モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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1章 重なる想い ずれる思い 14

リヴァルがジュンキに謝って数日後、ついにポッケ村と外界を結ぶ唯一の山道の除雪作業が完了し、それと同時にリヴァルの怪我も完治した。リヴァルにとって、山道の開通は村を出ることと同義だったはずだが、今ではその考えはない。リサに「この村に留まって欲しい」とお願いされてしまったからだ。

リヴァルとしては、街に戻っても何らかの予定があるわけでもないし、帰りを待っている仲間もいない。だからこの村に留まっても問題ないのだが、この村に留まる上で最大の懸念が「ジュンキ」というハンターの存在だった。先日仲直り(?)したので関係は決して悪くないのだが、リヴァルの中でのリオレウスの位置づけが変わるほどではなかった。

話は変わるが、リヴァルの怪我がすぐ治ることを予測したリサ。どうして予測できたのかリヴァルはリサに尋ねたが、リサは「何となくです」と抽象的な答えしか示さなかった。

そして山道が開通した翌日、リヴァルとリサは装備を整えて集会場に向かった。集会場の中ではジュンキ、クレハ、ショウヘイ、ユウキ、カズキといつもの5人が揃っていた。

「んで、今日はどうするんですか?ジュンキ先輩?」

リヴァルは今回も嫌味を込めてジュンキに尋ねた。

ジュンキは苦笑いしながらも「今から調べる」と言って座っていた長テーブルから立ち上がり、依頼書が貼りつけてある掲示板に向かった。リヴァルも、今はどんな依頼が届いているのか気になり、ジュンキの隣に立って掲示板を覗く。

「さてと、今日はどうするかな…」

ジュンキはとりあえず、右上から順番に目を通していく。

(ドスファンゴ、ドスランポス、イャンクック、ゲリョス…)

再びドスファンゴなんて依頼を受けてしまうと、リヴァルが背中の大剣オベリオンで斬りかかってくるだろうなぁと苦笑いしながら、ジュンキは依頼書に目を通し続ける。

(ガノトトス、バサルモス…リオレウスとリオレイアかぁ…)

ここでジュンキは、リオレウスとリオレイアの討伐依頼書を見つけた。リヴァルがリオレウスとリオレイアに強烈な殺意を抱いていることはリサから聞いているので、これは避けようとして…狩りの指定場所を見てしまった。

「なっ…!」

狩りの指定場所、そこはココット村の裏山だった。そう、この討伐依頼のリオレウスとリオレイアというのはザラムレッドとセイフレムのことを指しているのだ。ジュンキはついリヴァルの方を向いてしまい、リヴァルと目が合う。

「何だ?」

「い、いや、何でもない…!」

ジュンキは至極冷静に、そして自然に、リオレウスとリオレイア…もといザラムレッドとセイフレムの討伐依頼書から手を離した―――瞬間、隣からリヴァルの腕が伸びてきて、ジュンキが今さっき手放した依頼書を掲示板から剥がし取った。リヴァルの口元がにやける。

「…これでいいな?」

「…ああ」

ここでは何を言っても無駄だと考え、ジュンキは頷くしかなかった。

 

リヴァルは機嫌がよかった。何といっても、今回は久々にリオレウスとリオレイアを狩れるのだから。そのせいか、ポッケ村から一週間近くかけてココット村に着き、隣でリサやクレハが「お尻が痛い~」と言っていても、リヴァルは何一つ文句を言わなかった。

時刻は夕方。地平線の先の小さく見える山に陽が沈む直前に、リヴァル、リサ、ジュンキ、クレハの4人は、ジュンキの故郷でもあるココット村に降り立ったのだった。

「まずは村長に挨拶したいんだけど、いいかな?」

「どーぞ」

ジュンキは一応リヴァルの了承を得ると、この村の中心にある大きい建物を目指して歩き出した。この村の集会場である。

その集会場の入口の前に、村長は「ぽけー」と立っていた。

「…村長」

ジュンキが声を掛けると、村長は驚きの表情を浮かべた後に笑みを浮かべた。

「おぉ、ジュンキか。元気にしておったかの?」

「村長もお元気そうで」

「クレハも元気そうじゃな」

「はい、お陰さまで」

「して、後ろの2人は…?」

「初めまして、リサ、と申します」

「リヴァルだ」

ジュンキが村長にリヴァルとリサの紹介を終えると、4人は集会場を後にする。しかし歩き出してすぐに、ジュンキとクレハが立ち止まってしまった。

「…ちょっと用事があるんだ。すぐ戻るから、しばらく村の中を散策していてくれないか?」

「私も同じく、用事があるの」

そう言って、ジュンキとクレハはリヴァルとリサから離れて行ってしまった。突然その場に残されてしまったリヴァルとリサは、互いに顔を見合わせる。

「まったく、こんな小さな村に一体何の用事があるんだよ…」

「リヴァルさん、あの…」

リサが小さく言葉を発したので、リヴァルは遠ざかるジュンキとクレハの後ろ姿からリサへ視線を移動させた。

「何だ?」

「もしかして、ジュンキさんとクレハさんは、チヅルさんのお墓に向かったのではないでしょうか…」

「…!」

リヴァルは思わず深い赤色の瞳を見開いた。そしてジュンキとクレハの姿を探す。丁度、ジュンキとクレハは細い裏道へと消える直前だった。

「り、リヴァルさんっ!?」

リヴァルはいつの間にか、ジュンキとクレハを追い駆けていた。

 

狭い裏道を抜けた先に、墓所はあった。

たくさんの墓石が並ぶ中のひとつ、その前にジュンキとクレハは並んでいた。

「り、リヴァルさん…置いて行かないで下さい…」

後ろから追いかけてきたリサも、この光景を見て黙り込む。

―――静かな時間が過ぎる。

リヴァルは静かに、チヅルというハンターの墓へ向かって歩き出した。リサも後からついてくるのが足音で分かる。

リヴァルはジュンキとクレハの後ろに立つと、静かに祈った。

 

「ありがとう。チヅルも喜んでいると思う」

墓所を出て村に戻ると、リヴァルはジュンキにお礼を言われた。

「ハンターとしての、敬意を払ったまでだ」

「それでも、ありがとう」

「…今日は狩り場のベースキャンプで一泊して、明日の朝に狩るんだろ?もう陽が沈んだし、早く行こうぜ」

リヴァルはそう言うと、リサやジュンキ、クレハを置いて先行した。


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