骸骨と得体の知れない何か   作:クリマタクト

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第5話

指輪の力を使い、次は最近使ってなかった自室に行く。

思い返してみれば、必要なものもインベントリに入っているもので足りたし、消耗品は現地調達もできたから、モモンガさんと二人だけになってから来るのはかなり久しぶりだ。

 

少しの浮遊感の後に景色が切り替わり、自分でアレンジをした覚えにある自室に着く。

まぁ、アレンジというよりは少しアイテム入れを増やしただけの、ギルメンの中でも上位5人に入るレベルでの質素さだ。

 

その寂しい部屋の中でも一番上等そうな椅子に座る。

精神連結中は操作不能になる。

その間は床で寝てました。なんてのは流石にアホすぎる。

 

スキル発動のために意識を集中させようとした時、後ろのドアから慎ましいノックの音が聞こえた。

俺はその音を聞き、スキルの発動を止める。

 

「誰ですか?」

「ユリ・アルファです。モモンガ様にスキル使用の間、身の回りの世話をお申し付けられました」

「そうですか、入っていいですよ」

「はっ、失礼いたします」

 

なるべく音を立てないようにドアを開け、眼鏡をかけたメイドが入ってくる。

彼女は確か戦闘メイドプレアデスの一人で、やまいこさんが作ったキャラだったはず。

 

「それでは、身の回りの雑事を頼みましたよ」

 

偉そうな態度で、命令をすることを意識しながら話す。

こういうのは、なるべく偉そうな方がなんか様になっている気がする。

しかし、少しユリは震えているので、むしろ耐えがたいくらいにうざかったのだろうか?

いかんそう考えると、恥ずかしくて精神が落ち着いてしまう。

 

「はっ!この命の変えても遂行させていただきます」

 

やはり何か上司向けのハウツー本の一冊でも読んでおく方がよいだろうか?

そこも今後の課題の一つか?考えれば考えるほど、課題が増えていってる気がするのは気のせいだろうか?いやそうだろう。

でもそこら辺は、モモンガさんとやれば何とかなるだろうから大丈夫だろう。なんだかんだ、有言実行する人だし。

 

俺はそう結論をつけた後、再び意識を沈める。

そして完全に意識を内側に向けると、二本のラインが知覚できる。

俺はそのうちの一本に強く念じた。

 

「精神連結」

 

――――

 

「成功、か」

 

目を開けると目の前には何一つない草原が広がっていて、俺の目の前には兵士とセバスが跪いていた。

 

「お待ちしておりました。パルパル様」

「少し遅れてすみませんね」

「いえ!滅相もございません!!」

 

二人は顔を下に向けたまま、首を横に振る。

その様子は少し怖かったが、とりあえず話を進める。

 

「こ、この事をセバスにはナザリックに持ち帰ってもらいたいので、村には私と兵士だけで行きます」

「お待ちください、パルパル様、いくら今の御身が意識だけのものとしても、お怪我をされるのは我らの名折れにございます。どうか、お供をお付け下さい」

「そのとおりです。どうかお考え直しを、我が主人よ。」

「いえ、兵士。あなたが付いて来てくれるのであれば、なんら問題はありません」

 

実際そうなのだ。兵士のビルドは重戦士型。レベルも80はあるしタンクとしての仕事もできるから、時間稼ぎには十分使える。

カンストプレイヤー3人に囲まれたとかでなければ、全然問題はない。

それに今は精神連結で操ってる状態。いわばリモート状態だ。

この状態で死んだところで、本体には1ダメージもない。

 

「しかし、いえ、承知いたしました。この兵士、この身に変えても御身を守る事を再び誓わせてください」

「ええ、許しましょう」

「ありがたき幸せ!」

 

感極まった。と言わんがばかりの二人をなだめる意味でも、わざとらしく咳をする。

 

「では、行きましょう。セバス報告は任せましたよ?」

「はっ!」

 

―――――

 

「こちらにございます。パルパル様」

「ここですか」

 

俺と兵士は二人で軽く(レベル80基準)すこし走ると、そこには、控えめにでも多いと言えない程度に家が建てられた場所が見えた。

数にしてだいたい25あたりだろうか?

村人の姿も確認したいが、今は夜。モンスターなどもいるこの世界で、夜に森の近くを歩くものはそうそういない。

さてどうしたものか。

 

すこし悩んでいると、兵士が提案してくる。

 

「パルパル様、ここは普通に押し入ればいいのでは?」

「はい?」

 

すこし常識がないような言葉が聞こえた気がした。

 

「至高の御身であるパルパル様が遠慮なさることなど、何一つございません。ましてや人間相手に悩む必要はないと思われますが?」

「ふむ、すこし考えます」

 

これ、どうしよう?

いや、マジでどうしよう。

確かに、アインズ・ウール・ゴウンは異形種限定のPKKをよくするDQNギルドだ。それゆえに人間種プレイヤーには恨みをよく買ってしまい、ギルドに攻撃してくるものも多々いた。

人間種が異形種よりも多いからなのか、嫌がらせをしてくるプレイヤーもかなりの数いた。それこそ報復をするのが追いつかないくらいには。

そのことで苛立って、「人間種プレイヤーは死滅すればいい」とかすこし本気で思ったこともあったし、ウルベルトさん、るし★ふぁーさんとは人間種へのテロ攻撃もちょくちょくやっていた。

 

そんなことを言ってたが、あくまでそれはゲームだけの話。害悪プレイヤーがうざくて愚痴ってただけだ。

さすがにリアルでまで人間死ねなんて思ってない。俺もそりゃ人間だし。

 

だがまぁ個人の考え方なんて自由だし、村の人にそう言わなければ問題はないか。

 

「兵士、あなたが人間をどう思おうかは自由でいいですが、この先の村ではそう言った考えを隠してください」

「しかし……」

「いいですね?」

「は!」

 

兵士は不承不承といった雰囲気を出しつつ了承をする。

少し心配だが、そこは兵士を信じてみよう。

あぁここにモモンガさんがいたらどれだけ楽だったか、とりあえず帰ったら愚痴言ってバカみたいに笑おう。

 

――――

 

私こと村長は戸惑っていた。

いつも通りの忙しいながらも、やりがいのある農作業や村長としての雑務を終えた後、ようやく寝ようとしていたとき突然硬質なノック音が家に響き渡ったのだ。

最初はだれか子供のいたずらかと思った。

ここ最近は森の賢王の縄張りにあることもあり、平穏に過ごしているから襲撃なんてことはまずないと思ってるし、今までこの村ができてから一度も起きたことがない。

 

だからこそ驚いた。

 

――こんな夜中に全身鎧の男二人が押しかけてきたことに。

 

しかし、心配したことは特に何も起きなかった。

なんでも二人――パルプラとガオウは旅のもので、宿を貸してもらいたかったらしい。

その対価もちゃんと払うと言ってくれたので、年中貧乏な村であるうちでは断る理由など何にもなかった。

 

だが、その対価にと渡されたものがすごかった。言葉で表せるほどではないがすごかった。

 

「これくらいあれば、宿代になりますか?」そう軽い雰囲気で出された麻袋に入っていたのは王国金貨の二倍の質量を持った、見たことのない金貨が五枚入っていた。

王国で換金してもらえば十枚金貨がもらえる。ただ一夜宿を貸しただけで、だ。

本来こんなにあれば、それなりのグレードの宿を一か月はとることができる。

 

さすがに断った。これでは高すぎる。とてもじゃないが受け取れない。

 

そういうと、ガオウと呼ばれたものが少し不快感を表に出したが、パルプラがなだめた後こちらにお願いをしてきた。

 

――それなら、この周辺のことを教えてくれませんか?

 

海の向こうから来たから、ここら辺のことは何一つ知らない。だから教えてほしい。それに対しての感謝のあかしとしてどうかその金を受け取ってほしい。そのようにお願いをしてきた。

良心の呵責に苛まれながらも、これ以上パルパレさんに頭を下げさせるのはそれこそよくないことだ。そう自分の中で踏ん切りをつけつつ、この大陸のことを知っている限り教えた。王国、帝国そして法国。すべてを教え切るとパルパレは私にお礼をしつつ、――明日には出ていくので心配しないでください。それに持ち合わせがあるので朝食も不要です。

 

そういうとガオウを連れ、貸した家に行った。

 

そして私は大金とも入れる金貨とともに一人残された。

 

「こんな幸運、明日何か起こるんじゃないか?」

 

そんな戯言は夜の闇に溶けてった。

 

―――

 

「よし、兵士あたりに人は?」

「いません。私たちに一番近いものでも、おおよそ五百は離れています」

「そうですか」

 

俺はそう返しながら、ベッドに寝そべるように倒れこむ。

言葉が通じないかがかなり不安だったが、しっかり伝わって一安心することができた。

そして外の世界に関して、一つ分かったことがある。

 

―――平均的なレベルだ。

 

あの村人はおおよそ五レベル以下の、ユグドラシルでもそうはいないような雑魚だ。

村の中にいるものを、兵士に探らせたが、それでも五レベル以上のものは見当たらなかった。

 

おそらくだが、この世界どんなに平均を見積もっても八十くらいな気がする。

戦いの心得のなさそうな村人で五レベル程度。騎士と呼ばれるものがいるらしいがそこの雑魚が三十五、部隊長が五十、近衛兵が八十程度だろうか?

そして強者と呼ばれるものがカンスト。

それくらいと考えると、村人が五レべ以下というのもまぁ納得できる。

とりあえず、レベルについての考えは大体ここに掠る程度にはあってるだろう。

もっとも、村人Aが怒りで覚醒してスーパー村人Aになったりしない限りだが。

 

閑話休題

 

俺は《伝言/メッセージ》を発動させ、モモンガさんとつなげる。

 

『私だ』

『なに魔王やってるんですか?』

 

そういうと、骸骨は通話?越しでもわかるくらいにあたふたし始める。

 

『やっ!これはそういうのじゃなくて!?』

『あーはいはい、やっぱ男の子ですもんね、たまには童心(中二病)に戻りたくなる日もありますよね』

『だーかーら!て、うお!?すみません少し切ります!あと、今そっち行っても大丈夫ですか?』

『あっはい大丈夫ですよ』

『なら少し待っててください!今そっちに《八肢刀の暗殺蟲/エイトエッジ・アサシン》が向かったんで!』

『ういー』

『じゃあそっちは頼みました!!』

 

少し投げやりな感じで切られてしまったが、あっちも忙しいんだろう。

ここは社会人らしく、少し時間を空けてからもう一度連絡を取ろう。

 

ちなみに《八肢刀の暗殺蟲/エイトエッジ・アサシン》はこの後、五匹こちらに送られてきた。

いや、確かこいつらうちに十五匹しかいなかったよね……?

 

モモンガさん過保護すぎぃ。




話が進まなくて申し訳ない……

作中に出てきた精神連結について軽く補足を。
このスキルは自分の召喚MOB一体を対象にし発動できて、自キャラが操作不可になる代わりにそのMOBを操作するというスキルです。
クールタイムはあれど日に使用制限はないので、爆弾特攻するのに役立ってた模様。

こんな風にスキル紹介していくことがあるかもしれません。
え?作中でしろ?技量不足でごめんなさい……
今までのスキル教えろやごらぁ!などありましたら教えてください。そのうち追加させていただきます。

そして最後になりましたが、読んでくださりありがとうございました。

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