「ドスランポス。さて、どうやって狩る?」
ペースキャンプに到着すると、ショウヘイ達4人は簡単な話し合いの場を設けた。
「グラビモスやディアブロスを相手に互角に戦い、つい先日にはラオシャンロンやミラバルカンと戦ったハンターが4人もいるんだぜ?2人1組で動けば問題無いと思うけど?」
「あの~…」
カズキの自信満々の言葉に、チヅルがゆっくりと右手を上げた。
「ん?どうした?チヅル」
「私はまだイャンガルルガ止まりなんですけど…」
チヅルはそう言って、自分の防具であるイャンガルルガシリーズを見せるように両腕を開いた。
「…」
「…」
「…なあ、イャンガルルガのレベルって?」
「ゲリョス以上リオレイア以下ぐらいだよ…」
カズキが小さな声でユウキに尋ねると、ユウキはカズキに耳打ちした。
「ま、でも、ほら、ユウキの装備もフルフルシリーズだしさ、な!」
「ガンナーと一緒にされても…」
「そ、それにだ!ショウヘイと俺に合流する前とかに、リオソウルとかディアブロスとかを狩りに行っていたんだろう?」
「ま、まあ、ね。ごめん、さっき言ったのは、自信を持って言えるのはここまでってことだから、あんまり気にしないで…」
チヅルが苦笑いしながら言うと、ユウキが口を開いた。
「チヅルはミラバルカンとも戦ったんだから、自信持てよ」
続けてショウヘイも口を開く。
「チヅル、今回はランポスだ。チヅルはリオレイア以上のモンスターに対して自信を持てないのかもしれないが、今回は関係ない。そうだろう?」
「…うん。そうだね。ありがと、ユウキ、ショウヘイ」
「よし、じゃあチームを分けようか」
「どう決める?」
ユウキの問いかけに、カズキは無言で拳を突き出した。
「これ、だろ?」
カズキの提案に、3人は同時に頷いた。
「せーのっ!最初はランポス―――!」
ジャンケンの結果は、ショウヘイ・チヅルペアとユウキ・カズキペアとなった。
「じゃあ出発しようか」
ショウヘイの一言で、今回の狩りが始まった。
このベースキャンプの出入口になっている短い洞窟を抜けると、そこは近くを川が流れる広場になっていた。いつもはこの場所に野生の草食竜アプトノスがいるのだが、今日は1匹もいなかった。
こういう場合は、この森と丘に異常が起きていることを表している。今回の場合はランポスだろう。
この広場を川沿いに北へと進めば丘陵地帯になっており、西へと進めば森林地帯となっている。ユウキは森を指差した。
「んじゃ、俺達は森に入ろうかな。いいよな、カズキ」
「ああ、いいぞ」
ユウキとカズキは、ショウヘイとチヅルに手を振りながら森の中へと消えた。
「私達も行こっか」
「そうだな」
チヅルとショウヘイは頷き合うと、丘陵地帯目指して歩き出した。
「ふう…。もういないか」
カズキは自分の武器であるランスのブロスホーンに付着したランポスの血液を振って落とすと、背中へ戻した。
「ここには、ドスランポスはいないようだな」
ユウキもそう言って、銃口を下ろす。
「なあユウキ、ひとつ提案なんだけど」
「ん?」
カズキが近づきながら意見を持ち掛けてきたので、ユウキは弾をリロードする手を止めた。
「この先は分かれ道になってる。二手に分かれないか?」
この場所のエリア番号は8番。ここには、出入口が3つある。
先程入ってきたエリア番号1からの道と、向かって左のエリア番号10への道と、右のエリア番号9への道だ。
地図上ではどちらを通っても、丘陵地帯のひとつであるエリア番号3で合流するはずである。
「そうだな…。俺達の実力なら大丈夫だろうし。そうしよう」
「俺は左の道を行くぜ」
「じゃあ俺は右で」
カズキは左の開けた道を進み、ユウキは右の狭い通路のような道へと進んだ。
「まいったなぁ…」
「1、2、3…。全部で6匹か」
一方、丘陵地帯を進むことになったチヅルとショウヘイは、エリア番号2の入り口で足止めを食らっていた。
エリア内のランポスの数が、相当多い為である。
「どうにかならないかな…」
「そうだな…」
ここでふと、ショウヘイがあることに気付いた。
「チヅル、ランポスをよく見ろ。2人1組…。いや、2匹1組か?隊列を組んで、手前に2匹、中央に2匹、奥に2匹のように見えないか?」
「…確かに!」
ショウヘイの意見に、チヅルは賛同する。
「これなら行けそうだな」
チヅルはそうだねと頷いてから、言葉を続けた。
「手前、中央、奥の順番に、私とショウヘイで1匹ずつ倒せば、何とかなるかも」
「ああ。手前の2匹が俺達と反対を向いたら、一気にエリアを縦断するぞ」
ショウヘイはそう言いながら背中から太刀「斬破刀」を抜いた。
「うん」
チヅルも双剣「封龍剣・超絶一門」を抜く。そして手前2匹のランポスの目線が外れた瞬間、チヅルとショウヘイは掛け声も無しに飛び出した。
チヅルとショウヘイの登場に手前のランポス2匹がすぐ気付くが、時既に遅く、既にチヅルとショウヘイの間合いに入ってしまっていた。ショウヘイが斬破刀を一閃、チヅルが封龍剣・超絶一門を右手と左手で二回、斬りつける。
―――ショウヘイが斬りつけたランポスは斜めに真っ二つになり、チヅルが斬りつけたランポスは頭部と胴体と脚部とに分かれてしまった。
「!」
「!」
二人はすぐ異常に気付いたが、勢いを止める訳にはいかなかった。
続いて中央にいた二匹のランポス、そして奥にいた二匹のランポスも、同じような運命を辿った。
「ショウヘイ―――!」
「チヅル―――!」
2人は顔を見合わせ、そのまま凍りついた。
「ショウヘイ…ひ、瞳が…!」
「ち、チヅルも…瞳…!」
「…私も、ショウヘイみたいになってるの?どんな色?」
「…まるでイャンガルルガのような、赤みのかかった黄色だ。俺はどうなってる?」
「私、はっきり覚えてる。黒龍ミラボレアスと同じ、明るい黄色だよ」
チヅルの言葉を最後に互いが互いを見つめ合っていたが、瞬きを繰り返すうちにチヅルは元の黒色の瞳に、ショウヘイも黒色の瞳に戻った。
「あっ…」
「…戻ったようだな」
「私達、竜人だったんだね。いつも忘れちゃうよ…」
「この異常な力も、竜の力のせいなのか?」
「多分…。いや、そうとしか考えられないよ…」
「参ったな…。これじゃあ素材を剥ぎ取れないぞ?」
ショウヘイの軽い冗談にチヅルは小さく笑うと、背中に封龍剣・超絶一門を戻した。
「歩きながら話そう?」
「ああ」
ショウヘイも背中に斬破刀を戻すと、チヅルと並んで隣のエリア番号3へと続く道へ進んだ。
すぐにチヅルの口が開く。
「ショウヘイはさ、自分が竜人だってことをどう思う?」
「どうって言われても困るな…。俺は特に気にしていないし」
「気にしてないって…」
「そうだな…。竜人は、この世界の均衡を保つ存在…だったか?俺も世界が壊れるのを望んでいるわけじゃないから、自分に出来ることなら何でもするつもりだ。まあこれは竜人としてではなく、ひとりの人間としてだけどな」
「なるほど…」
「もういいか?向こうさんは待ってくれないと思うぞ」
「え?」
ショウヘイに言われて前を見ると、そこには大きなトサカが目立つ、ドスランポスの姿があった。
「行くぞ?」
「うん!」
チヅルは大きく頷くと、背中の封龍剣・超絶一門を抜いた。