プルフォウ・ストーリー   作:ガチャM

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舞台はUC0088年のアクシズ。ネオ・ジオン親衛隊のプルフォウを中心とした、ミネバ・ザビ、プルツー、プルシリーズたちが織り成すストーリーです。※Pixivにも投稿しています。


第14話「イレブンの危機」

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「センサーの反応が消えた? でも、間違いなく……いる!」

 

 エゥーゴのモビルスーツを追っていたイレブンは、センサーから敵機の反応が消えてしまったことに驚きはしなかった。このあたりは隕石やデブリが多く、ミノフスキー粒子で無効化されたレーダーはもちろん、レーザーセンサーもまるで役に立たないからだ。

 

『イレブン! 深追いしないで!』

 

 姉の声からは緊張が感じられた。彼女の心配は良く分かる。このような視界が悪い場所では、待ち伏せされる危険性が高いからだ。

 

「大丈夫です。お姉さま、ご心配なく」

 

 イレブンは一機を白兵戦で撃破した勢いで、残りの敵も撃退したいと考えていた。戦闘においてリズムや流れは重要だ。加えてアドバンテージはこちらにある。視界が悪く、レーダーやセンサーが使えない状況を自分は克服できる。感覚を研ぎ澄まして周囲の空間を探れば、敵の位置を掴むことが出来るのだ。

 意識を集中して、ある種のトランス状態に移行すると、髪飾りを模したサイコミュ・レシーバーが感応波を機体に伝え始めた。

 

「気配を感じる……」

 

 サイコミュを通して、ミノフスキー粒子を振動させる微弱な脳波を受信している。間違いない。敵はこちらを見つけている。

 

「上!?」

 

 イレブンが上方に殺気を感じたとき、突然スラスターの起動音がして、隕石を突き破って二機の《ネモ》が姿を現した。

 

「ダミーに隠れてジェネレーターを切っていた!?」

 

 センサーに反応がなかった理由をイレブンは即座に理解した。《ネモ》は左右から挟み込むように急速に接近してくる。

 

「くっ! ファンネル!」

 

 イレブンはすぐさま反応し、左右に二基ずつファンネルを展開させた。たとえ二機が相手でも、ファンネルを使ったオールレンジ・アタックならば同時に迎撃できる。

 

「えっ!?」

 

 だが、突如ファンネルの動きが停止して、イレブンは困惑した。何もない空間でファンネルがいきなり止まってしまったのだ。

 

「ファンネル、私の命令を聞きなさい! いえ、違う!?」

 

 ファンネルは、なにかネットのようなものに絡みとられてしまっていた。まるで魚が漁師に捕獲されたように。続けて二機のネモは、ワイヤーがついた投擲兵器を発射した。避けようと思っても勢いがつきすぎている。

 罠にはまった! ガシッという衝撃音とともに、《量産型キュベレイ》は頑丈なケーブルに両腕、両脚を絡めとられてしまった。

 

「ぐっ……!」

 

 機体の腕と脚が引きちぎれんばかりの衝撃とともに機体が停止し、その凄まじい減速Gに肺から息がなくなるほどに身体を圧迫された。一瞬意識が飛んだが、すぐに操縦桿をひいてフットペダルを思い切り蹴りつける。ロケット・バーニアの逆噴射全開で脱出を図るのだ。

 

「離脱を!」

 

だが次の瞬間、イレブンは全身に強烈なショックを受けて悲鳴をあげた。

 

「ひっ!? うああぁーっ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

 頭から爪先までが引き裂かれそうな凄まじい痛みに身体が激しく痙攣した。そう、高電圧の電流を機体に流されたのだ。《ネモ》が巻きつけてきたワイヤーは『ウミヘビ』と呼ばれる電撃兵器で、大電流を流して敵機の電装系とパイロットにダメージを与えるのである。《量産型キュベレイ》には耐電対策が施されてはいたが、二機からの大電流には耐えられない。リニアシートにも人間を殺しかねないほどの電流が流れ、ノーマルスーツでいくらかは防げたものの、相当なダメージを受けてしまった。

 

「がはっ……!」

 

 こみ上げてきた血を吐いて、身体を痙攣させながらシートに倒れこむ。

 イレブンは、徐々に視界が暗くなっていくのが分かった。

 

       ※

 

「イレブン!!」

 

 プルフォウは妹の危機を感じた。それは、まるで直接脳に情報がインプットされたかのようだった。

 

「どうしたのだ!?」

「イレブン機の動きが停止したのです!」

 

 プルフォウは慌ててレーザー・センサーを確認したが、すでに機体は失探(ロスト)していた。必死になって、遠くの物事や人の意志を感じ取れるニュータイプ能力で感知を試みると、イレブンが気を失っているらしいことが感じ取れた。

 

「おそらく敵の攻撃を受けたと思われます。彼女は気を失っています」

「本当か!? すぐに助けにいかなければ!」

 

 プルフォウは、その姫の言葉を即座に実行したかった。だが、その気持ちを押し殺しながら言った。

 

「だめです、機体を動かさないように! 姫様を危険にさらすわけには参りません!」

「何を言う! そんなわけにはいかぬ! すぐに向かうのだ!」

 

 姫はコンソールに手を伸ばし、熱探知で発見されないように動力炉をアイドリングさせていた《キュベレイ》を起動しようとする。

 

「イレブンも望んではいません!」

 

 プルフォウは姫の腕を掴んで強引に制止した。

 

「無礼な! 離せ!」

「だめなんです! ぜったいに!」

 

 自分の押し隠した気持ちを振り払うように大声で叫ぶ。その剣幕に、姫も一瞬たじろいだ。

 

「できないんです。姫様を危険にさらすことは……」

 

 プルフォウは脱力してシートに身を預けた。

 ネオ・ジオンの兵士は皆、ジオンの姫ミネバ・ザビ殿下の家臣だ。自らの命を犠牲にしても姫を守る責務がある。まして自分たちは親衛隊だ。ネオ・ジオンの規範を自らの行動によって示さなければならない。

 敵がこちらの戦闘能力を知り、不利だと悟ったならば、イレブンを交渉材料に使うはずだ。そして、こちらにジオンの姫がいるとわかれば、人質と交換しろと要求するかもしれない。そんな状況に姫を巻き込むわけには絶対にいかないのだ。

 だが、イレブンが敵の捕虜になると考えただけで取り乱しそうになった。

 

「ああ、なんでこんなことに……。増援が早くこないから!」

 

 息苦しさにヘルメットを脱いで、両手で顔を覆った。汗と涙でグローブが濡れる。耳鳴りがして、心臓の鼓動が妙に大きく聞こえる。そのうち勝手に両脚がガクガクと震え始めて、必死にそれを手で押さえつけた。

 

「お前はそれでよいのか?」

 

 姫が手にそっと腕に触れてきたが、プルフォウは顔を見られたくないので前を見たまま言った。

 

【挿絵表示】

 

「ネオ・ジオンの家臣は、みな姫様のためなら死を覚悟しています」

「……家臣の忠義は嬉しく思う。自分のような子供には勿体ないほどだ」

 

 姫はあくまで優しく言った。

 

「だが臣下の危機を気にも止めない姫など、それはただの飾り、偽物に過ぎぬ」

「……姫様」

「なぜ私がモビルスーツに乗りたいと考えたか分からぬのか? まさに、こういう危機に対処するためなのだぞ。私は強くなりたいのだ」

「……」

「お前と私で協力し、イレブンを助けるのだ」

「でも、わたしたちだけでは無理です……姉もいない状況では」

「お前もプルツーの妹、同じ親衛隊のパイロットなのだろう? そんな弱気では、私を守ることすらできないだろう」

 

 姫がわざと厳しい言葉を投げた意味を、プルフォウは理解した。姫の意志が波紋のように心に伝わってくる。そうだ、自分はプルツーの妹、親衛隊の一員なのだ。

 涙を拭い、頬を叩いて気合いを入れ直した。

 

「……わかりました。御心のままに」

「よし、いくぞ!」

 

姫は《キュベレイ》を発進させ、イレブン機がセンサーから失探(ロスト)した位置に向かわせた。

 

      ※

 

イレブンは暗いコクピットの中で意識を取り戻した。

 

「て、敵が!」

 

 飛び起きて反射的に操縦桿を掴もうとするが、手足の引きつるような痛みに悲鳴をあげた。何が起こったのか、記憶が曖昧で理解できない。

 シートに身を預け、自由にならない身体を確認すると、異常はそれだけではないことがわかった。全身がひどく痺れて、思うように動かせないのだ。

 コクピットを確認すると、リニアシートのモニターから光がすべて消えていた。全天周モニターはいくつかのパネルが壊れて映らず、レイヤーに投影される各種情報もまったく表示されていない。外部の情報が得られないことにパニックに陥りそうになるが、落ち着いて記憶を手繰り寄せると、ぼんやりとした記憶が、だんだんとはっきりしてきた。そうだ、自分は敵の罠にはまって、機体に電流を流されてしまったのだ。

 おそらくキュベレイの電装系はすべてやられている。ということは、つまり……。

 フットペダルを踏み込んでみると、まるで反応がなかった。操縦系統が死んでいるのだ。何もできることはない。

 イレブンは籠に閉じ込められた鳥を想像した。哀れな動物は、簡単にくびり殺されてしまう。

 そのとき眼前にモビルスーツの顔が出現して、イレブンはシートから飛び上がりそうになった。地球連邦軍のモビルスーツの特徴であるゴーグル状のカメラカバーが無機質な輝きを灯している。敗北した敵パイロットを捕虜にするつもりだ。

 急いで脱出しなくては。狙撃される危険があるが、脱出すると同時にキュベレイを自爆させれば、紛れて助かる可能性はある。

 

「くっ……」

 

 痛む身体を無理やり伸ばして、シート脇の脱出ハンドルを引く。が、静寂の中でカチリという音が響いただけで、何事も起こらなかった。

 駄目だ。逃げようにも機体は動かず、脱出も出来ない。絶望と無力感が全身をおし包み、兵士として戦いに敗北したという屈辱を突きつけられた。

 護身用のピストルはシートの下だ。だが身体が思うように動かず、取り出すことはかなわなかった。

 捕虜になれば、どのような扱いを受けるのだろうか。南極条約で捕虜の人権は保護されているはずだが、強化人間だということが分かれば徹底的に身体を調べられるかもしれない。それだけではない、再調整されて洗脳される可能性だってある。

 イレブンは悲惨な運命を頭から振り払った。

 

      ※

 

 プルフォウは、イレブンと周囲の状況をニュータイプ能力で探った。苦労して意識を集中すると―自分はまだ能力不足で、ぼんやりとしか感じ取れないが―やはり敵が妹を捕獲するつもりらしいことが分かった。敵モビルスーツがキュベレイ11に取りついているのだ。

 姉プルツーに状況を報告したかったが、いくら呼び出しても応答がない。宙域にはミノフスキー粒子が散布されているから、こちらの通信が届かないかもしれないし、まだ戦闘中で返答する暇がないのかもしれない。

 

(プルツーお姉さまに限って、撃墜されたなんてことは……)

 

 最悪の事態を頭から振り払う。

 

「プルフォウ! 指示をしてくれ、わたしには状況がわからぬのだ!」

 

 私だって、それが分からないから困っているのに!

 プルフォウは姫を間違いなく敬愛していたが、彼女の自分勝手な物言いに、この瞬間だけは姫に怒りを覚えてしまった。

 だめだ。冷静にならなければ。

 

「申し訳ありません。……こういう状況では、まず相手の要求を聴くことが重要です。必ず、なにか要求を伝えてくるはずです」

「つまり、その場での判断が求められるわけか」

「はい。非常に困難な状況です」

 

 頼れるものはいない。自分で判断しなければならない。機体のデータベースに交渉術のファイルはあっただろうか。

 

「わたしがファンネルを操作します」

 

 不測の事態に備えて、いつでもファンネルで攻撃できるようサイコミュを起動する。ファンネルの残数が少ないのは不安だ。ファンネル・コンテナにはあと二基しかない。戦力としては、あまりに心もとなかった。

 

「敵機発見、レーザー・センサーにコンタクト」

 

 サイコミュを起動したことでセンサーレンジが拡大し、すぐに敵機を見つけることができた。

 いや、最初から隠れるつもりはないのだろう。

 

「三機の反応があります。一機はイレブンのキュベレイです」

「無事なのか?」

「おそらくは。機体は破壊されてはいないようです」

 

 イレブンは生きているはずだ。そうでなければ、エゥーゴ機はとっくにその場を離れているはずだからだ。

 

「姫様、ゆっくりと接近してください」

 

 接近すると、イレブン機の両脇でエゥーゴの《ネモ》がライフルを向けているのが分かった。すでにこちらを見つけているだろうから、必ず通信してくるはずだ。

 はたして《ネモ》のメインカメラが点滅し、レーザー通信が発信されてきた。

 

「姫様、エゥーゴ機からの通信です。回線を開きます。よろしいですね?」

「わたしは大丈夫だ」

 

 プルフォウはコンソールを操作して、レーザー通信を同調させる。

 キュベレイのモノアイが点滅して返信メッセージが送信された。

 

「エゥーゴのモビルスーツ。レーザー通信の回線を同調させた」

 

 エゥーゴ機からは、すぐに返信が返ってきた。

 

『ネオ・ジオン機。こちらはエゥーゴ艦ウォーターフォード所属のロナルド大尉だ』

「わたしはネオ・ジオン親衛隊のプルフォウです」

『親衛隊? 幼い声だな。子供か? 状況は理解してもらえていると思うが、貴機もこちらに無条件で投降して頂きたい』

「それはあまりに一方的です!」

 

 冷静さを保たなければと思いつつも、プルフォウは感情を爆発させてしまった。投降などできるはずがない。こちらには姫がいるのだから。

 

『残念だが、交渉の余地はない』

 

 やはり姫様と一緒に来たのはまずかった。ミネバ・ザビ殿下を人質にとられるなど、それはもはや一士官の問題ではない。国家的な問題だ。

 プルフォウは自分の迂闊さと事の大きさに恐れおののいた。自分の判断が戦局を左右し、取り返しのつかないことをしてしまう可能性に吐きけを覚える。抱える重さに気を失いそうになるが、現実逃避するわけにはいかなかった。落ち着いて交渉し、打開策を見つけるしかない。

 

「パイロットは無事なのですか? まずはそれを確認したい」

『投降してから、この機体のコクピットを確認するのだな。時間稼ぎはやめてもらおう!』

「そんなつもりはありません! 仲間の無事が知りたいのです。人質の安全が保証されなければ投降しません」

 

 そのときイレブンの叫ぶ声が頭の中に響いた。

 

『お姉さま、すぐに離脱して下さい! 投降しては駄目です!』

 

 イレブンがコクピットハッチを開き、ふらつきながら身を乗り出して叫んでいる。

 だが、その声は接触回線で《ネモ》のパイロットにも伝わってしまった。

 

『余計なことをいうな!』

『きゃあああぁーっ!』

 

 イレブンの身体が突然に跳ねあがり、彼女は悲鳴をあげた。電流を流されたのだが、いまイレブンはハッチに立っているのだ。外装を通して電流は危険なレベルで伝わってしまう。ヘルメットを通して聞こえてくるイレブンの悲鳴が絶叫に変化していく。それは、これまで聞いたことのないほどの恐ろしい叫び声だった。

 

「やめて大尉! お願い、やめて!」

 

 《ネモ》は数秒間電流を流し続けて、ようやく攻撃をやめた。モニターには、コクピット内で倒れたイレブンの姿が映っていた。ピクリとも動かず、焦げたノーマルスーツからは薄く煙があがっている。プルフォウは全身から冷や汗が噴き出るのを感じた。

 

『プルフォウ君、妙な真似をするなよ』

 

 ロナルド大尉はそう警告すると、モビルスーツのマニュピレーターで《量産型キュベレイ》の胸部装甲を剥がし、コクピットハッチをむき出しにした。そうしてから大尉はコクピットから出て、《量産型キュベレイ》のハッチに降り立った。

 

「撃たれたくなければ、出てくるんだ!」

 

 ロナルド大尉がコクピット内に銃を向けて命令する。

 

「大尉、彼女は動けません! 撃たないで!」

 

 プルフォウは必死に訴えた。

 

『……ニュータイプや強化人間というのも、案外弱いのだな』

 

 その言葉に納得したのか、大尉はコクピット内に入ると、しばらく後ぐったりとしているイレブンを抱えて出てきた。プルフォウはイレブンの様子を観察して、まだ息をしているらしいことに安堵した。

 

『二人とも子供だというのか?』

「地球連邦軍でも珍しいことはないでしょう……」

『ああ、そうだな。嫌な時代だよ』

 

 ロナルド大尉は、イレブンの両腕を掴んで後ろに捻るとストラップで拘束した。

 

『プルフォウ君、見えているか? 投降さえすれば、間違いなく彼女の安全は保証する』

「卑怯な!」

『すまないとは思うが、強化人間やらニュータイプやらが相手なんだ。このくらいは許して頂きたい。自分も死にたくはないんでね』

「それが大人の言い訳ですか!」

『すぐに機体を武装解除するんだ。もちろん、やっかいな無人兵器もだ』

「くっ……」

 

 考えをまとめるために、いったん回線を切る。

 いったいどうすればいいのか分からなかった。この状況では打開策はない。

 

「姫様、申し訳ありません。全て私の責任です。姫様までを危険に……」

 

 プルフォウは、すがるように姫の顔を見た。

 姫の表情は硬く、僅かに怒りが感じられた。

 

「今は言い訳はよい! 対策を考えるのだ」

「は、はい! ですが、イレブンを人質にとられていては」

「何か方法があるはずだ」

「たった一機では……」

「例えば敵のいうことを聞くふりをして、油断させて反撃することはできぬのか?」

「……」

「思いつかないか?」

「……武装解除の隙を利用できるかもしれません。でも攻撃する手段が」

「ファンネルはどうなのだ?」

「ダメです。ビーム兵器は、かすめただけで人間を殺してしまいます」

 

 縮退したミノフスキー粒子、『メガ粒子』を撃ち出すビーム兵器は、周囲にミノフスキー粒子を撒き散らしながら進む。人体にとっては、高エネルギーの粒子そのものが致命傷になってしまうのだ。

 

『どうした、返事がないぞ! 受け入れたということなのか? 逃げるつもりなら、彼女の命の保証はない』

 

 無情な通告にモニターを見ると、大尉がピストルをイレブンの胸に押し付けているのが見えた。

 

『野蛮なことは、どうかさせないでくれ』

 

 ここに至って人道主義者のふりか。よくもそんなことが言えたものだとプルフォウは怒りを覚えた。

 

「プルフォウ、ファンネルの」

「姫様、ファンネルは使えないと申し上げました!」

「ファンネルのビームを撃たなければよいのではないか?」

「えっ?」

「つまりファンネルそのもので攻撃するのだ。直接ぶつけられたら、人間は無事ではいられないだろう」

 

 そうか!

 プルフォウは、アクシズで半壊した《ガザC》の脱出ポッドを救出するとき、自分がファンネルを同じように利用したことを思い出した。なぜ、気付かなかったのか。ファンネルを人間にぶつけるのはぞっとするが、相手がしていることを思えば。

 

「姫様、それは素晴らしいアイデアです!」

「イレブンを捕らえている、あのパイロットを排除すれば勝機はある」

「はい!」

 

 この作戦に賭けるしかない。だがチャンスは一回きりだろう。

 プルフォウは姫に視線で合図すると、通信回線を開いた。

 

「ロナルド大尉、武装解除に時間を頂けますか」

『いいだろう。三分間だけ待つ。おかしな考えは持たないことだ』

「感謝します」

 

 プルフォウは通信を終了した。

 

「姫様、あと三分で準備を終わらせます」

「わかった。大丈夫だ、必ず上手くいく」

 姫の決然たる表情に、プルフォウは勇気付けられた。




連載中の小説を本にした「プルフォウ・ストーリー(上) 姫のモビルスーツ」を、COMIC ZINさんととらのあなさんに委託させて頂きました。

■COMIC ZIN http://shop.comiczin.jp/products/list.php?category_id=6289

■とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/cot/author/21/a5aca5c1a5e34d_01.html

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