とは言え前々から欲しかったカレンデュラちゃんとか出てきたので、リンゴちゃん周りの人物はほぼ網羅した感じです。
後から狐面さんとか、15金チケでモミノキ先輩とか取ったので、いずれ彼女らの登場も登場させたいですね。
『勇者の末裔 後編』
ナズナ団長にとって、己が千年前の伝承に登場する勇者の末裔であると言うことに関して、特別な感情など無かった。
伝説の勇者の末裔、などと聞こえはいいが、そもそもその勇者はおとぎ話の存在に過ぎない。
実在していたことは己に流れる血が証明しているが、それを有り難く思っているのはお偉い方ばかりだった。
ただ彼は祖先のように、己が騎士団長として花騎士を束ね戦うことに疑問を覚えなかった。
勇者の末裔、という肩書は王家から信任が厚い。
彼は瞬く間に己の才能を発揮し、多くの任務をこなして三年足らずでこの業界では知らぬ者は居ない騎士団長になった。
勇者の末裔だかなんだか知らんが俺はびしばし拙いところを指摘するぞ、と息巻いていたリンゴ団長が彼の教導の最後に、お前に教えることは無い、好きに戦え、と言ったほどである。
多くの行事に招かれ、貴族のパーティに招待されたことなど両手で数え切れない。
だが彼にとって、王家や貴族から貴人か何かのように扱われる社交界より、騎士団の団長たちと居る方が気が楽だった。
女性ばかりに囲まれる仕事の関係上、こうした男同士の付き合いに心癒されることもあった。
異郷の友人であるチューリップ団長は見ていて飽きないし、キンギョソウ団長は変わり者だが楽しい人だ。
リンゴ団長という厳しくも頼もしい先人も居るし、ハナモモ団長のような自分などに憧れてくれる後輩も出来た。
彼らの中にいると勇者の末裔という肩書も、個性の一つでしかなかった。
そういった気安さが、彼は好きだった。
「ナズナ団長、これは餞別だ」
多くの人々に見送られ、クジラ艇に搭乗する花騎士たち。
そんな彼女たちに熱い希望の視線を向けられる中で、ナズナ団長に声を掛けてくる人物がいた。
補佐官であるナズナや部下の花騎士ではない。
彼女らにはもう既に挨拶はしてある。
それはキンギョソウ団長と、チューリップ団長だった。
「勇者の末裔よ、己の使命を果たすがよい」
キンギョソウ団長はそう言って、極上のワインを手渡してきた。
それを受け取る瞬間、彼から力強く手を握られた。
ナズナ団長はそれに応え、しっかりと頷いた。
「い……」
そして、チューリップ団長は土壇場で何を言ったらいいのか分からないのか、震えるようにこう言った。
「い、行くなよ……」
涙を堪えて言う友人に、ナズナ団長はそれはできないと笑って返した。
事前情報も何もない。
ナイドホグルの体内は大量の消化液で満たされているかもしれない。
そんな場所に突入するのだ。死にに行くようなものだった。
「知ってるだろ!! 伝承では勇者の最後は!!」
自分はかつての勇者ではない、と彼はそう返した。
だが、ナズナ団長は嬉しかった。
彼はこれまで、行くなと言ってくれる友人に恵まれたことなどなかったのだから。
「なに女々しいことしてやがる、行くぞ」
一方で、全く二人に心配されていないリンゴ団長が、ちょっとだけ不満そうにそう言った。
ナズナ団長はそれに頷くと、それじゃあまた、と言って踵を返した。
「リンゴ団長、団長さんをよろしくお願いします!!」
そして、背後から掛かったナズナの声に、リンゴ団長は片手を上げて応じたのだった。
§§§
「ナズナちゃんは大事にしろよ?
彼女を泣かせたら涙の数だけお前に刻まれる痣の数が増えると思え」
ナズナ団長が手狭な団長席に座り、クジラ艇が発艦して程なくしてからリンゴ団長がそんなことを言った。
それは勿論彼女も大切な仲間だ、と彼は答えたが、ここで疑問を口にした。
「俺がなぜナズナちゃんを気に掛けるかだって?
それは彼女が俺に生きる希望を齎してくれたからだな」
生きる希望? と、ナズナ団長はオウム返しのようにそう言った。
「勇者の末裔たるお前には今回のような決死行など恐れるに足らんかもしれないが、俺は常に恐れている。戦うこと自体をな」
リンゴ団長はそう言うが、自分もそんなことはない、とナズナ団長は応じた。
自分は己に流れる血にふさわしくあろうとしているだけで、戦うことが怖くないわけではない、と。
「それが正しい。害虫と仲良くしたいとか言い出すのはもってのほかだが、戦うことを恐怖し、疑問視することは指揮官として大事なことだ。
そして人間は、戦う理由が無ければ戦うことはできない。
正義であれ、怒りであれ、憎悪であれ、復讐であれ。
俺も部下達に諭され、前を向いて身の振り方を考えようとして、そろそろ身を引こうと考えていた時だった」
それを聞いて、ナズナ団長は驚いた。
良くも悪くも現場主義の彼が前線から身を引くなど、彼には想像できなかった。
「クジラ艇が、コダイバナの城に接近できたという報告を聞いた」
そう言った彼の瞳は、ギラギラと、爛々と、燃えていた。
「なあ友よ、ここ千年間、屍の山を築こうとも、あの何人たりとも近づけなかったあの城に、この船は至近距離まで接近できた!!
これがどれほど俺を喜ばせたか、分かるか? ええ?」
彼の部下ならかつての彼の狂気を思わせる笑顔で、子供が誕生日に欲しいプレゼントを待ち遠しそうにしているような姿で、リンゴ団長は言う。
「あの忌々しい城を、焼き討ちにして、木端微塵にできると知った時の俺の歓喜が分かるかッ!?」
ナズナ団長は、黙ってその言葉を聞いていた。
「多くの同胞たちの無念を晴らせると知った時の俺の喜びが!!
今回もそうだ、あのクソデカムカデを八つ裂きにすれば、同胞たちが俺に託した願いを果たせるのだ!!
それを終えるまで、俺は腐ってなど居られない。
お前にも成すべきことが有るように、俺も俺のすべきことをするのだ」
散って行った同胞の為、リンゴ団長は戦うと言った。
それ自体を、ナズナ団長は疑っていなかった。
だが、彼のその言葉の奥底にある真意を、彼はどことなく察していた。
人間が死者を弔い、墓を建てるのは、生きている人間が死者の死を納得する為のものだ。
だから、彼は言えなかった。
それは結局、自分の為なのでは、と。
§§§
これが、生物の体内なのか?
ナイドホグルの体内に突入した者たちが抱いた感想がそれだった。
かの巨大害虫の内部はごつごつとした岩肌で覆われ、その間を流れるマグマがかなりの熱と光を放っていた。
もっと生物的な体内を想像していた面々はいかに自分たちの常識が通用しないのか思い知らされていた。
安全確保の後にクジラ艇が着陸し、この溶岩の道で出来た迷宮を攻略する為の段取りを決め始める。
ワレモコウが中心となって班割を決めていく様子を、リンゴ団長は眺めていた。
「それにしてもまるで、活火山の中のようだ。
異世界から来た者たちは山脈一つまるまる害虫に変えたとでもいうのか」
どう考えても生物とは言えないナイドホグルの体内を見回し、彼はぼやいた。
「いずれにせよ、やることは変わらないか。
地に足が付けられるだけマシということを喜ぶべきだな。
流石に、胃液塗れで死ぬのはゴメンだからな」
「団長さん、少しよろしいでしょうか」
多くの花騎士がナズナ団長とワレモコウの周りに集まっている中で、サクラは彼の側に控えていた。
「なんだ、サクラ」
「今日は少々言動が過激的のようですけど、士気にかかわるので控えた方がよろしいのでは?」
「ああ、そうか、すまなかったな」
部下の諌言に、団長は頷いた。
「年甲斐もなくはしゃいじまったぜ。
もっと内臓的な構造をしているかと思ってたんでな。
死を覚悟した特攻が、まともな戦いになりそうで安心したのもある」
「だから、皆に死の覚悟を問うたのですか?」
「何言ってる。殺してるんだ、殺されもするさ。
殺されるのが嫌なら、殺さなければいい。戦いとはそういう物だ」
団長の言っていることは正しかった。
だが、サクラはもう一言付け加えた。
「そして戦わなければ殺されるのを待つだけ、ですか?」
「…………」
「団長さん、私たちは生きる為に戦っています。
いくら団長さんでも、死を前提にした戦いは付き合いきれませんよ」
「俺が死ぬ気だったとでも言いたいのか?」
「うふふ、ごめんなさい。
だって今の団長さん、以前のクロユリみたいだったから」
可笑しそうに笑みを浮かべるサクラに、団長はしかめっ面を向けた。
「そうかい、それは悪かったな。
だが、ここが俺の死に場所になっても良かったとは思っていた。
この中が本当に死地なら、俺とお前たちだけが残ってナズナ団長たちを帰すつもりだったさ」
「そう、だったのですか……」
「嫌われ者の俺がこの化け物と刺し違えるのなら皆が清々するだろうしな。
この化け物を始末できれば、かつて共にコダイバナの地に赴いた同胞たち全員分の無念を晴らせるだろう。
これが物語りなら、封印に誰かひとり残る必要が有り、俺だけ残ってお前たちだけ何とか脱出する、なんて展開ならキレイに終わるんだが」
「安心しろ、そうなったら全員仲良くお陀仏だ」
二人の会話に横やりを入れる者が居た。
クロユリだった。
「お前だけ残すことも、お前だけ生き残る事もない。
よかったな」
「よかったな、って」
困り顏でサクラが団長を見ると、彼は今にも泣き崩れそうな表情で無理やり笑みを浮かべていた。
「ああ、それなら安心だな」
また自分だけ生き残るようなことは御免だったのだろうと思うと、サクラは何とも言えなかったのだが。
「ちょっと待ってください!!
それってまるっきりバッドエンドじゃないですか!!
ついでみたいに私たちも巻き込まないでください!!」
「そうだそうだ!! この戦いで何とかナイドホグルを封印しないと、今度の競技会が中止になっちゃうんだぞ!!
せっかく練習したデルちゃんのボールさばきが無駄になっちゃうじゃないか!!」
「だんちょ亡き後は私が主人公を引き継ぐのに、それじゃあ私も人生ドロップアウトじゃないかぁ!!
くッ、ダメだ、帰れん!! 食べられて終わりだと? バカな、これがランタナの最後というか!! 認めん、認められるか、こんなことッ」
「だぁー!! うるせえぇよお前ら!!」
花騎士業界でも屈指の騒がしい三人娘にまとわり付かれ、シリアスさんはご退場と相成った。
「締まらんな……」
「そうかしら、私はこっちの方が好きよ?」
クロユリとサクラは呆れたり笑ったりしながらその様子を見守るのだった。
「進め進め、血路を切り開け!!
お前たちが踏みしめる血こそが道となるのだ!!」
リンゴ団長の振る赤地に刻まれた黒百合の旗が翻る度に、目の前の害虫の群れが蹴散らされていく。
何かを伝えようと現れた精霊に従い、立ちふさがる害虫たちを葬っていく。
その凄まじい突破力に、ナズナ団長も舌を巻く。
元々前衛指揮は彼に任せ、後衛からナズナ団長が全体の指揮を取るという手筈だったが、彼のすることは側面から攻撃を受けないように指示をすることぐらいだった。
まるで騎兵突撃のような進軍速度に、後衛の面々は付いて行くのがやっとだった。
「なんだ、あれは」
精霊に付いて行った先に有ったのは、赤黒い祭壇を思わせる何かの中央に浮かぶ、同じく赤黒い奇妙な球体だった。
それはまるで心臓のように脈動しているようにさえ見え、その球体の形状はまさしく異世界の文明が齎したと思えるにふさわしい不気味さがあった。
それに立ちふさがる、ムカデの怪物。
戦いは熾烈を極めた。
「ぐッ」
身を削られるたびに、キメラのように頭や体を増やす球体の守護者。
まるでなりふり構わずと言わんばかりの猛攻は、ついに最前線で指揮をしているリンゴ団長にまで及んだ。
攻撃の余波が彼に飛び散り、大きく仰け反ったが彼は気合だけで持ち直した。
ナズナ団長の、彼を呼ぶ叫び声が聞こえた。
「戦え、戦友!! 俺はこいつを殺すまで死なん!!
何としてでもこいつを排除しろ!!」
頭から血を流しながら、リンゴ団長は鬼面のように戦意をむき出しのまま叫んだ。
それに応えるように、彼の部下たちも目の前の戦いに集中している。
あえてその事実から目を逸らすかのように。
激闘の末に、花騎士たちは恐るべき炎熱の守護者を排除した。
それと同時に、リンゴ団長は旗を突き立て、それを支えに崩れ落ちた。
「団長さん!!」
「喚くな、致命傷は避けた」
駆け寄るリンゴに、彼は強張った表情のままそう言った。
だが、それは致命傷を避けただけで重傷には変わりなかった。
だらだら、と血が岩肌の地面に滴り落ちている。
「くそ、格好よく退場もさせて貰えんか」
己の無様さを嘲笑いながら、応急処置を受けるリンゴ団長。
「残りの仕事は任せた、足を引っ張ってすまない。
やはり俺には勇者の仕事など荷が勝ち過ぎていたようだ」
血を流し過ぎて意識が朦朧とするなかで、自身に駆け寄ってくるナズナ団長にそう告げる。
そんなことは無い、とナズナ団長は叫んだ。
彼があの攻撃の余波を避ければ、その先に居た誰かに当たっていただろう、と。
「偶然だ……さっさとやることをやれ」
リンゴ団長はかろうじて微笑みながら、そう言った。
その言葉を受け、ナズナ団長は仲間に指示を出し始めた。
リンゴ団長はそれからクジラ艇に運ばれるまで、何とか意識を保っていた。
封印の楔を設置したナズナ団長たちが戻り、クジラ艇が発進した時、薄れゆく意識の中で彼は見た。
「あれは、光の、柱……」
ナイドホグルが、地中へ戻っていく。
「魔王を、断つ光の」
人類の勝利を確信した安堵の拍子に、彼は部下たちに囲まれながら意識を失った。
後日、ナズナ団長はウィンターローズの診療所へやってきていた。
「はい、あーんです」
「あーん」
リンゴ団長の病室に入ると、彼は皮を剥いたりんごをリンゴちゃんに食べさせて貰っていた。
「もぐもぐ、うん? お前か」
元気そうで何よりだ、とナズナ団長は脱力してそう言った。
リンゴ団長は全治二か月の大怪我だった。
魔法込みでこの治療期間はかなり長い方である。
「後始末を任せて悪かったな。
いやぁ、入院生活はしんどいが、楽できて良いわ」
あんなにダメージを受けたのに、全く堪えた様子は無かった。
とりあえず、ナズナ団長は報告てがらお見舞いの品物を置いておいた。
「悪いな。それにしても、今回は失態だった。
俺も己の至らなさを痛感させられたぜ」
リンゴ団長は腕を組んでそう言うと、にやりと笑って彼を見た。
「だから、足らないところは仲間で補えばいい。
次も頼むぜ、戦友」
まったくもって調子の良い事を言うリンゴ団長。
本当に仕方がない人だ、とどこか満更でもなさそうにナズナ団長は笑みを浮かべたのだった。
『続々・理想の美少女』
「え、ペポも私と一緒に来るの?」
「うん。流石にすぐにってわけにはいかないけど」
「ふーん」
そこでランタナは何を思ったのか、ペポの背後に回り込んだ。
「えッ」
「一体どういう風の吹き回しだー!!
絶対私が心配だからとかじゃないだろー!!」
「ちょ、やめ、ランタナちゃん、やめてー!!」
ペポの両脇に手を突っこんでくすぐり始めるランタナに、彼女は悶えながら悲鳴を上げる。
「はぁ、はぁ、ランタナちゃんってば、どうしてそんなこと聞くの……」
「ふっふっふー、ランタナは見た!!
目と目が合う~瞬間にずびしゃんって気付いた~って顔してたじゃん」
「ううぅ……」
昔から、ペポはランタナに嘘や隠し事が出来なかった。
親友同士だからか、ランタナは意外なほどペポをよく見ている。
「実はね……」
ペポは今日体験したことを話し出した。
ランタナが行こうとしている部隊の団長のことだった。
「あの人、何十人もの人に取り憑かれてるみたいなの」
――助けて
「えッ、じゃああそこに何十人も幽霊が居たってこと!?」
「ううん、あの時一緒に居たのは一人だけだったんだけど、幽霊特有の離れていても取り憑いている人がどこに居るか分かる目印みたいなのがいっぱいあったんだ」
――助けて
「目印ってどんなの?」
「真っ赤な手形だったかな。それが全身にびっしり」
「うげ、思いのほかホラーだった」
「それで、お話を聞いてみたの」
――――お願い、助けて
「自分たちは離れようとしても離れられない。
それを理由に、当初の目的を忘れてしまっている。
このままじゃ、あの人を苦しませるだけだって」
――――この人を、助けて
「私、皆を説得してみるよ。
一人一人、時間が掛かるかもだけど。
それと、どうして離れられないか理由を探さないと」
「ふーん。そう言うのって未練って奴が関係してるって奴でしょ、ランタナは詳しいんだ!!」
「うん、でも地縛霊でもないのに離れられないってのはおかしいの。
だから多分、魂を縛り付けてるような何かが有るんだと思う」
それを探して、彼女たちを解放する。
ペポは持ち前の優しさと正義感からそうすることを決めたようだった。
「そう言うことなら、このランタナ、見て見ぬふりなど出来ぬ!!
私も新しいだんちょの為に一肌脱ごう、そーれ!!」
「本当に脱ぐ必要は無いってばぁ!!」
………
…………
……………
ランタナの齎した真実に、その場にいた団長の部下達も呆然となった。
また団長がやらかした程度だろうと思っていた面々や、もっと深刻な話を想定していたサクラでさえ信じられないと言った表情だった。
「ランタナちゃん、なんてことを」
「謝るようなことなど、した覚えはない!!」
ひょい、と二人の拘束から抜け出し、ぬけぬけとランタナはそう言った。
「こんなこと知ったって、誰も喜ばないじゃない!!
団長さんに知らせずに終わらせるって、決めたのに!!」
「だから、何も言わずに追い払うの?
そりゃあ生きてる人のことだって大事だけどさ、誰にも知られないまま悪霊として除霊されて、それで納得するの?」
「その為に、私が一人ずつ説得していったのに!!」
「ええい、知るか!! 納得は全てに優先される!!
私が納得しない展開なぞ、認められるかぁー!!」
死者の願いを優先しようとするペポと、そんな救われない展開は納得できないとランタナは真っ向から対立していた。
「とりあえず、ここで喧嘩していても始まらないわ、二人とも」
衝撃から立ち直ったサクラが、二人の間に入った。
どちらもその行動の根本に存在するのが優しさだったのだから、それを理由に喧嘩する二人を見ていられなかったのだろう。
「いったん、仮宿舎に戻りましょう?
皆も、団長さんも、いいですね?」
サクラの提案に、ほとんどが頷いたが。
「すみません、場所を変えるのなら行くべき場所が有るんです。
もうこうなっては全てをお話しますので、そちらに行きましょう」
がっくりと肩を落としたペポが力なくそう答えた。
どの道、全てはランタナに台無しにされたので、彼女の望む方向に行かざるを得なかった。
「団長さんはそれでよろしいですか?」
暗に、全てを聞く覚悟が有るか、サクラは問うた。
「今更後に引けるか。あいつらのことなら、尚更な」
片手に顔を当てて、天を仰いでいた団長はそう言った。
「それで、どこに行くんだ?」
「慰霊碑の前です。そこがふさわしいかなって」
原作主人公であるナズナ団長ですが、思い切って彼について切り込んでみました。
こういう同性の仲間がいるのもいいかなって。
彼の性格は地の文などから読み解くしかありませんが、女性ばかりの職場で、同じ苦労を分かち合える仲間とかが居てほしいと、作者は思う所存です。
そしてリンゴ団長の幽霊関係もいよいよ佳境に。
しかし次回はIF編をやろうと思っている作者でした。
読者を焦らしていくスタイル。