骸骨と得体の知れない何か   作:クリマタクト

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第1話

 

大人気DMMOーRPGゲームユグドラシル。

このゲームは、その自由度から高い人気を誇っていた。

冒険、建築、商売、なんでも出来たし、街に入れなくなるが、人ならざるもの異業種として遊ぶことも出来た。

多くのプレイヤーはその自由さに魅了され、ゲームにのめり込んだ。―まあ俺もその一人なのだが。

 

だが、どんなゲームも時代が流れていけばだんだんと廃れてくる。

このゲーム、ユグドラシルであっても例外ではない。

 

「いやあ、モモンガさん。ついにサービス終了ですね〜」

「ええ、パルパルさん」

「いま思えば、アインズ・ウール・ゴウンに入ってからずっと遊んできましたが、こうやって終了まじかになると、しみじみしますね」

「ほんとですね、いやはや、思い返せば色々ありましたからねぇ」

 

俺はギルド長モモンガさんに向かって、ため息のアイコンを出す。

 

本当に色々なことがあった。

ゲリラPKで遊んでいたところで、たっち・みーさんに返り討ちにされ、このギルドに入ってからは驚きと笑いの連続だった。

るし☆ふぁーさんの悪戯やペロロンチーノさんとの猥談、タブラさんとはGMvs和マンチとかいう壮絶なTRPGをしたものだ――流石に船ぶつけた程度では糞タコが帰ってくれなくて負けてしまったが――だが、それも今日で終わる。

 

こんな日ぐらい、みんな顔を出してくれるだろうか?

今日はサービス終了日、もう過疎っていたユグドラシルではあったが、今日だけは、全盛期の3分の2にも当たるレベルの人がログインしていた。一言モモンガさんが声をかけてるみたいだし、みんな少しくらいログインしてくれるんじゃないだろうか?

 

「いろいろあったと言えば、あの二連続侵攻」

「あぁ、あれはさすがに落ちること覚悟しましたよ」

 

モモンガはしみじみと言ったような声で同意をしてくれる。

アインズ・ウール・ゴウンへの1500人の大侵攻。

あれ自体は第八階層をフルに使う事によって、殲滅することができた。だが、アレだけで侵攻が終わりではなかった。

 

「まさかあの侵攻を囮に、第二隊を編成していたとは思いませんでしたよ」

「ぷにっと萌えさんも変な声出してましたからねぇ、てかあの時に集まっていたワールドチャンピオンの総数、4人だったらしいですよ」

「うえ、マジですかパルパルさん」

 

あの大侵攻の後、NPCが第八階層まで全滅したナザリックに追加で500人突っ込んできた。

ガルガンチュアも消耗し、ルベドも操作不可、ヴィクティムも種が見られてしまった。そんな状況で、500人の相手をせざる得なかった。

 

「いやぁ、自爆特攻を全員で繰り返して、モモンガさんのスキルのリキャストタイムまで時間を稼いだり、カロリックストーン・ゴーレムを大暴れさせたりで、今見てもなかなかの死闘でしたね」

 

あの時は本当にギルド陥落の危機だった。

全員が死ぬこと前提の自爆特攻を繰り返し、ウルベルトさんやモモンガさんと言った一発屋の時間稼ぎをする事により、なんとか撃退をすることが出来たが、あの時たっち・みーさんがデスペナ軽減を使い切った後も特攻してくれなかったら、勝てなかっただろう。

そして、それ以外にも使えるものは基本なんでも使った。

山河社稷図で隔離して時間を稼いだり、ヒュギエイヤの杯と言った補助系で前線を維持したり、しまいには強力ゆえに一度使ったら消えてしまう、二十のアイテムも使った。

その結果、全員を撃退することは出来たが、全員のレベルが80前半になってしまうという非常事態にも陥ってしまい、元に戻るまでかなり時間がかかった。

あの時は侵攻組のことを恨んだものだ。

 

「そうですね、でもあの時のカロリックストーン・ゴーレム、一体いつ作ってたんでしょうね、るし☆ふぁーさん」

「『俺の生き様、しかと目に焼きつけろ!』とか言って、見たことないゴーレムいっぱい出してましたから、多分ずっと前から貯めてたんでしょうね」

「でしょうね〜、あのゴーレムキチめ」

 

だが、楽しかった。心の底から楽しかった。

全員で大声出しながら突っ込んだり、カロリックストーン・ゴーレムが無双している時に全員で援護したり、モモンガさんがスキルのリキャストを終えたときの高揚感。

全部。全部が楽しかった。

だが今のナザリックにはその勢いはない。

 

円卓を見回しても、俺とモモンガさん以外誰もいない。

さっきまでヘロヘロさんや他にも二人ほど来てくれたが、それも挨拶をした後、帰ってしまった。

今の時間はサービス終了10分前、モモンガさんにはとても言うことは出来ないが、もう誰も来ないだろう。

俺は立ち上がり、ドアに向かい矢印マークを出す。

 

「モモンガさん、最後くらい玉座の間に行きましょう。好きでしょう?魔王ロール」

「でも、まだ誰か来るかもしれないし」

「大丈夫ですよ、初期ログインの位置を玉座の間に設定しておけば問題ないですよ。さあ、ギルド武器持って下さい」

「え、そこまでするんですか?」

「当たり前ですよ。最後くらい、カッコよくやりましょう」

「はぁ、まったくしょうがないですね」

 

俺がそうお願いすると、モモンガさんは渋々といった様子で、後ろにあるギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを装備する。

亡霊のようなエフェクトの漂う杖を装備した骸骨は、まさに魔王のような姿になっていた。

 

「流石ギルド長、似合ってますよ」

「それはどういう意味で?」

「魔王的な意味で」

「時間が余ってたらPVPを申し込んだところですよ」

「別にいいじゃないですか、かっこいいですし」

「それでも思うところがあるんですよ、色々と」

 

二人で少し話した後、何も言わずに玉座の間へと向かう。

その途中にいたNPCはすべて連れて行った。

 

♦︎

 

「さて、玉座の間到着」

「案外長い道でしたね」

「ですね〜」

 

二人で雑談をしながら両開きのドアを開ける。

そこには未だかつて、到達されたことのない、神聖な領域が広がっていた。

正面に据えた玉座。そして壁に掛けられた、ギルドメンバー各々のマークの描かれた旗。そして玉座の間を守るという設定のアルベド。

 

「あれ?アルベドの装備してるのって真なる無じゃないですか?」

「あっ、本当だ」

「誰が持ってきたんだろうか...てまあタブラさんだと思うけど」

「でしょうね、でもせっかくですし残しておいてもいいでしょう」

「設定的にも合ってますしね。さあモモンガさん座って下さい」

 

俺はモモンガさんに玉座に座るように言う。

 

「いやぁ、一人だけ座るってのもなんか、嫌だなぁって」

「魔王が何言ってるんですか。《召喚:兵士/サモン:ソルジャー》発動」

 

俺がそう宣言すると、玉座の横に俺が作り上げた、兵士系のモンスターが二体生み出された。

 

「ほら、魔王様。俺はここの守り手です。何も恐れることはありません」

「全く、人に魔王とか言ってますけどあなたも大概ですよ、パルパルさん。――良かろう、信頼しているぞ?パルパル」

「はっ、すべては御身のために」

 

二人でそれらしいことをしていると、コンソールが出てくる。

どうやら、終了1分前になったようだ。

 

「結局、ここにきてから、誰も来ませんでしたね」

「そう、ですね」

「――今まで楽しかったですよ、モモンガさん」

「ええ、私もです。パルパルさん」

「そういえば今度、モンスターになって人間を倒すゲーム出るんですけど、一緒にやりませんか?」

「また、異形種ですか?」

「ええ、もちろんです」

「ははは、パルパルさんらしい」

 

コンソールを見ると、もう10秒前だった。

 

「さて、この後も色々と遊びつくしましょう」

「また、みんな来てくれますかね?」

「もちろん来ますよ、きっと」

 

―3

―2

―1

 

「乙でした。モモンガさん」

「乙でした。パルパルさん」

 

本来なら、強制ログアウトで現実に戻るはずだった。

だが、そんなことはなかった。

 

いつまで経っても終わらない。

それに疑問を感じ、モモンガさんは立ち上がった。

そして、それに合わせるように、斜め前で直立不動していた兵士がこちらの方を向いた。

――俺が操作していないのに。

 

「どうかなされましたか?モモンガ様」

 

この日から、全てが始まった。




主人公の能力は次で明らかになる予定です。

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