貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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私は大体一話、7000文字から8000文字を目安としてます。
ですが、作者として自分で設けた枷とはいえ、1話に最低これだけ書かないと、というのはプレッシャーでもありました。
こういう話しの書き方は邪道かもしれませんが、そう言う縛りを無視できるので楽です。

どうでもいい話はさておき、本編どうぞ。



短編連作 追憶編その2

『貴族の戯れ 前篇』

 

 

「くっくっく、無事にこの部隊に潜入することに成功したぞ」

「思いのほかあっさりと異動できてびっくりですぱ」

 リリィウッドのとある宿舎の一室にて、邪智謀略を張り巡らす影有り。

 即ち、怪盗ナイトシェードことワルナスビとその従者ラークスパーである。

 

 恐るべき吸血鬼の館から辛くも敗走し、ライバルの名探偵コンビに診療所まで送り届けられるという屈辱を噛み締めた二人だったが、良くも悪くも行動力はある二人は次の手を打とうとしていた。

 

「まずはあの恐るべき怪物の弱点を探るべきですぱ」

「流石は我がスクワイア、私もそうしようと思ってた所だ」

 前回キンギョソウ団長の屋敷に侵入してさんざん驚かされた二人は、当時の光景を思い出して身震いしていた。

 

「やはりここは、あの怪物を使役しているだろうムナールの執務室に忍び込み、触媒やマジックアイテムの類を探した方が良いかな」

「もしくは操る為の魔法の呪文などが有るかもしれないですぱ」

 そんな感じで今後の行動方針を決める二人だった。

 

 

 

 キンギョソウ団長の執務室は、騎士団支部の一室にある。

 つまり、団長界隈のやべー奴の縄張りでもあった。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」

「ですぱぁぁぁぁぁ!!!」

 闇夜に紛れ、さあ怪盗の本領発揮というところで、二人は出鼻を挫かれた。

 

 暗闇の中、ひゅんひゅん、と乾いた音が無数に鳴り響く。

 二人の目の前の地面に突き刺さったそれは、投げナイフだった。

 殺傷力は低くとも、刃が光で反射しないように黒く塗りつぶされたそれがどこからともなく飛来するのは恐怖しかないだろう。

 

 二人は見た。最近裏稼業をする者が恐れる『番犬』たちを。

 そして二人は知った。対害虫ではなく、対人専門の花騎士の恐ろしさを。

 

 常に集団で襲い、何度撒いても執拗に追跡し、煙のように消える。

 花騎士の戦い方を熟知し、その隙を突くことに特化した戦い方をする集団に、二人は逃げ回るしかなかった。

 その手際からどこかの工作員と彼女らに判断された二人は、そのまま朝まで追い回されることになった。

 

「これ、ナイフに麻痺毒が塗ってあるよ。

 捕まったら何されていたか……」

「生きた心地がしなかったですぱ……」

 数時間に及ぶ逃走の末に、二人は何とか逃げ遂せた。

 地の利があるあちら側が捕まえられなかったのは、単に今回は警告の意味合いがあったが二人はそこまで考える余裕はなかった。

 しっかり二人がどこを拠点にしているのか把握し、キンギョソウ団長の部隊の宿舎に逃げ帰ったことに疑問に思い、上に伺いを立てる為に監視要員を残して撤退したのである。

 

 

 

「と言うことが、昨日の夜あったらしいんだけれど」

 部下から報告を受けたチューリップ団長が朝一でキンギョソウ団長に確認する事態となった。

 

「ああ、あれか、捨て置け。我のカルマによるものだ」

「まあ別に俺は見られたくない書類を移すだけだからいいんだけどさ。

 アイツらが珍しく仕留めそこなったって悔しがってたから、余所のスパイとかじゃなければね」

「悪いな。貴公のそういう所を頼もしく思っている」

 彼にしては珍しく直接的な表現でチューリップ団長を労った。

 

 チューリップ団長が基本的に国益を第一に考え、国交に真の友情は無いということを理解している所を彼は好ましく感じていた。

 

 害虫討伐の騎士団は国家的役割を担わないとされるが、勿論そんなの建前である。

 各国は他国の情報収集に貪欲であるし、そうでなければならない。国家とはそういう物だ。

 そんな建前がある理由は、まあまた別の機会に。

 

 そして騎士団において何を優先すべきかと問われたら、大抵が人命と答えるだろうが、彼は真っ先に国益と言うだろう。

 この男が元老院から気に入られるのも分かると言うものだった。

 

「でも話を聞いた時、もしかしたら本物の忍者かな、と期待しちゃったんだよね。

 うちの番犬どもが本物のプロの工作員に通用するのか、気になってたんだ」

「貴公のそういう所がいまいち我には分からんよ」

 チューリップ団長が何でそんなに面白そうにしているのか分からない彼だった。

 

 

 

 怪盗ナイトシェードとその手下は、めげずに次なる手を打って出た。

 

「バラさん、その書類私が代わりに持って行くですぱ。

 丁度団長の執務室に用事が有ったんですぱ!!」

「あらそう、悪いわね。頼んだわよ」

 非正規の手段で侵入するのが適わぬなら、正規の手段で正面から堂々と入ることにした二人は、まんまとその方法を手にした。

 

「ふっふっふ、ただし用事とは怪盗行為ですぱがね」

「ラークちゃん、団長がキンギョソウさんと一緒に食事しに行ったよ!!」

「丁度いいタイミングですぱ、ワルナスビ様。例の物を手に入れたですぱ!!」

「さっすが我がスクワイア!! じゃあ早速団長の執務室に忍び込み……じゃなかった、お届けに上がろうか!!」

「はいですぱ!!」

 そうして二人揃って、失礼しまーす、とお行儀よく入室する二人。

 

 そんな二人を、廊下の曲がり角から窺っていた男女が一組。

 

「くくく、罠に嵌ったな怪盗ナイトシェード!!」

 言うまでもないが、ほくそ笑んでる団長と呆れているキンギョソウだった。

 

「こんなくだらないことに予知を使わせられたのは初めてだよ……」

 二人がやってくるのを予知させられたキンギョソウは半眼で己の団長を睨んでいた。

 

「我が領域に存在するは、我が創造せし耽美と退廃の魔界なり。

 さあ、真の闇に呑まれるがよい!!」

 程なくして、顔を真っ赤にした二人が半泣き状態で執務室から逃げ出すのを彼は喜悦に満ちた表情で見ていた。

 全くいい趣味である。

 

「ところでさ」

「なんだ、我が眷属よ」

「あの二人、団長の作品を持ったまま逃げちゃったけど大丈夫なの?」

「あっ」

 

 

 つづく

 

 次回、吸血鬼の末裔の恐るべき本性が明らかに!?

 無辜の人々を守る為、邪悪が牙を剥く前にとある花騎士が悪に立ち向かう!!

 

 

 

 

『続・ハナモモの追憶』

 

 

 実際の所、ハナモモは己の団長を決して認めていない訳ではなかった。

 彼も彼なりになにか己に出来ることを模索しているのは一番近くでそれを見ていた彼女も承知していた。

 

 自分のような境遇の者を助けようと、各地に隠れ潜む難民たちに手を差し伸べたり。

 チューリップ団長から警備の仕事を引き継いだり。

 

 彼は決して無能ではなかったが、とにかく地味だった。

 良く言えば縁の下の力持ちが似合うタイプであり、悪く言えば最悪居なくても自力で何とかなる人間だった。

 同じ後方や事務方が得意なチューリップ団長と比べて存在感が薄かった。

 そこまで考えてから、行動が派手なあの人と比べるのは酷かと思い直したが。

 

 彼は若いくせに安定志向で、野心も出世欲も無かった。

 端的かつ身も蓋も無い言い方をすれば、つまらない男だった。

 そう言った堅実な所を周囲は評価し、信頼しているが、ハナモモの理想とする男性像とは掛け離れていた。

 

 こうも不満のある相手だったが、一年も一緒に居れば情も湧く。

 なんとか彼に分かりやすい実績を積ませてあげたいと思っていた。

 

 彼が有能だと周囲に知らしめることができれば、それは自分の評価に繋がる。

 そうすれば自分がこの場所に居ることを誇らしいと思えるようになると、彼女はそう思っていた。

 

 そう思うことで、彼女は名前さえ付けられない己の感情に納得しようとしていた。

 

 

「最近、団長さんに蔑ろにされているような気がしますの」

 花嫁の原石の一件で、リンゴ団長に相談する機会が有った。

 良いか悪いかはともかく、恋愛経験値が何十倍も上だろう彼に、ハナモモは相談を持ちかけていた。

 

 実の所、頼れる男性相手ならばチューリップ団長でも良かった。

 彼には事務仕事とかを教わったりもしたことがあったのだから。

 だが彼の女性関係を見ていると、如何に恋に恋している所があるハナモモとて、無いな、と選択肢から外した。

 そんなこんなでお鉢が回ってきたリンゴ団長はハナモモの相談事を持ちかけられ、あーうーん、と何やら気まずそうな反応をした。

 

「それはつまり、自分の意見を優先されてなかったり、他の女の子と遊びに行ったり?」

「そうなんですわ!!」

「今まで女の子に興味無いみたいな顔してたのに、急に他の女の子を褒めだしたり」

「流石リンゴ団長、言うだけありますわね……」

 まるで見てきたかのように言い当てる彼に、戦慄するハナモモ。

 これでハナモモ団長にしたアドバイスが効いているぜ、と考えるほどリンゴ団長は無責任ではなかった。

 でもまさか、当人とて彼と彼女両方から相談されるとは思っても居なかっただろう。

 

「団長さん、ベルさんのこと尊敬しているらしいんですの」

「あー、ベルゲニアちゃんな」

「勉強の為に教科書も買えなかった団長さんに色々教材を持って来てくれたり、分からないところを教えて貰ったりしたそうなんですの」

 貧困を根本的に解決するには、食料だけでなく教養を与えなければならない。

 結局、お金が無いことを解決するには、手に職を持つことが一番なのだ。

 

 だが、彼のような難民の村の出身では戸籍など無く、職を探すのも難しかっただろう。

 そんな彼でも出来て、大金が稼げる職業が、騎士団長だった。

 実際にそれで彼は貧困を克服し、彼の故郷は彼の仕送りで何とか人並みの生活を取り戻したらしい。

 彼に野心も出世欲も無いのは、なるべくその環境を維持したいからに他ならなかった。

 

「自分もベルさんみたいな人になりたい、って同僚に言ってましたの」

 リンゴ団長はうんうん頷きながら、なるべくハナモモに聞こえるようなあからさまな位置でそうしたことを言ったのだろうなぁ、と彼の苦労を思った。

 

「あたしだって、団長さんの為に色々と頑張ってますのよ!!

 団長さんの実績になる様な討伐任務を貰って来たり、護衛でも相手に団長さんの名前を憶えて貰おうとしたり」

 他にも自分が行った微笑ましい努力を愚痴るハナモモ。

 

「若いなぁ、ハナモモちゃん」

「? 何当たり前のことを言ってますの?」

「その当たり前を失った人間に、君は眩しいってことだよ」

 羨むようにそう言ったリンゴ団長だったが、勿論褒めてなどいなかった。

 むしろ、幼く、青臭い、と窘めていた。

 

「そんなに焦って何がしたいんだい、ハナモモちゃん」

「それは勿論、団長さんの将来の為に」

「そんなのはあいつが決める。そのうちな。

 俺が聞いているのは君のことだ。そんなに焦って何がしたいんだ?」

「それは勿論……」

 勿論、何だろう?

 ハナモモはそこで初めて、言葉に詰まったのを自覚した。

 

 それは自分の為? 尊敬する団長に自分を見て貰う為?

 本当にそうなのか分からず、言葉が出来なかった。

 そのこと自体に、彼女が一番驚いていた。

 

「ナズナ団長とかを見てると感覚狂うだろうが、あれは天性の部類だ。勇者の血筋って奴かね。

 俺やチューリップ団長もキンギョソウ団長も、うだつの上がらない下積み時代はあった。

 俺があいつと同じくらいの時よりよくやってるよ、あいつは」

 諭すように、リンゴ団長は言う。

 

「良い事じゃないか、君以外に目を向ける余裕ができたってことだろう?

 騎士団長としてようやく成長してきたことじゃないのか?」

 ついでに尤もらしい理由をつけて尤もらしいことを言った。

 

「そう、かもしれませんわ」

「だろう? 君のように早熟で花騎士に成れた人間から見ればもどかしいかもしれないが、もっと長い目で見ておやりよ。

 そうすれば、君の答えもいずれ見つかるさ」

「…………」

 ハナモモは納得はしなかったが、彼女は己の未熟さは痛感していた。

 だからここは彼のアドバイスを素直に受けることにした。

 

 要するに、現状維持である。

 結局何も解決していなかった。

 それでもひとまず、心の整理が付いたハナモモだった。

 

 ちなみに全く話しと関係の無い薀蓄だが、女性の自殺率が男性に比べて低い理由が、こうして他人に相談や愚痴ったりしてストレスを発散できるからだという話がある。

 そう言うわけで、割りとハナモモは悩みを打ち明けスッキリできていた。

 とりあえずもう少し寛容になってみよう、と思うくらいには。

 酷いマッチポンプだった。

 

 

 そして後日。

 

「り、リンゴ団長!! け、け、決闘だぁ!!」

 出会い頭、ハナモモ団長に手袋を投げつけられたリンゴ団長は理由を察して、ああ失敗したなと内心溜息を吐いた。

 

 

 つづく。

 

『次回予告』

 花嫁の原石を送られた光景を見たハナモモ団長は、それを指に嵌めたハナモモを見て勘違い!?

 とは言えリンゴ団長との実力差は歴然!! どうするハナモモ団長!?

 

 

 

 

 

『続・理想の美少女』

 

 

「俺が今まで見てきた女の子で一番の女の子は誰かって?

 そりゃあ、カタバミちゃんだろう」

 我らがリンゴ団長は、居酒屋で飲んでる同士二人にそう言った。

 

「むふぅ、カタバミちゃんですかぁ。

 いいですよねぇ、ああいう元気な人って。行動力がある人って素敵でかわいいですよね」

 即答した彼に、それを問うたマルメロは陶酔したようにそう応じた。

 というか実際に酔っぱらっていた。いつも通りに。

 

「ああいう有り余る元気さが、男の子っぽいって言われる所以だろうな。

 だが俺的にはパーフェクトに限りなく近い。

 肩に掛かるくらいの金髪で翠眼、俺より頭一つ低いくらいの身長、控えめな胸、無駄な脂肪の無いしなやかな肉体、そして表裏の無い素直な性格。

 こんな素晴らしい女の子を男と間違うのなら、そいつは目が抉れて節穴になってるんだろう」

 そんな彼女を抱きしめている時の感触でも思い出しているのか、このエロ親父はにやけながらそう語る。

 

「団長さんのことですから、そう言う子は一人じゃないんでしょう?」

「敢えて他に誰かを挙げるのならそれはトリカブトちゃんかなぁ」

 彼女の名を挙げた団長は、すぐに神妙な表情になった。

 

「俺もあの子とは色々あったから言及は控えるが、彼女は魔性だよ」

「魔性、ですか?」

「ああ。儚く、美しく、か弱く見える。それが男を引き寄せてやまない毒となるのだ。

 彼女はその気になれば男どもに貢がせて一生遊んで暮らせるくらい出来るだろう」

「でもそういう所に無自覚なのが良いんでしょう?」

「分かるか、マルメロちゃんよ」

「むふふー♪」

 すっかり分かりあっている団長とマルメロだった。

 

「でも、団長さんにとって手元に置いておきたい理想の美少女はペポさんだけなんですよね」

「おっと、伏兵ですか?」

「まあ、そうだな」

 リンゴの言及に、団長は頷いた。

 

「カタバミちゃんは俺にとって黄金比で、トリカブトちゃんには魅了され溺れた。

 だが、俺が狂おしいほど恋しているのはペポだけだ」

「恋。恋ですか、むふぅぅ」

 その単語だけで、マルメロの瞳はさらにとろんとなった。

 女の子だけでなく、それを語るこのド変態にまでかわいさを見出しているのだから、彼女も剛の者である。

 

「それで、具体的に前者の二人を抑えて理想の美少女として団長が挙げる根拠は何です?」

「決まっている」

 団長は、マルメロにニヤリと笑って見せた。

 

「ランタナだ」

 

 

 

 ――――ハロウィン当日。

 

「私はバナナオーシャンの花騎士、ランタナ。

 幼馴染で同僚のペポと遊びに行って、面白そうなものを見つけたとホイホイペポに付いて行った。

 面白そうなものを探すのに夢中になっていた私は、背後から近づいてくるペポに気付かなかった……。

 私はペポに薬を飲まされ、目が覚めたら……自室のベッドに縛り付けられていた!!」

 一言で自己紹介と己の今の状況を説明したランタナは、どうにか出来ないかもがいていた。

 

「おのれペポめ、私をベッドに縛り付けるとは、あの時の意趣返しか!!

 はっ、と言うことはこの後だんちょが現れ、あんなことやこんなことをされてしまうのかー!?」

 多少遊びのあるベッドの両端にくくりつけられた両手両足の縄をじたばたさせながら、ランタナは叫ぶ。

 しかし、待てども待てども誰も来ない。

 それもそのはず、団長は今頃ペポと待ち合わせをしている時間だと、時計が示していた。

 

「ヤバイ、そろそろヤバイって、おトイレ、おトイレ行かせてーー!!」

「ランタナちゃん? どうしたの!!」

 すると、外から誰かの声が聞こえてきた。

 

「その声はイヌタデちゃん!! ふっふっふ、こんなこともあろうかと、実は事前に味方を作っておいたのだったー。

 ペポめ、私がペポ以外に友達が居ないボッチだと侮ったな!!

 私がだんちょを見て何も学ばぬと思ったかぁ!!

 え、イヌタデちゃんは動物枠? ははは、そんなまさか、ご冗談を」

「ええと、とにかく時間になっても来ないから探しに来たんだけど、大丈夫?」

「大丈夫じゃないからー!! 早くドア開けて私を助けてーー!!」

 そして。

 

 

「ふぅ、流石に鍵掛けて持ってくほど鬼畜では無かったか」

「本当にびっくりしたよ、縄で縛られてたなんて。……ちょっと羨ましい

 鍵は開いていたので、何とか乙女の名誉を守れたようで、イヌタデは一安心だった。

 

「やっべ、もう時間が無い、早くペポたちの邪魔をしに行かないと!!」

「う、うん!!」

 そうして、二人はどたばたしながら団長とペポを探しに向かった。

 

 二人は仮装した人々が練り歩く街並みの中、イヌタデの協力もあり案外あっさりと見つかった。

 

「ああもう、良いふいんき(なぜか変換できない)になってるじゃん!!

 こうなったら突撃して、全部台無しにするじょ!!

 名付けて、空気(なぜか読めない)ぶち壊し大作戦!!」

 目的の二人は仮装もせずに何やら話しながら歩いていて、傍目から見ればいい雰囲気だった。

 

「うおりゃー!!」

「そうは行かないわ」

 物陰から突撃を敢行するランタナの前に、立ちはだかる者たちが居た。

 

「ランタナちゃん、悪いけど今日くらいは大人しくしてもらえないかしら」

 それは、サクラを初めとした彼女の同僚たちだった。

 魔女っぽい格好をしているからか、直前までランタナは気付けなかった。

 

「まさかサクラさん、ペポから聞いたのか!?」

「ううん、でも何となく察しが付くもの。今日がハロウィンだと、特にね」

「そっかー。でも、ランタナは自分の信念を曲げるわけにはいかん!!

 イヌタデちゃん、囮をお願い!! 私は強行突破するから!!」

 しかし、背後を振り返ると、共にそこに来ている筈だったイヌタデは物陰からこちらを見るばかりだった。

 

「なぜぇ見てるんでぃす!?」

 思わぬ展開に、ランタナも滑舌が回らなかった。

 

「イヌタデちゃんはね、団長さんが差し向けた二重スパイなのよ。

 流石に縄で縛るのは可哀そうだったし、助けた人を味方じゃないとは思わないでしょう?」

 そしてどうやら最終的に相手の方が上手だった。

 

「あとはこうして、私達で止めればいいもの」

「ホンドニウラギッダンディスカー!?」

 一縷の望みを掛けてランタナは最早何を言っているのか分からない発音で、イヌタデに問いかける。

 勿論、彼女は申し訳なさそうに見ているだけだった。

 

「ええい、こうなったら!!」

「あ、こら!!」

 ランタナの無謀な突撃を敢行し、彼女を捕まえるべく動く仲間たち。

 

「それ行け、皆!!」

 ここでランタナ、最後の切り札を切った。

 普段お供として連れている動物たちを伏兵として呼び寄せ、けしかけたのである。

 

「ぬわぁっはっはっは!! 最後に勝つのは、このランタナよ!!」

 まんまと包囲を突破したランタナは、団長とペポの前に這いつくばるように躍り出た。

 

「ら、ランタナちゃん!?」

「ペポ、私を蔑ろにした罰だ」

 ランタナは壮絶な笑みを浮かべ、にやりと笑った。

 

「だんちょぅ!!」

 ランタナが、ペポの隣に居た己の団長を指差す。

 

「なぜペポがだんちょにセクハラされても一緒に居るのか!!

 なぜ、自分に掛けてた暗示を解いても悪夢を見るのか!!

 なぜ!! 私がこの小説の主人公にならないのかぁ!!」

「やめて!!」

 ペポが焦りの余り、ランタナに向かって駆け出した。

 

「その答えは、ただ一つ」

 ランタナはわざとらしく人差し指を立ててそう示した。

 

「それ以上言わないで!!」

 その様子を、彼女を追ってきたサクラが止めようとするが、もう遅かった。

 

 

「だんちょが、昔の部下だった数十人の亡霊に、毎日代わる代わる、取り憑かれていたからだぅわぁぁぁ!!!

 ぶわっははははははははははははははははぁ!!!!!」

 テンションが上がり切って哄笑を上げるランタナは、ペポとサクラに取り押さえられた。

 

「……俺が、あいつらに呪われてたってのか?」

 団長は、その真実に呆然としていた。

 

 

 つづく

 

 

 

 




謎の数字:825327015
これを入力すれば、デンドロ師匠がほぼ確定で全属性バフを乗っけて害虫を虐殺してくれます。
極限任務などでどうぞ。

溜め込んでたネタを放出できるのって楽しい!!
言うまでも無いですが、ワルスパコンビは作者もお気に入りです。

それにしても最近、久々に花騎士の2chまとめ見て、興味深い物を見ました。
何でも、スプリングガーデンの面々の平均身長が140㎝程度という考察です。
どうやら唯一身長の判明しているナズナさんを元に割り出したとか。
それによるとランタナは身長120㎝程度、ちっさww
チューリップ団長の身長が日本人の平均だとしても、こっちではかなり長身な部類になるんですね。
この話を本作で採用するかは未定ですが、面白いですよねー、こういうの。

それでは、また次回。

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