モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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2章 手掛かり探し 02

白い防具に身を包んだハンターは、テーブルの間を抜け、カウンターへ直行してきた。

「違うわよ。この子達に、昔の話をね…」

「昔の話…?」

白い防具のハンターはユーリの前で立ち止まり、顔をレンヤとレイナへ向けた。

「この子達に昔の話?一体どんな話を?」

「あ~、そのね…うーん…」

ユーリが言葉を濁す。白い防具のハンターは、訳が分からないと首を傾げる。

「父と母の話です…」

レンヤの言葉に、白い防具のハンターが改めて振り向く。しかし、ますます訳が分からないと首を傾げてしまった。

「両親を見失ったのか?両親の名前は?」

白い防具のハンターが尋ねると、ユーリが鬼のような形相で睨んできた。ぎょっとしたが、開きかけたレイナの口は止まらない。

「父がジュンキで、母がクレハっていいます」

「へ…?」

白い防具のハンターは、この酒場にいる多くのハンターと同様、一瞬にして凍ってしまった。ユーリと2人を交互に何度も見る。ユーリは「やれやれ…」といった感じで諦めの表情だ。

「…もしかして、何か知っているんですか?」

レイナの言葉に、2人を覆っていた暗い雰囲気が徐々に明るくなっていく。

「教えて下さい!どんな小さなことでもいいんです!父と母は、生きているんですか!?」

キラキラと輝く2人の瞳を前にして、白い防具のハンターは、答えざるを得なかった。

「あ~…まずは自己紹介だね。俺はフェンス。ジュンキさんとクレハさんは、ハンターとしての先輩みたいなものだ」

フェンスと名乗ったハンターは、続けてジュンキとクレハについて語ってくれた。

「あの2人には大変お世話になったんだよ。今はどうなっているのか、俺も詳しくは知らないんだが…」

ここでフェンスが一呼吸を置き、レンヤとレイナは耳を研ぎ澄ませた。

「リオレウスと戦って、死んだと聞いている…」

「…」

「…」

「…はぁ」

「…あれ?」

変な空気になり、フェンスは戸惑う。レンヤとレイナは首を傾げ、ユーリは何故かペーパーナイフを構えた。

「ユーリ…?どうしてナイフを俺に向けるの…?」

「んー?余計な口は塞いでしまおうかと…」

「冗談にならないからやめて。顔が本気だよ」

フェンスは何度もユーリに許しを請い、ユーリは「もういいです…」と呆れ顔でペーパーナイフを下した。

「あの~、父と母はもう亡くなっているんですか…?」

「俺はそう聞いているけど…。違うの?」

レンヤの問い掛けに、フェンスは困った顔でユーリを見る。すると、ユーリに代わってレイナが答えた。

「ユーリさんは、行方不明だと…」

「あ、あれ?そうだったかなぁ…?」

首を傾げるフェンスに、不信の目を向けるレンヤとレイナ。そして呆れ顔のユーリ。

これはまずいと思い、フェンスはある考えを閃いた。

「そうだ!今この街には、ジュンキさんとクレハさんの仲間が滞在しているんだ!会いに行かないか?」

「本当ですか!?」

レンヤとレイナの目は一気に輝きを増した。ユーリは「仕方ないわね…」と呆れ顔だったが。

「じゃあ、早速会いに行きましょう!」

「はい!」

「よろしくお願いします!」

レンヤの大きな返事とレイナの丁寧な返事を受け、フェンスはユーリに向かって軽く手を上げつつ、酒場を出て行った。

 

レンヤとレイナ、そしてフェンスを見送ったユーリは、大きなため息を吐いた。

すると、ユーリは顔を動かさず、目だけで酒場の端を見つめる。

そこには1組の男女。服装はハンターの防具ではなく、ギルド職員の制服だった。

その2人はユーリの視線に気付き、立ち上がる。そのままカウンターの前に立つと、2人は目深に被った帽子を少しだけ持ち上げた。

「とうとうこの時が来たみたいね。…どうするの?」

ユーリの言葉に、2人は顔を見合わせる。

「…いつまでも、誤魔化すことは出来ないか」

「まあ、無理でしょうね」

男の言葉に、ユーリは腰に両手を乗せつつ首を横に振った。

「証拠合わせもしないまま解散したんだから、この先も次々矛盾が出てきて…」

「いずれは私達の前に立つ、か…」

ユーリの言葉を女が繋ぐ。

「感動の再会を準備した方が良さそうよ?」

ユーリの言葉に、2人は再び顔を見合わせた。

「…お前だけでも、会ってきていいんだぞ?」

男の言葉に、女はキッパリと首を横に振る。

「ダメよ。私だけ抜け駆けなんて」

「…分かった。悪いな」

「いいえ…。でも…」

ここで、ユーリは女の目に涙が溜まっていることに気が付いた。

「あんなに立派な姿になって、私達の前に現れるなんて…嬉しくて…」

その言葉を聞いて、ユーリは嬉しくもなり、悲しくもなった。

この2人が14年も前から積み重ねてきた想いは、果たしてどのような結末を迎えるのか、ユーリは酒場の出口を見つめながら静かに考えたのだった。


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