5話目です。
ちょっとこれから更新遅くなるかも。ちょっと忙しくなるので。あと、なかなか筆が進まないんですよね。
学校のキャラがでるのは修学旅行の話からです。もうちょっとだけ先になりそうです。
では、どうぞ。
陽乃と友達になった日から一週間がたった。そして今日は陽乃と会うために駅まで来ている。駅前で待ち合わせをすることになったのだ。それで約束の場所まで向かっているのだが…、
人が多い!
まだ陽乃に会えてすらいないのにすごい疲れた。しかも人が多いせいで見つけられる自信があまりない。こんなものジャコの中から小さいタコ探すようなもんだ。いや、それは大袈裟だな。話を盛りすぎだ。
とは言ったが、念のため見つけられるような作戦を考えておいた。ありがたいのは探す相手が陽乃ってところだな。あの人超が付くほど美人だから目立つだろう。
いや待て、俺は今からその超美人と会うわけだ。逆に言えば超美人の待ち合わせの相手がこの俺だ。大丈夫か? なんか今更心配になってきたな。陽乃のことだから気にしすぎとかいってくれそうだけど、その後大改造とか言って着せ替え人形にされそうだな。気にしすぎかな、考えないようにしとこう。それよりさっさと陽乃探そ。
そう思って探し始めるが、やはり人が多くて視界が悪いせいか見つからない。しかたない、作戦を実行に移すか。その名も、その辺の男の視線観察作戦だ。陽乃だから近くを通った男は十中八九チラ見するだろう。それがたくさん向いてる方に陽乃がいるという寸法だ。ただしこれには俺くらいの観察眼が必要だ。それと注意として他の美人がいた場合、誤ってそちらに出向いてしまう可能性があるのでくれぐれも即決はしないことだ。
しばらく作戦を実行してると早速多くのチラ見する人たちを発見した。お、これは作戦成功かな?
その視線の先の場所に近づいていく。でもちょっとおかしい。俺の想定ではチラ見だけなのだが、ちょっとしたガヤガヤも聞こえる。え、なんで? そう疑問に思いながら確認してみると、そこに陽乃はいた。ただこれは俺の作戦が成功したと言えるのか。
確かに陽乃はいた、頭の悪そうな3人にナンパされてるっていうオプションつきで……。
いや、あの人なにやってんの。さくっと逃げろよ。あんたならできるだろに。そんな思いを込めながら目線を向けていると、陽乃がこっちに気付いた。そして、
にんまりと笑った。
あね、なるほど、俺に助けろと、じゃないとわかってるよねって言ってるんだな。先週友達になったばかりなのにもうアイコンタクトできるとかすごい。や、違うか、これはこの状況が分かりやすいだけだな。
しかもなんか面白いの期待してそうだな。大方あれだろ? 俺が彼氏のふりをして助けに来るのを期待しているんだろう。そして弄られる。うん、絶対そうだ。それがわかっててやるわけがない。しかたない、再び俺の作戦の一つを使うか。陽乃に近づいて声をかける。
「うっす、お待たせしました」
「八幡遅いよ! だいぶお待たせされちゃったよ」
「すいません。なにぶん人が多くて」
「まあ、許してあげるよ」
「ありがとうございます。じゃ、早速行きましょうよ」
そういって歩き始めようとすると肩を捕まれた。
「おいなに無視しちゃってんの?この姉ちゃん今俺達が誘ってんだけど」
「そうそう、ガキは引っ込んでろよ」
ですよねー、無理ですよね、空気のように扱う作戦。流石に成功するとは思ってなかったよ、ちょっとやってみただけ。試すって大事じゃん?他の作戦に移るか。
「いや、こっちは待ち合わせなんで。お引き取りください」
「は?なにいってんの?お前」
「お前そこの女の彼氏かなんかなの?」
「ねー、こんな奴より俺たちの方が楽しいよー」
「いや、彼氏じゃないですよ。友達です」
正直に答える。てか陽乃、にっこり笑ってないで加勢して。俺一人じゃ疲れるよ。
「なら、問題ねーよな。なあ彼女、一緒に行こうぜ」
よし、作戦実行だ。
「しつこいですよ。いい加減……、ん、あれって。陽乃、あの人って最近よくテレビで見る女優さんじゃない?名前なんだっけ?」
「へ?どこ?」
急に俺から話をふられた陽乃は少し驚いて答える。
「ほら、あそこですよ」
そういって俺たちのいる場所と男たちを挟んで正反対の場所を指差す。それにつられて男たちも振り返る。
「え、まじ?どこどこ?」
「やべぇな、どこだ?」
「えー、あれじゃね?」
「いや、違うだろ。似てるけど」
「よくわからんな、おい、もっと正確に教えろ」
「なんか目印とかないのか?」
「おい、黙ってないで……っていない!?」
「まじかよ!逃げやがったな!」
そしてしばらくキョロキョロ俺達を探して、諦めたのかどこかへ歩いていった。そんな様子を俺達は近くの物陰から見ていた。
「いったようですね」
「そうみたいね、で、八幡。今のなに?」
「なにって、作戦です。相手の目線を俺達の反対側に向け他のものに大きな注意を向けさせることで隙を作り、その間に近場の死角に隠れてやり過ごす。名付けて、あ、UFOだ!作戦です」
「なにそのダサい作戦…、私八幡が彼氏のふりしてくれるの待ってたのに」
「そんなことだろうと思ってあえて、です。しかもそれ俺絶対キョドるから嫌ですし」
「ちぇっ、それが見たくてあのナンパもそのままにしてたのになー、というかよくそんなアホみたいな作戦が成功したよね」
「同感です。ぶっちゃけ成功するなんて思ってませんでした」
本当に思ってなかった。最終的に国家権力ちょっとお借りします作戦、つまり通報するよと脅すつもりだったんだけど。相手がショボかったんだな。
「でも隠れるとき八幡が手を引っ張ってくれたのはよかったよ」
「っ、あれは不可抗力です。必要に迫られただけです」
「もしかして手を繋ぎたくてこの作戦にしたのかな?もう可愛いなー、そうならそうと言えばいくらでも繋いであげちゃうよ!」
「違いますよ、くっ、そこまで考えが至らなかった自分が情けない」
「素直になりなよー、ほら、お姉さんの手だよ、繋ぎたいでしょ!」
「いらないですよ。あ、もしかして陽乃が繋ぎたいんですか? そうですか。そうならそうと素直にいえばいいのに」
「いや違うわよ!からかってただけでしょ!」
「くくっ、どうだか?」
「厄介なSになっちゃった」
あなたのせいですから。そしてちょっと頬を赤らめるの止めてもらえませんかね。図星だったのかと思っちゃうじゃん。
「ほら、早くいきますよ、で、今日はどこ行くんですか?」
「そこは君がリードしなよ」
「俺がそんなこと出来るわけないでしょう、というかまず選択肢がないんでサイゼになりますよ」
「まあ期待はしてなかったけどね。今日はこの前とは違うところの喫茶店に行くわよ。同じところじゃつまらないしね」
「そうですか、じゃ、行きましょう」
そう言って陽乃の隣に並んで歩き始める。
「今度はもうちょっと頭の良さそうなナンパをキープしとこうかな。じゃないと八幡のキョドりっぷりを見れないし」
「めんどいから止めてくださいよ。それに本当は通報すると脅すつもりでしたんでどのみち見れませんよ」
「えー、つまんないなー。普通私の彼氏のふりとかこぞってやりたがると思うんだけどなー」
「でしょうね。でもそれだとさっきも助けようとした人いたんじゃないですか?」
「うん、いたね結構。全員睨んで追っ払ったけど」
「なにやってんすか」
「えー、だってみんな下心丸出しだったし。これを機にお近づきにってのがバレバレ」
「まあ、だいたいの男がそうでしょうよ」
でも助けようとした人たち意味わかんなかっただろうな。絡まれて困ってる顔してると思えば、近づいてくんなよって顔してくるんだもん。ほんとお疲れ様です。
「じゃあどうやったらしてくれるのー?」
「いや、どうやってもしませんよ」
「それなら次までに他の作戦全力で考えてやるわ」
何に労力費やそうとしてんだか。
そんな雑談をしながら歩いていると目的地についたようだ。店内に入ると数人いるだけで、雰囲気はかなり落ち着いていた。静かなクラシックのBGMも流れている。ふむ、こういうところはかなり好きだな。
「どう? いいお店でしょ? 八幡が好きかなと思ったんだ。その様子だとお気に召したみたいだね」
「はい、かなり好きですねこういうところは。ありがとうございます」
「まあ、ちょっとしたお礼みたいなのだと思ってくれればいいよ。それと普通に八幡と来てみたかったしね」
「っ、しれっとそういうこと言うんだから気が抜けませんね」
急に来るとドキッとする。不意打ちには弱いな。そんな俺の様子に陽乃は笑顔を向けていた。だからそういうのが弱いんだって。まあ、俺のリアクション見て楽しんでるんだろうけど。
窓際の二人席に案内され席につく。俺と陽乃は同じパウンドケーキとコーヒーを頼んだ。あんなに大きくおすすめって書いてあると頼むしかないよね。陽乃も美味しいっていってたし。店員が注文確認して去っていったあと陽乃が口を開いた。
「八幡たちそろそろ体育祭でしょ?なんか面白いことないの?文化祭みたいに」
「そうですね。なにもなくはないですけど、面白いかどうかはちょっと」
「へー、また面倒事?」
「城廻先輩から体育祭を成功させたいって相談が来たくらいですか」
「めぐりが?」
「はい。それで盛り上がる競技を考えることになりまして、男子は棒倒し、女子は騎馬戦をやることになりました」
「雪乃ちゃんは騎馬戦出るの?」
「出るどころか大将やる気ですよ。しかも大将は特別衣装です」
「ほんとに? うわー、見たかったなー。確か来週の土曜だったよね。その日大学の外せない用事があるのよ。そこで八幡にお願い、写真撮ってきて!」
なんか急にお願いされちゃったよ。流石、やっぱりこの人は妹が大好きなんだな。
「今回は俺救護の仕事あるんで厳しいっすね。誰か雪ノ下の人間に頼んで写真でも撮ってもらえばいいんじゃないですか」
「それならしかたないね。執事にこっそり頼んでみようかな」
その人大変だな。まあ当日は外部の人も入れるみたいだから大丈夫だろう。うちの体育祭は文化祭と違ってあまり人来ないけど。
「まあ、雑談はこのくらいにしてさっさと本題に入りましょう」
この調子で続けてるといつまでたっても修学旅行に行けないからな。はい、メタ発言です。
「その事なんだけどね、あれから私たくさん考えたんだ。それでちゃんと今の段階の結論を出したの。聞いてくれる?」
「はい、もちろん」
俺のその言葉を聞いて陽乃は安堵の息を1つ吐いてから語り出した。
「私ね、雪乃ちゃんへの負の感情を認めようと思うの。誤魔化そうととしてる時点でもう認めちゃってるようなものだったから」
「そして自分が嫌いな大人と一緒だってことも受け入れる。八幡に言われた通り、私にはそのやり方が染み付いているわ。だからどんなに否定しても間違いなく同類なのよ」
「私はそんな汚い私が嫌い。でもさ、八幡言ったじゃない?人相手にいい感情のみで関われるわけがないって。それってさ自分に対してもそうなんじゃないかって思ったの」
「私が私を嫌なのと同時にきっと好きになれる部分がある。まだそれは見つけられてないけど、絶対あるって信じることにした。それを見つけるために足掻いてみる。私が私を諦めるのはそれをしてからでいいかなって」
「そう思えたのも八幡のおかげだよ。君が信じてくれた私を、私も信じてみようと思えた。ありがとう」
そう言って陽乃は最後に微笑んだ。そうか、陽乃は逃げるのをやめたのか。受け止めて、背負ってなお、前に進もうと決めたんだ。ははっ、やっぱりこの人はすごい。この強さが雪ノ下陽乃なのか。
「そうですか。陽乃ならできますよ。だって陽乃は、雪ノ下陽乃はそうやって前を見れる人間ですから」
「八幡のおかげだけどね」
「それでもですよ。それとそんな陽乃をこれから近くで見ていられるのは嬉しいですね」
「私もこれからの八幡を見ていけるのは楽しみよ」
「そういわれても、俺はこれからもこれまで同様たくさん間違えると思うんですけど」
「それは私も同じよ。その度にお互いにお互いを笑えばいいじゃない? バカねって。それが私たちでしょ?」
「ですね。そのときはさんざん笑ってあげますよ」
「ふふっ、私も八幡が泣くくらい笑ってあげる」
ほんと、この人といると楽しいな。これからも退屈しないんだろう。
店員が注文したものを持ってきた。それを二人してつついていると陽乃が聞いてきた。
「八幡はなんかないの?」
「なんかとは?」
「うーん、心配事?とか懸念事項?とか」
「まあ、ないわけではない、いや、あったと言うのが正しいですかね」
「あった?」
「はい、たった今陽乃の話聞いてなくなりました」
「聞いてもいい?」
「全然いいですよ」
俺も話しておきたいしな。
「陽乃は俺の大きな期待に一度応えてくれている。だからこれからも俺はたくさんの期待をしてしまうでしょう。でもそれに答えてもらえなかったとき俺はきっと裏切られたと思ってしまう」
「これまでもたくさんありました。自分勝手な理想を押し付けて、そうならなかったら相手に失望する。そんな自分が大嫌いで許せなかった」
「でもそれが俺なんですよね。俺もそれを認めないといけない。だからまあ、これから俺がそう思ってしまうことがあるかもしれないので先に謝っとこうかなと」
そう言って締めると陽乃はムスっとしていた。やっぱり怒らせたかな。
「八幡はさ、最初にした約束覚えてる?」
「約束?」
「そう約束。私たちは自分の意思で信じるって話」
「確かにしましたね」
「じゃあなんで八幡は謝るの?」
「なんでってそれは申し訳ないと思って」
「だからさ、私は八幡に信じてなんて頼んでないんだよ。八幡が裏切られたと感じて、それを八幡が嫌悪しても私に謝る理由にはならないよ。だってそれは八幡が自分で私を信じた結果なんだから」
「……」
「私たちの関係は互いの傷を舐め合うものじゃない。寄りかかり合うものじゃない。肩を並べて立つものだよ。だからそこで謝ったらいけないよ」
そうだ、謝るのは違う。そこで謝ってしまえば俺は自分の意思で陽乃を信じていないことになる。陽乃が信じてくれているから陽乃を信じている、だからこそ後ろめたさを感じてしまうんだ。つまり俺は最初から間違っている。俺は俺が陽乃を信じたいから信じるんだ。
だからそういう状況になっても自分の中で完結させるべきなんだ。またやってるよ俺って苦笑いしていればいい。謝ってしまうのは結局まだそんな俺を受け入れられていないことにもなる。
「その通りですね。俺はまだそういう自分を認められていない。それにこの関係への覚悟も足りなかったみたいです」
「そうだね。ふっ、八幡は甘々だね」
「否定できません。情けない限りっすね」
「まあ私も完璧に受け入れられたかと言われればまだだしね。そんなに急には無理じゃない?」
「慰めですか?」
「私にまだできてないのにそんなあっさり八幡にやられてたまるかって感じ?」
「言いますね」
「まあね」
なんか今日はやられっぱなしだな。今のは間違いなく俺を励まそうとしていた。後に言い加えたのも本心だろうけど。
「やっぱり陽乃にはかなわないな」
「ぷっ、なにそれ。らしくないよ」
「まあたまにはいいじゃないですか」
「先週もらしくないことしてたけどね」
「確かに、でも言いたくてしかたないんですよ」
「今までの君からじゃ考えられないよね」
「ほんとですよ」
ほんと、こうなれたのは陽乃のおかげだ。陽乃に出会えてよかった。
「八幡、これからどうする?」
「帰りましょう」
「却下」
「えー」
なんという切り返しの早さ。最初から俺が帰るっていうの予想してただろ。バレバレな俺も俺だけど。
「そうだなー、あれだよね。八幡私の隣歩いてるくせにちょっとぱっとしないよね、というか若干ダサい」
「ひどいっすね。まあ自覚はありますよ。そういうの得意じゃないんで」
「という事で君をちょこっと改造しにいこう!」
「や、金ないんで結構です」
「大丈夫大丈夫、たくさん買ったりしないから。ちょっと様子見るだけだって。とりあえず適当に遊びにいこうよ。遊びを知らない八幡に友達の私が遊び方を教えてあげよう」
「えー、求めてないっす」
「むー、私が八幡と遊びたいの。いいじゃない、お願い」
「はぁ、しかたないですね。まあいいですよ」
別にこの後何もないし。ちょっと疲れそうだけどそのくらいいか。
「やったね。八幡押しに弱いよね、ちょろ」
「さて、帰ろうかな」
「ごめん!冗談…じゃないけど、ごめんって」
冗談じゃないのかよ。まあなにも言えないけど。
「で、どこ行くんすか」
「とりあえず駅まで戻ろうよ。そっから適当に歩いて決めればいいんじゃない?」
「そうですね」
二人の休日はまだ終わらない。
読んでくださってありがとうございます。
いや、今更だけど話書くの難しいですね。自分は書いててしれっと矛盾したこと書いてしまうので…。
では、また次回。