モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

183 / 189
3章 再会 01

高い山が連なる合間を縫うような細長い谷を抜けると、いきなり景色が灰と白になった。空は厚い雲に覆われ、白くふわふわした物が降ってくる。雪だ。

ポポと呼ばれる草食竜に引かれた荷車の中から顔を出し、レンヤとレイナは驚きと感動の声を上げた。2人は雪を見た事が無いのだ。

「雪は初めてか?」

レンヤとレイナの横から顔を出したフェンスが尋ねると、2人は目を輝かせて頷いた。

「寒くなってきたな…」

ユウキはそう言いつつ、荷車の中へ積んでおいた毛布を手に取り、防具の上から身を包んだ。

「谷を抜けたな。ポッケ村は近いぞ」

レイナが連れてきたリアに餌を与えつつ、ショウヘイがポッケ村まで近いことを知らせる。

そしてカズキは毛布に包まり、眠っていた。

「そういえば、リヴァルさんはどんな人なんですか?」

荷車の外へ出していた顔を戻すと、レンヤはユウキとショウヘイに尋ねた。すると2人は顔を見合わせ、そして困ったような表情を浮かべる。

レンヤが思わず首を傾げると、ユウキが先に口を開いた。

「なんて言うかなぁ…。横暴?」

「そうだな…。無謀?」

2人の言葉にレンヤはどう返事をしたら良いか分からず、取り敢えず黙っていることにする。

「そ、それではリサさんという方は…?」

話を続けようと、レイナも荷車の外へ出していた顔を戻した。

今度もユウキとショウヘイは顔を見合わせる。そしてユウキが言った。

「ブラコンだな」

これから会いに行く人達は奇抜らしく、レンヤとレイナの心は一層不安になったのだった。

 

「着いたニャー」

荷車の御者であるアイルーが告げると、荷車は止まった。真っ先にレンヤが飛び降り、雪の感触を飛んで跳ねて感じ取る。

「雪ってこんなに柔らかいんだなぁ…!」

振り返ると、レイナも嬉しそうに新しく降り積もった雪の上に足跡を残し、楽しんでいた。

「ほらほら、遊ぶ前に村長のところへ行って挨拶だろ?」

フェンスが呆れたように笑いながら、荷車から出てくる。その次に出てきたユウキはショウヘイと協力し、食料や狩りの道具が入っている木箱を降ろす。最後に出てきたカズキは腰のポーチからマタタビを取り出すと、御者のアイルーへ手渡した。

「よし、行こう」

カズキが先頭を歩き、ポッケ村の門をくぐる。レンヤとレイナも続いた。村の中も雪が積もり、白色が太陽の光を反射して眩しい。

「リアちゃん、寒くない?」

レイナは頭の上のリアを心配する。暖かなココット村の近くで出会ったリアは、レンヤとレイナの2人に同じく雪山の環境に慣れていないだろう。

だがリアは「大丈夫だよ」と言わんばかりに尻尾を動かし、レイナの後頭部を軽く突く。

「…大丈夫みたいだね」

レイナはそう言ってレンヤの方を向き、レンヤも「なら良いんだけど」と頷いた。

 

ポッケ村の村長は、村で一番大きな建物である集会場の前に焚き火を作り、温まっていた。ショウヘイが前に出ると、村長は笑顔で顔を上げてくれた。

「おやおや、懐かしいお客様だね…」

「村長、ご無沙汰しています」

「久しぶりだな。元気してるか?」

ショウヘイの横に並んだカズキが軽い言葉で挨拶しても、村長は笑顔のままだ。

「おやおや、初めましてのハンターさんもいらっしゃるわね。お顔をよく見せて…」

村長の言葉により、レンヤとレイナは前に出る。村長はお婆ちゃんで、温かみのある人だった。

「レンヤです。よろしくお願いします」

「レイナといいます。お世話になります」

自己紹介に、村長は「うんうん…」と頷いてくれた。

「さて…。あなた達がここへ来たのは、あの2人へ会うためかい?」

「さすが村長。お見通しですか」

ユウキの苦笑いを交えた返事に、村長は「顔に書いてありますよ」と言い、集会場を指差した。

「あの2人なら、先程山から戻ったところです。会えば喜んでくれますよ」

 

村長の言葉に従い、レンヤとレイナ達は集会場へと足を踏み入れた。中は暖炉で火が燃え盛り、暖かかった。内装は全て木材から成っており、壁や天井、柱、テーブルや椅子まで木で作られている。

温かみのある集会場に見惚れていると、フェンスが探している2人を見つけた。

「あ、居ました。あの2人ですよね」

指差した方を見ると、4人掛けのテーブルに2人のハンターが向かい合って座っていた。

男と女である。どちらも赤色の髪だが、男の方が深い赤色で、女の方が明るい赤色といった具合である。武器は男の方が大剣で、女の方はハンマーだ。

女のハンターは背を向けているが、男のハンターは正面を向いている。その為、フェンスが見つけた直後に男のハンターも気付いたようで、ゆっくりと立ち上がった。同時に女のハンターが振り向く。

その様子をみて、レンヤとレイナ達も歩み寄った。

 

「何の連絡も無しに突然やって来るなんて…。一体何があったんだ?」

眉間に皺を寄せた男のハンターは、立ち上がった女のハンターの横に並んだ。

「なぁに、大したことじゃない。今日はお前達に紹介したい人物を連れてきたんだ」

カズキが笑いながら言うが、男のハンターは眉間の皺を戻さない。

「紹介したい人物ですか…?」

女のハンターが首を傾げる中、レンヤとレイナは緊張しつつも前に出る。

「は、初めまして…レンヤ、といいます…」

「れ、レイナと申します…。よろしくお願いします…」

「俺はリヴァルだ。こっちは妹のリサ」

「初めまして。リサです」

4人が挨拶を済ませると、リヴァルは再びカズキに目線を送った。その眼は「で、何なんだこの子供は?」と言っている。

「聞いて驚くなよ。ジュンキとクレハの子供だ」

「なっ…!」

「ええっ…!」

リヴァルとリサは声に出して驚いた。その上でリヴァルは無意識に一歩下がり、リサは両手で口元を押さえてしまう。

「…そうか。あいつらから話を聞いて、もうそんなに経つのか…」

「兄さんも早く結婚しないといけませんね」

「お前はどうなんだお前は…」

リヴァルとリサのやり取りを聞いて、レンヤは「シスコンだ…」と思い、レイナは「ブラコンだ…」と思ったのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。