モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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3章 雪山と砂漠 沼地と火山 09

キリンは天高く嘶くと、固まっているリヴァル達目掛けて駆け出した。もちろんリヴァル達は余裕をもってその場を離れる。

「ペイントっ!」

リヴァルはキリンから目を離さずに右手をアイテムポーチに滑り込ませ、中からペイントボールを取り出して投げつけた。それは一直線に飛び、キリンの首筋で弾ける。

キリンは様子見していて、突進した後にその場を動いていなかったが、リヴァルのペイントボールを受け、一瞬視線をリヴァルに向けてしまう。その隙を逃すショウヘイではなかった。

ショウヘイはその一瞬の隙に、キリン目掛けて飛び出した。キリンは駆け寄るショウヘイの足音に振り向くが、その時には既にショウヘイの間合いだった。

「はああっ!」

ショウヘイは大上段からの一撃を放つ。しかし、キリンはショウヘイの攻撃を自ら走り出すことで回避してみせた。

「くっ…!」

走り出したキリンをショウヘイは目で追う。キリンはハンマー「アイアンストライク改」を構えるリサを狙っているようだった。

一直線にリサへ向かうキリン。リサはキリンの攻撃を避けつつ、キリンが突進してくる勢いを利用してハンマーを叩きつけようと考えていた。

(落ち着いて、私…)

一直線に迫るキリンに、リサは動じない。

(3…2…1…今っ!)

リサは自分がハンマーを振る速度とキリンの速度からタイミングを算出し、「アイアンストライク改」を横から大きく殴りつける。

(なっ…!?)

しかし、キリンはリサの目の前で跳躍し、リサの頭上を超えて反対側に降り立ってみせた。リサはハンマーが空振りしたことによって、その場で転んでしまう。

「リサっ!」

リヴァルが駆け寄ろうとしたが、その前にユウキがボウガンでキリンを牽制してくれた。キリンの気がユウキに向いたその間にリサは立ち上がり、キリンから距離を取る。

キリンは、今度はユウキ目掛けて駆け出した。一直線に走るキリンへユウキはさらに弾丸を一発撃ったが、キリンはこれを跳躍して回避する。

「嘘だろっ!?」

ユウキはボウガンを抱え、身を投げ出してキリンの突進を回避した。

「逃さねぇ!」

ユウキに回避されて立ち止まるキリンへ、リヴァルが駆け寄る。キリンが振り向く瞬間を狙って、リヴァルは大剣「オベリオン」の重い一撃をキリンの頭部へ与えた。キリンはリヴァルの攻撃に怯み、一歩退いてしまう。リヴァルは深追い無用と判断し、一旦キリンとの距離を取る。

その直後に、キリンが天高く嘶いた。するとキリンの周囲に落雷が発生し、雨に濡れている枯れ草を燃やす。

「危ねぇ…」

リヴァルは思わず言葉に出した。あの落雷に当たってしまえば、大怪我は間違いないだろう。

落雷が収まると、キリンは掲げていた前脚を下ろした。その無防備な時間を狙って、キリンに肉薄する白と黒の影。リサとショウヘイだ。

「はああっ!」

リサの重い一撃は、キリンの横腹を捉えた。元々体重が軽いのだろうキリンは悲鳴に近い呻き声を上げて吹き飛ばされ、ぬかるむ地面に横倒しになった。そこへショウヘイがたたみかける。ショウヘイは無言で太刀「ヒドゥンサーベル」を操り、キリンの首筋を斬りつけていく。さらにリヴァルが駆けつけ、キリンの胴体へ一撃を下す。

「っ!?」

しかし、リヴァルの大剣は鈍い音を立てて弾かれてしまった。まるで岩を叩いたような感覚である。リヴァルは2撃3撃と攻撃を加えるが、やはり手応えがない。それはリサも同じようで、苦い表情から心中が伺えた。

突然キリンが起き上がったので、リヴァル、リサ、ショウヘイは距離を取る。キリンは再び天高く嘶き、周囲へ雷を落とした。しかし、その間キリンは身動きがとれないので、ユウキの格好の的となる。

「リヴァル!リサ!」

ショウヘイに名前を呼ばれ、リヴァルとリサは駆け寄った。

「キリンの弱点は首から上だ。胴体は岩みたいに硬い」

「分かった…!」

「はい…!」

手短に話しを済ませ、リヴァルとリサはキリンを挟んで向かい合うように立ち、キリンの落雷攻撃が収まるのを待つ。

「ぐああっ!」

突然視界の右端が青く光った直後に、右側から狙撃しているはずのユウキから悲鳴が上がった。リサはキリンから目を離し、ユウキの方を振り向く。

そこには煙を上げるボウガンに、横たわるユウキの姿。

「ユウキさん!?」

リサはユウキのもとへ駆け寄り、ユウキの上半身を抱え起こした。

「ぐっ…!」

ユウキの口から苦しそうな声が漏れる。

「何があったんですか?青い光が見えましたけど…」

「キリンが…ピンポイントで雷を落としやがった…!」

ユウキはそう言って足元で転がっている「グレネードボウガン改」に目をやった。リサもつられてそれを見ると、弾倉から煙が上がっている。

「雷で火薬に引火したんだよ…。まだ撃てるかな?俺のボウガン…っ!」

「…今は退きましょう。このままでは…」

「…ああ」

リサはユウキに肩を貸そうとしたが、ユウキは「大丈夫。リヴァルのところへ戻れ」と言って「グレネードボウガン改」を持ち、ひとりでこのエリアを脱出した。

「リサっ!」

背後からショウヘイに呼ばれ、リサは振り向く。そこには全速力で駆けるキリンがいた。狙いはもちろん、リサである。

(回避しても間に合わない…!)

一瞬でそう判断したリサ。もはや条件反射で目を閉じてしまう。リサは最悪死を覚悟したものの、キリンに踏まれ弾き飛ばされることはなかった。代わりに鈍い衝突音が聞こえただけ。

「大丈夫か!リサ!」

目を開けると、そこには大剣「オベリオン」の腹でキリンの突進を防いでくれたリヴァルの姿があった。キリンは突進をリヴァルに受け流されて今は遠ざかり、ショウヘイが気を引いてくれている。

「立てるか?」

「…もちろんです」

リサは差し出されたリヴァルの右手を、しっかり握って立ち上がった。


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