どうも、7話目です。今回は時間ができたので早かったです。
どうぞ。
あれから体育祭も終わり、教室内は修学旅行が近づいているためか若干浮わついている。なんたってクラスの中心葉山グループが浮わついてるからな。と言っても葉山本人はいないんだが、主に戸部がうるさい。
にしても修学旅行かー。ぼっちには特に嬉しくない行事だな。自由行動以外気まずいだけじゃん。もういっそ俺一人のグループでいいわ。
そんなことを鬱々と考えていると、ちょんちょんと背中を叩かれた。振り向くとそこには天使、もとい戸塚がいた。
「今度のLHRで修学旅行の班決めするんだって」
「へー、そうなのか。まあみんなだいたい決まってんだろ」
「八幡はさ、決まってるの?」
「いや、どっか余ったところにぶっこまれんじゃないかなーって思ってる」
「そうなんだ。それならさ、僕と一緒の班にしない?」
……まじか、前言撤回。修学旅行最高。超楽しみ、戸塚まじ天使。
「いいのか? よろしく頼む」
「うん! よろしく!」
わー、笑顔がまぶしー。そうか、これが浄化されるということか。
「一班四人なんだけどあと二人どうしよっか」
「その辺は他のところとドッキングだろうな」
「そうかも。どこ行きたいとかある?」
「それは他の二人とも話し合わんとな」
「そうだね。じゃあ話の続きはちゃんと決まってからね!」
そう言って手を振って席に戻っていった。さっきまでの憂鬱な気分は消え去り、次の数学の授業を真面目に受けようと思えるくらい気分は優れていた。つまりかなりいい気分。
そういえば陽乃にはなんのお土産買おうか、普通だと面白くないよな。いいリアクション見たいし。
そんなこと考えていると教室に葉山と海老名さんが入ってきた。珍しい組み合わせだ。しかも葉山は困ったような顔をしている。あいつも大変だな。乙。
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時は飛んで放課後。奉仕部の3人は特にすることもなくいつも通り、つまり俺と雪ノ下は読書、由比ヶ浜は携帯いじりをしていた。と言いたいところだか雪ノ下が持ってるの、あれ旅行雑誌だよな。そんなに楽しみなのか、意外だ。
「もうすぐ修学旅行だねー。ゆきのん、どこ行くか決めた?」
「まだね。行きたいところが多くて決めあぐねているのよ」
「そっかー。でも京都に行ってもなにするのって感じゃない? 遊ぶとこ少なさそうだし」
「はぁ、あなたは歴史や文化の大切さを……、知らなさそうね」
「ちょ、ゆきのんひどい!」
そして由比ヶ浜が雪ノ下に抱きついた。あ、なんかゆりゆりしだしたよ。これは空気になるしかないな。俺は空気、よし、大丈夫だ。
「ヒッキーは決めた?」
ダメだったみたい。
「由比ヶ浜さん、そんな可哀想なこと聞いてはダメよ。彼にそんなこと決める権限があるわけないじゃない。同じ班の人の意向に従うしかないのよ」
「あ、そっか。ごめんねヒッキー」
「おい、お前らちょっと待てよ。何勝手に俺を可哀想な人にしてくれてんの」
「違うのかしら?」
「今回は違うね。なんせ戸塚と同じ班になることが決定しているからな。戸塚とならどこに行ってもいい。だからそんな権限は要らない」
「あはは、そうなんだ。よかったねヒッキー」
由比ヶ浜は苦笑いしながらそう言ってきた。雪ノ下はため息をはいている。そんな反応しなくても……、本当に嬉しいんだもの。
ちょっと微妙な空気になった部室にノックが響く。こんな時期に依頼か? 雪ノ下の返答のあと扉が開かれ、葉山、戸部、その他二人が入ってきた。何しに来たんだよお前ら、悩みとかなさそうだろ。
「なんのご用かしら?」
「いや、ちょっと相談があって」
雪ノ下の異様に冷たい対応に葉山が答える。こいつまだ葉山嫌いなのか。
「お前が?」
俺は率直な疑問を葉山に投げた。
「今回は俺じゃなくて……」
「俺っす。用件なんだけどー、……」
葉山の後に戸部が続けた。お前かよ、お前こそ悩みないだろ。いつもべーべー言ってるだけじゃん。しかもなに言い淀んでんの。いつもの勢いはどうした。
「ほら、言っちゃえよ」
「そうだぞ。言っちゃえ」
モブ二人は戸部を煽っていた。ごめん、名前忘れちゃった、だからもう君たちモブね。
「あ、あのー、俺、海老名さんのこと結構いいって思ってて、この修学旅行で決めたい的な?」
「え!マジ?!」
「つまり告白の手伝いをすればいいのかしら」
「そうそう、そんな感じでおなしゃす!」
「戸部、それ失敗したらどうすんだ? 俺達ができるのは部の方針を考慮するとアドバイス程度だ。成功の保証はできないぞ」
「ちょ、ヒキタニ君、やる前から失敗とかネガティブすぎっしょ」
「そうも言ってられんだろ。告白なんて既存の関係を壊しかねん。それでもするのか? というか俺は馬に蹴られたくないんで他人の色恋沙汰には干渉したくないんだが」
絶対関わっていいことないし、何より面倒だ。俺はこの修学旅行、戸塚と楽しまないといけないんだよ! お前なんぞに割いている時間などない!
「ヒキタニ君噂通りきついこと言うわー。でもあれっしょ、それほどまじで考えてくれてるってことっしょ」
「いや、戸塚との時間の邪魔をされたくないだけなんだが……」
「この期に及んでもあなたはそれなのね」
「いいじゃんヒッキー!戸部っちも本気みたいだしさ。手伝ってあげようよ!」
「えー、というかお前海老……」
「ヒキタニ君そこをなんとかおなしゃす!」
あー、もううるせぇ。雪ノ下にパスしよ。
「まあ俺に決定権はないからな。雪ノ下に聞け」
「お願い!いいでしょ!」
「そこまで言うのなら…、受けましょうか」
「ありがとうゆきのん!」
雪ノ下は相変わらず由比ヶ浜に弱いな。あー、戸塚との時間がー。
「と言っても私はクラスが違うしあまり力になれないと思うのだけれど」
「そこら辺はたまにアドバイスくれるだけで大丈夫っしょ」
詳しい内容に入りかけたときに葉山が口を開いた。そういえばいたな。葉山が空気になるってすごい。え? 他の二人? 最初から空気です。
「じゃ、ここからは戸部だけでいいかい? 俺達部活いかないといけないから」
「あ、いたのね。全然構わないわよ」
「隼人くん、俺もあとから行くからよろしくー」
そうして3人は部室を出ていった。雪ノ下…、葉山顔ひきつってたじゃん。やめてあげなよ。
「で、具体的にどうするつもりなわけ?」
「んー、当日は私は優美子と姫菜となるのは確実だろうし、たぶん隼人くんたちと行動することになると思うからサポートはしやすいかな」
「へー、頑張れ」
「で、ヒッキーは戸部っちと同じ班でサポートすればよくない?」
「残念だかそれは無理だ。なぜならさっきから言っているように戸塚と組むからな。こいつと組んでいる余裕はない。それにこいつら四人で既に決まってんじゃないのか?」
「あー、その通りだわ」
「だそうだ。な、無理だろ?」
「でも、大岡君と大和君も事情知ってるし別れてくれるんじゃない? そうすれば彩ちゃんもいれて四人だよ」
「む、それなら確実に戸塚と一緒になれるな。実は余ったところが3人3人でバラバラになるかもしれないと危惧していたんだ。この際サポートのことはどうでもいい。よし、それでいこう」
「ちょ、ヒキタニくーん」
「まったく、あなたはぶれないわね」
よし、これで戸塚と確実に一緒だ。戸部はまあ適当でいいや。どうせ失敗するだろうし。本人もその覚悟があるみたいだからな。
「じゃ、そういうことでよろしく!」
そう言い残して戸部は部活にいった。あいつ軽いなー、本当に大丈夫か?
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戸部が襲来して二日後の放課後。俺は部室で修学旅行の行き先を考えていた。昨日無事に戸塚と一緒の班になれたんだよ。うるさいのもいるけど。ちなみに女子の方の穴埋めはサキサキらしい。あいつ文化祭終わってから結構海老名さんと仲いいしな。
「んー、ゆきのんどういうルートがいいと思う?」
「そうね、やはり定番どころは押さえたいかしら」
あなたたち楽しそうですね。俺も戸塚と行きたいところちゃんと押さえとかなくては。そう意気込んだところでノックが聞こえた。え、またかよ。この短期間に?
「どうぞ」
「失礼しまーす」
そう言ってそろっと入ってきたのは海老名さんだった。
「あれ、姫菜じゃん。やっはろー」
「はろはろー。ここって奉仕部であってるよね」
「そうよ、それで何か相談でも?」
「うん、実はちょっと戸部っちのことで……」
「えぇ!! と、戸部っちのこと?!」
おい由比ヶ浜、そのリアクション0点だぞ。何かあんのバレバレじゃねえか。ほら、海老名さんもやっぱりって顔してるし。うわ、面倒事の予感……。
「最近ヒキタニくんの戸部っちと隼人くんとの絡みが多くて、ハヤハチの勢いにトベハチが迫る勢いなんだよ!」
「え?」
「でもその分大岡君と大和君との四人の絡み合いが少なくなったから、何か仲悪くなったのかなーと思って」
「あ、えっと、それは……」
由比ヶ浜が詰まっている。
「確かにヒキタニくんとの絡みもいいけど、元々のカップリングを捨てるのも惜しいのよ!だから今まで通りいかないものかなと思ってね!」
「俺はいらないけど」
「あの、彼女は何をいってるのかしら」
「わからなくていい、やめとけ」
雪ノ下が腐に目覚めてみろ。陽乃の目から血が流れるぞ。絶対にいいことない。
「まあ、大丈夫じゃないか? 男子っていつも一緒って訳でもないし」
「それならいいんだけどね、ヒキタニ君よろしくね」
そう言い残して出ていった。あー、これは本当に面倒なことになったな。
「結局なんだったのかしら?」
「うーん、なんだったんだろ」
二人は完全に取り残されてるし。わからなかったっぽいな。でもこれは教えるべきじゃないだろう。たぶん由比ヶ浜がいるせいでわざと濁している。俺にだけわかるようにしたかったんだろうが、確信が持てないな。まあ大事なことならもう一回直で俺に言ってくるだろう。それくらい分かりにくかったからな。気付かなかったふりしとこ。
俺、ちゃんと戸塚と楽しい修学旅行できるの?
「あ、そうだゆきのん。三日目の自由行動さ、一緒にまわらない?」
「え、でもクラスが違うし難しいのではないかしら」
「その辺はどっかで待ち合わせすればいいじゃん? ね! どうかな!」
「そうね、それなら良さそうね」
「よし、じゃあヒッキーもね」
「は? 俺は戸塚が」
「ほら、彩ちゃんも他の人とまわるかもしれないじゃん。グループは一緒なんだし」
「確かに、戸塚には他のコミュニティもあるもんな」
「そうそう。だからいいでしょ?」
「えー、俺は一人がい…」
「はい!決まり!三日目は3人ね!」
「仕方ないわね」
えーー。えー、しか出てこねえよ。ちょ、俺の意思は……。
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またまた時は過ぎ土曜日。今日はカフェで陽乃と待ち合わせである。店内に入ると店員に待ち合わせであることを伝えてから陽乃のもとに向かった。相変わらず目立つな。
「すいません。遅くなりました」
「大丈夫よ、まだ約束の五分前だし」
陽乃は既に注文を済ませているようなので俺もさっさと店員を呼んで注文する。
「そういえば聞いたよ、体育祭のこと。ぷっ、今でも笑える」
「おいなんでそれ知ってんだよ」
陽乃に知られたら絶対に馬鹿にされると思ってはいたが、そんなにツボか?
「家の人間送り込めばって言ったの八幡じゃない。おかげで雪乃ちゃんの写真がいっぱい手に入ったわ。ついでに面白話も、くくっ」
「そんなに笑えます?」
「だって誰が包帯でハチマキ偽装しようなんて思い付く? どう考えても反則じゃん」
「俺影薄いからいけるかと思ったんですよ」
「いやいや、どんなに影薄くても隼人なんかに近づいたらバレるに決まってんじゃん」
「くっ、なにも言えん」
「あははは、もう、八幡って策士なのか馬鹿なのかわかんないよね!」
馬鹿って、ちょっとその件で自信なくしたんだから止めて。やる前までは素晴らしい作戦だと思ってたんだよ? しかもそのせいで負けちゃうし、こう見えて責任感じてんだぜ?
「折角、最近忘れかけてたのに。ほじくり返すんだから」
「いや、いいと思うよ。うん、可愛いってそういうとこ」
「全然嬉しくねぇよ」
「もう、照れなくていいから。そうだ、今日はなんかあったの?」
そう、実は今日の誘いは俺からだ。
「ちょっと愚痴りたいことがあってですね、そういうことできる相手が陽乃しかいませんから」
「お!なになに!八幡の愚痴とか面白そう」
「俺達もうすぐ修学旅行なんすけど」
「そうだね、この前雪乃ちゃんがそわそわしながら準備してたから」
「え、あいつ独り暮らしですよね」
「この前買い物しているところ見たの。さすがにそこまで過保護じゃないわよ」
「どうだか」
「ちょ、それどういうことよ!」
「あー、なんでもない、なんでもないです。まあそれでですね……」
陽乃に戸部の依頼と海老名さんの話をした。
「俺の、幸せ修学旅行計画With戸塚、が台無しですよ」
「八幡、とりあえずその戸塚って子好きすぎでしょ」
えぇ、そうですとも。ここまで異様なくらい戸塚って単語使ってる。さすがにキモいか。
「まあそれはそれで。で、海老名さんは確実に告白の阻止を要求してますよね」
「そうね、私もそう思うわ。どうするの?」
「まあ、あれから特になにも言ってこないんで、そこまで重要じゃないのかなーと思うことにして放置します」
「それで大丈夫なの?」
「まあ、足は突っ込まないに限りますからね。それに頼み方もちょっと気にくわないんで真面目にお願いしてきたら考えてあげてもいいかな」
「でもそれ八幡やる必要ある?」
「彼女には体育祭での借りがありますからね。といっても俺は見合っていない貸し借りは嫌いなんで、オーバーしたぶんはこっちの貸しにしようかな。あの人地味に使えそうだし」
「腹黒いわね。ちょっと私に似てきてない?」
「いや、リスクリターンの計算の結果ですよ。基本タダ働きなんてしないんで。でも陽乃に似てるってのはなんか嬉しいですね」
「なにそれ口説いてる?」
「いえ、率直な感想です。陽乃を口説くなんて出来ませんて」
「ちぇー、つまんないの」
陽乃は口説くよりも強引にいった方がいけそうじゃない? まあ、どちらにしてもそこまで近づける人がほとんどいないだろうが。
「でもさ、そういう相談って普通隼人にしそうじゃない?その子隼人のグループなんでしょ?」
「確かにそうですね。なんで俺に来たんだ?」
「でも隼人じゃこういうことうまく立ち回れなさそうよね。戸部って子とも仲良いみたいだし」
「それについては同感ですね。あ、そういえばあいつが海老名さんと一緒に教室入ってきたことがあったな。あれこの相談だったのか? 困った顔してたし」
「それはあるかもね」
「じゃあなんで葉山は奉仕部に相談持ってきたんだ……。あー、なるほど、そういうことか」
「私も何となくわかったかも」
どうやら陽乃も予想ついたらしい。まああいつとも付き合い長いしな。
「あいつ俺達奉仕部に戸部を思い留めさせようとしてたのか。自分じゃ止めるに止められないから」
「でも思惑通りにいかなかった。きっとガハマちゃんなら海老名ちゃんと一緒にいることが多いから無理だってわかるはず、そしたら止めてくれるとでも思ったのかな」
「でしょうね。俺や雪ノ下も受けないと思っていたんでしょう。しかし由比ヶ浜に押しきられる形で受けてしまった。なるほど、由比ヶ浜の恋愛脳が計算に入ってなかったんですね」
「それ普通いれないよね。というか入れられなくない?」
「それもそうっすね。葉山にとってもイレギュラーの連続なんだな。うわ、あいつの修学旅行全然楽しくなさそう」
「あはは、さすがの私でも同情しちゃうわ。今度会ったときは優しくしてあげよう」
「それ逆効果じゃ?」
「ちょっと、失礼ね! いや、確かに急にそんなことしてもそうよね」
「雪ノ下との関係修復してあげた方が喜びますよ」
「そうね、まあ今後の様子を見て検討してあげてもいいかな。0が1になる程度だけど」
葉山はある意味周りに強く出れんからな。そのくせ全ての調和を保とうとするから、それぞれに気を使いすぎるんだ。少しは突きつけてやってもいいだろうに、特に由比ヶ浜。でもあいつはそんなことしないんだろうな。
「これうまくいけば葉山にも貸し作れそうだな」
「わー、腹黒八幡だー」
もうなんとでもいえ。でもこれ結構美味しい。一応頭に置いておこう。
「なんかそこまで億劫じゃなくなって来ましたね。策はそのときに考えればいいし」
「じゃあ修学旅行楽しめそうだね。その勢いでいいお土産よろしく!」
「あんま期待しないでくださいよ」
「あれだよ、センスをよくするための一環で」
「まあそこそこ頑張りますよ」
なんか宿題出た。
「いいなー、旅行かー。私も行きたいな。こっそりついていこうかな」
「なにいってんすか、あんた大学でしょうが」
「わかってるわよ。ちょっとした冗談じゃない」
「あ、俺と行きたかったんですか?」
「んなわけないでしょ! なにいってんのよ!」
「わかってますよ。ちょっとした冗談です。くくっ」
「むー、なんなのよ。ちょっと最近調子に乗ってない?」
「いえいえ、滅相もない。陽乃相手に調子に乗るなどけして」
「じゃあ罰としてお土産総額一万円ね」
「おいちょっと待て、それは止めて! 飯とか俺の分の買い物できなくなるから」
「えー? なんだってー? 聞こえなーい」
「このあま」
この後店員に注意されたのは言うまでもない。気まずくなった俺達は店を出て、しばらく辺りをぶらぶらしたあと別れた。
来週は修学旅行だ。
なんかぽんぽんいきましたね。次回は修学旅行です。
はあ、次は陽乃出せないのか。
それに旅行なんていかないから旅行回とか書けないんだよね。
では、また次回。