北山雫は魔法科高校の劣等生   作:ひきがやもとまち

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途中幾つかのイベントを素っ飛ばす形で講堂事件が始まるまでの回です。
いい加減『九校戦編』に行きたかったのです。申し訳ない。

今回は達也さんの形がけっこう多いです。雫は途中から少しです。相変わらずのリーナと一緒です。そろそろ「ほのか」を出したいぞー!(原作でこの辺りだと使い勝手が難しい。優等生の方だったらいけたかな?)


11話「講堂事件? 勃発す。だが講堂内は平和である」

 風間少佐から連絡を受けた翌日のテストより一週間、魔法科第一高校は概ね平和な日々を満喫することを許されていた。

 細々としたトラブルは無数に発生していたし、肝心のバカが引き金となってはじまる騒動は不定期的に際限なく発生していたが、周囲にある環境のほうが彼女に適応してしまったらしく学校側が慣れてしまって大した事件にまで発展することなく終息する。

 

 そんな日々だ。これを平和と呼ばずしてなんと呼べばいいのだろうか?

 俺、司波達也は望み求めていた平穏な学校生活をようやく手に入れたと安堵していた。

 

 所詮、束の間の平和に過ぎないであろうことを重々承知していながらではあったが・・・。

 

 

『全校生徒の皆さん!』

 

 突然に、ハウリング寸前の大音量が教室内に設置されたスピーカーから飛び出した。

 現時刻は授業が終わった直後、放課後の冒頭。各々の生徒たちが帰り支度を始めようとしていた頃合いに起きた出来事。

 戦闘とも差別意識とも無縁ではないが一番距離のある魔法科高校に新設された新たな学科、魔法工学科の生徒たちに荒事への耐性がある訳もないため少なくない生徒が慌てふためく。

 

『ーー失礼しました。全校生徒の皆さん! 僕たちは学内差別撤廃を目指す有志同盟です。僕たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

 

 ボリュームの絞りをミスったからなのか、スピーカーからはもう一度、今度は決まり悪げな声で同じセリフが流れ出す。

 

 

「やあ、達也。なんだか大変なことになってるみたいだけど、君は行かなくていいのかい?」

「幹比古か。いや、俺も今から行こうと思っていたところだったんだが・・・用があるならお前の方を優先するぞ? どうせ行くまでもなく解決を見る事件モドキに過ぎないからな」

「??? それはどういう・・・」

「放送を聞いていればわかる」

 

 俺は入学式で出会ったときからの友人、吉田幹比古に曖昧な説明だけをして席を立つ。あり得ないとは思うが、緊急事態になった時のため即応できるようにしておくのは当たり前の処置だからな。

 

 とはいえ所詮、保険でしかない。本命で片が付いてくれるに越したことはない。

 

『聞いてください、生徒の皆さん! 僕たちは・・・・・・うわっ!? なんだこのバルーンは!? 壁に向かって押しつけてくるのに壊せないぞ!?』

『どけ! 俺がやる! どうせ魔法で強化されてるだけだ! こいつを使えば魔法を無効化・・・・・・させられないぃぃぃぃっ!? な、なんでどうして何故なんだーっぶワフ!?』

 

 スピーカーから流れ出てくる阿鼻叫喚。俺は唖然とした顔をしている幹比古に向かって「ほらな、言った通りだったろ?」と、声には出さずにジェスチャーだけで伝えてやる。

 

「・・・超簡易魔法式による防犯トラップかい?」

「ご名答。あれはバルーン自体にはなんらの細工もされてない普通の民需用品だが、噴出口に魔法式が据え付けられていてな。音をはじめとしたノイズ等を前方に展開している風船の内部で乱反射させてしまうから物理攻撃以外は効果が薄い。

 一方でバルーンだから殴打武器には強く、刃物を学校内に持ち込むのは差し障りがあり過ぎる。文房具でも持っていたら別ではあるが・・・ふつう放送室をジャックするような時に文房具を持ち込む奴はいないだろう?」

「・・・相変わらず悪辣な・・・・・・」

 

 幹比古の顔が歪むが、そもそも防犯とは犯罪を未然に防ぐことであって撃退を目的としたものではない以上、不意打ちだろうとなんだろうと寸前で止められるなら本分を果たしていると言える。

 

 少なくともアレを開発した張本人として、俺はそういう風に考えていた。

 

 

「さて、事件は片づいたみたいだが・・・風紀委員会に籍を置いている身としては、事後処理ぐらい手伝いに行かなければならないのだろうな。悪いが行かせてもらうぞ幹比古?」

「ああ、僕のことは気にしなくていいよ。単に魔法のことでこの前みたいなコツを聞かせてくれたら嬉しいなと思って来ただけだから。また今度でいい。じゃあね」

 

 友人に見送られた俺は放送室へ到着し、回収というか救出したと言うべきなのか、なにやら消耗しきった様子の放送室ジャック犯たちを見つけて多少いたたまれなくなったが役目である。七草会長の背後にたって彼らの音沙汰が決まるのを待つ。

 

 結果、七草会長は彼らとの間に話し合いの場を設けるため明日の放課後、講堂で公開討論会を行うことになる旨を翌日になってから聞かされたることになる。

 

 その日の夜に俺は師匠の元へ会いに行って、有志同盟とやらを仕切っている司兄弟の事柄についてを聞き出すと会当日に備えた。

 

 そしてーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ふ、わ・・・っ。なんだ、か人が多い、ね?」

「そうねー。大半がワタシたちと同じで暇だから見物しにきた野次馬だとは思うけど、それでもこれだけ集まってきてたのは予想外だったわ。

 日本人は勤勉って聞いてたけど・・・案外ヒマしてるものなのかしらね?」

「リーナ・・・それ、私たちに言う権利はないと思う、よ・・・?」

「・・・・・・シズクのくせに常識を口にするとは生意気な! 久しぶりにお仕置きお尻ペンペーン!」

「りふ、じん・・・っ!?」

 

 今日もリーナの暴君ぶり、は変わらない・・・うう、お尻痛、い・・・。

 

 

 

 

 

 ズドォォォォォォォンッ!!!!

 

 

「ーーっ!?(ビクッ!!) な、なんのお、と!?」

「携行可能なミサイルランチャーを用いた攻撃音ね。音量から見て、爆発場所はここから少し離れた場所でひとつ、講堂の出入り口でもうひとつ。

 セオリーで行くなら、次はガス弾か発煙筒を投擲した後にガスマスクで武装した特殊部隊を突入させる。正面きって挑んだら負けてしまう少数勢力で拠点を制圧するには有効な手ではあるけれど・・・・・・」

「い、や落ち着いてる場合じゃないと思う、よ・・・!?」

 

 普通、は爆発起きたら慌てふためくものなんじゃないのか、な!?

 

「まぁ、ひとまずは落ち着きなさいシズク。混乱を起こして、起こした混乱を拡大させて乗じるのがテロリストのセオリーなんだから、相手のペースに乗ったりしたら敗けるわよ? 緊急事態の時こそ冷静で客観的に正しい判断が必要になるものなのよ」

「そ、そうな、の・・・?」

「ええ、そういうものなのよ。だからシズク、ひとまずは寝癖を直してヨダレを拭きなさい。さっきから垂れっぱなしになってるから」

「あ、う・・・」

 

 女の子に指摘され、て少しだけ悔し、い。ひねくれ者、が女の子に弱味を握られるのは悪いこ、と。

 

「あ~、ほら。男の子じゃないんだから、服の袖で口元拭おうとするのはやめなさい。

 あなた見た目はそこそこ可愛いんだから、もっと女の子らしさを磨かないとダメよ?

 ほら、こっちに着て。ワタシが拭いてあげるから」

「う、ん・・・リーナ、ありが、と・・・」

「いーからいーから、気にしなくていいから、役得みたいなものだから。うふふのふ~♪」

 

 ?? なんで機嫌良さそ、う?

 

 

 ガッシャーーーーッン!!!

 

 シュボォォォォォッン!!!

 

「ガス弾か!? 煙を吸い込まないように・・・・・・っ!!」

「大丈夫よハンゾー君! 私に任せて!」

「会長!? しかし・・・っ!!」

 

 

 シュボォォォォォ・・・・・・・・・・・・シュルルルルルルル・・・・・・・・・

 

 

『あれ!? なんか戻ってきた・・・・・・ぎゃーーーーーーーーーっ!?』

 

 ズドォォォォォン!!!

 

 

 ・・・・・・えっと・・・。なにが起きたのか、な・・・?

 

 

「ーー会長、私の目はおかしくなっているのでしょうか? なんだか今、窓ガラスを破って飛び込んできたガス弾とおぼしき弾頭が飛んできた方向にそのまま戻っていったように見えたのですが・・・・・・」

「さすがねハンゾー君。世界最大の簡易魔法式メーカー《マウンテン》が誇る最新鋭の防犯設備『反射ガラス』の性能に気づくだなんてお目が高いわ!」

「反射ガラス!? え、でも窓ガラスは割れたままなんですけど・・・」

「そりゃそうよ。だって割って入ってきたものを戻すだけの仕掛けなんだもの。簡易魔法式は高度な魔法式を必要とする魔法は組み込めないからこそ簡易魔法式なのよ?」

 

 会長さん、と忍者ハットリくんが話してい、て。

 そこに達也さん、がニュッと現れ、る。・・・師匠さんのマ、ネ?

 

「・・・なるほど。つまり、時間を巻き戻して無かったことにしたり、完全に元に戻してしまう類の魔法ではなくて、ただ単にベクトルの流れを逆向きにするだけの魔法式というわけですね。それも大した威力のあるものは防ぐことは出来ないと?」

「良くできました、達也君。お姉さんからハナマルをあげましょう!」

「結構です、いりません。それよりかは生徒会予算の帳簿には載っていなかった防犯設備について市原先輩がお話があるとのことでしたので、聞いて差し上げてください」

「た、達也君! お願いだからお姉さんを助けてちょうだい! あなたがフォローしてくれたら、まだ間に合うかもしれないから! だからーーー」

「失礼、渡辺先輩に呼ばれたので俺は行かなくてはならなくなりました。申し訳ありませんが、続きは後ほどにでも。それでは」

「た、達也くーーーーーーーーーーーーーーーーーっん!?」

「会長、あなたの果たすべき役割は彼について行くことではありません。全体の混乱を収めることであり、収めた後に・・・・・・しっかりと罰を受けることにあります」

「いーーーーやーーーーーーーーっ!?」

 

 

 

 

 

「・・・なん、で壇上でもあびきょうか、ん・・・?」

「トーヨーの学校にある七不思議のひとつって奴かもしれないわね・・・。怖い場所なのね、トーヨーって・・・」

 

 

 私とリーナ、絶句。

 そして聞こえてく、る鉄砲撃つときの音、と色んな人が怒鳴りあうこ、え。

 

 

「!!! 敵が突入してきたわね! ワタシたちの出番だわ! 行くわよシズク!

 正義をお題目にして悪をぶっ倒しまくる子供の夢の象徴、正義の味方ごっこでストレス解消するために!」

 

 ちびっ子、の夢が木っ端みじ、ん!?

 

つづく

 

 

次回予告

 

「うおおおおっ! 《パンツァー》!!!」

「ぐおっ!?」

「ぎゃっ!? テメェ!魔法も禄に使えないウィード以下の一般人の分際で、ブルームの俺がいる方に飛んでくるんじゃねぇ! ぶち殺すぞこの野郎!」

「なんだとこの、落ちぶれたのを戦力として拾ってやった恩を忘れやがって! 似非エリートの分際で!」

「うるせぇ! 俺たちは日本の最先端魔法研究資料を手に入れて復権したかっただけだ! テメェらなんざ初めっから捨て駒なんだよ雑魚野郎どもが!」

「んだと、この! アンティナイt・・・ぶっ!?」

 

レオ「お前ら・・・敵が目の前にいるのに何やってんだよ・・・」

司一「アイツらはいったい、何をやっているんだぁぁぁぁっ!?」




補足説明:『反射ガラス』について
1、七草会長が勝手に呼んでる名前なので正式名称は別にあります。
2、本当は防犯用じゃなくて野球ボールとかが誤って飛んで来た時などに被害を減らすための簡易魔法式です。
3、防犯用という名目にした方が予算が誤魔化しやすかったから防犯用と主張している面白い物好きな会長さんでした。

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