私の人生は、まぁ一般的には不幸と言える道のりだった
私は、帝国と言う大きな国の本の少しだけ裕福な家庭で育った、家族は私の他に二人の兄と父がいた、母はいない
ここで勘違いしがちなのは、まるで私の父は妻と死別してしまったかのようだが、彼にはちゃんと妻と呼べる存在がいるし、当時はまだ生きていた、が、それは私にとって母とはなり得なかった、俗に言う腹違いと言うヤツだ
何も難しい話ではない、簡単に言えば私の父が立場を弁えず、どことも知れない女性と気持ちいい事をしたついでに生まれたのが私だ、ゴムくらい着けてほしい
とまぁそんなこんなで私は生まれた、当たり前だが自身の生活のために春を売るような女に子供を養える金などある筈もなく、私はある程度大きくなるとその家に引き取られた、別れ際使用人のような男たちに手を引かれながら私はおもむろに後ろを振り返り、見た
母は泣いていた、泣いて喜んでいた
引き取られた当初は‘犬の餌にならないだけマシか’なんて思ったりもしていた、しかし引き取られた先の屋敷での生活は‘いっそあの時犬の餌になっておくべきたったな’なんて思わせるほどの毎日だった
私の屋敷での日課を簡単に纏めればこんな感じだ
朝起きる
↓
ご飯を食べる
↓
猟犬に追われる
↓
気絶する
↓
朝起きる
我ながらどうして生き残れたのか疑問でいっぱいな人生である
向こうからすれば娼婦の子である私はさぞや目障りだっただろう、ならばその場で殺すか放っておけば良いものを、わざわざ引き取ったのはそうゆうことだったのだか、と、犬に追われた初日に私は気付いた、大方タダで玩具が手にはいるとかそんな感じの理由だろう、金持ちのクセにケチな連中だ
その上奴等は家族全員一人のこらず変態だった、父の妻はサディストで、父は性欲モンスター、兄二人は両親の変態性を足して二で割ったような存在である、屋敷にいれば押し倒され、外に逃げれば猟犬に追われる、外に逃げようにも大きな柵があって出られない、詰み状態とはこの事なのだろう、お陰で私の髪はストレスで真っ白だ、髪は女の命だと言うのに、大ショックである
とは言え何も悪いことばかりではなかった、散々あのワンコどもから追いかけ回されたお陰で私の逃げ足はとても早くなった、それこそ直線距離で同じ位置からスタートしても逃げ切れるくらいには、ちなみに当時私は八歳である
そんな生活がもう二年過ぎた頃、そう、丁度私がブリッジをしながらでもワンコから逃げられるようになった時、私はふと周囲を囲むように設置された柵を見て思った
『これは、ワンチャン飛び越せるぞ?』と
思い立ったら即実行
私は柵から距離を取り、助走を着けて走り出し、そのままスッ転んでゴロゴロと転がりながら柵を突き破った、当初想定していた事とは若干違う過程を辿ったが結果的に私は自由を手にいれた
これが私が10歳の時の物語
私にとっては人生の半分にも充たない期間であり、本当に語りたいのは屋敷から脱出したあとの話なのだが、それは追々話していこう、自己紹介を含めたプロローグのつもりが随分と長くなってしまったが、そろそろ締め括ろうと思う
私の名前はユーリー=マクタヴィッシュ、帝国陸軍に所属しているしがない兵士、年は26、階級は中尉、性別は女、体重はヒミツである。