北山雫は魔法科高校の劣等生   作:ひきがやもとまち

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少しぶりの更新です。今回は時間が出来ましたのでアニメ版をシッカリ見た上で書かせていただきました!
ただ、長くなり過ぎるため次回に回した分とかも多いです。

*一部分かり辛い表現になってたため一部だけを書き直しました。


28話「魔法『技術者』の神?」

 第一高校スピード・シューティング一年生女子による1、2、3位独占という快挙は当然の如く大会に参加した各校に波紋を呼んでいた。

 特に「今年こそは覇権奪取」の意気込みで望み、『クリムゾン・プリンス』『エクレール・アイリ』『カーディナル・ジョージ』と人材面でも当時の一高最強世代に比肩しうる人材を揃えられたと自負する第三高校が受けた衝撃は他校の非ではなかったのである。

 

 

「じゃあ将輝、一高のアレは彼女たちの個人技能によるものではないということか?」

 

 与えられた会議室に集まってもらった俺たち三校新人新人選手“ほぼ”全員のうち男子の一人から質問を受けた俺、一条将輝は自信を持って頷き返しながら質問にも答えを返した。

 

「確かに、優勝したクドウって子の魔法力は卓越していた。それこそ今すぐにでも第一線級のプロで通じるレベルだと言っていいほどに。あれなら優勝するのも納得せざるを得ないだろう」

 

 俺の言葉に全員が頷く。悔しいが、これは事実だ。そして事実は事実として認めた上で受け入れられる度量のある奴らがここには揃っていると俺は確信している。

 

「だが、他の二人はそれほど飛び抜けて優れている感じは受けなかった。魔法力だけなら2位、3位まで独占されるという結果にはならなかったはずだ。

 それに、バトル・ボードは今のところウチが優位なんだし、一高のレベルが今年の一年だけ特別高いとも思えない。総合的な選手のレベルでは負けていないと見ていいだろう。

 ――とすれば、選手のレベル以外の要因がある」

「・・・一条君、吉祥寺君、それって・・・・・・なんだと思う?」

 

 スピード・シューティングの準々決勝で一高の選手に負けた女子選手が問いかけてくる。

 ・・・準決勝と三位決定戦で一高に連敗した十七夜は試合が終わった直後から自室に引きこもって会議にも出てこれていない。後で愛梨に様子を見に行ってもらおうと思ってはいるが・・・復帰できたとしても即戦力としての活躍は期待してはいけないのだろうな・・・。

 

「エンジニアだと思う。多分、女子のスピードシューティングについたエンジニアが、相当な凄腕だったんじゃないかな」

 

 黙ったままの俺に代わってジョージが質問に答えてくれた。

 

「その通りだ。・・・ジョージ、あの優勝選手のデバイス、調べはついたか?」

「うん。あの汎用型に照準補助がついた小銃形態のCADのことでしょ? 間違いなく実在していたよ。念のための調べ直したけど、去年の夏にドイツのデュッセンドルフで確かに発表されていた」

 

 ジョージの言葉に会議室中がざわめく。無理もない、小銃形態の汎用型デバイスなんて既存メーカーのカタログには載っていない代物だからな。

 優秀な魔法師は得てして技術面に弱く、CAD関連の情報はメーカーから送られてくる広告以外には目を通そうとしない者たちが遺憾ながら大多数を占めているのが現状だ。

 ならば、せめて技術者たちを見る目を養ってくれればとも思わなくはないのだが・・・俺のように幼いことからジョージのような異才が側にいてくれた奴と違って、魔法師にとっての魔工技術者に対する評価はまだまだ低い。

 超簡易魔法式が世を席巻したからといって簡単に今まで信じていたこだわりを捨てられないのは人の業だ。今はまだ割り切るしかないのだろうがな・・・。

 

「去年の夏!? そんな最新技術が、もう実用ベースに!?」

「ああ、俺たちも今回のことで調べ直してみるまで知らなかった」

「・・・でもデュッセンドルフで公表された試作品は実用に耐えるレベルじゃなかったはずなんだ。動作は鈍いし、精度は低い。本当にただ繋げただけの技術的な意味しかない実験品だったんだ」

 

 ジョージの解説に、俺が結論を出す。

 

「しかし今回、一高のクドウ選手が使ったデバイスは、特化型にも劣らぬ速度と精度で、系統の異なる魔法の起動式を処理するという汎用型の長所を兼ね備えたものだった。

 ・・・それが全て、エンジニアの腕で実現しているのだとしたら・・・到底高校生のレベルじゃない。一種のバケモノだ」

 

 断言すると会議室中に言い様のない重い沈黙に包まれるのを俺は感じ取っていた。

 ・・・言わないまま次に挑む訳にはいかなかったとはいえ、やはりこの結果を見ると言わなかった方が良かったかもしれないと思ってしまうな・・・。あまりにも絶望的なデバイス面での性能差は相手と自分を互角だと考えていた選手にとっては殊更衝撃が大きいだろうから・・・。

 

「・・・いや、将輝。それだけじゃない。敵がバケモノな理由は、もう一つある」

「ジョージ・・・?」

 

 俺と同じ葛藤を抱いていたらしいジョージが言いづらそうな表情で口を開き、あくまでも選手である俺には気づかなかった魔工技師ならではの視点から見た相手のバケモノぶりを解析してくれた。

 

「僕たち魔工技師はCADを使っている魔法師たちの顔を見る癖がついてるんだ。汗の量とか強張り具合から、使用している人の精神状態とか心理状態なんかを把握して調整してあげられるようにね。

 その魔工技師として断言させてもらうんだけど・・・決勝戦でクドウ選手は、あれだけ大きな魔法式を連続して使用しながら少しもストレスを感じていなかった。まるで普段通りに自分の手足を動かすのと同じ感覚で魔法を連続使用し続けてたんだよ」

「ちょっ!? マジでかそれ!? ありえねぇだろ絶対に!?」

 

 先ほどの男子生徒が驚きの声を上げるが、これには俺も反論できない。その術がない。それほどまでにそれは異常な出来事だったからだ。

 

 今更言うまでもないことだが、魔法とは世界を構成する情報の書き換えであり、魔法式とは膨大なデータの塊である。それらを瞬時に組み合わせて世界を改変するのが魔法であり、その過程を補助する演算用機械がCADである。

 

 要するに、全てを機械任せでやってもらっているわけではないのだ。自分でも担わなければならない部分が魔法には多く存在している。だからこそ魔法を連続使用する際には、ペース配分を重視するのだ。

 ペース配分の計算を間違えてしまえば、途中で息切れしてしまう。戦うどころの話じゃない。スポーツの大会ならいざ知らず、実戦に参加すること前提で訓練されている魔法科高校の魔法師たちが、その怖さを知らないはずがない。

 

 その恐怖心を一切気にしなくていい調整が、敵のCADには成されていると聞かされたのだから驚くなという方が無理がある。

 

「・・・もし、そいつがそんなことまで可能なんだとしたら、バケモノなんてレベルじゃない。完全に神にも届くレベルのゲテモノだ。到底人間とは思えないな・・・」

「一人のエンジニアが全ての競技を担当することは物理的に不可能だけど・・・もし、そんなレベルのバケモノ技術者が担当する競技に当たったりした場合には・・・」

「ああ・・・苦戦どころじゃ済まなくなるだろうな。

 少なくとも、デバイスの性能面では二、三世代分の性能差。性能以外では選手個人個人に合わせた調整技術。

 この二つのハンデを背負っていると考えて臨むしかないだろう・・・」

 

 重苦しい沈黙に包まれる会議室内。

 その沈黙を打破することができない己の無力さを悔やんでなのか、ジョージが悔しげに呟く声が、遠く俺の鼓膜に響いてきていた。

 

 

 

「くそっ・・・いったい誰なんだ?

 あのバカっぽい子に身代わりを命じた、バケモノみたいな技術を二つも持つ一高の天才エンジニアは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・へぷ、ちっ!」

「? どうした、雫。風邪でも引いたのか?」

「達也さ、ん・・・。ううん、何でもな、い。なんだ、か鼻の辺りがムズムズしただ、け・・・」

「そうか。まぁ、そうだろうな。馬鹿は風邪を引かんらしいからな」

「うう、ぅ・・・ヒド、いよぉ・・・(うるうる)」

 

 午前中、のすぴーど・しゅーてぃんぐで優勝できたか、らお祝いしようって言うことになって集まってきて、たダイイチコウコウの天幕、の中で私がくしゃみした、ら達也さんにからかわれ、た。・・・ひねくれ者とし、てちょっと、じゃなくて大分くつじょ、く・・・。

 

「すごいじゃない、達也くん! これは快挙よ!」

 

 会長さんが達也さんの肩、をバシバシ叩きに来てくれ、た。

 嫌そうにしてる達也さ、ん。

 ふふ、ふ♪ ちょっとだけザマーミ――なんでもありませ、ん・・・(ガタガタブルブル)

 

「・・・・・・会長、落ち着いてください」

「あっ、ごめんごめんリンちゃん。

 ――でも、本当にすごい! 1、2、3位を独占するなんて!」

「・・・優勝したのも準優勝したのも三位に入ったのも全部選手で、おまけにエンジニアは雫であって俺は手伝いぐらいしかしていないのですが・・・」

「もちろん、クドウさんも明智さんも滝川さんも、そして雫さんもすごいわ! みんな、よくやってくれました」

「「「ありがとうございます(あ、りがとうございまし、た)」」」

「No Problem! 当然の結果ですよ。気にすることありませんわ。オホホホォォ!!」

 

 あ、今のリーナが使ってた英語カッコよかった、な・・・ひねくれ者としてマネしてみたいか、も・・・(どきどきワクワク)

 

「しかし同時に、君の功績も確かなものだ。間違いなく快挙だよ」

「はぁ・・・ありがとうございます・・・」

「なんだ、張り合いのない。今回の出場全選手上位独占という快挙に、北山を影ながらサポートしてくれた君が大きく貢献しているという点は我々みんなも、そして北山本人も認識を共有しているところだぞ。もっと素直に喜んでくれてもいいんじゃないのか?」

 

 風紀委員長さんの言葉、に私はコクコク頷いて答え、る。

 じっさ、い私なにやらされたの、かあんまりよく分からないまま終わっちゃってた、し、それで多分いいんだ、と思いま、す。

 

 ――それ、に。

 達也さん、はエラクテスゴ、イ・・・。コレ絶対デス・・・私ハソウ信ジテマ、ス・・・。

 

「特にクドウさんの魔法については、大学の方から『インデックス』に採用するかもしれないとの打診が先ほど正式に届きました」

「それって、達也くんが作った『アクティブ・エアー・マイン』が新種の魔法に登録されるってこと?」

「はい。・・・言いにくいことですが北山さんの調整の方は、そもそも原理自体が不明なので定義しようもありませんからね・・・」

「・・・まぁ、そうなんでしょうけども・・・」

 

 ・・・??? 私のこと、呼ん、だ?

 

「そうですか。開発者名の問い合わせにはクドウさんか、北山さんの名前を回答しておいてください」

「あら、本当に辞退するのねタツヤ。ワタシは別にかまわないけど、アナタは本当にそれでいいの? あれってタツヤのオリジナル魔法なんでしょ?」

「先ほどの焼き回しになるが、新種魔法の開発者名に最初の使用者が登録されるのはよくあることだし、スピード・シューティングを担当したエンジニアは公式記録として雫の名が記されている。俺が出しゃばるわけにはいかないだろう?」

「フム・・・謙遜も行き過ぎると嫌味なだけだぞ?」

「謙遜ではありません。俺は自分の名前が開発者として登録された魔法を、実際には自分で使えないという恥を晒したくないだけです。

 全く使えないというわけではありませんが、発動までに時間がかかり過ぎて『使える』というレベルではありませんので、実演を求められた際に他人が開発した魔法を横取りしたと疑いをかけられかねない程度のレベルなのです。

 不名誉すぎる汚名を被される恐怖心は、選手でもある委員長ならご理解していただけると信じていたのですが?」

「フム・・・・・・一理ある。しかしな、達也くん」

「なんでしょう?」

 

 

 

「クドウはともかく、北山は実演の時にこの魔法が使えるのかと疑われる前に、現時点で私たちが疑っているレベルしか持っていないのだがね・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「……???」

 

 

 よく分からなかったけ、ど、お祝いのジューは美味しかったで、す。

 

 

 

*後日、インデックスには開発者名として正式に『アンジェリーナ・クドウ・シールズ』の名前を回答しておいたそうです。

 

 

つづく

 

 

おまけ『バトルボード予選・ほのか勝利直後』

 

ほのか「勝ちました! 勝ちましたよ達也さん!」

達也「あ、ああ、見てたよ。おめでとう、ほのか・・・」

ほのか「ありがとうございます! ――私、いつも本番に弱くて・・・運動会とか対抗戦とか、こういう競技大会で勝てたことってほとんどなくて・・・」

達也「そ、そうなのか・・・(チラ)」

雫「・・・フルフル(小学校の頃の話だ、よ?)」

達也「・・・ああ、なるほど・・・(ぼそり)」

ほのか「予選を突破できたのは達也さんのおかげです! うわぁ~ん・・・っ」

 

 

 

達也「・・・しかし驚いたな。まさか、ほのかがあそこまで感情の揺れ動きやすい少女だったとは・・・。たかが小学校時代の失敗ぐらい誰にでもあるのだし、気にするほどのことはないと俺なら思うところだがな・・・」

 

 クイ、クイ。

 

雫「達也さ、ん・・・。私も小学校のと、き運動会とか対抗戦、で万年ビリッケツだった、よ・・・?」

 

達也「おまえの場合は練習をサボって遊んでばかりいたのが原因だろう。子供の時の苦労ぐらい買ってでもすべきだったんだ。自業自得だ。諦めて今から勉強しろ。それがお前のためになる」

 

雫「待遇の格、差がヒドすぎ、る・・・!?」


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