モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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2章 チヅルの戦い 05

ドンドルマの街にあるハンター専用の病院で、ショウヘイは緊急入院することになってしまった。

幸いにもユウキの隣のベッドが空いていたので、ショウヘイはユウキと並ぶことができた。

「ユウキ、まだ治らないの?」

「ん~…。俺は大丈夫って言ってるんだけどなぁ…」

クレハの呆れた口調の言葉に、ユウキは小首を傾げることしかできなかった。

「ショウヘイは大丈夫?」

「ああ。症状は落ち着いている。黒ディアブロスに突進された時に、角を切り落とせてよかった」

「危うく腹に、穴が開くところだったからなぁ」

ショウヘイの答えに、カズキが自分の腹を撫でながら言った。

「それに…」

「それに…?」

クレハが小首を傾げる。

ショウヘイは目を開けると、小さく笑ってから口を開いた。

「俺は竜人だからな。ジュンキみたく、すぐ元気になるさ」

「でも、治るのは早いに越したことないだろ?元気な俺たち3人で、何とかできないかなぁ…?」

カズキがそんなことを言ったので、チヅルとクレハはカズキの方を向いた。

「例えば、よく効く薬を探してくるとかさ」

「例えば?」

「…いにしえの秘薬?」

カズキの回答に、チヅル達4人は絶句した。

いにしえの秘薬といえば、治療剤の中では最高級品で、素材も簡単には見つからないものだらけだからだ。

「いにしえの秘薬かぁ…。確か、活力剤とケルビの角…だったかな?」

「活力剤は、マンドラゴラっていうキノコと、増強剤の調合だったよね…」

「増強剤なら、ハチミツとにが虫の調合だな」

「成功率を考えると、ある程度の数はあった方がいいよね…」

チヅルの言葉を最後に、会話が途切れてしまった。

「でも、ここはハンターが集まる最大の街、ドンドルマだぜ?難しいかもしれないが、何とか集まるんじゃないか?」

「…そうだね。やってみるだけやってみよう。ね、チヅルちゃん?」

「うん。やる前から、諦めたくないもんね」

「よーし、そうと決まれば役割分担だ!俺は頑張って、マンドラゴラっていうキノコを探してくる!」

それだけ言い残し、カズキは病室を飛び出していった。

「じゃあ、私はケルビの角を探すね」

チヅルもそう言うと、病室を出る。

「う~ん、私はハチミツとにが虫かぁ。簡単な分、ふたつ用意しないとね」

クレハはひとりそう呟くと、病室の出口へ向かって歩き出した。

だが病室を出る直前に、ショウヘイとユウキに呼び止められてしまう。

「なぁに?ショウヘイ、ユウキ…」

「…すまない。迷惑をかけて」

「でも、ありがとうな。よろしく頼むぞ」

ショウヘイとユウキの言葉にクレハは笑顔で頷くと、病室を後にした。

 

「ふう…」

チヅルは大衆酒場の中を歩きながら、ため息を吐いた。

ショウヘイとユウキの病室を出てから既に2時間。市場の半分を歩き回ったが、まだケルビの角は見つかっていない。

大衆酒場で働くユーリにも聞いたのだが、ユーリでも売り場までは知らなかった。もちろんパーティメンバーに持っていないか聞いたが、自分を含めて、誰も持っていなかった。

「あ~あ…。こんなことなら、この前アイテムボックスを整頓した時に、売らなきゃよかった…」

チヅルはひとりでブツブツ言いながら、ハンターへの依頼が掲示されているクエストボードの前に、何となく立った。

「狩りに行ったほうが早いかな…」

チヅルは冗談半分で、ケルビ討伐の依頼を探してみた。しかし、それもない。

「ん~!もうっ!」

クエストボードには、何枚も重ねて依頼書が貼られている。チヅルは一応、下の方も探してみた。

「出てこい出てこい出てこ~い!―――あっ…!」

チヅルの目に、一枚の依頼書が飛び込んできた。それは、単にリオレイア狩猟の依頼書なのだが―――。

「エリア区分Kって確か、私がセイフレムと会った、ココット村の裏山じゃ…!」

チヅルはゆっくりと目を閉じ、一度深呼吸してから目を開くと同時に、この依頼書をクエストボードから引き剥がした。

 

カズキは街の市場のほとんどを回り、ようやくマンドラゴラを入手することができた。

そして意気揚々とショウヘイとユウキの病室に戻ってくると、既にクレハが椅子に座っていた。

「お、早いなクレハ」

「私は簡単だったから。で、カズキはどう?」

「ふふふ…!ジャジャーン!」

カズキはアイテムポーチから、マンドラゴラを3本、テーブルの上に置いた。

「3本も!?お疲れ、カズキ。これで材料は揃ったよ」

「ん?チヅルは?」

「チヅルは、クレハが来る前にケルビの角を5本テーブルの上に置いて、どこかに行っちまったよ」

カズキの問い掛けに、ユウキが答えた。

「どこに?」

「さあ…?」

「きっと疲れて寝てるんだよ。さ、調合しよう?カズキ」

クレハはそう言うと、調合するための道具を全部カズキに手渡した。

「クレハはやらないのか?」

「私は、手先が器用じゃないからさ…」

「…?」

カズキは大袈裟に首を傾げてみせた。


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