魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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幕間 食卓

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暗く闇に閉ざされた空間に浮かぶ巨大な岩場に三つの影が音もなく現れなにかを話している

 

「……エアリーズめしくじったか…」

 

「悪のりしすぎたから仕方ないんじゃないの…でも闇に堕ちかけたお陰で王の封印、忌々しい《アキツキオウル》が施した封印術式がほころび始めたよ」

 

巨大な岩場には無数の鎖に縛られ界符がところ畝ましと貼られ不可視の光が覆うのが見え表面にわずかに亀裂が入っている、影のひとつが手を伸ばし触れようとするも弾かれ手を押さえる

 

「…くそ、相変わらず忌々しい封印だぜ。これのせいで俺達の力は半減し《現界》出来るのは一体だけだ」

 

 

「…結果としては封印に綻びが出来たがな…」

 

 

 

「「「ア、アルター様!!」」」

 

闇が支配する空間に切れ目が入り全身を覆い隠した人物が現れるや否や膝をつく三人

 

「…今日はお前達に告げることがある…この世界に新たに魔戒騎士が四人現れた」

 

「…じゃ僕たちの王が復活できないじゃないか!」

 

「…おそらくは『あの世界』の神官グレスが我らの行動を《月読》で予知したからだろう…だがもう手は打ってある」

 

 

「手とは?」

 

「当代のアキツキの血筋に我が秘術『破滅と忘却の刻印』を刻んだ…」

 

全身をおおう布から黒く輝く手…いや闇よりも暗い手甲を顔の前にかざすと魔導文字が赤く輝きながら漂う

 

「じゃあこのままアキツキの血筋が鎧を召喚し続けたら間違いなく死ぬね」

 

 

 

「それに記憶も無くなるし胸の痛みに苦しみ命がつきる姿を見るのは最高だな~さすがは《王の代行者》アルター様だ」

 

 

「…千年前に我が秘術を打ち破った男《アキツキ・オウガ》の血は油断はできん…お前達《王の騎士》の力を使い当代のオウガの命をすり減らさせよ」

 

「わかったぜじゃあ俺が現界してくるぜ…ちょうどいいゲートも開いたみたいだしな…」

 

空間に魔導文字が流れゲートが開くと影は球体になり穴を抜け消え去った

 

「頑張ってねリィオウ……それまで僕たちは力を蓄えておくよ…じゃまたねアルター様」

 

「では後程アルター様」

 

 

そういい残し影がすうっと岩場に吸い込まれアルターだけが残る…が体を震わせ笑い声が上がる

 

 

「フフフ…アハハハハハハ…バカな奴等だ…まあせいぜい利用させて貰おうか……私が、いやこの俺が世界の―――――だと証明して見せてやる…せいぜい血筋が絶えるのをあの世で歯噛みして見てるんだなオウル…アハハハハハハ!!」

 

笑い声と共に黒い風が巻き起こりやがておさまるとその姿はどこにも見えなかった

 

 

アルター…その正体と目的はいまだにわからない、唯一つ言えるのは別な目的を持つ存在というだけだった

 

 

幕間 食卓

 

 

「うっ、くううう…」

 

《やっぱりメイにその刻印の事を話した方が》

 

「ダメだ、もし話したら母さんは僕を助ける為にあの時みたいに無茶をするよ」

 

《…確かにな、だがノーヴェやヴィヴィオ嬢ちゃん、アインハルト嬢ちゃん達に絶対にバレないようにしないとな…》

 

 

「うん、インターミドルに集中して貰いたいんだ…ヴィヴィオやアインハルト、ノーヴェさんの夢を邪魔するわけにいかない……それにホラーもまだ残っているから」

 

胸を押さえながら掛けてあった魔法衣に袖を通し部屋を出て屋上に出ると風で髪がたなびき押さえた僕に今まで黙っていたカーンが口を開いた

 

《若、あえて言わせてください…もう鎧の召喚をやめて普通の生活を送ってください!人としての生活に憧れてたんじゃないんですか!!》

 

「……うん」

 

《このまま鎧を召喚し続け命と記憶をすり減らしている事をノーヴェ様、アインハルト様、ヴィヴィオ様は必ず気づきますよ!一番悲しむのは………》

 

「……一応刻印を変容の秘薬で消すからバレないよ、もし忘れてしまったらキリクやカーンに教えてもらうから」

 

 

《…ですが、若の、若の命が…》

 

「大丈夫だよ、それに僕はまだ諦めてないから。初代オウガもこの刻印を刻まれて打ち消したって記述がある…僅かな可能性が有る限り僕は絶対に諦めない…それに」

 

少し間をおき

 

「僕はまだノーヴェさん、ヴィヴィオ、アインハルトが夢を叶えるのをみていないから…死ぬわけにはいかないんだ」

 

《…わ、若…》

 

「だから僕を信じてくれるかな」

 

しばらくしてすすり泣く声が聞こえるも風の音がその声をかきけし空が明るくなり始めるのをみた僕は部屋へ歩いていくと

 

「タカヤ!?」

 

「あ、おはようございますノーヴェさん。よく眠れましたか?」

 

「あ、ああ…」

 

(少し顔が赤いなノーヴェさん、どうしたんだろ?)

 

 

顔が赤いのを気にしながら僕はノーヴェさんと一緒に母さんの執務室に向かうと大きめなテーブル、その上に焼きたてのパン、シャキシャキのサラダ、野菜たっぷりのスープが湯気を立ておかれてる

 

「おはようタカヤ。丁度呼びにいこうと思ってたから良かったわ。さあ冷めないうちに食べて…あとノーヴェ・ナカジマさんも座りなさい」

 

 

黒く長い髪を一つに纏めエプロンを着けた母さんが笑顔で席に座るよう促すんだけどノーヴェさんの時だけ対応が違う気がする

 

「「「いただきます」」」

 

手を軽く合わせいただきますは昔から家に伝わる作法だ、まずはパンを手に取り軽くちぎり口に入れる。小麦の香ばしい匂いとしっとりとした食感…父さんが生きてた頃に食べたパン、そして野菜スープをスプーンで軽く掬いあげ口に入れる野菜と鳥の旨味が広がっていくとスープになにかが落ちた

 

「どうしたの?美味しくなかった!?」

 

「ううん、少し喉詰まらせちゃった」

 

「大丈夫かタカヤ?」

 

昔野菜が嫌いだった僕のために父さんと母さんが作ってくれた献立の懐かしい味に涙を流してしまったのをごまかし僕は何度もおかわりしたけど母さんは笑顔でパンとスープを出してくれた

 

「そんなに慌てなくてもいいわよ。タカヤはユウキと似てたくさん食べるから…はい熱いから気をつけて」

 

「うん…ありがとう母さん」

 

「あ、タカヤ!」

 

「え?どうしたの?」

 

「少しじっとしてろよ…よし取れた」

 

「あ、ありがとうございますノーヴェさん///」

 

「………………………………………」

 

 

いつの間にか頬についたドレッシングをナプキンでそっとふいてくれたノーヴェさんに少し照れた。なんか視線を感じ目を向けると母さんがなんか怒ってる

 

 

 

(………私が拭こうと思ったのに……やるわね赤髪女ああ~…)

 

って声が聞こえた気がするけど気のせいだよね?

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「じゃあ母さん、僕剣の浄化にいってくるね」

 

「ええ、いってらっしゃいタカヤ…少しいいかしら」

「なに?」

 

「……屋敷に戻らな…あ、嫌ならいいの…タカヤも学院に通ってるしヴィヴィオさんとアインハルト様を守らなきゃいけないってのはわかるけど…やっぱりダメよね」

 

「…母さん、近いうちに屋敷に顔を出すよ…デルクにも会いたいし後伝承も調べたいし…皆をつれても大丈夫かな」

 

「!ええ、何時でも連れてきていいわよ!あ、これをヴィヴィオさんとアインハルト様に渡してくれるかしら、あとノーヴェ・ナカジマさん。コレを家族の皆様と食べて」

 

 

母さんは僕に小さな包みを渡しノーヴェさんには特大のバスケットを二つ手渡す、中を見てみると朝食に出された焼きたてパンにレタスとハムが挟まったサンドイッチ、挽き立てのコーヒーが入ったポット

 

「いいのか?」

 

「別に構わないわ…くれぐれもいっておくけど…………」

 

ノーヴェさんに近寄りの耳元でなにか呟き離れ今度は僕に向き直る

 

「じゃあ私は仕事に戻るわね…タカヤ、ホラーが現れたら絶対に私を呼ぶのよ」

 

「わ、わかったよ母さん早くしないと仕事に遅れるから!?」

 

「そ、そうね…じゃまたねタカヤ」

 

クルッと背を向け社屋に入っていく母さんの頭に耳が嬉しそうにピョコピョコと動くのを目にしながら僕はノーヴェさんを家まで送りそのまま聖王教会に向かった

 

 

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―――――――

 

タカヤに送られ家に戻ったアタシはメイから渡された特大バスケットをギンがに渡しそのままベッドに倒れこみ寝返りを大きく打ちながらさっきのメイの言葉を思い出していた

 

 

―……タカヤはあなたに渡さないわよ…もし自信があるんなら私から奪って見せなさい…―

 

 

「んな事言われなくてもわかってんだよ…でもなアタシはタカヤの口から言わせたいんだよ……す、す…」

 

そこから先が続かず枕に顔を埋めるんだけど顔が熱くなってしまう…再び寝返りをつき左手首に嵌まった双頭の龍の彫刻が施された腕輪をみながら

 

 

「…好きだって必ず言わせるぐらい…それ以上にタカヤを守りたいんだアタシは…」

 

 

「へぇ~そうなんッスか~ノーヴェはやっぱりタカヤんにベタぼれなんッスね~」

 

「ウ、ウェンディ?いつからそこに!?」

 

「寝返りうってタカヤんに好きだって…」

 

「う、うわあああああ!?/////」

 

跳ね起きるや否やウェンディを拳で黙らせた…ったく油断も隙もない

 

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――――――――

 

 

「何やら上がうるさいみたいだな」

 

「そうですね。よしこれで完成です!チンクさん『たっちぱねる』出来ましたよ」

 

「す、すごいなレイジ殿。(うう、なんだこの感情は…レイジ殿の笑顔をみると胸がドキドキする。まさか病気なのか?)」

 

『たっちぱねる』を見せるレイジの笑顔にドキドキしっぱなしのチンク、その近くでは

 

 

「ギンガさん、これは何て言う飲み物だ?」

 

「これはコーヒーです。あの~ジロウさん?」

 

「すぅ~~(カッ!)」

 

マグカップに入ったコーヒーの香りを胸一杯に吸い『カッ!』と目を見開きイッキ飲みするとマグカップを置くや否やギンガの手を握り

 

「ギンガさん、この『こ~ひ~』を俺のために毎日淹れてくれ!」

 

「は、はい!///」

 

あまりの真剣な眼差しに思わず返事するギンガに…その光景をみた大黒柱であるゲンヤは

 

 

「なあクイント、ノーヴェに続いてチンクやギンガに春が来たようだ…さて式場の手配をするか…アキツキ・ブライダルの番号は…」

 

遠い目で亡き妻クイントの写真を見ながら電話しょうとするゲンヤに

 

―待ってあなた!まだ早いから!?―

 

 

 

天から悲鳴にも似た声が響いた

 

 

幕間 食卓 了

 

次回はいよいよ本編に入ります。

 

おまけ

 

「メイおばあちゃ~ん」

 

 

「あらまゆちゃ~ん、今日はどうしたの?」

 

「アミタおね~ちゃんが『魔戒法師』になりたいって…」

 

 

「…そう、なら私が基礎を教えてあげないと…でもあのハレンチなバリアジャケット?を変えないといけな…」

 

 

「何がハレンチですか!メイ義祖母様!!」

 

 

「あら聞いてたのアミタ…クロウはあんなヒラヒラしたスカート姿をみたら満足に戦えないわよ」

 

 

「そんなことありません!クロウさんは逆に『元気が出る』って言ってました!!」

 

 

「ならクロウが帰ってきたら本当かどうか聞かせてもらうわアミタ」

 

 

「うう~く~にいさま、アミタおね~ちゃんとメイおばあちゃんが喧嘩しそうだよ~う…早くかえってきてよう」

 

 


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