北山雫は魔法科高校の劣等生   作:ひきがやもとまち

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先ほど、途中からの一文を付け足しました。
「追加分です」の添え書きと、言い訳じみた解説も記載されています。


7話「北山雫は、朝からガチすぎる修羅場とエンカウントする」

「雫、いい? よーく聞いて覚えるのよ? 貴女のクラスは二科生側の校舎にある1年E組で、座席は端末ごとに番号が刻印されていて、貴女の番号は・・・・・・」

 

 俺の眼前では、妹の深雪による雫のための『魔法科第一高校初登校時に守らなくてはいけないこと講習』が行われており、入学式の時と同様に時間を圧迫し続けていた。

 毎度の事ながら深雪の雫にたいする過保護は度が過ぎていると言わざるを得ない。少しは周囲からの視線も気にするべきだと思うのだが、それを言おうものなら必ず

 

「まぁ・・・! ではお兄様は雫がなにも教わらずに人並み水準の生活がこなせるとでも想っておいでなのですか!?」

 

 ーーと、なぜか俺自身が説教の対象に加えられるという謎現象が発生してしまうので手が出せないし口も出せない。深雪の傍らで黙り込み、ただただ講習が終わるのを待ち続けるだけである。

 

「ーー要約するとこんなものだけれど・・・雫。理解できたかしら?」

「・・・う、ん。半分くらい、は・・・?」

「なぜ疑問系・・・。まぁ、いいわ。とりあえず初日だけでも乗り切れれば、次から少しは勝手が分かるもの。今日は教室についたときに挨拶するのを忘れなければそれで良し」

「う、ん・・・。行ってくる、ね?」

「はい、いってらっしゃい。お昼になったら食堂にきて一緒に食べましょう? わたくしは出来るだけ目立つ場所に席を取っておくから」

「は、い。いってきま、す」

 

 パタパタと。小さく手を振り、校舎の異なる俺たちの方を幾度となく振り返りつつも二科の校舎へと入ってゆく雫を見送りながら俺は、兄として妹にたいする苦言を呈していた。

 

「深雪。幼馴染みを大切に扱う気持ちは尊いものだと理解はしているが・・・あまりにも度が過ぎてきてはいないだろうか? このままだと雫はお前にスポイルされてしまいそうなんだが・・・」

 

 俺の言葉に深雪は、さも心外だと言いたげな表情で俺を見上げて。

 

「お言葉ですがお兄様、それは誤解です。わたくしは幼馴染みとしての領分を常に弁えた上で行動し、発言しております。けっして雫に行き過ぎた教育など施したことはございません」

「そうなのか? とてもそう言う風には見えないんだが・・・」

「誤解です。それに、そう言うお兄様こそ叔母様にたいして雫の護衛という名目の元、二科への編入は可能かどうかの打診をされたと葉山さんから聞き及んでおりますが?」

 

 葉山さん・・・要らぬ事まで深雪に吹き込んでくれたものだ。おかげで誤解を解くために、また時間を費やす必要が生じてしまったな。

 

「それこそ誤解だよ、深雪。魔法師は国防のためにこそ発展した職種だ。国法を守り、守らせる側に立つ魔法師である俺たちが校則すら遵守しようとせずにねじ曲げるなど許されることでは決してない。

 俺が叔母上に願い出たのは雫の才能が他国に漏れることによって生じる国家のリスクを考慮したからであって、魔法師としての義務を果たしたに過ぎない。今までは一般中学に通う普通の学生だったが、今日からは魔法師を育成するための国立機関魔法科第一高校の一員になるんだ。生徒として当然のことをしたまでだよ」

「また、その様な理屈で深雪を言いくるめようとして! 深雪はいつまでも騙されやすく、扱いやすい子供ではないのです! 今日こそはちゃんと説明していただきます!」

「・・・困ったな。俺は本当のことを言っているだけなんだが・・・」

 

 俺は誠実に、そして誠意を込めて妹の深雪を説得し、時間こそ掛かりはしたが納得させることに成功した。

 とはいえ、最後に言い捨てていった「わかりました。続きはお昼にでも」の一言から見て、まだ根に持ってはいるらしい。

 

「やれやれ。深雪もまだまだ甘え足りない年頃だな」

 

 呟き、肩をすくめてから俺も自らが通う事になる新設された新校舎『魔法工学科』の入り口へと入っていく。

 鬼がでるのか、蛇がでるか・・・実力試しといかせてもらうとしようか? 魔法科第一高校魔法工学科よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え。なに、あれ・・・? 嘘、本当に? 本当に実在してたの? ジャパンが誇る伝統文化チューニって、本当に実在している生き物だったんだ・・・。

 始めて見たわ、写メ取っときましょう・・・って、あれ!? 端末に写メール機能がない!? Why!?

 チューニがいるジャパニーズの魔法学校にはあって当然のはずなのに!」

 

 

『(今年はなんだか変な新入生が多い気がするなー・・・)』

 

 

 

「たっつやさーーーん! 私も遅ればせながら到着しましたよーーーっ!!

 ・・・・・・って、私今回の出番これだけですか!?」

 

 

 

 

 

「おはよ~」

「・・・?」

 

 入ったばかり、の一年E組、で後ろから声をかけられて驚い、た。

 振り返ってみた、らオレンジっぽい髪色、の女の子が笑って、た。

 

「・・・??? えっ、と・・・おはようございま、す・・・?」

 

 誰かは分からなかったけ、ど深雪に教わった挨拶をす、る。

 ・・・けっして後で怒られたくないからじゃな・・・い事もないことはな、い。

 

「ああ、あたしは千葉エリカ。エリカでいいわ。貴女は北山雫さんでしょ?」

「??? なんで私のなま、え・・・」

「そりゃ、昨日の今日だし。入学式にあれだけインパクトある呼ばれ方をされてる女生徒って、魔法科高校の歴史上でも他にはいないんじゃないかしらね?」

 

 そ、なんだ・・・。はじめて知っ、た・・・。

 

「ね、あたしも貴女のこと雫って呼ばせてもらっていい? なんだか貴女とは問題児同士、気が合いそうだと思ったのよね~」

「う、ん。別にいい、よ? むしろ、雫って呼んでくれると嬉しいか、も・・・。

 北山って呼ばれることあんまりないか、ら、呼ばれても気付かないことある、し・・・」

「それは問題児じゃなくて、ただの問題行動だと思うわよ!?」

 

 友情成立直後に裏切られ、た・・・。

 

「ま、まぁまぁエリカちゃん落ち着いて・・・」

 

 ・・・? 今度はメガネの女の子が来、た。

 

「あ、北山さんの方からは、はじめましてだったね。

 私、柴田美月って言います。入学式の時は近くの席から貴女と金髪の娘のやりとりを見ていた一人です。今日からはクラスメイトとして、よろしくお願いしますね」

「はじめまし、て、よろしくお願いしま、す」

「・・・なんだろう。礼儀正しいマナー通りの挨拶に、何だか仲間外れ感が・・・」

「うん。その想いはたぶん、あってると思うよ?」

「出会ってから二日目で酷すぎる!?」

 

 ようこ、そ。ぼっちの楽園、へ。

 

 

 みんなで笑いあって雰囲気良くなったなと思ったか、ら、私は深雪に言われたとおりに端末で番号探し、て席に着い、た。

 ここからは達也さんのマネし、てカリギュラム? って言うの、を書き写していく。

 

 そした、ら横から男子生徒が覗いてき、てビックリして、た。

 

「うわ、今時キーボードオンリーで入力する奴も珍しいが、寄りにもよって手書きかよ・・・って、そのノート『ジャポニカ学習帳』じゃねぇか! しかもほとんど白紙状態の未使用品!

 大昔のモラル崩壊時代に、男子小学生が授業サボって暇つぶしにウン○書いてたとか言う伝説の逸品ーー」

「ふんっ!!」

「ぐはぁっ!?」

「・・・下品なのは、いけないと思います」

 

 ・・・・・・なにがあった、の・・・?

 

 

 

【ーー5分後にオリエンテーションを始めますので、自席で待機してください。IDカードを端末にセットしていない生徒は、速やかにセットしてください】

 

 そんな文章が流れてきたか、ら、さっき倒されてた男子生徒の西城レオンハルトさんに教えてあげ、る。

 

「おう・・・サンキューな・・・。それとだが、俺のことはレオでいいぜ? よろしくな。

 ・・・顎が痛くて、脳が揺れるし視界がブレる・・・あの女、ぜってーなんか習ってやがったな・・・」

 

 フラフラしながら席に戻るレオ君を見送ってか、ら教室の前の扉が開い、て。

 

「はじめまして。私はこの学校で総合カウンセラーを勤めている小野遥です。皆さんの相談相手となり、適切な専門分野のカウンセラーが必要な場合はそれを紹介するのが私たち総合カウンセラーの役目となります」

 

 オッパイの大き、な女教師の人が入ってき、た。

 

「その職質上、どうしても新設された魔法工学科の生徒たちに比重が偏りがちになると思われますが、そのことで皆さんが不安や不満を抱かないように調整するのも私たちにとっては大事な仕事ですので、いつでも気軽に頼ってくださいね」

 

 そう言ってから頭を下げ、て教卓の何かを操作する、と、教室の前の方にあるスクリーンに男の人が映し出されて「このクラスは私と、この柳沢先生が担当します」って言われ、た。

 

 その後にいろいろ説明されて、半分くらいは覚えることができてきた頃に

 

「・・・それでは既に履修登録を終了した人は、退室しても構いません。その際、IDカードを忘れないでくださいね」

 

 で、締めくくられ、た。

 

 

「雫、お昼まで何して過ごす? あたしは暇つぶしに適当な部活動を見学しに行こうと思ってるんだけど、貴女も来る?」

「・・・ん。い、く・・・」

 

 エリカに誘われたから付いてい、く。

 友達、と部活けんが、く。前世の小学校以来だから楽し、み・・・(わくわく)

 

 

 

 そし、て・・・・・・・・・。

 

「案外・・・普通だったわね・・・」

「う、ん・・・もっとスゴい、の期待して、た・・・」

「お前ら・・・一応とはいえ、国立の教育機関に所属する部活動にいったい何を期待してたんだ・・・?」

「いや~」

「えっ、と・・・」

 

 ・・・・・・・・・・・・虹野さんと、か?

 

注:後日、部員勧誘期間中だったので猫かぶってただけであることが判明しました。

  暴走はしても部員は集まると言う結果を出してるのが証拠の、魔法科高校学生たちです。

 

 

 

 

 そして、お昼休、み。

 

 

「ん・・・雫か。どうやら俺たち以外の保護者が確保できたようで何よりだな」

「達也さ、ん。ひど・・・い・・・」

「知り合いかい、達也? なんなら僕は席を外すけど・・・って、エリカ!? 何故きみがここに!?」

「あれ、ミキじゃない。

 この前、工学科ができたお陰で一科に入る予定だった子がそっちに行って、二科に入る予定だったアンタが繰り上げで一科生になれたの聞かされてから三日しか経ってないけど久しぶりー。元気してた?」

「いつもは一言多い君だけど、今のは一言以外全部多かったな! それから、僕の名前は幹比古だ!」

「・・・この状況でもそこにこだわれるアンタは、たまに本気でスゴいと思うわ・・・」

「お、なんだなんだ。もしかしなくても修羅場か~? だったら俺も混ぜろよ! 火事と喧嘩は俺の華だぜ!」

「ちょ、ちょっと西城君! 食堂で暴れたりしちゃダメだよ! 食事は静かに食べなくちゃ!」

 

 

「・・・・・・・・・雫、個性的な仲間を得られた様で何よりだ。お陰で俺の胃痛と頭痛の種が更に増えてしまったよ」

「・・・ごめんなさ、い・・・」

 

 

 ・・・いつも思うけ、ど、これって私のせいなのか、な・・・?

 

 

 

 

「おい、キミたち。ここの席を譲ってくれないか?」

 

『あぁ?』

 

 う、わ・・・。柄悪いへん、じ・・・。

 相手の人は怒ってないか、な・・・?

 

 ーーうん、よかった。怒ってな、い。ちょっとビクってなってるだ、け。これくらいならへーき。私もよくや、る。

 

 相手の男子生徒さん、は「こほん」って咳払いしてか、ら胸を張って・・・ん? 胸のマークを張って・・・なのか、な? とにかく胸を前に出しながら私たちに何かを言い出し、た。

 

 ・・・男の人の胸が前にでて、て気持ち悪かったか、ら私は聞いてなかったけ、ど・・・。

 

「二科は一科の「ただの補欠」だ。授業でも食堂でも一科生が使いたいと言えば席を譲るのが当然だろう? 僕はここで司波さんと一緒に食事をしたいんだよ。

 と言うわけで、席を譲ってくれないか? 補欠くん」

 

 

 

 

「・・・あら、だったらアンタたちこそどっか行ってくんない? 目障りだから。

 実戦では物の役にも立たないくせに学校では秀才だからとエバり散らす蛙を見ているのが、今のワタシには他の何より腹立たしくなっているのよね」

 

 ・・・あ、れ? この声、は・・・。

 

「Hello.雫。一日ぶりね。元気してた? ワタシ、貴女みたいに身の程を弁えてる魔法師って本当に大好きよ。日本的で奥ゆかしくて。

 過去の栄光を忘れられずに、それでいて自分一人では行動も起こせない不満と不安を自分より弱い者にぶつけて発散しようとする意気地なしよりよっぽど日本人らしくてステキだわ。

 と言うわけなので、私の友達から席を奪わないで下さらない? レギュラーから補欠落ちした二軍メンバーくん?」

 

 

 

 

追加分です

 

本来なら今少しアホな展開を考えたのですが、ほのかが仲間になってる都合上、下校時における彼女のポジションを森崎くんにやってもらいたくて今回は真面目に徹しました。ご了承ください。

 

 

 

 魔法科第一高校1年A組の教室の扉を開けたとき、ワタシは「イヤな場所に来ちゃったなぁー」と心底から後悔してた。押さえ難いほどの負の情念に満ちあふれていて窒息仕掛けるかと思ったからである。

 

 自らを生まれつき優れた者だとする優越感。自分たちから見て下の者に抱いていた被虐の愉悦。約束された名誉、光あふれる人生、未来は自分たちのためにあると信じて疑わなかった者特有の臭いに満たされていると同時に、それらは真逆の感情さえもを内包していた。

 

 生まれついての才能が認められない敗北感。自分たちから見て下の者が称賛を浴びているのを見て抱く憎しみと嫉妬。約束されていたはずの人生、光が閉ざされた人生、自分たちのものだった場所に平然と居座る赤の他人。

 

 それら他者の犠牲による自分の成功を疑っていなかった者、過ぎりし過去を見ながら今を生きている者特有の腐臭が鼻を突く。

 

 ーーよし、帰ろう。登校二日目だけど、自衛隊の寄宿舎にでも泊まり込ませてもらえないか試してみよう。最悪の場合は野宿でもいいんだし。逃亡生活ですっかり慣れて、やさぐれちゃったワタシだし。

 

 到着直後にきびすを返そうとしたワタシだけど、視界に映った黒と明るい茶色の頭が心に引っかかって足を止めさせてくれた。

 

 明るい色の子は純粋に、笑顔が裏表なくて気に入っただけなんだけど、黒髪の方はどこかで会ってた気が・・・・・・ああ、昨日のアレね。あの時に会ってたわけか。それなら納得。

 なんだかドタバタしていてゆっくり出来なかったけど、シズクとも仲良さそうだったし、挨拶ぐらいはしといて損はないでしょ。

 イヤなら普通に帰ればいいだけ。今さっきやろうとしたことやるのに抵抗する理由もないし。

 

 その程度の気持ちで声をかけてみただけのミユキとホノカとは、即日の内に友達になってた。

 共通の話題としてミユキと同じ髪色のアホの子が話題として使いやすかったって言うのもあるけれど、単純に今の一科生教室に清涼剤を求めている点で意見が一致していたことも大きいとは思ってる。

 とにかく、今の1年A組には一人でいたくない。共通する思いから行動を共にし続けてたワタシたちだったけど思わぬ所で裏目にでることになった。

 

 ミユキが入学式で新入生総代を務めていたのは周知の事実だけど、その事実について来日してから日が浅いワタシと、生来のお人好しっぽいホノカは認識が不足しすぎていたのだ。

 

 ミユキに近寄ってきた生徒の一人にたいして丁寧に対応していると、多分おこぼれ的な理由でなんだろうけどワタシたち二人にもお声がかけられた。

 別にこの時点では教室に漂ってる雰囲気全体が息苦しいだけであって、生徒一人一人に鬱屈した感情があるわけじゃなかったし少しくらいなら実力見せてあげてもいっか、と気楽な調子で過去の経歴の表向きの部分を諳んじて、ホノカも顎に人差し指を当てながら天井を向いて思い出しながら今までの成績について答えると教室全体がワッと爆発した。

 怒号にも似た歓喜に湧く1年A組の教室で、ワタシたち三人だけが呆然と取り残されていた。

 

 後で知ったところによるとA組は生徒会に嘆願書を出したくて、旗頭を求めていたらしい。生徒会が見たときに即決で捨てられるようなことがないだけのネームバリューをもつ差出人としての旗頭を。

 

 さっきまでと大違いのテンションに嫌気が差したワタシは、引き攣りながらも必死で笑顔を保っているミユキをおいて教室を出て当てもなく彷徨っていたところ、遠くの方で聞き覚えのある感じの騒ぎ声が聞こえた気がして行ってみたら案の定。

 シズクも混ざってワイワイガヤガヤしてるの見せられた瞬間に、教室のことは放っておいて仲間入りしようとしたワタシなんだけど、イヤなことって言うのは続くもの。

 教室においてきたミユキも逃げてきてたのか食堂にいて、A組所属の男子生徒に言い寄られてるシーンに出くわしちゃってせいで、負い目から入るに入れず逃げるに逃げられなくなってしまう。

 

 

 どうしたものかしら? そんな風に考えてたワタシの耳朶を、こんな戯言が不快に刺激してくる。

 

「二科は一科の「ただの補欠」だ。授業でも食堂でも一科生が使いたいと言えば席を譲るのが当然だろう? 僕たちはここで司波さんと一緒に食事をしたいんだよ。

 と言うわけで、席を譲ってくれないか? 補欠くん」

 

 

 ーーこれを聞いた瞬間。ワタシに中でなにかが切れた。

 

 元々いろいろ抱え込んでた今日この頃だったんだけど、この台詞は1年A組の現状を見ている者にとっては許し難いほど醜悪すぎるものだった。

 

 そのせいで最初にはなった警告の一言が宣戦布告ばりにドギツいものになっちゃったけど言っちゃったものは仕方がないし、今まで言えなかったこと全部この人にーーええ~と・・・そう! モリモリくんに聞いてもらってワタシはすっきりしちゃいましょう!

 

 

「く、クドウさん・・・きみは・・・」

「ーーだいたい、優秀な魔法師だからって理由で上から目線なのが訳わかんないのよね。

 魔法師を国が優遇するのは国防のためであって、国家と国民を守るためなんでしょ? 自分より弱い人たちを守るためにこそ貴男たちは強さを磨くための場所を税金で運営してもらっているのでしょう?

 なのに魔法の才能がないから、自分よりも下だからって理由で自分たちのために譲るのが当然って思想は変だと思わなかったの? どう見たって生まれから来る階級差別、身分や家柄を尊重しあって生まれた家ですべてが決まる中世的差別制度時代の再現じゃないの。

 現代日本を守るべき魔法師が中世ヨーロッパみたいな事してて恥ずかしく思わないですむものなのかしらね。ワタシにはぜんぜんわかんないわ」

「・・・・・・それは!!!」

「そ・れ・に! 魔法の才能は魔法師だけの才能だけど、それが特別に感じるのは国防に使ってた国家が情報操作していただけで、宣伝の効果による錯覚に過ぎないわ。

 優れた魔法の才能を持つ者は魔法力増強に特化した教育を受けるから、必然的に魔法技術者たちとは得意分野同士で渡り合えない。

 彼らのフィールドでワタシたちは負ける。ワタシたちのフィールドで彼らは勝てない。ただ、それだけよ。才能の差なんてものはない。

 もって生まれた才能の種類が違うだけなのに、同じ分野でしか比べる基準を教えられなかった自分自身の無知さを恥じて、今すぐ勉強に取りかかりなさい! さぁ、早く!

 グズグズしてるとお尻けっ飛ばすわよ!」

 

 ビューーーーーッン!!! っと、脱兎の如くスピードで走り去っていった・・・えっと・・・そう、モリモリ君。

 

 言いたいこと言ってすっきりしたワタシは、あらためて部下から格上げしてあげた下僕のシズクに向き直ろうと髪をかき揚げながら振り返ってーー

 

 

 

「・・・・・・(こっくり・・・こっくり・・・)」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 長広舌過ぎたワタシの名言を聞き流し、隣の男に肩貸してもらって船を漕いでる雌奴隷にげんこつ食らわしてやろうと決意して、のっしのっしと近づいて行くのだった。

 

つづく




説明:
今作における森崎くんは、復古主義者筆頭みたいな立ち位置でのスタートとなります。

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