出身はウインターローズか、なるほど……。
ところで、お嬢様の下僕になりたいと志願している輩が居ましてですね。
と、すぐに閃きました!!
次回はこれにしよう。
気まぐれなる日、太陽が頂きに上る前の我が使命を終えし後のこと。
「ふむ、天啓が下りぬな」
祈祷の呪文を裁定の間から思案し、我は天啓が下りるのを彷徨いながら待つことにした。
「団長さん、手紙が来ているわ」
運命が交差し、パーフェクト・ローズが次元の向こう側から届いた伝令を手にしたらしい。
「よくぞやってくれた。パーフェクト・ローズよ」
「普通にバラって言ってくれない? 少し恥ずかしいわ」
「我がそう望んでいるのだ」
我は伝令を手にし、裁定の間へと望むとする。
「ではな、パーフェクト・ローズよ」
「……ええ、その呼び名にふさわしい花騎士になれるようにしないとね」
彼女は決意を新たにし、去って行った。
「ふむ、咢を開く者は太陽を貪りに行ったか」
裁定の間に戻ると、使命を遂行していた咢を開く者は姿を消していた。
我は定めによって伝令の書簡を開いた。
「死色の魔王からか」
どうやら依頼していた害虫の所業の調査が終了したらしい。
後に閻魔の帳簿をこちらに寄越すそうだ。
「……彼の忠誠に供物を捧げねばな」
我は決意を新たにし、伝令の書簡を封印した。
神託を下るのを待ちながら戦乙女たちの宮殿の近くを過ぎ去ると、庭園のテーブルセットの前にバイオレット・レナが冒涜的な悪魔の絵を描き、召喚魔術を試みていた。
「召喚は順調か、バイオレット・レナよ」
「あ、団長さん。こんにちわ。
はい、今先日見た害虫の特徴を書き出しているところですので、もう暫くしたらご報告できると思います」
「無事召喚が可能なようで安堵した。
これからもその腕を生かし、悪魔の姿を暴くのだ
貴殿は世界花の祝福ぞあるのだからな。我も期待している」
「あはは、分かりました」
奥ゆかしく笑みを湛え、バイオレット・レナは我に立ち上がり一礼する。
「あの……」
「どうした?」
顔を上げた彼女は、憂いを帯びていた。
「少しお時間よろしいでしょうか」
「うむ、我が威光に臆する必要も無し」
我は尊き血筋をその身に宿すが故に、我に対し彼女が半身を退けていることを知っていた。
……そりゃあ威厳を保とうとしてはいるが、そこまで畏れられても居心地が悪い。
彼女に対して表現を和らげるか、と検討していると。
「害虫と共存って不可能だと思いますか?」
「それは神意に抗うという意味か?」
我は魔眼にて彼女を戒めた。
「いえ、お国の意向にどうこう言うつもりはないんです。
団長さんが貴族だからこういうことを言ったというわけでもなくて……」
「戦いから目を逸らす者を異端審問で炙り出すつもりもない。
己の言葉を正しく述べよ」
「はい」
バイオレット・レナは息吹にて大気中の魔力を取り込む。
「私は思うんです、もう千年も同じ世界に存在しているのに、争うばかりなのは悲しいって。
勿論、私たちの生活を脅かす害虫たちを放っておくって選択肢は私にもありません。
だけど、縄張りの奥で静かにしている害虫まで戦う必要があるのかな、と」
それは戦いに向かう者であるからこその苦悩だった。
「バイオレット・レナよ、慈母の魂を持つ者よ。
貴殿のその慈しみの精神は実に尊い。血筋だけで威光があると思っているこの神域に巣食う虫どもよりよほど、な。
しかし考えてもみよ。十の果実を十の悪魔が秘境の奥地で分け合い、我らに脅かさずいられるとしよう。
だが我ら人間は十の果実を十人で分けられ続ける生き物ではない。
なぜなら、我らは愛によって他者を慈しみ、子を儲けて育てるからだ。
十の果実を十五人で取りあうとならば、身内より他の場所から奪うのは道理だろう。
あの悪魔どもに愛や慈しみがあるかは知らぬが、理屈は同じだ」
貴人の理屈に、彼女も顔を歪めた。
「そう、ですよね……。
害虫たちは田畑を育てて自給自足なんてしませんもんね」
そう言う意味では、あの悪魔どもも哀れな存在なのかもしれない。
「数が増えれば住む場所が増え、食するものも増える。
やがて我らと住む場所が重なり、そしてぶつかり合うのだ。
お互いに殺し、殺され合う、これもある種の共存であるとも言える。悲しいことではあるがな」
連中が数を揃えるのは戦力を増やす目的である一方で、悪意によって生まれた連中も代を重ねたからか、秘境の奥地から姿を見せない種も居るのも確かである。
だが、全てがそうではない。見境なく周囲を害する種もいる。
どちらにせよ、心を通わせられぬのなら殺し合うしかないのだろう。
「貴重なご意見、ありがとうございます。
時間を取らせて申し訳ありませんでした」
「気に病むな。貴殿の葛藤は理解できぬわけではない。
天地を分かち、争わずに済むのならばそれ以上のことは無いのだからな」
そして我と彼女はその地より運命は
「ううむ、天啓が下りぬ……この身が刺し穿たれねばならぬのか」
「物騒なこと言って、どうしたの団長」
「天啓が下りぬのだ、咢を開く者よ」
我が裁定の間にて思い悩んでいると、我が眷属は供物を食してきたようだ。
「ああ、刺激が無いから詩作が捗らないってこと」
我が眷属は能面を被り、取り込んだ魔力を吐き出す。
「此度の夜会にて披露せねばならぬのだ」
「へぇ、今日の夜会は詩の発表会なんだ。
毎日毎日あっちこっちでパーティパーティ、貴族になるってのも考え物だよねぇ」
「幾ばくかは贅を貪り、豊かさを示すのも尊き者の務めぞ。
我らが貧困に喘げば臣民どもが不安がろう」
「いつも思うんだけど、そういうのって一理しかないよね。
残りの九理は貴族の方便にしか聞こえないんだけど」
邪念に憑りつかれた我が眷属を祓う為、我は祝詞をあげる。
「それはそのことを弁えている者が少ないからだろう。
贅沢をするのが貴族として当たり前、そう思っている輩も少なからずは居るからな」
おっと、祝詞になっていなかった。
「それは害虫どもが血税を貪ることが尊さだと思っているのだ」
「なんで言い直したし、普通に言えばいいじゃん」
「そうはいかぬ、使い魔がどこから見ているか分からぬからな」
「……まあ、私はいいけれどさ。
けれど、不満の一つも言えないなんて、貴族も楽じゃないね」
それが分かっているから、お前を我が眷属にしているのだよ、キンギョソウ。
使命を片づけ、我が眷属を伴いネタ……天啓の手がかりを捜索していると、魂の共鳴を感じた。
「むむ、この感覚は、近い!!」
「そりゃ、あそこに見えているからね」
「この魂の波長は、マイソウルレゾナンス!!
不滅のヘデラ、不死なる神花の使徒ではないか」
「その声は、龍と契約せし者。聞こえる、聞こえるわ、次元を隔てて私を呼んでいる!!」
「次元って三十歩ぐらいで超えられるんだね」
無粋な我が眷属を無視し、彼女は次元を超えて現れた。……そうだ、そろそろ我が屋敷の増えた蔓を業者に頼んで駆除せねば。
「不滅なる生命の守護者アイビー、聖杯に導かれここに降臨!!」
「よくぞ我が召喚に応じてくれた。
急な召喚ゆえに契約の呪印は無いが、構わぬだろうか」
「ええ、丁度これを貰ったから、あなたと一緒に呑もうと思っていたところなのよ」
と、神の血と酒杯を示すマイソウルレゾナンス。
「本当に仲いいんだね、二人とも」
「心配しないで、骸を携えし龍よ。あなたの分もあるから」
「なんで私も巻き込まれてるのかなぁ……」
「あなたもこっち側だって認めれば楽なのに」
「やめて、昼間っからこんな会話してる人たちの仲間にしないで!?」
もう遅いという自覚が無いというのは哀れなものだ。
庭に置かれているテーブルセットでささやかな酒宴が開かれた。
「そう、今日の夜会の詩の内容を考えているのね。
貴族にとってパーティはご近所付き合いのようなモノ。面子を維持するにもお金は掛かる、そう、お金……現世における魂の通貨」
「うむ、貴族にとって財貨は己の血、まさしく魂そのもの。
民たちの為にその血を流し、魂を削るのを許されるのだ。
……まあ、なんだ、そちらの経済状況はどうだ」
キンギョソウは部外者なりに黙って二人の横でワインをちびちび酔わずに失礼にならない程度に口にする。
彼女は何やら雲行きが行方不明な二人の横で黙って会話の様子を見ていた。
「……ちょっと厳しい、流石にこれ以上食費を削るのは」
「花騎士の給料で先祖代々の土地、屋敷を守るのは大変だろう。
そろそろ国庫に預けてある財産に手を出しても文句は言われまい」
「いえ、それをしたら私はヴァルハラから見守ってくれる家族に申し訳が立たないわ。
私はまだまだ家族に甘えるわけにはいかないの」
「手元に残っているのが形見の品ばかりではなぁ」
と、二人は揃ってため息を吐いた。
何やらこの二人は家同士で親交があったらしく、団長はアイビーの家が没落して以来いろいろと手を貸しているようだった。
「我が家がもう少し早く動けておれば、お前にそこまで苦労させなかったのだが」
「それは口にしない契約よ、団長さん。
家同士の付き合いがあると言っても、他国の貴族同士。あれ以上は無理だったわ。
遺産を貪る事しか頭にない親類たちから家族の形見を守ってくれただけで十分よ」
「そうか。その心意気や良し。
どうだろうか、今日の夜会にそちらも参加すると良い。
貴殿のその輝ける才覚なら、文句も出まい。なにより、食事が出る」
「……そう、お言葉に甘えていいかしら」
苦労話もそこそこに、二人は本題へと入っていく。
「では早速。今日のテーマは花言葉だ。
好きな花を持ち寄り、その花言葉で詩を作ることになっている」
「相変わらずリリィウッドの夜会はレベルが高いわね。
知識と教養、発想力が無いと伝統と格式は維持できないということなのかしら」
「古き良きものを維持するのに努力が必要なのは認めるが、我には気取っているようにしか思えぬな。
だからリリィウッドの貴族は気位ばかりが高いなぞと言われるのだ」
「いいえ、我が魂の友、龍と契約せし者よ。
どこの貴族も似たような者よ。私が苦労しているのがその証拠だもの」
「ユリの女王の話を聞く限り、常夏の楽園も似たようなものらしい。全く世知辛い世の中だ。常世こそ地獄ぞ」
「現世は害虫なんて悪魔が居る煉獄だもの。仕方がないわ」
二人は何度めか分からぬ溜息を吐く。
「それにしても、団長さんってば男が社交界に女を連れて行く意味、分かっているのよね」
「別に構うまい、お互いに両親が健在ならば婚約の話が持ち上がっていてもおかしくはなかった間柄だ。
今では国際同士の交流も盛である故に、関係強化の為に貴族の国際結婚も推奨されている」
そう答えた団長が、僅かに動揺していることを、キンギョソウは悟っていた。
話し方が素に戻っているのがその証拠だった。
「数多の血の誓約を断っていると聞くわ。
団長さんには前世から結びつきを持つ相手は居ないの?」
浮ついた話の無い彼に、アイビーはそんなことを口にした。
恋愛話になると、ヘンテコな言い回しも案外様になるんだなぁ、と傍観者は思う。
「我にはその資格は無いだろう。
いずれ妹たちが跡継ぎを産んだのなら、それを当主に据えようと思う」
「……そう、まあ私が口を出せる話じゃないわよね」
どことなく、しゅん、となったアイビーを横目に、乙女心だなぁ、と他人事のようにキンギョソウは思った。
「団長さんも罪な人だよねぇ」
キンギョソウは陶器のドクロを撫でながら、淡い思いすら寄せ付けない彼の言動を迂遠ながらも批難した。
ささやかな酒宴が終わり、三人が二人と一人に分かれると、二人の方は書類を取りに執務室へと戻ろうとしていた。
「然り、我は罪深き罪人故に誰かと愛を交わすことなどないのだ」
「リンゴ団長も引くような性癖してるくせに、ねー」
こつんとドクロの額と己の額を合わせて、そう嘯く一番の部下。
「お前も理解しているだろう。それは忌まわしいことなのだ。
本来ならこのような男がこうして騎士団長をしていることすら間違いだと思っている
くッ、これも呪われし我が血の定めなのか……」
そう言って団長は左腕を抑えて苦しげに呻く。
その所作こそ冗談だが、言っていることそのものは間違いでは無かった為、キンギョソウも真顔になるしかなかった。
「もうとっくに裁かれた、ご先祖様の所業をあなたが引きずることないのに」
溜息を吐く彼女は、彼の家の歴史が脳裏に浮かぶ。
彼の、団長の祖先は拷問卿と呼ばれてその筋では有名で、社交界で堂々とその凄惨な所業を語るという恐ろしい人物だったいう。
後に貴族社会の改革の為に粛清されたが、その血をまた違った形で彼も引き継いでいた。
「確かに、リンゴ団長みたいに堂々と言える類の趣味じゃないけどさ。
というか、彼のも堂々としちゃいけない趣味だけどさ」
「あれは一種の処世術だ。
ああやって己から合わぬ人間をあらかじめ遠ざけているのだ。
彼は少しそういった臆病なところがあるからな」
と、彼は的確な分析を経験から述べた。
伊達に貴族として観察眼を磨いていないのだ。
「うん、まあね、あなたにまで堂々とあの趣味を公言されても困るけど。
いや、分かるよ、…ああ、その趣味がってことじゃなくて、周りから普通じゃないって思われる様な趣味を持つって事がだよ。
団長さんの場合、男だからそういうの辛いんだと思うけど」
訳知り顔でキンギョソウは首を縦に振る。
「別に気にすることないんじゃないのかな。
団長さんの理性と正気は私が保証してあげるからさ」
「おお、おお!! それでこそ我と契約せし眷属!!」
団長は彼女のその言葉にいたく感動したらしく、柄にもなく涙ぐんでいた。
が、それはそれとして後ろめたそうだった。
「ともかく、夜会の方は何とかなりそうだ。裁定の間にある執筆中の新作の続きを回収して書かねば。
冬に向けて同士たちの元への締め切りはそう遠くない」
「えッ、まさか執務室で書いてたの!? ちょっと信じられないんだけど!!」
それを聞いたキンギョソウは憤慨した。
彼女はデリカシーについてくどくどと話し始めた。
そうしているうちに、二人は執務室の前にたどり着いた。
そこで先に入ろうとした団長の背に、キンギョソウがぶつかった。
どうしたんだ、と顔を上げると部屋の中には誰かが居た。
「ああ、団長か。失礼している」
中に居たのは、カサブランカだった。
険しい表情で何かを読んでいた。
「そ、それは……」
「団長、知らなかったよ。
この世の中にまだ私の知らない凄惨な出来事があったとは。
私はまだまだ上辺だけしか知らされていなかったのか」
「あぁ……」
キンギョソウは呻いた。
カサブランカが読んでいるのは、いや見ているのは、セリフが割り振られる前のまだまだ未完成の薄い本の原稿だった
その内容は、パンクなゴスロリの格好にドクロの眼帯を付けて可愛らしさを強調した格好をした妙にキンギョソウ似の少女が、その
更に内容を進めていくと、その少女は組み敷かれ、泣き叫ぶのも厭わず蹂躙され、凌辱の憂き目に遭っていた。
そして何より、肝心なのは、
「まさか、害虫にこんな習性を持つ輩が居ようとは!!」
少女にその凌辱の限りを強いるのは、害虫だったということだ。
それを報告書かなんかの一部かと勘違いしているらしいカサブランカは、己を怒りで高ぶらせていた。
「……キンギョソウ、介錯を頼む」
「貴族って服毒するんじゃないの?」
「そんな資格があるとは思えない、……妹たちを頼む」
「な、団長、なにをしている? 団長!?」
とりあえず、ひと悶着あったが団長が割腹する事態は何とか避けられた。
「なに、これは創作なのか!?」
「うん、まあ、害虫はそんな行動取らないし」
「ではなぜこのような内容の話が……」
「結構その筋じゃ団長さんの書く本って売れてるらしくてね。
この間のコミフェスのR18本、完売したらしいし。詩集とか小説とかまったく売れてなかったのに」
「貴殿は多趣味だな……しかし、こんな内容の話を好む人間が居るとは、にわかに信じられぬ」
心底驚いた様子で、カサブランカはキンギョソウの説明を受け入れていた。
それを横で聞くしかできない団長にとっては公開処刑に等しいが。
「ううむ……この件について話そうと思ったのだが、とんだものを見つけてしまったものだ」
と言って、黄金まんじゅうを手にカサブランカは困った様子だった。
「あ、黄金まんじゅうだ、食べてもいい?」
「ああ、どうぞ」
空気を読まずに包装を破り、中身の饅頭を口に咥えてお茶を入れ始めるキンギョソウ。
「軽蔑しただろう。
皆を守るべき騎士団長がこのような劣情を抱いていたなどと」
「ほんとだよね、これって私がモデルでしょ!!
私のすぐそこでこれを書いてたなんて、ホントデリカシーがないんだから!!」
そのまま適当な樹海に入って首を吊りに行きそうな団長に対して、キンギョソウはぷんすかと怒っていた。
「だがこれだけは信じてほしい、私はこのような目であなた達を見たことなどなかった。
これは我が内なる衝動を抑え込むべく必要な行動だったと言うべきか」
「皆まで言わずともよい、確かに驚いたが、殿方がどんな趣味を持っていてもそれに言及してはいけないと教わっている。
貴殿がこのようなことを望んでいないことは私がよく知っているよ。
だからそのような顔をするでない。無論、誰にもこのことは口にはせぬ」
と、動揺を隠しきれないカサブランカだったが、そのように述べて彼の肩を叩いた。
傍から見ていたキンギョソウが思わず見惚れるくらいのイケメンっぷりだった。
「おお、女神はここにも居たのか……。
南国にいずれ降臨せし女神よ、どうかこの罪深き男に赦しを」
何やら感銘を受けた団長。
いつの間にか彼女のシンパが増えていた。
「おいおい、まだ私が女王になると決まったわけではない。
それに、私は知り合いが罪業を積み重ねるのを黙って見ては居られない。
しかし他国のことに口を挟むことなど毛頭無い。個人的にはいろいろ言いたいが。
少なくとも、貴殿が道を踏み外さぬ限り、私はそなたの味方で居よう」
カサブランカはそれこそ慈愛の女神の如く微笑んだ。
「どうか、この私めに忠誠の証を」
「うむ、よしなに」
そう言って差し出し手の甲に、跪いて接吻を落とす団長。
傍から見て絵画のような光景だった。カサブランカの格好がこの場合幻想的に映ったのかもしれない。
「うーん、なんとなくこうなると思ってたけど、改めて見ると不思議な気分」
実は先ほどドクロと額を合わせていた時にこんな光景を幻視していたキンギョソウ。
どのみち間に合わないタイミングであったが、これは言わないで正解だったかな、と二つ目の饅頭に手を伸ばしながらそう考えるのだった。
ちなみに全部通してキンギョソウ団長視点で行こうと思いましたが、三千文字くらいで断念しました、非力な私を許してくれ……。
何気なくいつものように十連を回したら、虹が!?
出てきたのはまさかのシロタエギクちゃん。イベントピックアップの虹をイベント中に引く事なんてもう二度とないでしょう。
今年の運の全てを使い切りました。
これは私利私欲を捨てアイビーちゃんを取ったご褒美に違いない。
え、キンギョソウ団長の趣味?
……それを気にする方はR版を待つんだ(にっこり