貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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今回は名前だけですが、架空の花とその花騎士が登場します。
まあこれも一種のパロディってことで。

※10.3 終盤の展開を追加しました。


緊急任務 霊花を守れ!!

「黄姉さん、一体俺に何の用なの?」

 その日、チューリップ団長はイエローチューリップに呼び出され、彼女の研究室へと来ていた。

 

「ちょっと書類に書けない材料のことでお願いしたかったのよ」

「ああ、あのわざわざ使途不明金に偽装して取り寄せたっていう、あの若返りの薬の材料だろう?」

 あの秘薬の材料となる霊草は、取り扱いや存在そのものが極秘であるらしく、団長すらもその名前を知らなかった。

 研究する場所や人員も日によって変え、その全貌を把握しているのは彼女と共同開発者のローズマリーのみだった。

 何を研究していたのか知らない者もいるくらいだ。

 

「あれって本当に危険な材料じゃないんだよね?

 俺は姉さんを信じているから若返りの薬なんて荒唐無稽な物の開発をオーケーしたんだけれど」

 そして僅かながら販売もした。

 半分は売って資金にし、残り半分は資料用・研究用として保管されている。

 当然悪用されないよう、すべての品の足取りは把握してある。貴族用に販売した為、購入時には家紋を提示させる念の入れようだ。

 

 それくらいには、若返りの薬は価値がある品だった。

 買いそびれた貴族から嫌味を言われたり、騎士団宛に正体不明の脅迫状が届くくらいには。

 

「当然じゃない、ただの睡眠薬だって大量に飲めば死に至るわ。

 毒を薬にするのは薬師の仕事だけど、薬が毒になるかなんて、使用する本人の心得一つなんだから」

 と、イエローチューリップは珍しく不満そうにそう言った。

 

「それもそうだね。

 俺も実際に作れちゃったときは本当に驚いたけど。

 それで、またその材料を取り寄せたいってことでいいの?」

 その為の資金を捻出してほしい、そう言う内容かと思った。

 限定販売第二弾として、もう一度販売したいという彼の狙いもあった。

 

 チューリップ団長はイエローチューリップの開発した作品の数々を『あまり真面目じゃない薬局』と題してブランド化していた。

 パーティ用の声が変わる薬や、夜のお供まで色々取り揃えている。

 話題作りに、幼児化薬はうってつけだった。

 

 

「実はその霊草の栽培地に、害虫が発生したらしくてね。

 絶対に信頼のおける騎士団を紹介してほしいって、お願いされたのよ」

「ならリンゴ団長に任せればいいよ、あそこの部隊の子たちは口が堅いのを取り揃えているって、彼も自慢していたし。

 極秘任務だから政府に報告できないけれど、保管していた幼児化薬を報酬にもうひと瓶進呈すれば、彼も喜んでやってくれる筈さ。

 少数精鋭もこの場合は都合が良いし」

「分かったわ、じゃあ依頼しておいてね」

「任せておいてよ、姉さん」

 と、頷いた彼だったが、少しばかり好奇心が先行した。

 

「ところで、その材料の名前ってどんなの?」

「ああ、団長さんも名前くらいなら聞いたことがあるんじゃないの?

 ドンケルハイトっていう、とても貴重な治癒薬の材料になる代物よ」

「なんだドンケルハイトか、あれなら確かに若返りの薬も作れそうだよね。

 ―――って、ええッ!? うそぉ、あれってスプリングガーデンにあったの!?」

 心底驚愕するチューリップ団長。

 世界花なんてある場所なのに、今更である。

 

「あれって魔境の奥地に特定の期間しか採れないとか、月食の日にしか採れないあれだろ!!」

「よく知ってるわね、だから実在しないって思ってる人も多いんけれど。

 ドンケルハイトさん…ああ、こっちは花騎士の方ね、彼女が定期栽培できないか研究していて、今のところ一年に一度採取できるようになったらしいのよ。

 その薬効から命を狙われるかもしれないし、結界を張って隠れて栽培しているのよ。

 だからこのことは一部の花騎士しか知らないことなんだけど」

「ああ、花騎士も居るんだ、花言葉なんなんだろうなぁ」

 と、衝撃の余りどうでもいいことを口にする彼だった。

 

「それで、結界の一部に穴が開いて、そこから害虫が侵入したらしくて、どうにか駆除してほしいってわけ」

「……わかったよ、姉さん。リンゴ団長に任せれば確実さ。

 彼には俺の方から説明しておくよ」

 と、二人がそんな会話をした数日後、赤ん坊化したランタナが運び込まれたというわけである。

 

 

 

 

 

 

 

 リリィウッド、広大なるエレンベルクの樹海の最深部に存在するその場所は、“月食の森”と呼ばれていた。

 

 生い茂る木々は昼間だというのに太陽光を遮り、夜も同然の暗闇を生んでいた。

 その所為か、世界花の加護があっても足元に殆ど草花は見当たらない。

 

 ここには騎士団の巡回ルートから外れ、哨戒すら行われていない害虫の領域だった。

 そんな場所を、ブラックサレナ部隊は灯りも点けずに慎重に進んでいた。

 

「こんなところに、本当に人が住んでいるんですかねぇ」

「この国出身の私も、この辺までは来ないから、隠れ住むにはうってつけだけど……正直、正気の沙汰じゃないわ」

「無駄話をするな」

 沈黙に耐え切れず話をする部下に、リンゴ団長はそう釘を刺した。

 

「リンゴちゃん、方角は合っているか?」

「はい、恐らく」

 リンゴの手には、淡く明滅する結晶が握られていた。

 目的に近づくにつれ、光は大きくなっている。この結晶が通行手形なのだ。

 

 

「……あら?」

「どうしたサクラ?」

「いえ、今何かを抜けたような、多分結界の類だと思うんですけど」

「ほかに何か気づいたものは居るか?」

 サクラの言葉に、団長は部下たちに問いかけるが、誰も首を縦に振らなかった。

 

「お前の感覚を信じるなら、ドンケルハイト栽培区域に入ったってことだな」

「多分、侵入を阻害する類の結界でしょう。

 これほど自然に張るなんて、凄い腕前です」

「だろうな……おや、あれは焚き火跡か。人が近いな」

 彼らがそうやって進むと、小さなログハウスを発見した。

 やはり、この場所に人が住んでいるようだった。

 

「いきなり大勢で行くのも失礼だろう、リンゴちゃんと俺だけが行く。

 お前たちが残りは周辺を見張っていろ」

 そう指示を下し、二人はログハウスのドアをノックした。

 

 

 

 

 

「なんというか、気難しい方でしたね」

 花騎士ドンケルハイトと会った印象を、リンゴは端的に述べた。

 彼女から聞いた情報によると、二組の害虫がこの周辺を荒らしまわっているらしい。

 自分は戦いに向いていないからどうにかしてほしい、とのことだった。

 

「研究者気質なんてあんなもんだ。

 凄い研究をしているのは分かるんだけどな」

 団長はそう言って、この周辺の地図に目を落とした。

 ちなみにドンケルハイト女史は気難しさに反してふわふわ系の巨乳女性だった。彼のストライクゾーンから大きく外れていた。

 

「それで、件の害虫はどこにいるんだ?」

「逸るな、これから探しに行くんだからな」

 団長はクロユリを抑えて手頃の場所から向かうことにした。

 

 

「それにしても、凄い霊気というか、息をするだけで力が体に入ってくるというか」

 隊員の一人がそんな言葉を漏らした。

 それは花騎士たち全員も感じていることだった。

 

「月食の森、と言うだけあって月食の時の霊的状況とかを魔法的に再現しているんでしょうね。

 土地に満ちる豊富な世界花の加護と魔力、月食という状況下、特定の条件にのみ咲く伝説の花と言うだけあるってことですか」

「何だかロマンティックねぇ……」

「一輪だけとか持って帰っちゃダメかしら」

 リンゴの考察に、他の隊員たちも色めきだった。

 

「そんなお前たちに嬉しい報せだ。

 今回の仕事は極秘故にカネにはならんが、チューリップ団長が代わりにあの幼児化薬をひと瓶譲ってくれるそうだ」

 それを聞いた隊員たちにどよめきが走った。

 

「最初に言った通り、今回の任務は他言無用。

 そして報酬は平等に分け与えるが、部隊以外の人間や金銭目的の譲渡などは禁止だ。

 必ず自分たちで使用すると誓え。親にも教えてはならない。分かったか?」

 はいッ、と団長の声に鋭く返す隊員たち。

 彼女たちの眼は燃えていた。

 

「よしよし、良い子だ。

 それにしても、件の花はまだ見当たらないな」

「開花時期はまだひと月以上先だって言ってましたものね」

「それは残念ねぇ」

 幻の花を見ることができずに、サクラは言葉通り残念そうだった。

 

「もしかしたら早咲きの花があるかもしれないな。

 とは言えそれも、害虫をぶち殺してからだ」

「害虫が居ると咲かない可能性もありますからね」

 プルメリアはそう危惧した。

 実際、害虫が土地に宿る力を奪う例は実在している。

 今は滅んだコダイバナは、まさにそれだった。

 

 

「おや、あれじゃないか?」

 団長が指差す先に、赤い大型のチョウ型害虫が飛んでいるのが見えた。

 

「よし、お前たち、奴は土地の影響を受けてかなり強い可能性がある。油断せずに行けよ!!」

 はいッ、と再び彼の部下たちは勇ましい声を発し、一斉に害虫に襲いかかった。

 チョウ型害虫も、こちらを発見すると威嚇の声を挙げて迎撃を開始した。

 

 

 異変は、戦いの最中に起こった。

 

「ロオォォォオオリィィィ!!!」

 チョウ型害虫が羽ばたく度に、赤い色の鱗粉が広範囲に撒き散らされる。

 それは粉と言うより、魔力のような実体のない物だった。

 

「くぅ、強い!!」

「なんかだんだん強くなってるわよ、こいつ!!」

 最精鋭のはずの花騎士たちは苦悶の表情で強敵に立ち向かう。

 心なしか、手に持つ武器も重く感じる。

 

「いえ、敵が強くなってるんじゃありません!!

 私たちが弱くなっているんです!!」

 リンゴが叫んだ。

 戦闘中の花騎士たちは、それに違和感を感じた。

 リンゴの声が、記憶よりも高かったからだ。

 

「それって、どういうこと!?」

 そう問う隊員も、自分の声に違和感を感じた。

 それどころか、チョウ型害虫も先ほどより大きく感じた。

 

「これはマズイ、お前たち、撤退だ!!」

 団長が切羽詰った声でそう言った。

 そう指示されては、彼女たちもすぐに撤退の態勢に入った。

 

 煙幕弾が投げ入れられ、視界が塞がったうちに部隊は鮮やかに撤退した。

 

 

 

「はぁはぁ、危ない所だった」

 逃げた先で、団長は額に汗を拭う。

 

「もうちょっとで奴を倒してしまうところだった……」

 息も絶え絶えな隊員たちは、団長のその言葉が一瞬理解できなかった。

 だが、すぐに皆は違和感に気付いた。

 

 その場にいる全員が、団長さえも含めて若くなっていたのだ。

 

「な、なんじゃこりゃぁ!!」

 すっかりペドくなったランタナが、両手を見て叫んだ。

 各々も、自分の手鏡などを確認して、悲鳴に近い驚愕の声を挙げた。

 

 

「恐らく、あの害虫の鱗粉に触れた人間は若返ってしまうのではないでしょうか?」

「土地の魔力だけでなく、幻の花の魔力まで吸っているってことかしら」

 すっかり幼くなったリンゴと、綺麗なお姉さんから美少女になったサクラはそう己の考えを述べた。

 

「つまり、長時間戦闘はできないってことでしょうか」

「いつぞやの踊り害虫を思い出すな。

 こういう場合は戦えなくなったら交代していくのが常道だ」

 更にペドくなったニシキギと、容姿が幼くなったクロユリが対処法について語った。

 

「それより、これって元に戻るの?」

「戻るんじゃないの? ランタナちゃんの時も戻ったし」

 幼くなった隊員たちも不安そうだったが、迷いは無かった。

 

「元に戻り次第、討伐に戻りましょう、団長さん」

「え、倒すの? あれを?」

 団長は至福のの笑みで部下たちを眺めながらリンゴに受け答えした。

 

「なあ、帰らないか? あれって絶対益虫だよ。

 倒すの可哀そうだって」

「こ、このロリコン!!」

「害虫を見逃すなんて、見損なったわ!!」

「だから撤退させたの!?」

「いや、待て、勘違いするな、ヤバイと思ったのはマジだ。

 あのまま戦ってたら負けてた。それは本当だ。お前たちもそう思うだろう?」

 多方面から責められ、慌てて団長はそう弁明した。

 

 それを言われては彼女たちも立つ瀬がない。

 彼女たちは若返っただけでなく、間違いなく弱体化していたのだから。

 

「なあ、やっぱり帰ろうぜ、あれを倒すのは勿体ないって」

 若返ってそこそこ精悍さを取り戻した団長だったが、本能までは変わらないらしい。

 流石ロリコンが占める割合100%の男だった。

 

 が、そんなのを無視して部下たちは休息の準備をし始めた。

 

「わかった、わかった、じゃあこうしよう、生け捕りにするんだ。

 そうすればみんなハッピーだろう、なあ、なあってば!!」

 結局彼はみんなが元に戻る数十分までの間、居ない者扱いされた。

 

 

 

「気を取り直して害虫退治を始めるぞ!!」

 ジト目で全員から見られているのを感じながら、団長は先頭に立ち自ら索敵を行う。

 

「お、あれがもう一組の奴じゃないのか?」

 早速発見したのは、先ほどとは違い青い大型のチョウ型害虫だった。

 

「予定通り、一班から攻撃していくぞ、掛かれ!!」

 団長の号令と同時に、五人の隊員たちがチョウ型害虫に向かっていった。

 害虫もこちらに気付き、威嚇しながら迎え撃つ。

 

 

 

「ジュウウウクウゥジョーー!!」

 青いチョウ型害虫の鱗粉も、先ほどの赤いのと同じ性質を持っているようだった。

 だが、相対する隊員たちは焦りが募る一方だった。

 徐々に武器が重く感じ、体が言うことを聞かなくなっていくのを手に取るように感じた。

 

 だが、それよりもっと大事なものが無くなっていくのを感じていた。

 

「団長、そろそろ後退していいですか?」

「なんでだ? お前たちだけで仕留められないのか?」

「流石にそろそろ無理そうです!!」

「そうか? 俺にはもう少し大丈夫そうに見えるがな」

「うぐぅ!!」

 そう、戦えるには戦えた。

 だが、それ以外の全てが消えて行くのを彼女たちは感じた。

 

「もう限界です、お願いします!!」

「まだまだ行けるだろ。お前たちはまだまだ行ける!!

 俺は後ろから、お前たちが老いさらばえていくのを見ていてやるよ」

「い、いやぁ!!!」

 前線で戦っていた隊員たちは、戦意喪失して逃げ帰ってきた。

 全員、年齢が元の倍くらいになっていた。どこに出しても恥ずかしくない熟女になっていた。

 ……その姿に誰もが戦慄していた。

 

「そうか、無理だったか。

 じゃあ第二班、行け」

 が、団長の命令に第二班の面々は引きつった表情で動けずにいた。

 

「どうした、行けよ。あれは人類の大敵、害虫だぞ」

「いや、ちょっとお腹が」

「と、トイレ行っていいですか?」

「実はちょっと病気の家族が危篤で」

「俺だって辛いんだよ、お前たちが年を取る姿を見るなんて」

 団長は能面のような表情で、淡々とした口調でそう言った。

 彼は感情を表さないようにしていたが、心の中では泣いていた。

 

 

「だが、奴は、奴だけはここで倒さねばいけない。

 奴による被害が、他の誰かに及ぶ前に!!」

 言葉だけ見れば熱かったが、色々と台無しだった。

 

「害虫殺すべし、慈悲は無い!!」

 血の涙を流しながら、血が滲み出るほど拳を握り彼はそう言った。

 そうまで言われては何も言えず、彼女たちは無言で戦いへと赴いて行った。

 

 

 

「討伐、成功いたしました……」

 ブラックサレナ部隊は次々と入れ替わりで攻撃し、全ての班で青いチョウ型害虫をギリギリ倒しきった。

 しかし、部隊の面々は通夜のような状態だった。

 誰だって、自分が年を取った姿を見たいわけがなかった。

 

「……」

「団長さん?」

 すっかり妙齢の美人になったリンゴが、一方向を見て固まっている団長の肩をゆすった。

 すると、彼は。

 

「う、うう、おえ、おえぇぇ」

 吐いた。あまりにも精神的苦痛を受けて、ひたすらに吐く事しかできなかった。

 

「だ、団長さん!? 団長さん!!」

 その尋常じゃない様子に、リンゴも悲鳴を上げた。

 

「か、勘違い、しないでくれ、お前たちの年取った姿が嫌なんじゃないんだ、ただ、お前たちが年を取るっていう現実を目の当たりにして、気持ち悪くなったというか」

 何事かと彼を見る周囲に対して、彼はそれだけは告げた。

 彼は成長した皆が嫌なのではなく、ただ単に筋金入りのロリコンなだけである。

 

「大丈夫ですか、団長さん? 分かっていますよ、あなたが部隊の皆を嫌いになるわけないですもんね」

「あう、あうう、ううぅ」

 美少女からある意味すらりとした若妻感溢れる美人にランクアップしたプルメリアが、彼の頭を掻き抱いて優しく慰め始めた。

 

「……」

「あれれ、どうしたんだじょ、ペポ?」

 死んだ目になって親友を見ているペポに、ランタナは首を傾げた。

 あんまり成長していない彼女は、自分の身長を追い越したりいい感じの膨らみを手に入れている親友の姿に、敗北感に打ちひしがれていた。

 それにしても最近は赤ん坊になったり成長したり、忙しい奴である。

 

 

「うふふ、団長さんには悪いけれど、こうして小さくなったり大きくなったりしてみると、何だか楽しいわね」

 と、流石に元に戻ることを前提にした言葉だろうが、サクラはそんなことを言った。

 妙齢の姿になって色香を漂わすサクラは、頬に手を当てて微笑む様子が妙に様になっていた。

 周囲は、まあこの人は年取っても綺麗だよな、といった表情だが。

 

「ううぅ、モミジお姉ちゃんやスズランノキお姉ちゃんには届かずですかぁ」

 身長は結構伸びたが、胸の方は微妙な感じのニシキギは残念そうに両手をそこに当てた。

 

「ま、まあ、絶対将来こうなるってわけでもないし、ないし……」

 キルタンサスは膝を突いて崩れ落ちていた。具体的にどうなったかは彼女の名誉の為に明言しない。

 

 

「……情けない、今がチャンスだろう」

「チャンス?」

「今ならさっきの赤い方と先ほどより長く戦える」

 クール系スレンダー美女加減に磨きを掛けて妖艶さを獲得したクロユリの言葉に、ああと皆は納得した。

 

「ほら、いつまでそうしている、行くぞ」

 しくしくとプルメリアの胸の中で泣いている団長を引っ張り上げると、その視線がクロユリに向いた。

 そして徐々に視線が胸部へと向く。

 

「……有りだな」

「どこを見て判断した、どこを」

「お前はそのままでいてくれると信じていたよ」

 クロユリは反射的に拳を握りしめたが、何とか堪えた。

 一応彼に悪気が無いことだけは確かだったからだ。

 

「流石にあのゼラニウム神みたいになるわけないとは確信していたが、もしかしたら、万が一、あれの三分の一くらいにはなるんじゃないのか、と不安だっ――げふぅ!?」

 いつの間にか彼の中で神格化されていたゼラニウム。

 そんな彼女と比べられ、流石に我慢出来ずに腹パンしたクロユリだった。

 

 

 

 その後、再び赤いチョウ型害虫を発見し、大人化が効いているうちに波状攻撃を仕掛けるブラックサレナ部隊。

 

「よし、これでトドメよ!!」

 と、度重なる攻撃で動きが鈍った害虫に、キルタンサスの拳が突き刺さる。

 

「ロオオォォリィィ……」

 チョウ型害虫の巨体が地に伏した。

 害虫だけに虫の息だが、まだ息はある。

 

「これで終わりよ!!」

 自らの必殺技で、文字通り確実に息の根を止めようと両手に魔力を溜めるキルタンサス!!!

 だが、

 

「や、やめろぉおおおおお!!」

 ここで、害虫の前に両手を広げて立ちはだかる者が出た。

 言うまでも無いことだが、自分たちの団長だった。

 

「もういいだろぉ、これ以上奴を苦しめないでくれ……奴はもしかしたら、俺の友達になってくれるかもしれないんだ!!」

 一体どういうシンパシーを感じたのか、そんな世迷いごとをのたまう見苦しいロリコンがそこに居た。

 彼はオンシジュームに謝るべきである。

 

「あ、そ」

 キルタンサスは、躊躇いなく必殺技を解放した。

 凝縮された魔力の光線が害虫とそのシンパに直撃した。

 

「あばぁああ!?」

 害虫は消滅し、バカが上から落ちてきた。

 

 こうして、今回の害虫退治は幕を閉じたのである。

 

 

 

「さらば異形なる同好の士よ、お前とは分かり合えると思っていたのに」

 先ほどの害虫の簡素な墓を建て、その前の涙をぬぐった団長は未練を振り切り振り返った。

 

「さあ、帰ろうか、お前たち」

 なんだかいい感じに終わろうとしていたが、部下たちはもう、そういうものだと諦めることにした。

 今回はいろいろお互いに醜態を晒したので、さっさと帰りたかったのかもしれない。

 

 そうして、いい感じにロリくなった面々にご満悦のまま団長は帰還の指示を発した。

 

 報酬の幼児化薬は全員に平等に配布したところ、ちょうど一回分ぐらいは各々手に出来たようであることを追記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 




小さくしたらデカくする、何事もバランスですな。
花騎士ロリ化シリーズや大人化シリーズは有りますが、更にロリ化や大人化は無かったと思います。
そう言うの想像するのは楽しそうですよね。

ドンケルハイトの元ネタはアトリエシリーズに登場するあれです。
賢者の石の材料だったり、エリクシールにすると最高の回復アイテムになるやつですね。少し前に新ロロナやったので、その影響かもしれません。

そうそう、私は金チケでアイビーちゃんを選びました。
これで今まで数の少なかった彼も本格始動できます。

持ってるキャラ自慢と言うわけじゃないんですが、実際のボイスを聞いて、キャラクエとかしないとそのキャラが分からないので、持っていないキャラは出さない方針で来ました。
今回は趣味ではなく、ネタ作りの為に彼女を選んだのです。その価値はありました。彼女は可愛いですね。
そう言う選び方をすると、私は書きたいからこの二次小説を書いているんだな、と実感します。こんな気持ちは久しぶりです。
他に書いているシリーズよりUAの伸びは少なく、当初の目的である花騎士の知名度を上げるというのが実を結んでいるかはわかりませんが、私は楽しいのでそれでいいのでしょう。

無駄に長く意味の無いあとがきをここまで読んでくれた方が居ましたら、幸いです。
ネタがずっと切れないといいなぁ、と思う次第の作者でした。

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