目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。
どうやら自分は、気を失った後目を覚ますことはなく、自分の部屋に寝かされていたらしい。窓の外がぼんやりと明るくなってきているところを見ると、まだ日の出前なのだろう。
ジュンキは上半身をベッドから起こすと、左手を額に当て、これからを考え始める。
そして意を決したように立ち上がると、装備を整え始めた。そこで、先日のミラバルカン戦で壊れたはずのレウスメイルが修理されていることに気が付く。
「…」
つい先程の決意が揺らいでしまうが、何とか押し殺して準備を続け、そして物音を立てないよう、静かに部屋を後にした。
「ニャー…」
その様子を、物陰からこっそり覗かれていることを知らずに。
いくら大陸最大の街ドンドルマといえども、日の出前の薄明かりの中を歩くハンターや商人はいなかった。
しかし、広場の中央に見慣れた竜が一匹いるのを確認して、ジュンキは苦笑いしてしまう。
「おはよう。どうした?」
「まずは礼を言いたい。…ありがとう」
「礼を言われる筋合いはないよ。―――これから、ひとり逃げ出すんだから」
「…訳ありだな。話してはくれぬか?」
「俺のあの力は、自分で制御出来ていない。また、いつ、どんな時に俺の中の竜が目を覚ますかも分からない。それが自分で制御出来るまでは…パーティを離れようと思う」
ジュンキの言葉に、リオレウスは何一つ言わず、黙って聞いていた。
「そうか。ヌシがそう思うのも、無理はない。儂に出来ることは少ないが…ヌシを運ぶことくらいなら出来るぞ?」
「…じゃあ、お願いするよ」
「行き先はどこだ?」
「大陸の最北端。そこには小さな村があって、今ハンターを募集しているって話らしいんだ。身を隠すには、丁度いいと思うんだ」
ジュンキはそう言って、リオレウスの右足の上に乗った。
「…ジュンキ」
突然後ろから声を掛けられて、ジュンキは驚いて振り向いた。
「クレハ…!どうして…?」
「ジュンキの部屋の、アイルー君が教えてくれたよ。…どこに行く気なの?」
「…聞いてたよね?大陸の最北端だよ。時間はかかるかもしれない…。でも、必ず戻ってくるよ」
「早く戻ってきてよ?」
クレハの寂しそうな表情にジュンキはしっかりと頷くと、リオレウスに「飛べ」と言った。
一気に飛び上がり、ドンドルマの街から北へと向かう。
「チヅルちゃんの気も知らないで…バカ…」
クレハは、小さくなっていくジュンキとリオレウスに向かって、小さな声で言った。
「良かったのか?これで…」
ドンドルマの街が粒になってしまった頃になって、リオレウスが口を開いた。
「ああ。…それよりも、気になることがあるんだけど」
「何だ?」
「お前にも名前ってあるのか?リオレウスっていったら、俺達だと人間、みたいな呼び方だろ?」
「…ザラムレッドだ」
「ザラムレッド…か。カッコイイ名前だな。これからもよろしくな、ザラムレッド」
ジュンキの言葉に、ザラムレッドは照れくさそうに「ああ」とだけ言った。
眩しい朝日を浴びながら、一匹の竜とひとりの竜人は、北へ北へと飛び続けた。
(1st Story おわり)
こんばんは。こんにちはかな?
今日はモンスターハンターの二次創作、MONSTER HUNTER 1st Storyを最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
作者の稚拙な文章を最後まで読んでもらえて、とても嬉しいです。
この物語、勿論ここで終わるわけではありません。
MH1stというタイトルの通り、これはまだ1番目の物語です。
文庫本でいうところの、第1巻が終わったぐらいでしょうか。
この物語は私だけでなく、多くの友人達の力を得て作り上げています。
キャラクターの名前が日本人っぽいのも、私の友人達のキャラクター名をそのまま使わせてもらっているからです。
この小説は、私が中学生時代に大学ノートへ書いていたものです。
この文章を記入している時点で私は大学生なので、5~6年前の作品となります(汗
構想5年とは、そういうことです。
この物語は、これからまだまだ続きます。
どうか最後までお付き合い頂けることを願って「あとがき」とします。
2011.03.14
2013.05.13 再掲載にあたり、加筆修正
2014.06.23 少し修正