でした
……誰もが諦めかけた時、遥か次元の壁を超え鋼色の騎馬に乗り現れた『希望』の名も無き魔戒騎士が私達の前に現れたんです。
―光あるところ漆黒の闇ありき
古の時代より人類は闇を恐れた
しかし
暗黒を断ち切る騎士の剣によって
人類は希望の光を得たのだ―
一条の希望、その者は無色の鎧を纏う名も無き魔戒騎士
その剣は空を裂き、時間をも斬り強大な力を持つホラーを葬り
ある時は、その身体を鋼色の鎧を纏い人々を守る盾となりました
でも魔獣の王の前には無力でした
三人の王も共に戦うもその圧倒的な力の前に鋼色の鎧は砕け血を流し倒れ伏した姿、皆の心がホラーの王に屈しようとした時…彼が、三人の王と民達いえ人々の想いを胸に秘め立ち上がったのです
『………………………!!』
魔獣の王は傷つき血を流しながら立ち上がり剣を自分に向け構える騎士に問います…ですが私達に魔獣の王の言葉の意味は解りません…
―……俺は今まで一人で戦ってきた…だがそれは違った!―
剣を天に向け素早く真円を描き中心が砕け光と共に砕け血が滴る鎧を再び纏い剣を魔獣の王に向け構えた時彼の鎧に変化が起こりました……
白く金色が混じった炎を全身に纏い砕けた鎧が瞬く間に修復、白金色の炎が剣に激しく燃えながら集まり構えます
―俺は多くの人々の想いに支えられ戦ってきた!―
地を蹴ると共に騎士は白金の翼を大きく広げ風を切るように飛翔、そのまま魔獣の王へ《白く煌めく炎》を纏った剣が硬い身体を切り大きく口が開き、白金の炎に焼かれ《魔獣の王》は世界を揺るがすような断末魔の叫び声と共に消滅しました
其れを見届け降り立つ彼…騎士は剣?を腰に構え力強くはっきりと叫びました
―我が名は………!人々を守りし魔戒騎士だ!!―
はっきりと私の耳、いえ心に響いた声は胸の奥が熱くし、私は彼に手を伸ばそうと……
「は?!…………覇王の記憶…初めて見た夢です…」
途切れた夢から目を覚ました私は軽く背伸びをしベッドから降りる、ひんやりした感覚を足の裏に感じながら着替えを終え学院へと向かう準備をします
…私の名はアインハルト・ストラトス…St・ヒルデ魔法学院に通う中等科一年生です
私は知りませんでした…今朝の夢が私…いえ私達にとって彼と時を超えた出会いと再会になるとは夢にも思いませんでした
第一話 邂逅
教室に入ると皆さんがなにやら騒いでいます、話を聞くと今日このクラスに男子転入生がくるみたいです
一瞬今朝の夢…白く煌めく炎を使う騎士を思い浮かべます
(…そんな筈ありませんね…)
予鈴がなり席につくと同時に先生を見て席に座り終えたみんなを見て、静かに扉が開きます
「あ、は、はい!?」
扉を開け現れたのはボサボサの黒く長い髪、一昔前のメガネ?をつけた男子が入ってきました
「き、今日学院に転入しました…タカヤ・アキツキです…」
彼をみた瞬間ある光景が私の脳裏に浮かびました
―………、俺は無力だ…斬ることでしか人を救えない…―
―それは違う!守ったじゃないか………、………―
―貴方は、私達、いえ民達を………から救ってくれた―
―そうです…戒…士様が居られなかったら守れなかった…―
三人の王の言葉からは彼に感謝と尊敬、友情感じ彼は涙を心の中で流していた…
「?(い、今のは一体…)」
「…アキツキはストラトスの隣の席だ…」
先生に言われ彼、タカヤ・アキツキはそのまま私の隣の席につくと教材を出し確認している
(…彼が夢に出てきた人物とは違います…それよりも私にはやる事があります)
それは列強の王達を総て倒しベルカの天地に覇を成すこと
その為には
(…強くならないと…弱い拳では誰の事も守れない…)
やがて授業を終えた私は何時ものようにロッカーに服を預け夜の街へとむかう
誰にも負けないくらい強くなるために……
夕暮れ、空から朱色が黒へ染まり街に明かりが付き人々は帰路を急ぐなか、大きな紙袋を両手に抱えた少年が歩いている
「はあ、何とか学院に転入出来たよ…キリク」
『初日にしちゃ上出来だ…んでリームには連絡忘れるなよ…』
「うん」
『…なあタカヤ、魔戒騎士をやめるって意思は変わらないのか?』
これから必要になる生活雑貨を買い終え寮へ向かいながら問われた。いつ現れるかわからない《彼奴ら》を斬る為、ただ其だけの為に費やされる日々の生活に嫌気がさした…
「キリク、僕は魔戒騎士じゃない…」
『…じゃあ何で魔戒剣斧を持っているんだ?…』
…確かに……家を出る時に置いていけば良かった
でも僕は魔戒剣斧に選ばれてしまった…捨てても必ず戻ってくる
「…用は使わなければいいだけだよ、キリク」
『そういう問題か……タカヤ!彼奴らの気配でぃ!場所は近えぞぉ!!』
彼奴ら…嘘だと耳を疑った、遥か昔に滅んだ彼奴らの王とその僕
しもべ
あの人から耳にタコが出来るほど聴かされた昔話…
三人の王と共に戦った名も無き魔戒騎士の話………
お伽噺って信じていた僕には疑わしかった
だけど『彼奴ら』って聞いた瞬間、無意識的に僕はその場に荷物を残しコートを翻し駆け出す
走る、風を纏ったかのように街中を駆け抜け着いた、街灯もなく人気のない夜の闇が支配する公園。ここに彼奴ら…ホラーがいる
「きゃあああ!」
悲鳴が聞こえた方へ走ると僕の目に三人の人影が目に入りうち一つを見た
異形…人の邪心、陰我宿りしオブジェをゲートにし人間に憑依する『魔獣ホラー』の姿をみた瞬間、地面を蹴り二人の間に入り守るように立ちはだかった
「あ、貴方は…アキツキさん?」
なぜ僕の名前をと思うが今は二人を逃がさないともし戦って返り血を浴びたら…
「逃げて…その人を連れて早く!」
「は、はい!」
碧銀の長い髪の女性が体を震わせもう一人の赤髪の女性に肩を貸し離れるのを見届け、僕は魔戒剣斧をコートから取り出し黒地に幅広の鞘から抜き水平に構える
『気を付けろい…奴はシャドウ…植物を使った攻撃が得意でぃ』
キリクの言葉にうなずいた時、シャドウは口から無数の牙を飛ばし回りの植物に突き刺さる…すると植物から種子が弾丸のように飛んでくる
「はあっ!せい、せい、はあっ!!」
とっさに魔戒剣斧を魔戒斧形態に変え切り払い、あるいは切り落とす
弾丸の雨の勢いが弱まった隙を見逃さずシャドウを魔戒剣に切り替え間合いを積め袈裟斬りにする
【―――――――――!】
声に表すのも難しい叫びをあげ倒れ、その隙を見逃さず魔戒剣斧を頭上に構え円を描いた
円が砕けその中心から光が降り僕の体に纏われ現れたのは…
金属の下地…鋼色が目立ち西洋の意匠を持ち、顔は狼を模した造形の鎧を纏った姿
纏うものに絶大な攻撃力と防御力を与えるソウルメタル製の鎧を纏いし騎士
その名は―
―白煌騎士煌牙
オウガ
―
魔界で99.9秒の魔導刻が刻まれるのを感じながら僕は変化した魔戒剣斧『煌牙』を魔戒斧に切り替え威嚇しながらこちらを見るホラーへ剣先を正眼に構える
『…お前の陰我…僕が断ち斬る…』
剣を構え呟くタカヤとその姿を見て体を震わす群青色の魔獣ホラー…遥かな時を超えベルカ緒王時代に突如顕れた十三体のホラーとその王を追い、次元の壁を超え顕れ三人の王と協力し封印した古の魔戒騎士…『守りし者』が姿を現した瞬間だった
―――――――――
――――――
……私は夢を見ているのでしょうか?
今朝、転入してきたタカヤ・アキツキさんが目の前で群青色の魔獣【ホラー】と互角に剣で逆袈裟から構え打ち出された無数の弾丸?の雨を柄の長い斧を回転させながら切り払っていきます
「…ハアッ!」
弾丸の雨?がやむと地面を蹴り木と木の幹を足場に蹴り間合いを詰め袈裟斬りに切り上げたタカヤ・アキツキさんは剣をまっすぐ頭上に構え真円を描いて中心がくだけた次の瞬間、光が包み込み晴れると驚きを隠せませんでした
夢で見た名も無き鋼色の鎧を纏った魔戒騎士が剣を携え立っていたのだから……
『…お前の陰我…僕が断ち斬る……』
弾き飛ばされるよう跳躍し間合いを詰めると共に繰り出される太刀筋の煌めきと美しさの中にある違和感
……僅かな彼自身の迷いを……
―数分前―
「…ストライクアーツ有段者…ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします」
街灯の下にいる女性、ノーヴェ・ナカジマさんに静かに見下し私は質問をする
「貴方にいくつか伺いたい事と、確かめさせて頂きたい事が」
「質問するならバイザー外して名を名乗れ」
「失礼しました」
バイザーを外し素顔を晒し訪ねます
「カイザーアーツ正統ハイディ・E・Sイングヴァルト…覇王と名乗らせて頂いてます」
そう名乗り地に降り立ち彼女に王達…聖王オリヴィエの複製体、冥府の炎王イクスヴェリアの所在を伺うも…
「…知らねえな」
「聖王のクローンだの冥王陛下だの何て連中と、知り合いになった覚えはねぇ、あたしが知ってんのは…一生懸命生きてるだけの普通の子供達だ」
彼女達を守る、強い意思を秘めた目で見据えられ聞くのは無理と判断し拳を構えます
「あなたの拳と私の拳… いったいどちらが強いのかです」
私自身の強さがどこまで通用するかを…互いに構え防護服と武装をお願いしたのですが
「ハッ!馬鹿馬鹿しい」
言葉と同時に先制を仕掛けられましたが予想した通りの攻撃、軽く受け流し互いに距離をおく
「ジェットエッジ!」
私が只者でない事に気づきノーヴェさんはバリアジャケットを装備し構えます
「ありがとうございます」
「強さを知りたいって正気かよ?」
「正気です、そして今よりももっと強くなりたい」
もはや言葉を交わさず互いに構え拳を蹴りを交え突撃と同時に跳躍空いたボディに体重を乗せた一撃を叩き込み距離を離す
「列強の王達を全て倒しベルカの天地に覇を成すこと、それが私の成すべき事です」
「寝惚けた事抜かしてんじゃねェよッ!」
拳を繰り出す私の拳を弾くと同時に蹴りを打ち込みます、でも手を添え受け流しながら
「昔の王様なんざみんな死んでる!生き残りや末裔達だってみんな普通に生きてんだ!!」
「弱い王なら…この手でほふるまで」
そう言った時彼女の気配が変わりました
「この…バカッたれが!!」
叫ぶと同時にエアライナーを展開しその上を走り抜け迫ってきたその時
『―――――――――!』
夢に出てきた魔獣ホラーが闇の中から私達の前に現れたのは
「な、なんだコイツ!」
その異様な存在感、それに怯まずノーヴェさんは私から群青色の魔獣【ホラー】に拳を奮うも素早い動きに翻弄され遂に
「うあああ!」
ホラーの一撃を受けエアライナーから叩き落とされるノーヴェさんを地面に墜ちる寸前で受け止め振り返ると群青色の魔獣ホラーが私達を体当たりし弾き飛ばされ余りの痛みに悲鳴をあげた時でした
強い風が辺りを舞い、一迅の風と共に黒鉄色のコートを纏い長く整えられた黒髪の少年、今朝転入してきた転入生タカヤ・アキツキが守るように剣?を構えた姿
「あ、貴方はアキツキさん?」
「お、お前…!?」
「…逃げて…その人を連れて早く!」
「は、はい!」
今朝見た彼とは違う空気を感じつつノーヴェさんを連れその場から離れました
何故、僕は剣を…魔戒剣斧【煌牙】(オウガ)を構え鎧を召喚したんだ
もう剣を振るいたくなかった
普通の人並みの生活を送ろうと誓ったのに
《タカヤ!迷ってる暇は無え》
踏み込みと同時に跳躍し魔戒斧で群青色の固い体を袈裟斬りと同時に柄の部分で腹を突き空に打ち上げる
柄を右へ軽く回すと金属音と共に魔戒剣に切り替え、無防備状態のその体を柄撃ち、袈裟、逆袈裟を組み合わせ切り裂いていく度、血が辺りに舞う
『―――――――――!』
《タカヤ!時間が無えさっさと極めろ!!》
…地に落ちフラフラと立ち上がるホラーを見据え、装着時間残りが三十秒を切ったのを感じた僕はある構えをとる
コレは先祖から代々伝わる技…友であった王の一人から伝授され昇華させたモノ
足先から練り上げた力と魔力を己の剣と一体化し全ての動きをのせる必殺の剣
足元の地面が乾いた音と共にひび割れホラーが襲いかかると同時に跳躍し体を宙で捻りながらホラーを剣で横凪ぎで切り裂いた!
『ハアアア!!』
互いに交差しすり抜け地面を抉りながら止まり振り返る…ホラーの身体が斬られた部分から光が罅のように広がっていく
『ハオイ・タナワ・サナラアタマカナヤ…(ア、アルジヨ!覇王、魔戒騎士ノ血筋ハ絶エテハナカッタ……ガアアアア!?)』
雄叫びを上げ消滅するホラーを見届け鎧を返還し僕は考える…
……の話だと三人の王と戦った魔獣の王とその僕
しもべ
は物、陰我宿りしオブジェに憑依し人を喰らうと聞いている
だけど…さっきのホラーが叫んだ『覇王』ってあの二人の内の一人なんだろうか…
僕は何故剣を振るったんだ…
只、剣を振いホラーを斬るだけの訓練漬けの毎日、心が乾いていく日々からキリクと一緒に家から逃げたしたのに…
…もう帰ろう考えるのはやめにして寮に……
「待て!」
声が響く。振り替えるとさっきの女性がもう一人を抱え立っていた
「…アキツキさん、貴方は魔戒騎士なのですか…それに……カイザーアーツを何故貴方は…うう…」
「おい!大丈夫か!?…待てお前ェは何者なんだ?」
「……今日見たことは忘れた方がいい…其れが貴女達のためだから……じゃあ」
「おい!まだ話は!!」
質問の途中気絶した彼女を赤髪の女性に抱き抱えられたのを見てそう言い残すとコートを翻すと呼び止められるも走り去る
だけどあることに気づいた
それは……
「買い物やり直さなきゃ…」
『…タカヤよ、気にするのはそれなんかい?』
キリクの呆れた声を聞きながら寮へと向かい走る
―――――――――
――――――――
「入寮初日から門限破りとはいい度胸だねタカヤ・アキツキ」
「あ、あの!これはその…」
「さて説教といこうか…」
……門限が過ぎたせいで寮長ジャビさんからこっぴどく怒られた…
それから一時間後ようやく説教が終わりあてがわれた部屋の鍵を開け近くにあったコートをハンガーに掛けるとそのままベッドに倒れ込む、シャワーは明日浴びようと考えながら眠りについた
僕は知らなかった、この時出逢った碧銀の髪の女性の正体がクラスメイトで隣の席の人アインハルト・ストラトス…覇王イングヴァルトの正統な子孫だと言うことに気付かなかった
第一話 邂逅
了
キリク
『ホラーを倒すも二人の前から去ったタカヤ…見ての通り訳ありの家出少年(?)って奴だ……そういやお前ら人間は運命って奴を信じるか?信じる信じないはそいつの自由だがこうも偶然が重なると運命って奴を信じたくなるぜ…次回、運命(一)…二人目の王との出会い!!』