貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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前回投稿後に気付いたんですが、ラムズイヤーってワタチョロギの別名なんですねぇ。
やったねワタチョロギちゃん、親戚が増えたよ!!
モブはモブのままであるという宿命よ……。



それいけ、ランタナ分隊

 オトギリソウは、密偵である。

 彼女の仕事は他国の世情などを調べて、それを桃源郷に送る事である。

 

 とは言えその仕事の内容は、特殊な技能を持っている人間がするようなことではなく。

 普通にその国で聞き込みをすれば入手できる程度の情報ばかりだった。

 

 忍びらしくどこかに潜入して機密文章を奪取したり、他国の要人の秘密を握って交渉を有利にする材料を手に入れたりとか、いかにも密偵がしそうな仕事は皆無だった。

 

 それは彼女が桃源郷の面々から彼女が可愛がられている証拠でもあるのだが、単純に彼女がそう言った仕事に向いていないのは言うまでもないことだった。

 

 そもそも、本当に密偵の仕事をさせたいのなら、他国よりも自国を優先するべきだろう。

 領内に堂々と自治区が存在することを面白く思わない貴族など、幾らでも居るのだから。

 

 それはともかく、そんな状況ではいけないと、オトギリソウは思っていた。

 なので、自主的に重要そうな情報を集めるべく活動していた。頼まれもしていないのに。

 

 そういうわけで彼女は、リリィウッドにある訓練施設にやってきていた。

 

 

「ええと、今日もリンゴちゃん団長のところが使うのかな」

 最近多いなぁ、とオトギリソウはメモを取る。

 現在彼女は各国騎士団が有する戦闘力を調べるという、いかにも密偵らしいことをしていた。

 

 それが桃源郷にとって重要度がかなり低いことであったとしても、忍者っぽいからという理由で、半ば趣味みたいな感じで彼女は調査を続けていた。

 

「あ、あれは!?」

 そうして建物の屋上から訓練風景を眺めていると、彼女は衝撃的な光景を目にした。

 

 

 ランタナが分隊の面々の両目と口を布で覆っていたのである。

 傍から見たら関わり合いになりたくない集団だった。

 

 その周囲に卑劣なブービートラップである鳴子や木箱などを設置していたのでいる。

 そして持ち主から借りてきたらしいチビナズナがミニサイズのシンバルを持ってせかせかと動き回っていた。

 

「よぉし、みんな、準備はいいかぁ!! せーの、レッツゴー!!」

 ランタナがホイッスルを鳴らすと、チビナズナたちが一斉にシンバルを鳴らし始めた。

 分隊の面々はそれを合図に、一斉に動き出した。

 どうやらチビナズナを捕まえる訓練らしい。

 

 が、眼も口も、更にはやかましいシンバルの音で聴覚まで奪われては、人間はまともに行動などできはしない。

 

 ペポはその場で転倒し、リシアンサスは鳴子に引っかかってすっ転び、キウイは見当違いの方向に突っ走って壁に激突した。

 プルメリアは冷静に一匹だけチビナズナを捕まえたが、すぐに逃げられてしまった。

 

「なんだ、ダメダメじゃないか。

 そんなに丸太を担いで青春したいのかぁ!!」

「こんなの出来るわけないよぉ、もう無理だよぉ」

 膝を突いて、泣き言を言うキウイ。

 そんな彼女に、ランタナは近づいて肩に手を置く。

 

「諦めるな!! 諦めるなよお前!!

 どうしてそこで諦めるんだそこで!!!

 もう少し頑張って見ろよ!!

 出来る出来る、絶対できる!! 気持ちの問題だぁ!!」

「はッ、それはバナナオーシャンに伝わる太陽の精霊の御言葉!?」

 ハッとしてキウイは顔を上げた。

 

「本気になれば自分が変わる!!

 本気になればすべてが変わる、ネバーギブアップ!!!」

「うおっしゃぁ、まだまだやれるぜ!!

 駄目な私から変わるんだ、うおりゃぁぁぁぁ!!」

 暑苦しい激励を受けて、またまた見当違いの方向に走るキウイ。

 珍妙な訓練はまだまだ終わる気配はない。

 

 

「ま、間違いない、あれは忍者を育成する特訓!!」

 戦慄するオトギリソウ。

 

「リンゴちゃん団長は忍者部隊を育て上げようとしているんだ!!」

 なぜか自分の存在意義を脅かされているような気がしているオトギリソウだった。

 

 

「くっくっく、バレてしまっては仕方がない」

「ッ!? その声は!!」

 オトギリソウが飛び上がり、声の方へと体を向けた。

 

 彼女の背後には、普通の騎士装束の騎士団長が立っていた。

 その両肩には、赤黒の刺繍で『虫』『殺』と縫い付けられていた。あからさまにリンゴ団長なのだ!!

 

「どーも、オトギリソウ=サン、リンゴ団長です」

 彼は怪しげな雰囲気を隠そうともせず、慇懃(いんぎん)に挨拶を繰り出した。

 

「どーも、リンゴ団長=サン。オトギリソウです」

 挨拶をされて無視をしてはスゴイ・シツレイ!!

 オトギリソウも丁寧にお辞儀を返した。

 

「今だ、同士ゴールデンアップル!!」

「喜んで!!」

 何と言う迂闊!!

 隠れ潜んでいた謎の花騎士の投じた網が襲い掛かり、オトギリソウは網の中へと捕らわれてしまった!!!

 

「ぬ、ぬわぁ!?

 しまった、油断した……」

「ふぃーひひ、ふぃーひひ、女忍者、女忍者!!

 俺はお前みたいな胸の平坦な女の子が好きなんだ」

「むはッ、女忍者、むっはぁ!!」

 ぞくり、と目の前の二人に生理的恐怖を感じたオトギリソウ。

 

「わ、私は何をされたって何も喋ったりしないんだからね!!」

「聞いたか、同士ゴールデンアップル=チャンよ」

「聞きましたよ、団長=サン」

 オトギリソウは鉄の意志を示したつもりなのに、二人はむしろ楽しそうにしていた。

 

「に、女忍者を捕まえたらヤルことは一つですよね!!」

「そんな欲望を全開にするなんていけないぞ、同士ゴールデンアップル=チャン。

 まず彼女の意思の強さを確かめる為に」

 ごそごそ、と団長は怪しげな薬瓶を取り出した。

 

「この女忍者用媚薬を使用するのだ。

 これを使われた女忍者は、全身の感度が3.000倍になるのだ!!」

「か、感度3.000倍!?」

 なぜそんなに用途が限定的なのか、三倍ではなく3.000倍なのか、深く突っ込んではいけない。イイネ?

 

「そしてこちらでは描写できないようなあんなこんなをしてな?

 無意味なほど露出過多な真っ黒な衣装を着て洗脳悪堕ちプレイさせてやるぜ、ふぃーひひひッ!!」

「タイトルはさしずめ、『対虫忍オトギリソウ』で行きましょうか!!」

「子細を記録して、キンギョソウ団長のところに持っていくぞ!!

 彼はこういうシチュエーションが大好きだからな!!」

「むっはぁー!! 滾ってきましたよ!!」

 二人のおぞましい計画に、オトギリソウは涙目になってプルプル震え出した。

 

 

「……で、なんで縄抜けとかしないの」

「あ」

 ついに真顔で団長に指摘されてしまい、ようやく気付いたオトギリソウ。

 別に彼女は縛られているわけではないので、厳密には縄抜けとは違うのかもしれない。

 

「ふっふっふ、これくらい忍びならばお茶の子歳々って、……あれ?」

 網から逃れようともがき、かえって複雑に絡まっているシノビの図であった。

 

「ど、どうしよう、抜け出せないよぉ」

「ダメだこりゃ。変に動き回ったからハサミか何かで切らないと」

「と言うことは、はぅぅ~、お持ち帰りーってことですね!!」

「そうだな、仕方ないよな!!」

「なんでもいいから、早く助けてぇ」

 そうしてお持ち帰りされる忍びだった。

 この後、滅茶苦茶普通におもてなしされた!!

 

 

 

 

「どうだランタナ、仕上がりは」

「あ、だんちょ!! 来たんだ」

 難しい表情で腕を組んだまま唸っているランタナに、団長は話しかけた。

 周囲には過酷な訓練の果てに力尽きた分隊員たちがいた。

 

「いやぁ、思いつきでやってみたけど、やっぱ無理だわ!!」

「まあ、目と耳と口を塞がれちゃな。

 でも無理ってことが分かっただけでも十分な成果だ。

 お前の発想には驚かされる。もっといろいろ試していいぞ」

「うっぽぽーい!! だんちょ、大好き!!」

 なんとこの男、部下の訓練を全てランタナに任せているのである。

 先日から彼女らはこのランタナの突拍子の無い訓練に付き合わされてへとへとの様子だった。

 

 流石に意味の無さそうなものは却下しているが、団長はほぼ全てをランタナに一任していた。

 それは別に彼女が団長のお気に入りだからとかではなく、ランタナに細かく指示するだけ無駄だから、ある程度方向性を持たせて彼女の自主性に任せているのである。

 

「確かにお前の考えた訓練方法は無茶苦茶だが、間違ってはいない。

 別に目と耳と口を塞いだまま、敵をすべて倒す必要はないんだ。

 強襲、陽動、攪乱、それらの役割を果たせば十分だからな。

 重要なのは、他部隊との連携だ。お前たちだけで全部終わらせる必要は無いのさ」

「ふむふむ、よーするに、イタズラを仕掛けて逃げればいいんだね!!」

「大体あってる」

 よしよし、と団長はランタナの頭をポンポンした。

 褒めて伸ばす方針のようだった。

 

「明日、ハナモモ団長に簡単な害虫退治のレクチャーを行う予定だ。

 お前たちには働いてもらうから、今日はもう休んでいい」

「はーい!! おい、お前たち!! だんちょから今日は休めとのご命令だ!!

 寝るのは帰ってベッドで眠ってからにするんだ!!

 それとも根っこが腐るまでお風呂にぶち込まれたいか!!」

 ちっとも凄みの無い口調のランタナだったが、分隊員たちはすっかり調教済みのようで、すちゃっと立ち上がって一礼した。

 

「うんうん、順調に結束力は高まっているようだ。

 これで今日は何か美味いモノでも食べて来い」

「え、マジ!? やった!! ねぇねぇみんな、だんちょからお小遣い貰っちゃった、今日は何食べるー!!」

 団長から貰ったお札を手に仲間の元へ駆け寄るランタナ。

 その様子を、団長は優しげに見守っていた。

 

 

 

 

 

 そして翌日、リリィウッド領内にハチ型害虫が大量発生した為、ブラックサレナ部隊は害虫退治にやってきていた。

 リンゴ団長は経験を積ませるためにハナモモ団長の部隊も引率していた。

 

 その中で、ランタナ分隊は早速行動に移していた。

 

「いやぁ、配備されて早々にこんな重要な任務を任せていただけるなんて、私ってば期待されちゃってるんですかねぇ!!

 このわくわく感、准騎士時代を思い出しますよね!!

 私も小柄だから害虫を倒せるようになるまで苦労しました!!

 誰しも物語では語られないような下積み時代を経験しているものですが、こっちに来てからの訓練はまさに別物!! 驚天動地!!

 厳しかったですけど、始めてやる訓練ばかりで楽しかったですよ!!

 皆さんとこうして絆を深められるって、素晴らしいですよね!!」

「これ以上余計なことを言うと口を縫い合わすよ」

「あ、はい、ごめんなさい」

 ランタナ分隊長の一瞥(いちべつ)に、リシアンサスはしゅんとなった。

 

「とりあえず、ばーんと行って、がーんって害虫をやっつければいいんだよね!!」

「私がばーんって行けって言ったら行って、がーんって害虫をやっつけろって言ったらそうするれいいのさ!!」

「わかった、オッケー!!」

 キウイのテンションも最高潮だった。

 一緒になって笑うランタナに、ペポは何だか不安でいっぱいだった。

 

「大丈夫ですよ、ランタナちゃんは上手くやれますって」

「そうですよね……」

 ペポと慈母のように微笑むプルメリアを見て、私がランタナちゃんを信じなきゃ、と奮起した。

 

 

 そこで、不意に近くの草むらからゴソゴソと音が鳴った。

 

「がーん、って行け!!」

 ランタナ分隊長の号令に、四人は即座に動いた。

 四方から一斉に草むらへと飛び掛かったのである。

 

「ぎゃひぃ!!」

 が、出てきたのはオトギリソウだった。

 

「あれ、黄色と、黒、……ハチだぁ!!」

「違うよ、忍びだよぉ!!」

 自ら忍びを名乗る忍者が居るらしい。

 

「それより、こんなところで何をしていたんですか?」

「えッ、あッ、それは……」

 プルメリアの問いかけに、オトギリソウは口ごもった。

 まさか戦闘力の調査をしてたなんて当人たちには言えまい。

 自分が忍者であることはもっと言ってはいけない筈であるが。

 

「だ、団長さんに様子を見て来てって言われてたんだよ!!

 この調子なら大丈夫そうだね、それじゃあ!!」

 そのまま逃げようとしたオトギリソウだったが、不意に肩をランタナに捕まれた。

 

「今は作戦行動中だから、私の言うとおりにしてもらうよ!!」

「ええと、今日は七時半から空手の修行が有るから、付き合えないよ!!」

「今日は休め」

「あううぅ……」

 オトギリソウが 仲間に なった!!

 

 

 そんなやり取りをしていたランタナ分隊の面々+αだったが、すぐに害虫の目撃地点へと移動を開始した。

 

「アイム、ランタナぁ、とぅとぅとぅ~とぅとぅ」

 道中、いつもの調子でランタナが変な歌を口ずさんでいると、前方に哨戒らしいハチ型害虫を発見して彼女は足を止めた。

 

 するとランタナはハンドサインで散会を指示した。

 遅れてオトギリソウも周囲の草木へと隠れた。リリィウッドは隠れる草木には困らない。

 

 哨戒のハチ害虫が、ゆっくりと過ぎ去る、その瞬間だった。

 

「ッ、いっくしゅん!!」

 オトギリソウがくしゃみをした。

 

「よーし、がーん、だ!!」

 ランタナも指示を飛ばした。

 一瞬にしてハチ害虫は集中攻撃に遭い、叩き落とされた。

 

「ストップ!!」

 オトギリソウに鼻紙を渡すと、ランタナは止めを刺そうとしていた面々に対して静止を掛けた。

 

「ちょっと待って、ハチ型害虫の体内には特殊な臭いの元となるものがあって、一匹でも殺しちゃうとそれが撒き散らされて遠くからでも感知されちゃうんだって」

 と、ランタナは荷物から『ロリっ子でもわかる分隊長作戦マニュアル』なる冊子を広げながらそう言った。

 

「普通の蜂とは違うんですね。

 通常のハチは敵を攻撃した時にのみそういう臭いを出すそうですから」

「まあ、害虫が元となった虫の性質を全部引き継いでいたら、とっくにスプリングガーデンは穴ぼこだらけでしょうし」

 リシアンサスとプルメリアが哨戒バチを押さえつけながら、抵抗できないように針を折った。

 

「あと、哨戒役の害虫を無力化、または殺した場合、必ず五分以内に目標を達成するように、だってさ。

 害虫もバカじゃないから、哨戒が戻らないことに気付いちゃうんだって」

「じゃあ、さっさと仕事を終わらせちゃおうよ」

「そだね、その前に、これに巣の場所を教えて貰おうよ」

 ランタナは無邪気に笑って、無力化したハチ型害虫を見下ろした。

 

 

 

 痛めつけられ、針を折られ、片方の羽を半ばまで折られてよろよろと飛行するハチ型害虫が逃げ延びた先に、害虫の巣はあった。

 害虫たちは仲間が攻撃されたとみると、一斉に攻撃的な羽音を響かせながら集まり出した。

 

「いよぉし、皆、投げこめー!!!」

「わぁーい!!」

 草むらに隠れてその様子を見ていたランタナ分隊は、持ってきた荷物から丸い物体を取り出した。

 導火線がついていることから、用途は明らかであった。

 

 導火線に火が付いたそれを、次々と害虫たちの密集地帯に投げ込んでいく。

 やがて、導火線が無くなり、中身が破裂した。

 

 それが発したのは殺傷性のある飛翔体や爆炎ではなく、真っ白い煙と嫌悪感のある異臭だった。

 

「わぁーっはっは!! 害虫が嫌がる臭いを満載した、オシロイバナちゃん特製の激臭バクダンだぁ!!

 これを吸った害虫は、動きが鈍くなってしまうのだぁーげほげほ!!」

 むせながらも、ランタナは突撃をハンドサインで指示した。

 

 分隊員たちはランタナを含めて煙の中へと突撃し出した!!

 

「オトギリソウちゃーん、援護をおねがーい!!」

「わかったよ!!」

 シュリケンを投擲しながら、オトギリソウは気付いた。

 害虫の羽音で耳が塞がれ、煙で目と耳が使えないこの状況の為に、あの訓練があったのだと。

 

 煙の中から、害虫たちの断末魔が聞こえる。

 そして十数秒ほど経ったその時、爆音と共に煙が晴れる。

 

 ランタナの必殺技が炸裂したのだ。

 分隊員たちは、それを合図にわき目も振らずに来た道を戻っていく。

 

「やーいやーい、悔しかったらこっちまでおいで!!

 オトギリソウちゃんも早く早く!!」

「うん!!」

 ここまで仲間を殺され、その下手人たちを害虫たちが追わないという選択肢は無い。

 彼らは本能に従い、外敵を殺しつくすまで追いかけるのだ。

 

 

 

「えー、害虫で一番恐ろしい種類は何だと思いますか?」

 少し離れたところで、リンゴ団長はハナモモ団長やその部下に害虫退治の基礎を叩き込んでいた。

 

「ええと、どれも恐ろしいので、どれかと言われると」

「確かにそうだな。

 カマキリの鋭利な鎌も、アリの強靭な顎と外皮も、クモの糸と縦横無尽さ、チョウの空からの攻撃、確かにどれも恐ろしい!!

 でも俺はあえて言うなら、ハチ型害虫を選ぶだろう」

 前回のこともあって萎縮しているハナモモ団長と以下部下たちだったが、リンゴ団長の軽妙な話術の為か、その内容はよく入ってくる。

 

「ハチ型害虫は単純にうるさい!!

 あの羽音は恐怖を増長させる!! 群れの帰属意識が高く、すぐに仲間を呼ぶ!!

 そして何より、連中の針には毒が仕込まれていることが多い!!

 軽く人間の体に風穴を開けられる威力がありながら、かすり傷でも致命傷になり易い!!

 なんて恐ろしいんだろうな!!

 だけど、もう心配いりません!!! はいはい皆さんよく聞くように。

 害虫をぶち殺しまくった俺の、ロリっ子でもよく分かるハチ型害虫殺し講座を始める。

 良く聞かないと死にます」

 リンゴ団長は、近くの空に煙が上がったのを確認すると、改めてハナモモ団長たちを見た。

 

「ハチ型害虫は超絶怖いですが、全然怖くありません!!

 何を言っているかわからねーと思うが、羽音が(うるさ)く大量に出て来て毒もある、あっという間に囲まれて超こわい!!

 だけど、こんな風に陽動に引っ掻かって追ってきて、高所を取っていればたとえ森の中でも全然怖くない!!」

 木の上で待機している彼らの下を今丁度、ランタナ分隊が通りすぎ、次にハチ型害虫の群れが押し寄せてくる!!

 

「調子こいてブンブンしやがってますが、あれは怒って目の前しか見えてないブンブンだ。

 ちょっとした奇襲であっさりと壊滅に追い込めます。

 連中は奇襲に遭うことなんて、全く考えていないのです。

 高所を取れば、奴らは己がまさしく虫けらだって思い知ることでしょう」

 リンゴ団長の部下たちの攻撃が木の上から間断なく炸裂する。

 慌ててハナモモ団長の部下たちも追撃するが、地面は既に血の跡しかなかった。

 

 

「戦いとは、出来るだけ汗をかかず、危険を最小限にし、博打を避ける。

 戦いの最中に汗をかいて体力を消耗し、危険を増やし、博打に頼らないようにする為に、訓練を怠らないようにするのです。

 その為に努力を惜しまず、何でも試して、頭を働かせるのです。

 わかりましたかー?」

 はーい、とハナモモ団長の部下たちは返事をした。

 

「勉強になります」

「良いって良いって、お前がどういう方針を取る団長になるかは知らないが、戦いだけは避けられないだろうからな。

 そろそろキンギョソウ団長の所も慣れただろう?」

「はい、いくつか調査の指揮を取らせてもらえるようになりました」

 下げていた頭を上げ、彼はリンゴ団長にそう答えた。

 

「うんうん、無事一皮むけたようだな。

 お前もそろそろ一端(いっぱし)の騎士団長ってことだな」

 その様子にリンゴ団長は満足そうにしていると、ランタナ分隊が戻ってきた。

 

 

「だーん、ちょーーー!!」

 がばっ、とランタナが飛びついてきた。

 

「どーだ、私頑張ったよ!!

 ちゃーんと、真面目にやったんだからね!!」

「よーしよーし、そうかそうか、よくやった」

 団長がランタナを抱き上げていると。

 

「団長さん、私も超活躍したんだよ!!

 煙の中でどばばばーって、ばったばったって、害虫をやっつけたんだから」

「おう、よくぞやってくれた。

 お前たちの働きで、危険は最小限に抑えられたんだぞ。もっと誇っていい」

「うわーーーい!! やったぜ、のんちゃん!! ぎゅうううぅぅ」

 本日のキウイのテンションは止まるところを知らない。

 彼女の両腕で抱かれている小鳥のダメージも加速している!!

 

「ペポもこっちくるか?」

「もう、私は良いです!!」

 そうは言ったが、親友が楽しそうなのでちょっと寂しそうなペポだった。

 

 

 

 そして、後日。

 

「今日も訓練、ガンバルゾー」

「ガンバルゾー、ガンバルゾー」

 なぜかオトギリソウはランタナ達に交じって訓練をしていた。

 

 先日の有様がリンゴ団長経由でナデシコに伝わり、彼にしごいて貰いなさい、とお叱りを受けた為だった。

 

「あ、オトギリソウ。これ、ハナショウブさんに渡しておいてくれ。

 ここ最近の大まかな世界情勢についてまとめてあるから。

 今度行った時に安くしてくれって言っておけよー」

「あ、わーい、ありがとう団長さん!!

 そして資料を受け取ったオトギリソウだったが、ふと違和感を覚えた。

 

 

「あれ、なんか違う気がする……忍者ってもっとこう、なんて言うか……」

 それに気づいたオトギリソウは、二日ほど落ち込んだそうな。

 

 

 




今回の開花ガチャ、見送りかなぁ。単発でサボテンちゃんでたし。
アイギスの育成パック買っちゃったし……帝国ガチャで大勝利しちゃったし。これ以上どこかでガチャしたくないというか……。

今年は無いと思っていたガチャ運、なんで年末になってやってくるんでしょう。
偏りすぎですよねぇ。どうなってんだこれ。


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