魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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第八話 白煌(改)

「…タカヤの母親…貴女が?」

 

目の前にいる女性、メイ・アキツキがそう名乗った事にあたしは驚きタカヤの母?をみる…髪の色そして服にタカヤが纏コートと意匠が似通ってる?其よりも気になる事が一つある

 

 

若い、とても子供を…タカヤを生んだとは思えないどうみても二十代前半にしか見えない、同じ女性として何か…いや負けた気がしてならない

 

 

「…貴女がタカヤさんのお母様ですか?」

 

 

「メイさん、はじめまして、高町ヴィヴィオです!」

 

「……………!」

 

 

 

アインハルト、ヴィヴィオに声をかけられメイはノーヴェの隣にいる二人を見て一瞬目を大きく見開かれる…まるで信じられないモノを見たと言わんばかりに、しかし直ぐに冷静さを取り戻した

 

 

 

 

「…そういうことね…貴女、タカヤの居場所わかったらココに連絡をくれないかしら」

 

 

手渡されたのは一枚の名刺…しかし書かれた文面を見て驚いた

 

 

 

アキツキ・インダストリ―

 

CEO メイ・アキツキ

 

 

アキツキ・インダストリー、聖王教会と密接な繋がりを持ち『DSAA』…インターミドルチャンピオンシップの大手スポンサーの一つだと言うこと思い出した

 

 

「ま、待て!…貴女はタカヤの母親なんだよな?何故あんな態度とるんだ!」

 

 

 

「…貴女にはわからないわ…」

 

その言葉だけを残しあたし達の前から離れやがて人混み紛れ姿が見えなくなった

 

「…ノーヴェ、あの人…タカヤさんのお母さんすごく悲しそうだった」

 

 

「…ヴィヴィオ、アインハルト、もしタカヤの母親が居場所を聞いても…答えないでやってくれ…二人にはまだ時間が必要だ」

 

 

無言で頷いた二人を連れその場から去りながら先程のタカヤとメイの会話を思い出す

 

さっきの感じじゃ母親を名乗るメイとタカヤのあの態度からは会いたくなかったと言うのをあたしは感じた

 

……タカヤ、メイと一体何があったんだ?

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ミッドチルダ首都次元港から少し離れた道路を一台の高級リムジンが走る

 

運転するのは初老の男性デルク、キャビンには先ほどノーヴェ、アインハルト、ヴィヴィオと会話をした女性…メイ・アキツキがその体を任せるように座っている

 

 

「…メイ様、タカヤ様は?」

 

 

「…逃げられたわ…追跡を阻害する界符を貼られたんじゃ無理よ…」

 

 

タカヤが貼った界符を見ながら呟く、しかし収穫もあった…タカヤはあの二人、おそらく聖王と覇王の血を引いている二人を守るため行動をしている

アキツキ屋敷から家出をしたあの子がホラーから二人を守るために…

 

 

「…タカヤ…」

 

 

 

「…メイ様は、タカヤ様と会ってどうしたいのですか?またホラーを狩る道具…」

 

 

「違うわ!!」

 

 

柄にも無く声を張り上げた事を恥じ冷静さを取り戻し小さく消え入りそうな声で呟いた

 

「私は…私はタカヤに―――――――」

 

 

第八話 白煌

 

 

同時刻、ミッドチルダ南部湾岸道 同砂浜

 

 

―…タカヤ、アイツ…メイに会って気を悪くしたのはわかるが、だがノーヴェ達の前であんな態度とる必要は無かっただろうが?―

 

 

砂浜に座り海を眺める僕にソウルメタルを軋ませしゃべるキリクの言葉を聞きながら…あの人、母さんの事を思い出していた

 

騎士と法師の訓練を課していた頃と変わらない目と声…あの頃…父さんが死んだあの日からあの人は僕を『ホラーを狩る為だけの騎士』として鍛練が始まった…

 

あの日、鎧召喚訓練を終えた僕が最後に目にした母さんのあの目は次元港であった時と全く変わっていなかった

 

 

 

「キリク…今度ノーヴェさん達にあったら謝るよ、…何の音かな」

 

 

音が聞こえた方に目を向けると一人の男の子?が手製のサンドバッグ?に向け拳と蹴りを交互に織り交ぜ撃ち込んでいる

 

…粗削りだけどアインハルト、ヴィヴィオと違う光る何かを感じた瞬間、真剣な眼差しになり構え一瞬で間合いを詰め回し蹴りを打ち込みへし折った

 

 

「…蹴打の威力が半端じゃない…今度僕も試してみるかな」

 

―…ん、背後から気配がする―

 

 

『うん、一人…いや二人が僕達を見ている…』

 

 

キリクからの思念通話で平静を装いながら立ち上がり砂を払い去ろうとした時…

 

 

「ほう、私の気配に気付くとは…」

 

 

後ろから声が聞こえ振り返るとピンク色の髪をポニーテールにした女の人と銀髪の筋肉質な男の人がこちらを見定めるように見ている

 

 

「…随分と熱心に見ていたみたいだが興味があるのか?」

 

 

「あ、い、いえ…只…僕と同じぐらいの子なのにあんなすごい蹴りを放つんだなって思って」

 

 

「シグナム、そろそろ皆が来る…」

 

 

「わかった、すまないが此から稽古をしなければならない…今度はゆっくりと話をしたいな」

 

 

「え、ええ、では稽古を頑張ってください…」

 

そう告げると僕は足早にその場から去った、背中にあの二人からの視線を感じながら

 

 

―――――――――

――――――――

 

「…どうしたシグナム、あの少年が気になるのか?」

 

「…ザフィーラ、あの少年は私の放った殺気を全て受け流していた、それに戦っていたら…いやいい稽古を始めるとするか」

 

 

「…わかった」

 

 

あの少年を見た時、私の中で懐かしさを感じた…遥か昔から知っているそのような感情に囚われたのは初めてだった

 

試しに殺気を放つも全て受け流された、まるで清流を流れる一枚の葉のように…もし戦ったら

 

 

「シグナムさん、どうしたんですか?」

 

 

「いや何でもない、では前回のおさらいと言いたいがコレを直してからだな」

 

 

「す、すいませ~ん」

 

 

やれやれと思いながら弟子…ミウラが先程蹴り倒したサンドバッグを直すことにし私はあの少年の事を片隅に追いやり作業に集中した

 

 

近いうちにまた会うことになる、そう予感しながら

 

――――――――――

―――――――――

――――――――

 

 

「…あの人、シグナムさん…ただ者じゃないねキリク」

 

 

―ああ、あの胸はノーヴェとタメが張れそうだな―

 

 

「キリク!なに言うのさ!?」

 

 

―冗談だ…煌牙を浄化しないとな…今なら魔界道は使えるぜ―

 

 

「…そうだね、魔導図書館で調べものをしないといけないし急ごうか」

 

 

そのまま人気がない道に入りキリクを外し掲げると空間が裂け入り口が現れタカヤはそのまま入ると同時に入り口は消え失せる、最初からなにもなかったかのように…

 

――――――――

――――――

 

 

魔界道を使い聖王教会に着いた僕を待っていたのは…

 

 

「タカヤ!私と勝負しょ!!」

 

 

「……シャンテ、僕少しだけ用事あるから…」

 

 

「用事?…なら仕方ないか」

 

 

構えた双剣を修めたシャンテは僕と石造りの廊下を歩く…途中、今度インターミドルに出るんだと嬉しそうに話していた

 

「よくシャッハさんが許したね」

 

 

「…実は無許可で申請出したんだ…」

 

 

無許可は不味いんじゃないと言おうとしたとき、まるで地の底から響くような声が背後から聞こえ振り向く

 

 

「シャ~ンテ~、やあ~っと見~つけ~ました~よ~」

 

 

「ごめんタカヤ!あたし逃げるね!!」

 

 

 

その場からすんごい速さ(シャンテ談)で逃げていくシャンテを鬼のような形相で追いかけていくシャッハを見送り浄化のオブジェがある場所へ向かう

 

 

「…キリク、煌牙が何か変だよ…」

 

 

『俺はそう感じないが…早く浄化した方がいいぜ』

 

 

キリクに促され煌牙を大きく口を開けた狼のオブジェ…丁度口に当たる部分に差し込んだ時だった

 

 

「う、うわ!?」

 

 

白い光に包まれ狼のオブジェの口へと吸い込まれると同時に僕は一瞬気を失う…けどすぐに回復し目を開くと白い空間が広がり魔導文字が様々な方向から飛び交っている

 

 

―…よく来たな秋月鷹矢(アキツキ・タカヤ)…我が子孫よ―

 

 

声が響き渡り振り返ると其所にいたのは…

 

 

黒く長い髪を三つ編みにし黒鉄色の外套、魔法衣を纏った僕よりも少し年上の男性が立っている

 

 

「あ、あなたは秋月煌牙?なぜ僕の『真名』を!?」

 

 

「…俺は秋月鷹矢…お前が恐れる存在だ!」

 

 

言うや否や煌牙を構え逆袈裟で切り払う、其れを受け止めるが同時に体を半回転させ僕の上半身を横凪ぎに切り払う

 

 

「ぐあ!?」

 

 

余りの痛みに踞る僕の顔を蹴りあげると同時にきりもみし地面?へと落ちた僕の首筋に剣を突きつける

 

 

「…鎧を真の色…【白金】へと変えた功績により魔導馬【白煌】(びゃくおう)召喚の許しを与えにきた…」

 

青年…秋月煌牙(アキツキオウガ)?は剣斧を鞘?へとパチンと音を鳴らし収めた

 

 

「…魔導馬【白煌】?」

 

 

魔導馬…僕の家に伝わる文献では魔戒騎士が百体のホラーを封印した証として召喚を許される。

 

僕は百体のホラーを封印してはいない筈なのに…鎧の色を【白金】にした事で許しを与えられる事に疑問を感じる僕にオウガは語りかける

 

 

「…遥か昔『牙狼』の称号を持ちし者の鎧は当初鋼色だった…あるホラーとの戦いの際《黄金色》へと変えたという…それにならってだ」

 

 

秋月家に伝わる伝承にもその記述がある…黄金騎士『牙狼』魔戒騎士最高位…確か冴島家が鎧と剣を一子相伝で代々受け継いでるとキリクから聞いた事があったのを思い出す僕に再び煌牙を抜き放ち構えた

 

 

「秋月鷹矢、魔界より生まれし力、手に入れたいならばこの俺と…」

 

 

「…戦うしかないんですね」

 

再び煌牙を抜き構えたオウガに僕も応えるように煌牙を構え互いに動きながら距離、間合いを測る

 

 

もしオウガが仕掛けるとしたら僕の攻撃を受け流してからになる

 

でもその考えは儚くも崩れ去る…最初に仕掛けたのはオウガ自身だった

 

地面を蹴ると同時に間合いを詰め突きの構えを取り迫る剣、それを上へと切り払いがら空きになった腹部目掛け蹴打を入れようとしたとき

 

突如背後に凄まじい衝撃を受け身体が地面?へと沈む…この拳撃はまさか

 

 

―覇王断空拳―

 

オウガは僕の動き…いやその一手先を読み攻撃を受け仕掛けた

 

『秋月煌牙』は盟友である覇王から『覇王流』を伝授された事を思い出した

 

 

「…どうした、秋月鷹矢…覇王流を受け継いでいるのではないのか?」

 

 

「…ウッ!クウウ!!」

 

 

煌牙を支えにし痛む体を立ち上がらせた時、手に違和感を感じみる、煌牙がソウルメタルとは全く違う材質…『鉄』に変わっている事に驚く

 

 

でも今はこの人と、秋月煌牙と戦う

 

鉄へと変わった剣斧を構え再び秋月煌牙と対峙し切り結ぶ

 

 

魔導文字が流れ飛び交う《内なる魔界》にソウルメタルと鉄がぶっかりあう音が響き渡った

 

 

―――――――――

―――――――

 

同時刻、市民公園内

 

 

公共魔法練習場

 

 

「…タカヤさん、なぜお母さんと仲良くないんでしょうか?」

 

「…わかりません、ですが剣技と体技はお母様から教わったとしか聞いてないです…」

 

 

ベンチに座り話をするアインハルトとヴィヴィオ…話の内容は数十分前、タカヤとその母メイとのやりとりだった

 

 

普段は天然?でほんわかとしているタカヤが見せたあの表情…

 

 

あなたに会いたくない…いや僕は二度と会いたくなかった

 

 

そうとも読み取れる表情を見た二人は一度帰宅し、此所に来て話し合っていたのだ

 

「…わたし、タカヤさんとお母さ…メイさんに仲直りしてもらいたいな…」

 

 

「…ノーヴェさんはタカヤさんとお母様には互いに時間が必要だと言ってました」

 

 

どうしたらタカヤとメイを仲直り出来るか…色々と考えを浮かばせるも中々良い考えが出ない

 

 

そんな二人を遥か遠くから見る影…いや影にしては余りにも巨大で人の上半身に馬の下半身を合わせたような異形だった

 

 

『ヒオウ、ヒイオウ、ミチクル…ヒラウ、スヌイヌチヲヌルガヌウニ!…(覇王、聖王、ミツケタ…クラウ、ソノイノチヲワレラガ王二!)』

 

夕焼け色から暗くなり夜が迫る公園から少し離れた場所に、新たなホラー…『サジッタ』が姿を表しやがて闇に溶け込むようにその場から消えさった

 

 

まだその時ではないと言わんばかりに……

 

―――――――――

――――――――

 

 

「グア?!」

 

 

地面?に転がるのは何回目だろう…あれからどれぐらい時間が過ぎたかはわからない

 

 

剣が凄く重く感じるのは何故なんだ…ソウルメタルでは無く鉄製で出来てるからかと思いながらも、なんとか立ち上がり再び鉄製の煌牙を構え対峙する…切傷、殴打され服も所々が破けた箇所が目立つ僕にたいしオウガは傷ひとつ負っていない

 

 

(何故なんだ…煌牙が鉄製になるなんてあり得ない…オウガは何を僕にやらせたいんだ)

 

 

 

お互いに切り結び、上段、下段、逆袈裟、袈裟を繰り出すも全てを読まれているかの様に切り払われ弾かれ体を沈め体重を乗せた回し蹴りを受け吹き飛ばされ同時に斬撃を飛ばしそれを体を捻り寸前でかわすも間合いを詰められ覇王流のステップを踏み込み

 

 

―覇王空破断!―

 

 

魔力…いや練り上げた気を錐もみしながら宙を舞う僕の胸板に正確に掌打を打ち込む

 

 

「がはあああ!?」

 

 

地面に落ち踞る僕の腕を間髪いれず煌牙で切り掛かるも其れを受け止め左手を軸にしてオウガのの足を蹴り払うが避けられ逆に切り払われ地面を転がる

 

 

「ぐ、くう!」

 

 

立ち上がりながら僕は何か引っ掛かりを感じている…何故煌牙が鉄になったのか?

 

―俺はお前の恐れる存在…ソウルメタル、鉄、お前の……!―

 

 

オウガの剣撃を切り払いながらタカヤはある答えにようやく辿り着いた

 

 

(もし、僕の考えが正しいなら…いや!僕は自分の勘を信じる!!)

 

 

そう決意した瞬間タカヤは地面を蹴り、斬り放った斬撃をその身に全て受けながらも互いの身体を煌牙で刺し貫きやがて崩れ落ちる様に足元に倒れる姿をオウガは微動だにせず見下ろしていた

 

――――――――――

―――――――――

――――――――

 

 

「…アインハルトさん、メイさんに会いに行きませんか?」

 

 

「…でも私たちが会いに行っても門前払いされるだけでは?」

 

 

「…もしそうだとしても何回でも会いに行けばわたし達に必ず会ってくれますよ…よくはわからないんですけどメイさんはタカヤさんと仲直りしたいんじゃないかって思うんです」

 

 

「ヴィヴィオさん、そうですね…私もお母様と会ってタカヤさんの子供の頃の話や思い出を聞きたいで…いえ仲直りの切っ掛けを掴めれば…」

 

 

あれから時間がすぎ夜が公園を支配している事に気づき二人は話の続きをヴィヴィオの家でする事を決めベンチから離れ家路へと向かった時、空からナニか巨大なモノが降ってきた

 

 

「キャッ!」

 

 

「ヴィヴィオさん、あれは!」

 

 

二人の眼前には巨大な馬…いや巨大な人馬がうなり声を挙げながら此方を見据えその右手?を向けた構えた時ナニかが風を切る音が聞こえ反射的にかわす…

 

「矢?ですか!」

 

 

先程迄いた場所が無数の矢が刺さり無残にも抉れていた

 

 

『ウガアアアアア!』

 

 

「ヴィヴィオさん、早く逃げましょう!」

 

 

「は、はい!」

 

 

その場から二人が逃げる姿を眺めながら前足を踏み鳴らし駆ける…まるで最高の獲物を見つけ追いかける狩人の様に

 

 

――――――――――

――――――――

―――――――

 

 

数分前

 

内なる魔界

 

 

 

「うう…あれ痛みがない?」

 

 

「ここで受けた肉体のダメージは擬似的なモノだ…会得したようだな」

 

 

 

「はい、この鉄で出来た煌牙は…ホラーを斬る物じゃない僕自身の恐れを斬るものです」

 

 

「その通りだ、俺はお前の恐れる存在、お前は自身の恐れと向き合い踏み込んできた。其れを知ったお前ならばこの先に起こる困難を断ち斬る事が出来るだろう…」

 

 

先祖オウガと白金色に変わった鎧の力に対する僕自身の内なる恐れを認め乗り越えた僕に満足した表情でオウガは自身の煌牙を僕に手渡す…ソウルメタルの感覚を手に感じ握りしめる

 

 

―タカヤ!ヴィヴィオ嬢ちゃんとアインハルト嬢ちゃんがホラーに襲われている!!―

 

 

「急げ、鷹矢…お前の助けを待つ者達がいる…」

 

 

「はい!」

 

 

オウガの言葉に力強く応え『内なる魔界』を走る。 二人をアインハルトとヴィヴィオをホラーから守るためにただひたすら走り抜けた

 

「会わなくて良かったのか?」

 

 

―…はい、タカヤは誰に教えられた訳では無いのに『守りし者』としての道を歩み始めています、僕が出来るのは見守る事だけです―

 

 

「そうか…だが運命とは皮肉なモノだな…ユウキ」

 

 

 

―…ですが僕はタカヤを信じています、あの子達を…『戦闘機人』だった過去では無く、過去と向き合い今を精一杯に生き始めた彼女達を見てくれると…そして本当の真実を―

 

 

 

魔導文字が白い空間を走る中、オウガは響いて来た声に答えやがて霞の様に消え去る…

 

 

 

――――――――――

―――――――――

――――――――

 

 

 

「ヴィヴィオさん、速く!」

 

「ハアハア!キャッ!!」

 

 

人気の無い大通りを走り迫り来るホラーから逃げるも足が縺れ倒れるヴィヴィオに駆け寄り立ち上がらせ逃げる二人にホラー『サジッタ』は駆けながら腕を構え矢を放つ

 

 

 

 

無数の矢が二人に後数メートルと迫り逃げきれないと覚悟し目を瞑る二人の前に黒鉄色のナニかかが立ちはだかり無数の矢を剣で弾かれた

 

 

 

「「タ、タカヤさん!」」

 

 

「…ヴィヴィオ、アインハルト…早く逃げて!!」

 

タカヤの言葉に頷き離れたのを確認しホラー『サジッタ』に煌牙を抜き放ち構える

 

 

―タカヤ!野郎は『サジッタ』…正確なと射撃、バカみたいに固い防御力が特徴だ…油断するな!―

 

 

「うん!」

 

煌牙を頭上に構え同時に真円を描き光に包まれ、牙を剥いた狼の面と西洋風の意匠持った白金の鎧を纏ったタカヤが現れ同時に地面を蹴り間合いを詰め斬りかかる

『ハァッ!セイ、セイ、ヤアアア!!』

 

跳躍し斬りかかるもその腕に防がれるが魔戒斧形態に切り替え重さを利用しガードごと切り裂き同時に無数の蹴りを繰り出され倒れるサジッタだが対して効果がない

 

 

―野郎、固いだけでなく後ろに下がってダメージを少なくしたみたいだな…どうする?―

 

 

『…見切った、行くよキリク!!』

 

 

ふらふらと立ち上がり僕に凄まじいスピードで迫るサジッタ、其れに対し魔戒斧を魔戒剣へ切り替えるとある紋章を正面に描く、菱形を描き其れを囲むように真円を描き逆袈裟で切り払う

 

白く煌めく光の斬撃がサジッタを当たる寸前で押し返し地面に倒れた時、馬の嘶く声と蹄を鳴らす音を辺りに響かせ其れは現れた

 

 

白く輝く体躯、龍を模した頭部と甲冑を纏い表面には赤と黒の模様が施された一頭の馬…魔導馬が姿を顕す

 

 

魔導馬は魔戒獣の魂を使い魔戒法師が獣の死骸とソウルメタルで作られた身体に封ずる事で産み出される…が同時に危険を伴い命を落とした法師も居たと言う

 

ある時は足、ある時は楯となり魔戒騎士と共に戦う愛馬…時空を操る事が可能で魔界と現世を行き来する能力を持つ

 

歴代白煌騎士と共に戦った魔導馬『白煌』がオウガをその背に乗せ姿を現す

 

 

「凄い…」

 

「…アレは…」

 

 

ヴィヴィオが感嘆の声を漏らす一方、アインハルトは家にある絵に描かれていた馬?と似ている事を思い出す

 

 

『…ハァッ!』

 

 

掛け声と同時に駆け出す白煌…地面を駆けると同時に白く煌めく焔と蹄の音を残しサジッタへ迫る

 

 

『――――――――――――――!』

 

 

迫る白煌に対し再び無数の矢を放つが全てを魔戒剣形態に切り替えられた煌牙に切り払われその腕を振り回すも潜り込まれ跳躍した白煌の後ろ脚におもいっきり蹴り飛ばされ仰向けにひっくり返るサジッタ

 

 

 

―…野郎、白煌必殺『人のなんたらを邪魔するホラーは魔導馬に蹴られて死んじまえ!』を食らっても平気なのかよ…―

 

 

『キ、キリク!そんなことよりもまたダメージを減らされたみたいだ…白煌、僕に力を貸してくれるかな?』

 

 

僕の問いに応えると言わんばかりに嘶き白煌は前肢を大きく振り上げ地面を蹄で踏み鳴らすと同時に衝撃波が発生し煌牙に変化が現れる

 

 

白煌の蹄に蓄積された魔導力《地獄の蹄音》が波動となりオウガの刀身を幅広く厚く、さらに自身の身長よりも巨大化した《煌牙重剣斧》へと姿を変え構える

 

『―――――――――――――――!!』

 

 

雄叫びを挙げ地を駆けサジッタは無数の矢を放つ、同時に白煌も駆け出し《煌牙重剣斧》を重斧に切り替え振り回し矢を弾き終えると同時に素早く重剣形態に切り替えると跳躍し真っ向両断し勢いは止まらず地面を切り裂き地面が大きくえぐれた

 

 

『ヌチシテモジャヌヲヌルカ…ヌイウウヌチヌウクツグシヌヌクスメ!!(マタシテモジャマヲスルトハ…メイオウノチヲウケツグキシメ……ガアアアアアアアア!!)』

 

 

 

その体を煌牙重剣形態に切り裂かれながらも魔界語で断末魔を残し弾けるサジッタを見届け僕は白煌と鎧を返還しその場に降り立つ……誰かに背後から抱きつかれ倒れそうになる

 

 

 

「タカヤさん、怖かった…怖かったよ~」

 

 

「わ、私もです…タカヤさん」

 

「ち、ちょっと!あんまり密着しないで!?」

 

 

アインハルトとヴィヴィオに両脇から僕の腕に抱きついてくる、二人のささやかな膨らみが当たって…当たってるからあんまり押し付けないで…

 

 

二人がようやく落ち着いた時は夜も遅く今の時間に一人で帰すのは不味いと考え僕は其々の家まで送る事にし三人で帰る…だけど二人ともコートの裾をキュッと握り離そうとしなかったから道行く人達にクスクスと笑われて少し恥ずかしかった

 

 

だけどこの時の判断があんな事?になるとは僕は夢にも思わなかった

 

 

第八話 白煌

 

 

 




キリク
『試練を乗り越え魔導馬【白煌】を手にしたタカヤ…しかし更なる試練がタカヤを襲う(笑)…次回、宿泊!……これで治るといいんだがな~』



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