北山雫は魔法科高校の劣等生   作:ひきがやもとまち

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なんか途中から悪乗りしすぎた内容になってしまいました。
読んだ人が嫌がるモノ残しておいても意味はないですので、ダメだった場合は元の予定通りに書き直すつもりで取りあえずは投稿させて頂いた次第です。

*:最後だけ書き忘れてた部分を付け足しました。(12月21日現在)


33話「北山雫の友人は歴史に名を残して神話になった」

「深雪・・・・・・達也さんの所に行かなくていいの?」

 

 ピラーズ・ブレイク新人戦女子一回戦が始まるまで後少しになった頃。

 私、光井ほのかは思うところがあったため、一般観客席じゃなく選手・スタッフ用の観覧席に座って試合開始を待っている隣の席の深雪に対して勇気を出して聞いてみることにした。

 一回戦で英美が出場した試合の時にも、達也さんがモニター室に上がる直前に深雪は彼と別れている。同じ学校の選手ならモニター室から応援しててもおかしくなかったから、そうした理由が少しだけ気になっていたからだった。

 

「ピラーズ・ブレイクは個人戦ですもの。私とリーナはいずれ対戦することになるのだから、手の内を盗み見るのはアンフェアでしょう?」

「なるほど」

 

 と、普通に納得した返事をして前を見たものの。

 ・・・自分が深雪の答えに納得してないことを隠すために無難なことを言ってみただけだったの、バレてないよね・・・? なんか横顔を逆に見つめ返されているような気がして怖いんだけど・・・ほ、ほっぺたに何だか視線が注がれているような、いないような・・・?

 

 もともと個人戦種目とは言え、ピラーズ・ブレイクは必要機材が大きすぎるせいで大抵の多人数でやるスポーツよりも練習場所は限られてしまっている競技で、同じ学校の選手相手に手の内を一切知られることなく練習するなんて不可能に等しい。

 それに何よりピラーズ・ブレイクは純粋に遠隔魔法のみで競い合う力比べの競技だ。相手の陣地に立つ氷柱を先に全部壊した方が勝つ、シンプル極まりないルールが用いられてる競技だから手の内を知られていることで被るデメリットは他の種目と比べるとあまり多くない。

 

 極端な話、相手の手の内を知っていて裏をかく作戦を考案できたとしても、実行者の魔法力が相手を大きく下回っていれば力押しで打ち負かせるし、逆に自分の作戦に対抗策を弄してくる敵が相手だったとしても力尽くでの突破と作戦破綻が可能になってしまう。そういう競技。

 だから深雪が自分との試合前にクドウさんの手の内を知っていたとしても、それほどの意味はないだろう。

 

 ・・・まぁ、これは私が中学校の頃に出会って憧れた達也さんの気を引きたさに必死で猛勉強しちゃった結果としての分析だから、あまり大きな声では人に語る訳にはいかないんだけども・・・。

 

 とは言え、そういう分析によって深雪が達也さんの元へ行かない理由は『クドウさんへの配慮ではない』と私は考えた訳で、さっき質問した意図はそれとは別にあって――

 

「・・・・・・(チラッ)」

 

 私は試しに、なんとなーくを装って深雪の横顔へと視線を向ける。普段通りの冷静で綺麗な横顔を向けながら試合会場に視線を注いでいる達也さんの完璧すぎる妹。

 そんな彼女に私は・・・・・・やっぱり聞くのをやめる。聞きたいけど聞けないし、聞くのが怖い。彼女が静かに怒り出すのも恐ろしいんだけど、同じぐらい答えを聞いた後の自分の変化だって恐ろしい。

 

 だからこそ、私は言えない。

 

(・・・深雪は達也さんと雫を二人きりにしても、大丈夫なの・・・?)

 

 ――なんて質問は、恥ずかしくて言える訳がない。絶対に無理。私の方が先に死ぬ、恥ずかしすぎて自殺してしまうだろうから・・・。

 

 

 私と雫は小学校からの親友同士で、子供の時から少し思い込みが激しかった私は、ボンヤリしすぎて危なっかしい雫を「守ってあげなくちゃ!」って気持ちが強くて何かと世話を焼いてあげてきてた。

 別の中学校に転校するって雫から聞かされたときも、迷うことなく私もついて行くことを決めたし、お父さん達を説得するのも苦には感じていなかった。

 雫一人でやっていけるとは思えなかったし、付いていってあげたいという気持ちは私の中にも強くあったからだけど・・・・・・それが魔法の才能に恵まれていた子供だったからという事情も関係してたモノなんだろうなって、今の私なら理解できる・・・。

 

 正直、天狗になってたんだと思う。小学校に入って以来、私たちのコミュニティで私以上の魔法の才能を持つ子には出会ったことがなかったし、雫には才能を感じるときはあっても・・・ちょっとその、「頑張ろうとしない子」だから私のライバルにはなってくれそうになかったし・・・。

 切磋琢磨できる好敵手を求めながらも、雫を相手に正義の最強ヒロインである自分を心の片隅に住み着かせて居続けたかったという想いがあったことは今の私には否定できない。

 

 なぜなら、そんな私の「思い上がり」を粉々に打ち砕いてくれた二人に、転校先の中学校で出会ったからだ。

 

 司波深雪、あまりにも綺麗すぎて冗談としか思えない美貌と、嫉妬することすらバカバカしくなるほどの圧倒的な才能と実力を持った、中学生とは到底思えない魔法師の女の子。

 

 そして、司波達也さん。一切の無駄がない、計算され尽くされて光波ノイズを全く感じさせない美しい魔法を使える人。

 たまたま彼の魔法を見る機会に恵まれた私は、その美しさに心を奪われて彼のことを知りたいと思い、親しくなっていく内にもっと知りたくなってしまって、気がついたら今に至っている。

 

 小学校から親友だった私と雫の付き合いの長さは、達也さんと深雪が一緒に過ごしてきた長さと同じくらいにあって、私たちと彼らとの付き合いの長さは互いに同じくらいに存在している。

 

 ――だから解る。だからこそ解ってしまう心の部分がある。

 

 それは、『達也さんと雫が一緒に過ごしているのを見てきた時間』は私と深雪でほぼ同じ、と言うところ。

 

「・・・・・・ほのか、どうしたの?」

「ハッ!?」

 

 考え事に耽っている途中で横から声をかけられて、慌ててそちらを見ると深雪が不思議そうな顔で私のことを見てきている! さっきチラ見したときは前に向き直ってたのに、いつの間に!?

 私が考え事をしていた時間が思っていたより長すぎただけだと冷静に考えれるようになった後なら解るんだけど、今は無理! だって私、思い込み激しいんだもの! テンパりやすいんだもの! そのせいで運動会とか対抗戦とかの競技会で勝てたことなかったし! 小学校の時の話だけど、小学校の頃からのこと思い出してる途中だったからフラッシュバック!

 

「ご、ごごごゴメン! 何でもないの深雪! だ、大丈夫だから! 私は何も見てないし、達也さんたちには絶対言わないから! 私と深雪は自殺したくなる恥ずかしい過去なんてなにも見たことないからぁッ!?」

「何が!? ほのか、貴女いったい何の話をして何をお兄様に話そうと考えてたの!? そして何を見たの!? 私と貴女が見た恥ずかしく過ぎる過去ってなに!? 答えなさい! そして教えなさい! わたくしのお兄様に知られてしまったら自殺したくなるほど恥ずかしいものを見た過去って一体何のことを言っているのーッ!?」

 

 

 ピラーズ・ブレイク新人戦一回戦開始の少し前、またしても試合会場の外で始まる全く別の競い合いというか争い合い。

 そんな一般客のいない選手・スタッフ用の観覧席で勃発したキャットファイトであったが、生憎と大会本部にあるモニターの前で試合を観戦していた第一高校の女子幹部二人の視界には写りようもなかったことから、制止されるまでに今少しの時間を要することとなる。

 

 

 

 

「・・・ん? 今なにか画面外の向こう側で人が騒がしく動いてなかったか? 観覧席の方へと走っていく人影が見受けられた気がしたが・・・」

「本当に? まぁでも一般観客席で起きた問題じゃなくて観覧席で起きたことなら問題ないでしょ。だって達也君も雫ちゃんも今は試合中なんだもの。あの二人以外でうちの学校に九校戦で騒ぎを起こす生徒なんていないから大丈夫よきっとね」

「それもそうだな。・・・・・・お、いよいよクドウの出番が来たようだな」

 

 私は摩利と並んで、九校戦の本部にあるモニター前で今から映し出される試合内容を見上げながら、彼女の何気ないつぶやきに返事を返していた。

 

 確かに画面の外側に人が走って行く姿がチラホラと散見できるけど・・・まぁでも九校戦は全国の魔法科高校が一堂に会して行う全国大会で、選手・スタッフが使う観覧席はごった煮だし、第一高校の生徒会だけが強権発動しちゃうのはアンフェアだものね。

 生徒同士の問題は生徒同士で解決するのが一番! 放っておいてもダイジョブダイジョブ♪ 今はそれより試合が優先~と。

 

 ・・・ピラーズ・ブレイクが個人戦であるが故に、選手以外を撮る必要性があまりなくて、試合中継用のカメラを選手・スタッフたちが使う用の観覧席を写すモノまで用意できるほどの物質的・資金的余裕は大会運営側には存在しなかったこと。

 さらにはピラーズ・ブレイクの会場が広すぎてしまって人力でカバーし切るのには限界があったという側面もあったことで起きた悲劇を、私は後になってから知らされて後悔することになるんだけど、今の私はその事実をまだ知らない・・・。

 知らない限りはどうでも良いのが他人事というものであって、自分も関係してたことを巻き込まれてから知って慌てふためくのが他人事ってものでもあるから、仕方がないんだけど・・・・・・ああ、可能性上の未来ってやっぱり罪・・・。

 

 

「今度はどんな奇策を見せてくれるのかしら?」

「いや、分からんぞ? そう思ってるあたしたちの裏をかいて、正攻法で来るかも知れん」

 

 ハッチのような開閉式の台座が開いて、フィールド上の両サイドから二人の選手がせり上がってきている姿がモニターに映し出されている。

 九校戦の中でもファッションショー呼ばわりする人もいるほど奇抜なコスチュームで出場する人が多いことで知られているピラーズ・ブレイクとは言え、三回目の出場になる私たちにしてみたら大抵のコスチュームは奇抜って程の驚きはなく、振袖ぐらいだったら「あら、今年は少ないのね?」程度のモノだ。驚くほどのモノじゃ全くない。

 

 だからこそ他の人たちにとってはともかく、私たちにとっては参加選手たちの着てくる衣装よりも、選手自身が使う魔法と戦い方こそが重要になり、今年は技術スタッフまで興味が湧くという常識無視の展開に身も心も躍らせている状態にあるんだから、少しぐらい試合結果の纏め上げを押しつけちゃってても許してねリンちゃん♪

 これも生徒会長職だけじゃなくて選手もやってる優秀な魔法師故の癖みたいなもんなんだから、溜息なんか吐いちゃイヤ~ん! 聞こえないフリして無視しちゃえ♡

 

「お、始まるみたいだ・・・な・・・・・・」

 

 そして出場してくる両校選手が姿を現し、摩利が先にそれに気づいて声を上げ、

 

「今度は普通のCADみたい・・・・・・ね・・・・・・」

 

 私も続いて彼女たちの姿を見上げて、最初に達也君が細工を施しているであろうCADを見てから選手を見て。

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

 ・・・そして二人同時に絶句する。言葉を失って唖然呆然としながら、他の選手一堂と一般観客たちのほぼ全てと同じように完全なる沈黙に包まれる。

 

 やがて、誰からともなく、誰が音頭を取った訳でもなく。彼女を見ていた全ての場所にいる全ての人々が異口同音にほぼ緒同じ言葉を発して・・・・・・驚愕の声を上げる。

 

 

『――なんなのよ(だ!?)!? あの格好は一体なんだぁぁッ!?(なのぉぉッ!?)』

 

 

 ・・・こうして、九校戦の歴史に長く名を残し、後世の歴史家から「日本の魔法スポーツ業界の転換点」とも見なす者さえ現れることになる、選手の服装が競技に一切影響しないとされてきたアイス・ピラーズ・ブレイクの常識を塗り替えた事件が勃発する。

 

 将来の国防をになうエリートであった魔法師たちが純粋な力比べとして魔法の腕を競い合う九校戦と、それを客寄せの見世物として行われる興行としてのスポーツ競技とが矛盾なく完全な一致を見た老若男女問わず一般人でも楽しめるお祭りイベントとして確立された真の始まり。

 

 

【始まりのハロウィン・パレード】

 

 

 後生の歴史家たちは、この日のことを、そう呼ぶ。

 ・・・・・・初めての実行者の得意とした魔法の名前が【パレード(仮装行列)】だったから、と言うのがその命名理由であることも含めて、今を生きる者たちは誰も知らないまま今目の前の九校戦を続行していくことになる―――

 

つづく

 

 

オマケ【楽屋裏と、いつか使うかも知れないネタ集】

 

 

リ『なんでよ!? どうして正規のルールを守って服装選んだだけのワタシが面白ネームの語源扱いされちゃってて、ルール違反スレスレの行為を連発している整備スタッフの達也が何の悪名も被らなくて良くなってるのよ未来の歴史ィッ!?』

達『そう言われてもな・・・整備スタッフは本来、九校戦では裏方で、リーナは日本国籍を得たばかりとであろうと選手だからじゃないのか? 多分だが』

リ『だったら裏方のルールを守りなさいよ!? って言うか、よく考えてみたら風紀委員でしょうが貴方! 風紀委員が堂々とルール違反スレスレの行為を連発してんじゃないわよ! 風紀が乱れるでしょうが!!』

達『ぐ・・・そ、それはだな・・・・・・(-_-;)』

 

深『ちょっとリーナ・・・お兄様に失礼なこと言わないで。お兄様は流石だから許されてもいいことは、この宇宙が誕生したときから決まっていた運命なのよ?』

リ『堂々と身内贔屓された!? しかもなんか物凄い超表現を使われたような気が!?』

深『それに、今の貴女の服装では何を言われたところで説得力なんてまるでないわ』

 

リ『く・・・ッ!! 納得できないわ! シズク!シズク! お尻を突き出しなさい! 久しぶりにお仕置きお尻ペンペンよ! ワタシの振り下ろし所を失った感情を、貴女のお尻に振り下ろさせなさい! コレも久しぶりに上官命令よ!!』

雫『・・・!?!? 堂々と理不じ、ん・・・ッ!? なん、で・・・!? 私こんか、い何も悪いことしてない、し、余計なこと何も言ってな、いし、そもそも一言もしゃべってなかったよ、ね・・・!?』

リ『いいのよ! ワタシが感情爆発させたいだけだから理屈なんかいらないの! 感情論に正当議論なんか必要あるかーッ!!』

雫『物凄、いカミングアウ、ト・・・ッ!?』

 

リ『元アンジー・シリウスが命じる! お尻を叩かせなさい!! 返事はイエス・ユア・ハイネス以外をワタシは拒絶する!!』

雫『うう・・・・・・理不尽、で、お尻痛、い・・・・・・グスン・・・(T-T)』

 




書き忘れていた追記:

今作でのリーナ担当は雫ですので、本来は深雪担当スタッフの達也さんは来る必要がないのに来ている立場でした。
このため深雪も一緒に来てても問題はなく、原作における『達也さんが担当だから』的な描写をはじくことで一応の表現をしてみた次第です。

解りにくかった人がいた場合のため、念のため追加で記載させていただきました。

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