モンスターハンター ~人と竜と竜人と~   作:秋乃夜空

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4章 それでも世界は環り続ける 04

リヴァルとリサは並んでジュンキ達とミラボレアスの中間に立った。

「竜人の血を引く若者よ…。そなたの竜人としての力、私に貸してくれぬか?」

「竜人になる覚悟はあるか?だそうだ」

リヴァルはミラボレアスの言葉を聞き取れないので、ショウヘイが通訳してくれた。リヴァルは「ある」とだけ、ミラボレアスから目を離さずに言った。

「では竜人ジュンキよ…。以前のように、私の血を飲ませてやって欲しい」

ジュンキは無言で頷き、ミラボレアスの尻尾へ歩き出す。途中でアイテムポーチから空のビンを取り出し、腰から剥ぎ取りナイフを抜く。以前クレハ、ショウヘイ、そしてチヅルを竜人として目覚めさせた時と同じように尻尾を切りつけて血液を採取し、注いだビンをリヴァルに手渡した。

「これを飲むんだ」

「えっ、これを…?」

リヴァルはジュンキから受け取ったミラボレアスの血液を見て、思わず顔をしかめてしまう。だが飲むしかない。

リヴァルは一気にミラボレアスの血液を飲み干さんとしたが、少しだけ残して噎せ返ってしまう。落としそうになったビンを隣に立つリサが慌てて受け取り、しゃがみ込んでしまったリヴァルの背中を擦る。

「リヴァルさん、大丈夫ですか…?」

「ゲホッ…!ぐっ、だ、大丈夫…」

リヴァルはリサに支えられながらもなんとか立ち上がり、ミラボレアスを仰いだ。そしてミラボレアスの言葉を待つ。

「…私の声が聞こえるか?」

「…!」

聞こえた。ミラボレアスの声が確かに聞こえた。

「聞こえる…」

「そうか…。ヌシの名は?」

「リヴァル…だ」

「では竜人リヴァル、リオソウルの血を引く若者よ。そなたの力を借りたい。頼めるか?」

「俺でよければ、いくらでも…」

「感謝する…」

ミラボレアスはリヴァルに頭を垂れた。リヴァルも一礼してからジュンキ達を振り向く。

そこには笑顔のみんながいて、リヴァルもいつの間にか笑顔になっていた。

「リヴァル、これからもよろしくな」

隣にいたジュンキがそう言い、右手を差し出す。リヴァルは一瞬だけためらったものの、しっかりとその手を握り返したのだった。

そしてリヴァルはジュンキ達の後ろに戻ろうとして、先程からリサが無言で立っているのに気が付いた。

「リサ…?」

リヴァルの言葉に、この場にいる全員がリサを注視する。リサはリヴァルから受け取った、ミラボレアスの血液が少し残ったビンを見つめて微動だにしない。そしてその口だけがゆっくりと開かれた。

「リヴァルさん、以前お話しましたよね…?私も竜人ではないか、と…。今、試してみてもいいですか…?」

「え…!」

リサは横目でリヴァルのことを見てから、残されたミラボレアスの血液を一気にあおった。

「リサっ!?」

ミラボレアスの血液を飲み込んだリサ。しかし、リヴァルが駆け寄る前に地面に膝を着いてしまう。

「リサ!何やってるんだ!」

リヴァルがリサの横顔を覗くと、リサは吐き下すまいと必死に口元を両手で押さえていた。

しかし限界か、リサはまるで自身の血を吐くように、草の大地にミラボレアスのどす黒い血液を吐き出してしまった。

「ゲホッ…!ぐぅ…っ!」

咳き込むリサにミラボレアスが近寄り、顔色を伺ってくる。

「大事無いか…?」

ミラボレアスが声を漏らす。するといきなりリサが顔を上げたので、リヴァルは驚いて身を引いてしまう。リサはミラボレアスを見つめ、明るい赤色の瞳を驚きに見開いていた。

「…まさか」

リヴァルは思わず呟いてしまう。

「もしや、私の声が聞こえるのか…?」

「…はい」

リサの返事を聞いて、この場にいる全員が驚きの表情を浮かべた。

「それじゃあ、リサも竜人ってことになるのか…!?」

「竜の言葉を聞けるんだからそうなるだろうな…」

カズキとユウキの言葉を聞いて、ジュンキがリサの横に立ってミラボレアスに話しかける。

「ミラボレアス、リサは竜人なのか…?」

「恐らく、な。失礼」

ミラボレアスは一度断ってからリサの血の臭いを嗅いだ。隣でリサを支えているリヴァルの臭いも同時に嗅ぎそして顔を上げる。

「このリヴァルという竜人からは、リオレウスに似て非なる竜…リオソウルの臭いがする。そしてリサ…ヌシからも、同じ臭いがする…」

「…!」

ミラボレアスの言葉は、リサは竜人で、リヴァルと同じ血の型、リオレウスの亜種であるリオソウルの血を引いているということを表していた。

「そうか、俺はリオソウルの血を引いているのか…」

リヴァルはそう言って立ち上がった。

「リヴァル、と言ったな。ヌシはリオソウルの血を引く竜人だ。私の血液に反応し、もうすぐ竜人ジュンキや竜人クレハ、竜人ショウヘイのような力が目覚めるだろう」

ミラボレアスはここで言葉を一度切り、未だに座っているリサの方を向いた。

「リサ、と言ったな。ヌシもリオソウルの血を引く竜人だ。しかし幾星霜の代を経て、その血は非常に薄くなっている。竜の言葉を聞き取れたとしても、他の竜人のように強大な力を発揮することは叶わぬかもしれぬ…」

ミラボレアスはリサから顔を上げると、この場にいる全員を一度見渡してから、再度口を開いた。

「新たなる竜人は開眼した。竜人たち、その仲間よ、今一度願う。不甲斐ない私のために、力を貸して貰いたい…」

ミラボレアスの言葉にリヴァル達は頷き、拳を握り、腕を振った。

「我が兄者、ミラルーツは古の塔にいる。場所は私に任せよ。案内する」

「道なき深き森の奥、我々竜でも近寄らない霊峰の奥地にその塔はある。陸路でも行けるが時間がかかる。乗れ」

ザラムレッドはそう言って姿勢を低くし、背中を向けた。ミラボレアスとセイフレムも同じく背中を向けて姿勢を低くする。

「よし、行こう」

ジュンキがパーティメンバー全員に向かってそう言い歩き出す。

「リサ、立てるか?」

「はい…。もう大丈夫です」

リサはリヴァルに支えられながら立ち上がった。

「ほら、リヴァルさん…」

「ん?」

「私、竜人だったでしょう?」

「…だな」

リサはリヴァルと並んで歩き出す。

「リヴァル、リサ、待て」

背後からショウヘイに声を掛けられ、2人はその場に凍りついたように動きを止めた。パーティメンバー全員、そしてミラボレアス、ザラムレッド、セイフレムまでもが何事かと振り返る。

「リヴァル、リサ、俺たちに何か隠しているだろう?」

ショウヘイの言葉に、リヴァルもリサも答えられない。ショウヘイは別に怒っている感じではないのに、不思議と恐怖が心を支配する。

「答えられないか?前から疑問に思っていたんだが、今回の件で確信を持てた。同じ赤い髪に、赤い瞳。顔つきもある程度だが似ている。そして、同じ血を引く竜人…」

ショウヘイはここで一度言葉を切った。

「もしかしてお前たちは、兄妹か何かなんじゃないのか?」

リヴァルとリサは互いに顔を見合わせ、そして全てを話すことにしたのだった。


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