彼と彼女はそうして対等になる   作:かえるくん

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 お待たせしました。6話目です。

 どうぞ。


二人は買い物をする

 あれから店を出て駅まで戻ってきた。来たときより落ち着いているかと思ったが相変わらずの人の多さだ。そして何より目につくのがリア充の数。視界に常に4組は入ってくる。爆発しろよ。

 

 かく言う俺も隣に陽乃いるから勘違いされてめっちゃ睨まれてるけど。まあ、俺みたいなぱっとしないやつがいたらね、なんでお前だよってなるよな。しかたないとは思うけど、そこのお前はなんで隣に彼女いるのに俺睨んでんだよ。げせぬ。

 

 とりあえず心労がやばい。まじパトラッシュ。あ、これ死ぬほど疲れるって意味ね。気に入ってるけどあまり使わない方がいいのかな、名作だしやめとこ。怒られそう。

 

「なに今にも天に召されそうな顔してんの?」

「いえ、周りの視線がちょっと…」

「そうかー、私はいつものことだから気にならなかったけど、八幡はそうじゃないもんね」

「それもそうですけど、こもってる感情が全部妬みですから余計に」

「あね、私が美人だからだね!ごめんね!」

 

 そう言って目配せする陽乃。なんか目から星が出たのが見えたような気がする。そしてそれを見ていた他の男が数人胸を撃ち抜かれていた。

 

「あれー、なんでそんなにげっそりしてるの? 私のウインクよくなかった…、訳ではないよね。現に他の男はやられてるし」

「確信犯かよ。ちょっとリアクションする元気がないだけです」

「えー、また今度八幡が元気なときにやろ。あとこの視線を何とかするためにも八幡をばっちり改造しないとね」

「そんなんでなんとかなるんですかね。石はどんなに磨いても石ですよ」

「八幡って石は石でも色のついたきれいなやつじゃない?」

「まあ、パーツは悪くないと思ってますよ、目以外。なんたって妹の小町は可愛いですからね。兄の俺も少しは整っていてもおかしくないはず」

「なにその理由、しかもはずってそこまで自信はないのね。まあ目とそのボサボサの頭のせいじゃない? あとセンス!」

 

 おい最後の致命的じゃねーか。知ってるけど、こればかりはどうにもならないような気がする。

 

「この目は既に俺のアイデンティティーと化していますからね、今更直したいとは思いませんね」

「それについては同感ね。あとセンスは訓練で少しはなんとかなるのよ」

 

 訓練って嫌な響きだな。なにするの、すごい怖い。

 

「大丈夫大丈夫。そんな厳しいことじゃないから。ひたすら私に合う服を探すとかでいいのよ」

「それ十分厳しいですよ」

「そうかなー。あ、着いたよ、まずここからね」

 

 陽乃はそう言って店に入っていった。待って、ここ店って言うより美容院じゃね。しかもめっちゃおしゃれだし。無理無理無理無理! こんなとこ入れるわけないって。ちょっと改造って、これガチなやつじゃん。

 

「なにぼやっとしてんの、行くよ」

「待て陽乃、こんなところに俺が入れると思ってんのか?」

「私が一緒だから問題ないわよ。ほら」

 

 手を捕まれ店内にドナドナされました。なにこの未知な世界、やべ、胃が…。

 

「いらっしゃいませ陽乃様。今日はどのようなご用件で」

「今日はこの子お願い。いい感じに整えてあげて」

「了解しました。では、こちらにどうぞ」

 

 なんだよこの対応。もう意味わかんない。考えるのやめよ。この世には抗えない力ってのがあるんだよな、うん。

 

 そうして俺は思考を放棄した。

 

  ____________

 

 

「やっぱり整えるだけで印象大分変わるじゃない」

「そうですね、こちらのお客様は素材はなかなかでしたので」

「でしょ? で、これキープするの大変なの?」

「いえ、先程のお客様の状態からそういうのが不得意だと判断したので簡単にできるような髪型にしました」

 

 なんか誰かが話をしている声が聞こえる。片方の声は陽乃だな。あれ、俺今何してたんだっけ。確かカフェで陽乃と話して、駅まで戻ってきて、ん? そのあとどうしたんだっけ? てか、目の前に座ってんの誰。しかも目が腐ってるし。いや、目が腐ってんのは俺だわ。てことはこれ俺か。あー、思い出してきた、ここ美容院だ。知らないうちに終わったんだな。

 

「で、いつまで八幡はそうしてるの?」

「たった今長い眠りから覚めました」

「なにいってんの? それで、どうよ。大分印象変わったでしょ」

「ほんとっすね。で、これ料金は……」

「私が無理矢理したようなもんだからね。だしとくよ。まあ、コネで半額にしてもらったんだけどね」

「そうですか、でも半分は出させてくださいよ。自分のことなのになにもしないのはちょっと。それに結構気に入ってますし」

「そう? 気に入ってるならよかったわ」

 

 何がいいって、アホ毛をなんの違和感もなく存在させられてるところだよね。今まではこのアホ毛をなくさないために無理にいじってこなかったからな。

 

「よし、頭はすんだね。次は服見に行こうよ」

「ええ、仰せのままに」

 

 もうここまで来たら抵抗しないよね。逆に楽しんでやるよって気分。できるかわからんけど。

 

 そしてまたまた陽乃は行く店があるらしく、俺はおとなしくついていく。陽乃なんか楽しそうだな。

 

「陽乃はずいぶんと楽しそうですね」

「まあね、こうやって気兼ねなく遊べるのは久しぶりだからね」

「大学の人と遊んだりしてないんすか?」

「いや、結構あるよ。でもほら、そういう人たちには色々気を遣ったり考えて行動したりしないといけないじゃない? それに比べて八幡には今更そんなことしてもね」

「さいですか」

「そうそう。今までは結構一人で自由にすることが多かったけど、これからは八幡連れていけるね」

「まあ俺は基本一人じゃなにもしませんからね、構わないですよ」

「よし、じゃあ早速ここでたくさん付き合ってもらおうかな」

 

 どうやら二軒目に到着したようです。だからさ、なんでこんなにお高そうなのかな。あ、陽乃だからか。俺には無理だな。

 

「大丈夫。八幡のを買うとか言わないよ。見るだけ。私はなんかいいのあったら買うけど、よろしくね」

「なら心配ないですね。俺の残念なセンスで選んであげますよ」

「え、なんか知らないうちに吹っ切れてる。少しは頑張ってよ」

「ハードルは下げとくに限ります」

 

 店内に入ってみると奥から店員が出てきた。や、もう驚かないよ、どんな対応されても。大方、雪ノ下家のなにかしらかがどうにかなってんでしょ。もうなに言いたいのかわかんない。

 

「まずは八幡からね。男物はあっちかな」

「俺も探した方がいいですかね」

「私がいくつか見繕ってみるから試着してきてよ」

「わかりました」

 

 陽乃はしばらく服を物色してから俺にいくつか渡してきた。それをもって試着室にはいる。こんなの似合うのか?

 

 着終わってカーテンを開けると陽乃が女の店員と話をしていた。いつの間に店員呼んだんだよ。で、なんで陽乃は少し顔赤いの。店員はにやにやしてるし。なんの話してたんだろ。

 

「で、どうでしょう」

「あぁ、うーん、わ、悪くはない。でもなんかこうしっくりこないかな」

「そうですね。服の組み合わせは問題ないと思うんですけど」

 

 店員さん、それって俺が悪いみたいじゃん。え、ほんとにそうなの? うわ、泣きそう。

 

「あれじゃない? もうちょっと背筋伸ばしてみなよ。多少はよくなるんじゃない?」

「こうですか」

「あ、良くなりましたね。猫背はだいたい見映えを悪くしますから」

「そうですか。これからは直した方がいいかな」

「そうしなよ、体にも悪いし」

 

 それから再び試着室に戻って着替える。結局これ買わないんだよな。とりあえず俺がなんとかなることはわかったしいいか。

 

 試着室からでると既に陽乃は自分の服を探していた。持っていた服を店員に渡してから陽乃のもとへ向かう。

さて、頑張りましょうか。

 

「お待たせしました。適当に選べばいいんですか?」

「適当はやめてよ。私が聴くからどっちがいいか答えて」

「あの定番のやつですね。了解です」

「じゃ、これとこれどっちがいい?」

 

 そう言って2着のブラウスを見せてきた。片方はベージュでもう片方は白。どちらも落ち着いた感じの服だ。

 

「んー、あれですよね。陽乃ってなんでも似合いそうですよね」

「まあね、私だし」

「だからなのか難しい」

「まあ、そんな深く考えないでさ」

「じゃあ、ベージュの方で」

「理由は?」

「理由ですか。まだ陽乃がその色の服着たところを見たことなかったから、ですかね。あと俺の好み」

「本当にさらっといったわね。へー、八幡はこういうのが好きなのか」

「どちらかというと、ですけどね。選択肢ない状態で何が好きなんて聞かれても答えられませんから」

「だろうね。ま、試着してくるね」

 

 そう言って今度は陽乃が試着室へ入っていった。ふー、ひとまず落ち着いたか。服の話なんてわからないからあまり深く突っ込まない方がいい。遅い筆がさらに遅くなる、むしろ止まる。あれ、変なこと言ったな。

 

 陽乃を待っているとさっき陽乃と一緒にいた店員がやって来た。

 

「彼女さんですか? 美人ですね」

「違います。友達ですよ」

「本当にそうなんですか。さっきあちらのお嬢さんにも伺ったんですけど同じ返答でした。でもただの友達って訳じゃないんですよね?」

「そうですね。まあ俺の場合は友達って言うもの自体が普通じゃないんですけど。でも俺の中で特別なポジションにいるのは確かです」

「大事なんですね」

「そうですね。こう思うようになったのはつい最近ですけど」

「そういう人がいるっていいじゃないですか。おまけに美人ですし」

「俺も初めてですし、感謝してます。それに例え陽乃が美人でなくなっても問題ない。それくらい大きなもんくれましたから」

「ふふっ、それ聞かせてあげたいですね」

「止めてください。そんなことになったらしばらく部屋から出れません」

 

 なににこにこ笑ってるんですか。なるほどね、さっきも陽乃とこんな話してたのね。それでその顔ですか。にしても知らない人相手に恥ずかしいこと言ったな俺。この短い間にだいぶ慣れたかも。

 

 そうこうしているうちにカーテンが開いて陽乃が出てきた。

 

「やっぱり普通に合うわよね」

「まあ最初からわかってたことですけど、普通に似合ってますね」

「はい、ちゃんと似合っていて可愛らしいですよ。ね、お客さん?」

 

 え、そこで俺にふる? もう既に感想言ったあとじゃん。この店員俺に可愛いって言わせたいのか? あー、なるほどな、そしてどぎまぎする俺のリアクションを見て楽しむと。さっきの話で俺が思いの外さらっと答えちゃったから物足りなかったのか? そうなればキョドってやるものか、こっちは最近慣れてるから問題ない。

 

「確かに可愛いですね、と言っても陽乃にとってはいつものことですけど」

「だそうですよ、お嬢さん。彼曰くあなたはいつも可愛いそうです」

「え、ちょ、ちょっと、八幡、しれっとそういうこと言わないでよ」

「もう今更ですよ」

「人の前でそういうこと言われる身にもなってよ!」

「陽乃のことだからいつも言われてそうだと思ったんだけどな」

「確かに言われるけど…。 はぁ、ほんと吹っ切れた君の恐ろしさは馬鹿にできないわ。普段があれなだけに不意打ちのダメージが絶大」

 

 陽乃が取り乱すのを見るのも面白いな。今度何か考えとこう。それで店員さんはなぜいい笑顔してるのかな? 俺別に普通だったでしょ。陽乃はちょっと拗ねた感じて着替えに行ってしまった。

 

「やはり本当に可愛らしい人ですね。今まであんな姿見せたことなかったですから」

「今まで?」

「はい、私はもうここに10年くらい勤めているんですが、結構前から陽乃さんは通ってくださっているんです」

「そうなんですか」

「いつもは疲れた顔して一人でいらっしゃっては、たくさん服を買っていかれまして。ここは彼女にとってストレスの発散場所です。でも今日、初めて人を連れて来たのでビックリしましたよ」

「初めて、ですか」

「それにいつもと違って楽しそうでしたし。やっぱりああしているのが年相応で似合ってますよ」

「まあ、あいつも色々ありますからね。それにしてもよく見てるんですね」

「あはは、前から気になっていたので。でも今日からは心配しなくて良さそうですね」

 

 そう言って彼女は優しく微笑んだ。本当に長いこと気にかけてたんだな。

 

 試着室から陽乃が出てきた。ちなみにあの服は買うらしい。陽乃が会計を済ませたあと店員に見送られながら店を出た。あの店員さん終始いい笑顔だったな。

 

「今日はもう解散しよっか」

「ですね、もう行くところも思い付かないし」

「じゃあ、来週は二人とも忙しいみたいだし、ぼちぼち連絡するね」

「お願いします」

「じゃあね、体育祭頑張ってね、面白い話期待してる」

「まあ、適度にやりますよ。陽乃も元気で」

 

 そう言葉を交わして別れ家に帰った。家に着くと俺の頭も見て小町が目を輝かせた。なかなかいい感じらしい。あとは戸塚に誉めてもらうだけだな。

 

 ちなみに翌日ちゃんと戸塚は誉めてくれました。奉仕部の二人? なんか信じられないもの見るような目を向けてきたよ。まあ、それが普通のリアクションだよな。葉山たちもそんな感じだったし。戸塚ありがとう。




 いや、自分が買い物しないからすごい難しかった。それに二人をまだいちゃこらさせるわけにもいかないし。

 まあ、次から修学旅行の話に入ります。今回ちょっとぐだったけど仕切り直しです。直せるかな?直せるといいな。

 原作の方を見返さないといけなくなるのでまた遅くなるかもしれませんが、次回もよろしくお願いします。

 では、また次回。


 いつかデート回としてやり直したい。

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