魔法少女リリカルなのはvivid~守りし者~《完結》   作:オウガ・Ω

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幕間 別離

新暦75年 アインヘリアル

 

同施設付近

 

 

「参ったね…皆無事かな?」

 

 

「無事…とは言いたいですが、一尉、騎士アキツキの方こそひどい怪我を…」

 

 

物陰に隠れ辺りをうかがう、青いボディスーツを纏った女の子が空を飛び回っている

 

視線を戻し部下を見ると、怪我をしているのが大半を占め動けない者が多い

 

 

「僕なら大丈夫だよ…其よりも此所を守りきることは出来ないな…」

 

 

「一尉だけでも早く逃げてください!」

 

 

「それは出来ないな…部下を守るのは上官である僕の勤めだ…」

 

 

「ですが!」

 

 

「…僕は君達を無事に家族の元に帰さなければならないんだ…囮になるからその間に逃げるんだ、これは命令だよ」

 

 

「騎士アキツキ!!」

 

そう告げると外へと飛び出し同時に空へと飛翔する

 

 

「………………………」

 

「………………………」

 

 

無言で彼に対峙する少女…機械的で無表情な顔を見て彼は思う

 

まだ若いのに、笑顔が一番似合う年頃なのに…だけど彼にはは守らなければならない人達がいる

 

 

「僕は…管理局所属ユウキ・アキツキ一等空尉…または騎士アキツキ!ここから先は行かせないアーク!」

 

―承知したマイスター!―

 

 

剣を左手の上に添え右手を引き突きの構えをとると同時にアクセルをかけ一気に間合いを詰めると斬り合う

 

「……………………」

 

 

斬り結ぶも彼女達も負けてはいない、油断すればこちらが負け……いや死ぬ

 

二対一で突き、横薙ぎ、柄撃ち、逆袈裟を織り混ぜながら激しく斬り遇いながら部下達が逃げる時間を稼ぐ

 

僕の剣技は我流にアキツキ家に伝わる剣技を加え結果、二対一での戦いが可能になり聖王教会から『騎士』の名を授かったが…今は目の前の相手に集中し時間を稼がないと

 

 

空を三つの光が走ると同時に甲高い金属音、火花が舞わせながら響きわる

 

 

部下達、みんなは無事に逃げ切れただろうか?

 

でも今は彼女達の注意を部下達から自分に向けさせる

 

そう考え、目の前の相手……戦闘機人二人を相手に剣を交えるが僅かな違和感を感じ切り結びながら懐から一枚の札を取りだし念じる、二人の額に黒く淀んだ気、邪気が見える。

 

 

まさかと思った僕の耳に声が届いた

 

 

「…け…て…誰か…」

 

 

 

弱々しい声…しかも子供の声…

 

声がした方へ目を向けると瓦礫の下から手が見え誰かに助けを求めるように虚しく空を切る

 

―おとうさん―

 

 

「…ッ!ハアアアッ!」

 

 

剣を振り払うと同時に衝撃波を発生させ二人を吹き飛ばし一気に子供の所へ駆け瓦礫を除ける

 

 

「…あ、りがと…う…」

 

 

「もう大丈夫だから安心して…」

 

 

子供の無事な姿を見たときだった、僅かな振動と胸もとから光るなにか…血に濡れた黒い剣の切っ先を見た時熱いものが胸の奥から込み上げた

 

 

「ゴボッ…」

 

 

口からでたおびただしい血が流れ落ち地面に赤い染みを作る

 

 

「…………………………」

 

ゆっくりと引き抜かれる感触を感じながら僕はようやくわかった

 

 

自分が刺し貫かれたことに…

 

 

振り返ると無表情な顔の女の子が光る双剣を携え立ち足元には真っ黒な剣が血に濡れ落ちてるのを見ているが邪気が抜け落ち瞳に光が戻るのと同時に真っ黒な剣が魔導文字を煙のように上げながら消え去った

 

「あ、あああ!?」

 

 

正気に戻った子の声を耳にした僕の全身から力が抜け落ち地面に倒れようとしたが強い邪気を感じ最後の力を振り絞り立ち上がった

 

「………ぐ、……………くう!」

 

 

もし倒れたら目の前の子供と二人はどうなる?おそらく強い邪気を放つ存在は放ってはおかないだろう

 

ならば自分はこの子達の為に剣を振るい守らなければならない

 

 

無言のまま剣を構え、茫然自失で立つ二人の戦闘機人と対峙する。何か連絡を受け二人はそのまま何度も振り返りながら去っていくのを見届けた瞬間力が抜け大の字に仰向けになりながら倒れた

 

 

「ハアッ、ハアッ、ウ!ゴボッ…僕は死ぬのかな…」

 

―マ、マイスター!しっかりしろタカヤとメイを置いて先に逝く気か?生きろ!!―

 

アークの声をききながら薄れいく意識の中、僕はタカヤの事を思い浮かべた……

 

魔戒騎士としての才能は恐らく歴代の上をいくが『守りし者』としての本当の意味をタカヤはまだ知らない……

 

 

僕は魔戒騎士じゃないけどまだ教える事がたくさんあったのに、……は技術的、剣技と体技、ソウルメタルと魔導火の扱いを教える事はできる

 

 

其よりも僕はタカヤとの約束を破る事が気掛かりだ

帰ってきたら外のお話をたくさんする約束を果たせない

 

 

(タカヤ…約束を破ってごめんね…悪いお父さんで…ご…め…ん……)

 

 

…交わした約束を果たせない事をこの場にいない我が子に謝りながら彼は息を引き取った

 

 

小さき命と部下達を守り抜いて……

 

―――――――

 

 

新暦78年

 

 

アキツキ屋敷

 

 

同鍛練場

 

 

「立ちなさいタカヤ」

 

 

剣を構え私は…弟子のタカヤに立つように言う

 

「…貴方がソウルメタルを用いた訓練を始め半年経ちますが…しかし未だ鎧、オウガの鎧を召喚は出来ていません…今日こそ鎧の召喚を成功させなさい」

 

 

「…はい…母さ…」

 

 

「…私は貴方の母ではありません…さあ鎧の召喚をはじめなさい」

 

私の言葉に頷くと剣を構え頭上に円を描くも鎧の召喚が出来ず消えさる

 

 

「もう一度よ…タカヤ」

 

 

 

私はこの子の母だ…厳しいのは自分でもわかっている、何時ホラーが蘇るかわからない今そんな悠長に構える時間は無かった

 

あの人が死んで三年が経つ…タカヤを魔戒騎士として鍛えホラーから王の血筋を守らなければ………を甦らせる事になってしまう

 

女である私は騎士には為れない…あの人の優れた騎士の血を受け継いだあの子の才能は常軌を逸していた

 

 

六歳で魔戒剣斧『オウガ』に自身の主に選ばれ、笑いながら「ぼくとともだちになろう」と笑顔で気難しいキリクとも契約したタカヤを見てある古い伝承を思い出した

 

 

 

『十三の魔獣とその王が蘇りし時、煌牙と魔導身具に選ばれし騎士再び現れ、魔獣とその王を白く煌めく炎剣にて闇へ葬らん…』と伝えらていた

 

ならばこの子の運命は魔戒騎士としてホラーを葬り王の血筋を守る事だけが必要だ

 

 

余計な知識を与えずに只ホラーを葬るだけの魔戒騎士にしなければ…

 

鎧の召喚訓練は日付が変わろうとした時に初めて成功した …煌牙の鎧に関する説明を終え装着したタカヤに体で魔導刻99,9秒ギリギリまでの感覚を覚えさせた

 

 

剣技と体技、ソウルメタル、魔導火、鎧の召喚の訓練過程を異例の早さでタカヤは終えた

 

 

後は魔導馬【……】の召喚をするだけとなった

 

 

だがこれだけはどういう修行をすればよいかを私は知らなく、キリクに聞いてはみたものの『俺は知らない』と返され日は過ぎたが今日の鍛練終えることにした

 

 

「指導ありがとうございました…先生」

 

 

「…タカヤ、明日も早くから鍛練をします、其れまで体を休めておきなさい」

 

 

「……はい」

 

 

 

疲労困憊に満ちた顔で頷いたタカヤを残し私は鍛練場を後にする

 

この時、気づけばよかった…タカヤが家出を考えていた事に

 

 

次の日の朝、何時までも鍛練場に現れないタカヤを自室まで迎えにいくとすでに姿は無くもぬけの殻でキリクも魔戒剣斧【煌牙】も見当たらない…ふと机を見ると書き置きが一枚残されていた

 

 

『母さん…僕は貴方の道具じゃない…今までお世話になりました…タカヤ』

 

 

その一文を見た時、私はあの子を…タカヤをホラーを斬るための道具としてしか見ていなかった事に気付くがもう遅かった

 

 

私はタカヤをホラーに絶対に負けない魔戒騎士にしたかった…もう大事な人を失いたくなかった其なのにタカヤにひどい仕打ちをしてしまった

 

 

ユウキもタカヤも私を絶対許してはくれないだろう

 

「ごめんなさい…タカヤ…貴方にひどい仕打ちを…」

 

 

私は只立ち尽くしたままこの場にはいないタカヤに謝り泣く事しか出来なかった…

 

 

この日、私は愛する者をまた失った

 

 

幕間 別離 (了)




キリク
『お前ら人間は旅行に行った事があるか?俺はタカヤとあの家を出ていろんな場所に行ったぜ…これもある意味旅行だよな?……次回、旅行!ノーヴェからのお誘いは受けろよタカヤ~』


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